忙しい1ヶ月
それから1ヶ月は様々な人が大忙しだった。
まず俺の場合はヴラドたちの奴隷やら使用人たちが住む家の用意。
まぁゲーム仕様だから敷地を用意してそこにどの施設を建てるかっという選択をすればいいだけなので建築の苦労の様な物はないが、それでも施設のレベルを最大にするにはレベルアップしたら即またレベルアップを行わないといけない。
レベル3まではすぐにレベルアップするのだが、レベル4から30分、レベル5から1時間と言うようにどんどん長引く。レベル9からレベル10になるには1週間もかかるのだから急ぐのは当然だ。前にも言った様にドワーフやグレムリンがいればもう少し余裕が出来たんだけどな……
もう1つは食人種と呼ばれているパープルスモック内のモンスターの捕獲。こっちは家を作っている間の時間を使ってできるだけ効率的に行なおうとしている。
これにはポラリスのメンバーも協力してくれた。倒すのではなく捕獲するという部分は初めてらしいが、1ヶ月ただ屋敷で厄介になると言うのは流石に気が引けたらしい。なので俺の食人種捕獲に協力してくれた。
まずは生息地域が決まっているケルピーから。
ケルピーは馬型モンスターだが何故か湖に住んでいるよく分からないモンスター。念のために言っておくが湖の近くに住んでいるのではなく、湖に住んでいる。そのため捕獲するとすれば釣るか潜って捕まえるか。
「潜って捕まえるって正気か?」
「ただの手段として言っただけ。溺れさせる相手に素潜りで捕獲とかバカがする事だ」
ケルピーの人間の捕獲は湖の近くで待機、その後人間が来たら友好的なふりをして接近、人間が調子乗って背に乗ったら湖の中にダイブ!その後人間を溺れさせて死んだ後に内臓以外を食べる。
ちなみに人間が普通に湖で泳いでいた場合は足か腕を噛んで湖の底に引きずり込む。そして窒息死した後に内臓以外を食べる。
冒険者の中ではケルピーの危険性は知られている様だが、何も知らない商人とかだとだまされて食べられてしまうらしい。ケルピーがいる湖は冒険者ギルドなどで告知されているのでちゃんと確認すれば大丈夫だろうが、そうでない歩いて商品を運ぶ行商人とかは疲れている時にケルピーを発見して乗せてもらおうとした時にそのまま頂かれるそうだ。
と言う事で初見殺しとして冒険者の中ではかなり有名なモンスターなのである。
ちなみにこの日はアルカディアの肉をエサにして釣りをしたら入れ食いだった。
その後ケルピーは俺と交渉し、ケルピー達をアルカディアに移住させると言う事でパープルスモック中の湖をしらみつぶしに巡ってアルカディアの肉を食わせて移住すると得、と言う事を教えるだけだったので意外と楽だった。
別の日は俺1人でドクターに会いに行った。
1ヶ月後にノワール達もパープルスモックからアルカディアに引っ越す事を伝えた。それによりドクター達がこの洞窟に留まる理由がなくなる事も伝える。
『それじゃ僕達もアルカディアにずっといていいんだね』
「当然。でも引っ越すまではここを守ってほしいとも言われた。でももうすぐ帰ってゆっくりできる」
『そうか……それじゃその日までゆっくり待つとしよう』
と了承してくれた。
更にスモッグゴースト達にもこのことを伝えると全員集まってくれた。彼らは俺の事を覚えていてくれたらしく、嬉しそうに空中を飛んで表現する。
俺は彼らもアルカディアに来れるようメニューで出入りできるようにした。ただ仕事の事はちゃんと伝えておいたので彼らは敬礼をしてまた霧の中に消えていった。
そして1番苦労したのはこいつ等だろう。
「こんな仕事二度と、絶っっっ対にしない!!」
「口より足を動かす!!」
走っているのはディースさんとメルトちゃん。2人は今犬型の凶悪モンスターに追いかけられている。
そんな彼女達を追いかけるモンスターの種族名はベート。
簡単に言うと不格好な犬の雑種と言うのがこの見た目を1番表現しているだろう。足は短いが大きさは子牛程、顔や胴体は特に大きく頭から尻尾まで1本の線が特徴的。
彼の特に残酷な生態が女子供しか襲わないと言う所。その本質と言うべきところはこの世界でも変わらないくせに、群れで狩るとより成功率が上がると言う事を学んだ彼らは今では群れで行動している。
つまり俺やアレクさんが囮になれないのはこう言う事。女子供しか襲わない臆病ともとれる習性から男が頑張って囮になっても意味がない。女性か子供しか食べない偏食家。それをおびき出すには女性か子供を使うしかない。
まぁそう頭では分かっていても鬼畜だって事は分かる。女性と子供を走らせて俺達男は黙って待っている事しか出来ないのだから。
結果に関してはベートのほとんどを捕獲する事が出来たと思う。
流石に俺が育てたベートは存在しない様だが、ここから先は少しずつ調教していくしかない。ベートは狩りと言う点では優れているが番犬などにはならない。だって守るべき女子供を食べる存在だから。
まぁうちにはか弱い女性なんていない気がするけどな。1番弱そうなブランがトップクラスに強い訳だし。
この後頑張ったディースさんとメルトちゃんにはお礼としてアイスとか色々ごちそうしましたよ。
むしろ菓子の類で機嫌を直してくれただけ良かったと俺は思っている。
そんな感じで1カ月間俺はパープルスモック内のモンスターのほとんどと、新しい家の建設に力を注いでいた。




