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家族に報告

「パパ遅い!!」


 家に帰ってくるとブランが仁王立ちで玄関の前に立ちふさがっていた。

 腕を組み、頬を膨らませているのでとても怒っている事は分かる。その両隣にはミカエルとガブリエルが何だか申し訳なさそうに後ろに居る。


「あれ?連絡は入れておいたはずだよな」

「それでも遅いの!何してきたの」


 どうやらこちらの事情を話しても意味はなさそうだ。俺は諦めて内心でため息をついてから謝る。


「悪かったよ。知り合いに会ったからそのまま飲みに行ったんだよ」

「む~。それでも娘を置いて行っていい理由にならないの!そして出来るだけ早く帰るの!!」

「だからごめんって。その代わりパープルスモックに行く方法はどうにか確保した」

「それ本当?私達が連れて行ってあげようと思ってたんだけど」


 どうやらブランは国の状態をよく知っていたらしい。

 まぁこの国の神様だし、ミカエル達も居るから問題ないんだろう。


 俺は話しをするためにブランとミカエル、ガブリエルを連れて俺の部屋に向かう。

 立ったまま話をするのはブラン的にも疲れるから、らしい。その代わり罰としてブランと添い寝するという条件付きだ。最近は甘えられなかった分毎晩俺のベッドに潜り込んでいる事には気が付いているんだけどな……


 そんな事は置いておいて、俺はベッドに座り、ミカエルとガブリエルを椅子に座らせ、ブランが俺の膝の上に座ってから冒険者ギルドでの話をした。

 ポラリスと言う冒険者パーティーが協力してくれる事。俺のこのアルカディアに行き来できる力の事を知っている事。そしてその依頼内容について話した。

 それを聞いたミカエルは少し残念そうな表情をする。


「こういう時こそ私達の出番だと思うのですが」

「別に全く力を借りないつもりではないさ。戦闘系じゃ俺は一切役にたたないし、誰か暇な子にこっそり護衛をしてもらうつもりでもある。誰か暇そうな子いない?」

「それならラファエルの部隊を動かしましょう。彼らは基本的にブラン様が行動しないときは暇ですから」

「ラファエルって護衛部隊みたいな事をしてたんだっけ?」

「はい。ラファエルはブラン様の護衛として活躍していますので、基本的に戦闘訓練を繰り返しているだけですので喜んで引き受けるでしょう」

「特に最近は引きこもってる事が多かったからね……ブランちゃんはもうちょっと動いた方がいいと思うな」


 ガブリエルが最後にそんな事を言う。そう言われたブランはそっぽを向いた後俺の向かって顔を上げながら聞く。


「ところで足はどうするの?多分家に居るペガサスかユニコーンを使うつもりなんだろうけど、どっちもあんまり体力ないよ」


 アルカディアのペガサスとユニコーンはちょっとしたファンタジーキラーだったりする。

 まずペガサスは確かに空を飛ぶ事が出来るが、飛行時間は10分ととても短い。瞬発的な速度ならそれなりに早いのだが翼がある分重いのか体力面では心もとない。

 ユニコーンは癒しの力以外はぶっちゃけ普通の馬とそう変わらない。しかもユニコーンの角は1度折れると二度と生え変わらない角なので図鑑などには書かれていないが、牛ではないかと俺個人は疑っている。

 牛と鹿の違いって角が生え変わるかどうかの違いって知ってた?

 そしてユニコーンは生え変わらないので牛の仲間ではないかと俺は予想している。

 脱線終わり。


「まぁね。でも3日も猶予があるなら5匹ぐらい大丈夫だろ」

「どうするの?」

「おいおい。俺が出来る事は1つしかないじゃん――年取ったペガサスとユニコーンを進化させる」


 その言葉に3人は言われて思い出したようだ。

 アルカディアは育成ゲーム。モンスターを進化させて遊ぶゲームだ。だからろくに走れない5体のモンスターを長距離走れるモンスターに進化させる。それが俺なりの足の用意の仕方と言う奴だ。


「でも進化させるって言っても間に合うの?それに何に進化させるの??」

「Aランクモンスター、スレイプニル」


 そう言うと3人は納得した表情を作る。


 スレイプニルとは北欧神話に現れるオーディンが乗ったと言われる軍馬だ。特徴はがっしりとした強い肉体を持ち、その巨体を支えるためなのか8本の足を持っている。

 ランクはさっきも言った様にAランク。馬型のモンスターの中では最高の馬であり、これ以上の足はない。


 あえて欠点を言うとすれば体力があり、戦闘面に優れている分地味と言う点だろうだろうか。足が8本もあるからインパクトは十分かも知れないが、ペガサスは短時間でも空を飛べるし、ユニコーンは死んだ後アイテムとしてユニコーンの角が残る。

 生産的な意味ではユニコーンの方が優秀と言えなくもない。ユニコーンの角が回復系の材料になるのはアルカディアでも変わらないので結構レアなのだ。

 その後他のモンスターに進化しないように調整するのも面倒だし。


「確かにスレイプニルなら走るという意味ではこれ以上ない程に優秀ですね」

「属性も私達同様に光。これならどうにか出来るでしょうね、お父様」

「流石パパ!でも三日以内に進化させられるの?」

「俺の手にかかればモンスターの進化にそう時間は必要ねぇよ。ペガサスもユニコーンもBランクだからほんの1つ進化させるだけ、俺にとっては楽勝だよ」

「そんな風に言われると他の子達が自然と進化するより圧倒的に早いわよね……流石お父様」


 そう言えば俺がいない間に自然と進化した子はほぼいないそうだ。原因と言うか理由までは分からないが、俺は進化条件を知っているが子供達は知らない……と言う事はないか。すでに進化した兄や姉がいるのだから聞けばいいだけ。それなのに進化しなかったのはどう言う事だ?

 でもジェンとレディーは進化していたし、その違いは何だろう。進化条件が偶然整っただけ?それともゲームとは違うから進化条件が変わってしまった?

 ……考えても分からないが、とにかく俺はペガサスとユニコーンをスレイプニルに進化させる事を考えないとダメか。

 まさかゲームとは違う進化条件に変化してないよな?


「ま、とにかくそう言う事だ。俺はポラリスの力を借りてパープルスモックに行く。これは決定事項だが寝る時はそのメンバーと一緒にアルカディアに戻るのでよろしく」

「承知しました。そのように周りの者達にも伝えておきましょう」

「それなら私はお客様達への料理などを準備しないと。あと客室のお掃除ね」

「ブランは!ブランは……どうしよう?」

「そう力を入れる必要もないと思うけどな。普通にしとけよ」


 ただ普通に俺がもてなした時も委縮と言うか恐縮している様な状態だったからな。やり過ぎるとまたあんな風になりそうな気がするんだけどな。

 とにかく今日飲んできた理由を話し、3日後に向けて俺達は動き出す。

 そのためにまずは罰であるブランと一緒に寝るとしよう。


「パパお休み~」

「はい、お休み」

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