第1異世界人発見
その後俺はこの4人組パーティーの人達に保護された。この人達は俺の予想通り冒険者であり、パーティー名は『極星』と名乗った。
この人達は俺のために焚き火を用意し、服を脱いで乾かす様に言った。俺は素直にご厚意に甘え、女性の前で恥ずかしいがパンツいっちょで焚火にあたる。
そしてポラリスのリーダーをしている皮鎧の男性が言う。
「俺はアレス、さっき言ったようにポラリスのリーダーをしてる。えっと君は……」
「えっと俺は……ドラクゥルです」
俺は本名を名乗るべきかどうか悩んだが、結局ゲームキャラの名前を言う事にした。
この名前は俺が大切に育てた子供達の名字にもなっているので、もしかしたらこの名字で子供達と出会える事が出来ないかと思ってこちらを選んだ。
アレスは頷いてから俺に聞く。
「それで……ドラクゥルはどうしてゴブリンに追いかけられてたんだ?同業者には見えないんだが……」
「あ、それは……その。迷子と言うか何と言うか……」
「迷子?あの“聖域”で?」
「聖域ですか?あの森が??」
「気付かずに入ったのか……あの森は各教会や教団から聖域と呼ばれて侵入したら教会の連中に殺されても文句言えない不可侵領域だぞ。本当に迷子であの森に入ったのか?」
え、俺そんなにヤバい所に現れたのか!?それ本当にヤバい感じじゃん。それに異世界の宗教団体って過激なイメージがあるし……まさかこのまま町に行っても打ち首獄門!!
「嘘を仰っている感じはいたしませんね。ですが真実も言っていない様に感じます」
そう本を読んでいた女性が言う。
本を閉じて俺と目を合わせて女性は言う。
「私は白夜教会のシスター、ディースです。やましい事はしていないのは分かります。ですから教えていただけませんか?」
ディースさんはそう言うが……俺自身神様うんぬんに関してどう説明すればいいのかさっぱり分からない。
俺は説明しようとするが……どう言えばいいのかまるで思いつかない。
「まぁ何らかの事情があるのではないですか?無理に聞き出すのも悪いでしょう。それから私はライナです」
そう丁寧に言ったのは長い髪の男性、ライナさん。弓矢を背負って両手で落ち着かせる様にフォローしてくれた。
それに対してディースさんは少し離れて恥ずかしそうに言う。
「そうですね。やましい事がなくても言い辛い事はあるでしょう。申し訳ありません」
「いえ、俺自身ハッキリと言えないのが悪いんですから、気にしないで下さい」
そう言って事なきを得た。
そしてアレスは微妙な雰囲気を吹き飛ばす様に言う。
「さて、俺達もそろそろ野営にしよう。そろそろ暗くなる」
そう言われてから俺は気が付いた。確かに空は暗くなっているし、そろそろ夜になるだろう。
この世界の常識などについて色々聞きたいし、それに実験もしてみたい。
俺は4人に向けて手を上げながら言った。
「あの!助けてくれたお礼がしたいので俺に任せてもらっても良いですか?」
そう言うと魔女っぽい子以外の3人は苦笑いをしながら俺を見た。
アレスは申し訳なさそうにしながら言う。
「あ~でもドラクゥル。お前なにも持ってないだろ?これから飯と野営をする訳だがどうするつもりだ?」
「それに関してはその、俺の力を直接見ていただく方がいろいろと便利だと思いますので。それにディースさんに対して言いにくい事の説明にもつながるかと」
そう言うとディースさんは申し訳なさそうに言う。
「いえ、あれは私の方が性急過ぎました。あまり気にしなくていいのですよ?」
「でもお礼がしたいのも本当なので、俺の力に関して客観的な意見も聞きたいんです。任せていただけませんかね?」
そう言うと3人は考え、そしてライナさんが言う。
「ドラクゥルがそう言ってますし、任せてみていいんじゃないですか?どうやら野営向きの様ですし」
「……そうだな。安全に野営が出来るのであればありがたいか」
「持ちつ持たれつ、と言う事ですね。よろしくお願いします、ドラクゥルさん。ほらメルトちゃんも」
どうやら最後の魔法使い風の女の子はメルトと言う名前らしい。
メルトは俺の顔をじーっと見て、何も言わずに頷いた。
「よし、全員賛成だな。それじゃドラクゥル、頼む」
「はい。それじゃ付いて来て下さい」
「付いて来て?」
俺は自分の力を使って目の前に牧場につながる道を作る。見た目は大きな穴だが、きちんと向こう側の景色も見えるのでそう怖い物には見えないだろう。
俺は道を作ってからまず俺が入って手招きする。
「どうぞ、ここが俺の家です」
そう言ったが4人とも反応しなかった。
あれ?やっぱり怖いか?
しばらく元に戻るまで待っていると、アレスが先に元に戻って俺に聞く。
「ちょっと待て!!これは魔法か!?それともスキルか!?」
「えっとすみません。その辺の常識もよく分からないんです。ですのでその辺りについても教えていただけると助かるのですが……」
「それ本気で言っているのか!?魔法とスキルの違いすら分からないって!!」
「はい。ですからみなさんからはそういった事もお聞きしたいんです。ようやくこの世界で初めて会った人達ですから」
そう言うと少しずつ他の3人も呆然とした状態から元に戻って行く。
反応から察するに俺の力はやはり異常の様だ。
4人は恐る恐ると言う感じでファームに入り、俺は穴を閉じた。
「こっちです。こっちに俺の家があるので付いて来て下さい」
「あ、ああ」
アレスがそう言って俺の後ろから4人が付いて歩く。
その間にもアレスたちは「これ絶対魔法じゃないよな?」「あり得ませんよね」「どうなのメルトちゃん?」「ありえない。空間魔法の応用だとしてもこの広さは異常。大体はアイテムボックスと変わらない広さ以上はありえない」っとよく分からない事を言っている。
魔法と言う物が存在している可能性は非常に高いと思っていたが、やっぱりあるんだな。
そして俺は家の前に着く。
「ここです。今鍵開けるんでちょっと待ってください」
そう言って玄関の扉を開けた。
4人は玄関の少し前でまた固まっていた。
「あの……みなさん?」
「先に聞いていいか?ドラクゥルさん」
「え、何で急にさん付けになったんですか?」
「ドラクゥルさんって、王族か何かか?」
「え?そんな訳ないじゃないですか。俺は普通の人間ですよ」
「普通の人間がこの屋敷を家とは呼ばない!!」
あはは………だよね。
俺のアルカディア内の家っと言うかマイルームは、超豪邸である。プールあり、部屋はいくつあるのか数えるのも面倒臭い、キッチンと言うよりは厨房、もう何でもありの超豪邸である。
アルカディア内ではプレイヤーのレベルは存在しないが、施設のレベルは上げる事が出来る。普通にゲームとして遊んでいた時は単にアイテムの保持量アップや、各施設のレベルアップ基準にマイルームのレベルアップが必須と言う物があったから最大レベルまで上げたに過ぎない。
まぁおかげで他の施設は常に最高の状態だし、色々と楽なったんだけどね。
でも……ここには俺以外誰もいない。
一応この超豪邸の中で俺専用の部屋はあるのでそこで寝たりしているが……寂しさしかない。
普通のゲームとして遊んでいた頃は人型の子供達が住んだりしていて賑やかだったのに、今ではまさにがらんどう。賑やかだった頃と比べると寂しい……
「まぁこれは……頑張った勲章と言う事で納得してください。お部屋に関しは好きな所を使って構いませんよ、どうせ誰もいないので」
「誰も?使用人とか居るんじゃ……」
「使用人じゃありませんが確かに住んでましたよ、最近までは。とりあえず飯作ってくるのでちょっとそこら辺で待っててください。あ、ディースさんって教会の人らしいですけど、食べられない物ってあります?」
「いえ、そのような事はないので大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
そんじゃ飯作るか。今日はお客居るから適当じゃダメだよな。
何作ろう?
「あ、我々はどこで待っていればいいですかね?」
不意にライナさんがそんな事を聞いた。
「え、ご自由にしていただいて結構ですよ?」
「いや~情けないですが、この広さだと、その~」
「あ、ああ!すみません。それじゃ何もありませんが食堂までご案内するので付いて来て下さい」
そうだよな、初めて来た所でリビングとか食堂とか分からないよな。
こう言うの慣れてないから忘れてた。