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いざ、パープルスモックへ!!

 こんな感じでスレイプニル5体を用意し、試しに鞍をつけてみた。


「違和感とか乗っけた感じが悪いとかそういうのないか?」


 そう聞きながら乗っけてみても問題ないと言うように鼻を鳴らす。

 その後俺を乗せて1度走ってもらったが特に問題はない。スレイプニル本人も問題なさそうだし、人を乗せても力強い足取りは変わらない。

 乗ってみた感想は背の高いバイク?足が8本もあるからなのか思っていたよりも揺れないし、手綱を操作する感じはバイクに似ている感じがする。ちなみに進みたいときは手綱を緩め、ブレーキをかけるときは手綱を引くと言う事をここで知った。

 どこまで走れるかは不明だが無理に走らせる必要もないのだから休み休み行けばいいだろう。


 あと問題は……スレイプニル達がポラリスのメンバーを乗せてくれるかどうか、なんだよな……

 元々俺以外の人間と接した経験なんてほとんどないだろうし、ちょっとしたことで怒る様なら別な方法を考えるしかないかもしれない。


 本当に今更な問題ではあるが一応事前に説明はしておいたので問題ないはず……

 やっぱ不安は残るな。出会ったらこいつ背に乗せたくないって反応取ったらどうしよう……


 だが今更他の移動手段などなく、もうダメダメだったらブランに本来のドラゴンの姿になってもらって空の上からパープルスモックに行くと言う荒業も出来る。

 そんなことしたら国際問題になりそうだから本当に最終手段だけど。


 そう思いながら午前8時、俺はスレイプニル達を連れて城門の前で待っている。

 他の町に出入りする人達は足が8本もあるスレイプニル達を遠巻きに見ながら俺達の事を避けているが、やはりスレイプニルは珍しいようだ。

 城門に背を預けてだらしなく待っていると、アレスさんの声が聞こえた。


「ドラクゥルさーんって何ですかその馬!?その馬に乗っていくんですか!」


 すぐにアレスさんは驚き、びくりと体を動かす。

 他のメンバーもスレイプニルの姿を見て驚いた後、興味深そうに様子をうかがう。


「足が8本もある馬ですか……これ魔物ですよね?背に乗せてもらえるんですか??」

「乗せてもらえるように頼んでおきました。多分……乗せてくれるはずです」


 ライナさんが聞いてきたので俺はそう答えたが、多分と言う言葉にやはり不安を隠せないようだ。


「多分、ですか」

「俺以外を背に乗せるのは初めてなのでどんな反応をするのか正直分からないんですよね。他にも移動手段がない訳ではありませんが……できるだけ避けたい移動手段なんですよね」

「そうなのですか。ですが……あの2体は大丈夫そうですね」


 そう言うライナさんの目線の先にはディースさんとメルトちゃんに興味ありそうにしているスレイプニルが3体いる。

 あいつらは……元ユニコーンだな。ユニコーンは簡単に言うと大の女好きな性格をしている。特に処女が大好きな性格で処女以外には懐かないとまで言われている。

 さすがに人間のいないアルカディアではそんな設定はないのだが……背に乗せるなら女の方がいいと言う感情だけは伝わってくる。


「……あいつらは大丈夫そうだな」

「ですね。では残った2匹に乗ればいいのでしょうか」

「そうしてください。あの2体は性別とか関係なく乗せてくれそうですから」

「そうさせていただきます。ほらアレク、行きますよ」

「お、おう。にしても立派な馬だな~」


 なんだか自然と2人分は決まったな。

 あとはあっちのナンパしてる3体だが……1体メルトちゃんに強くアタックしているのがいる。

 あいつに任せて大丈夫か?あいつだけ別な意味で危険を感じるんだけど。


「あの……ドラクゥルさん。この子達随分人懐っこいんですね」

「人懐っこいと言うよりはただの女好きです。特にメルトちゃんに強く言い寄ってきてる奴は別の意味で危険を感じますし」

「ダメ。噛むのも舐めるのもダメ」


 猛アタックしているスレイプニルはメルトちゃんに強くアタックし過ぎて迷惑をかけているので軽く頭を叩いておく。

 そのスレイプニルは何だよっと不満そうな表情を作っているが俺は普通に言う。


「メルトちゃんが好みだろうが何だろうが、紳士的な態度を取れ。ガツガツ行く肉食系が全部うまくいくと思ってるんじゃない。紳士的なむっつりスケベにしておけ」

「ドラクゥル。それはそれで嫌」


 メルトちゃんにそんな風に言われてしまったが実際にこいつはそういう奴っぽいんだから止めようがない。だったらせめてエセ紳士として態度を改めてもらうしかない。

 実際態度を改めてキリッとしているのだから効果はあったようだ。

 そしてメルトちゃん以外を背に乗せるつもりはもうないらしく、メルトちゃんの乗ってもらうために膝を折っている。


「メルトちゃん。不安で不満かも知れないが、こいつに乗ってもらってもいいか?」

「………………紳士的に乗せてくれるなら」


 しぶしぶと言う感じでメルトちゃんはそのエセ紳士の駄馬に乗った。

 駄馬はうれしそうにしているが……俺としては哀れみしかない。そんなに乗ってくれてうれしいか。どMの駄馬じゃないかお前?


 そして自然と残った2体のスレイプニルは……ちょっと離れたところで何やら相談中。

 どっちも元ユニコーンなので乗せるなら女の方がいいと思っているんだろう。ここで喧嘩しない分まだマシと言えるのかもしれないが俺個人はとても複雑です。

 俺が親なんだよ。そんなに嫌がらなくてもいいじゃん……


 そんな悲しい感じになっているとディースさんが俺に聞いてくる。


「あの……ドラクゥルさん。この馬ってもしかして伝説の馬じゃありませんか?」

「伝説?どんな伝説ですか?」

「白夜教にある伝説の1つで、スレイプニルと言う馬です。8本足の馬で空をも駆けると載っております」


 そういやスレイプニルって聖属性だから一応ブランの眷属扱いされるされるのか。

 まぁブランの紹介の時にスレイプニルはいなかったからきっとどっか好き勝手に空を駆けてるんだろうな。ちょっと気になるがのびのびと自由に生きているのであればそれでいい。


「よく知ってますね。この子達はそのスレイプニルって種類の魔物ですよ」

「魔物って……彼らは聖獣と呼ばれるのではないのですか?空を駆ける伝説の馬ですよ??それを用意したとドラクゥルさんはいったい……」

「所詮聖獣と呼ぶか魔物と呼ぶかは人間の勝手ですからそう気にしなくていいと思いますよ」


 俺はそう言ってスレイプニルをどう用意したのかごまかしておく。

 俺にモンスター、魔物を進化させる力があるとバレた場合他の人達がどのような態度をとるのか分からない。魔物を強化する存在としておそれられるのか、それとも都合がいいと思って利用しようとしてくるのか。どうなるのかバカな俺にはさっぱり分からないが、出来るだけ黙っておいた方がいいと言うのだけは分かる。

 なので俺はポラリスのメンバーでも黙っておくことにする。


 そして話し合いの結果なのか、片方がディースさんを乗せ、もう片方が俺を乗せるのだがちょっと不満そうだ。女じゃなくてごめんな。

 他の3人と3体も上手くいっている様でみんな背に乗っている。


「それじゃみなさん、護衛の方よろしくお願いします」

「任せな」

「仕事はきっちりさせていただきますよ」

「ん」

「回復などは任せてください」


 こうして俺達5人の冒険は始まった。

 スレイプニルたちは出発して良いと分かった途端に走り出す。


「えっちょっ!?」


 町を出ると少し上り坂があるのだが、スレイプニルたちは難なく坂を駆け上がる。

 だがスレイプニルたちのおかげなのか風の勢いはあまり強く感じられないが、周りの光景はとても早く過ぎ去っていくのでかなりの速度が出ている事が分かる。

 そして坂を上り切ったかと思うと、そのまま空を駆け始めた。


「「「「え、ええぇぇぇぇぇぇぇ!!」」」」


 何だか後ろの方で悲鳴が聞こえた気がしたが、マップについている方位磁石のマークを見る限り方角は間違っていないのでそのまま空を駆けるのだった。

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