コタツでまったり
冬になったからと言ってもやることは特に何も変わらない。
いつも通り起きて施設や畑の確認をし、収穫した物を倉庫にぶち込む。最近は子供達の1部が戻ってきたのでその分の飯を倉庫から出したりすれば終わりだ。
「いやいや、パパの仕事ってもっと大変でしょ。なんで一言で終わるの?」
コタツにあごの乗せてだらしなくしていると、正面に座るブランがよく分からない事言ってきた。
その言葉に頷くノワールとヴラド。俺が1人でコタツでぬくぬくしてきた時にやってきた侵入者達だ。せっかく1人でコタツを独占して、コタツムリになってたと言うのに……
「何でそこでノワール達も頷くんだよ。どこが大変なんだ?」
「全てですよ父上。父上が行っている事は我々が貴族として動いていた時以上の仕事量をしているのですよ」
「まっさか~。貴族様の仕事より俺の仕事の方が難しいって事はないって。絶対貴族の方が大変でしょ?」
「父さん。貴族と言う物は多くの人を使って仕事をしているから見方によっては部下に指示を出すだけで済む。でも父さんはこのアルカディアと言う世界そのものを統治しているだろ。だから単純な規模も違うし、デリケートなブラッディ・ピーチの様な物も作っているのだからどうしても仕事量は多くなってしまうじゃないか」
「でも……俺の場合メニュー機能があるし」
このアルカディアの管理はこのメニューがある事を前提に考えているから特に苦労らしい苦労はない。
このメニューを使えば直接子供達に会わなくてもある程度は体調がどうなのか、異常状態になっていないかどうかなど確認する事が出来る。個人的に経験則から直接子供達の顔を見たり触れる方が分かりやすいが、普通に使える。
他の施設に関しても似た様な物だ。メニューでちょちょいといじればそれで終了。施設の管理と言っても施設を選んで掃除ボタンを押すだけで済む。
「そりゃ1つ1つ施設を確認しないといけないとかなら分かるけど、後大変だと思うのは……ルージュ、ヴェルトとクレールの棲み処に関しては少し大変かな……」
この3人は他のSSSランクモンスターの子供達だ。
ルージュが長女でヴェルトが次女、最後にクレールが三女だ。ブランは四女で末っ子。もう1人クラルテと言うSSSランクモンスターがいるがその子は次男。女の子の方が少し多い。
そしてこの三姉妹なのだが、それぞれ住んでいる環境が面倒なのだ……
まずルージュが住んでいたのが火山のマグマの中。普通ならどの生物も生きていけるとは思えない環境だがルージュ的には全く問題がない。本当にファンタジー。
ヴェルトの棲み処は森の中なのでそこだけ聞けばまだマシの様に聞こえるかもしれないが、あの子森に穴を掘ってそこに身体を埋めて寝るからその穴を維持するのが大変なんだよ。普通に居た頃は自分でベッドメイキングをしていたから良いものの、今は俺がドデカいベッドを維持するのが面倒。
クレールは……棲み処が深海なので動き辛い。他の海に住んでいるモンスターはいないから、精々食料用の魚が棲み付かないようにしているだけなんだが……結構好き勝手やられている気がする。
他のも単純にデカい種族の場所だったり、逆に小さ過ぎたりする子供達の家を管理する方が非常に大変だ。
特殊な環境でしか進化しない施設と言うよりは森や山、川に湖に海、砂漠に洞窟などなど、ボタン1つで済むんだからやっぱり問題ないな。
「それを毎日繰り返している時点でパパは凄いの。特にお姉ちゃん達の棲み処の掃除って大変でしょ」
「それなりにな。でも慣れれば問題ないし、洞窟系に関してはノワール達が管理し始めてるから俺が一々確認しに行く必要もなくなったしね」
「それでも父さんは凄いんだよ。特に食料関連」
「ですね。いつ帰ってくるか分からないからっといつも言っていますが、それだけで“知恵の実”や“命の実”など本来であればルージュ嬢とヴェルト嬢がいないとろくに育たない木の実の栽培にも成功しているではありませんか」
「あぁ~。あれは苦労した。あの大喰らい植物共め、大人しく冬眠みたいな事してろ」
今言った“知恵の実”と“命の実”とはこのアルカディアで生育が特に厳しい果樹の一つだ。
ブラッディ・ピーチが非常にデリケートなのは以前説明した通りだが、この2種類の場合は意味が全く違う。
まず半径1キロ以内に育つ木は1本だけ。1キロ圏内に入ると植物は一切育たない。その理由は土地の栄養と日の光を独占してしまうからだ。
どちらも巨木と言えるほどに立派には育つのだが、立派になるために大量のエネルギーを欲していると言う事なのか、他の植物を植えたとしても連中に土地の栄養を奪われて育たない。しかもアルカディアでも貴重な木の実と言う立ち位置なので収穫できるのは1週間に1つ、よくて3つと言う所だ。
そんな非常にコスパの悪い木のみの育成に必須なのがルージュとヴェルトの力。
ルージュはマグマの中に住んでいるので大地に活力を与えるという力があり、ヴェルトは単純に大地の栄養を底上げしてくれると言う物だから木の実の育成には必須のSSSランクモンスターなのだ。
ちなみにブランが居る事で日の光が強化されて植物が良く育つという話もあるが、ブランが生まれそう時間が経たない時にこのよく分からない現象が起きてしまったのでぶっちゃけ3人そろうと植物がどう元気になるのかよく分からない。
ちなみにノワールが居る事で闇系モンスターのステータス向上の他に植物の日焼け防止、星空が寄り綺麗に見えるなどの影響がある。
まぁ今はその肝心な2人がいないので生産量はガタ落ち。元々何に使うのかよく分かっていないレア度が非常に高いだけの木の実である。
「そう言うコスパの悪い植物関連はほぼ休んでるし、あとは特にないよな?」
「我々モンスターのいさかいを止めて下さるではないですか」
「喧嘩する時は暴力以外のゲームで決めろって言ってるだけじゃん」
吸血鬼達で喧嘩する時は基本的にチェスだな。絶対俺は勝てない。
俺の居ない2000年間も勝負事は基本的にチェスで優雅に決めていたと聞いている。
「実際の所は真剣勝負なので優雅に行なってなどいません。時に賭けを行っている場合もありますので知能で殴り合っていると言った方が正しいでしょう」
「真剣勝負なんだからその辺は仕方なくない?今でも賭けチェスってやってんの??」
「お遊び半分でですがね。パープルスモックの硬貨を使っていますがアルカディアではほぼ無価値ですから、最近はブラッディ・ピーチを賭ける事が多いですね」
「熱中し過ぎて破産するなよ~」
結局俺がアルカディアで凄い事をしている気は全くしない話であった。
そこにガブリエルとカーミラも来たのでおやつタイムに突入した。
今日のおやつは冷凍ミカンにウサギの形をしたリンゴ、そしてガブリエルの新作スイーツだ。
俺はそれらを食べながら美味い美味いと頷いていると、2人も何故か俺が凄いという話をする。
「お父様がこうして毎日植物を育てて下さっているおかげでこうして果物が食べ放題と言うのは素晴らしい事ですわよね」
「ええ。しかもアルカディアの果実でしたらわたくし共も吸っておいしくいただけますし」
「吸血鬼達の腹はデリケートさんだもんな」
カーミラ同様にヴラドも果物を牙に刺して果汁だけを吸うと言うそんな食べ方でいいのか?っと聞きたくなる様な食べ方をする。
「種族的な物です。どうしようもありません」
「無理に物を食えるようになれとは言わないさ。ただやっぱり歯があるのに噛んでないって言うのは変に感じちまうんだよ」
俺はリンゴを食べると余計にそう思う。
あ。そう言えば今年まだ梨食べてなかったな。今度食うか。
「でもまぁ季節感関係なしに好きな物を食えるって言うのは確かに凄い事かもな」
ようやく1つ凄いと思った事に気が付いたので今日は良いだろう。
それに対して子供達はやっぱり分かっていないと言う感じの視線を送るのだった。




