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ちょっと疲れたので他の事をする

 正直に言おう。

 疲れた。

 何というか、慣れないことをして疲れた。

 見合いのセッティング?何をすれば2人の関係が良くなるのか分からないし、仲良くしようとして空回りした感じもするし、もうこれ俺が活躍できる場所ないんじゃね?


 と言う訳で今日は色々忘れて無心になって仕事をする。

 仕事内容はとある羊の毛刈りだ。

 家で育ったちょっと特殊で危険な羊の毛刈りで布団とか色々使える素材になるので結構使い勝手が良いのだ。

 モコモコになり過ぎたので毛刈りでたまに刈らないといけない。

 バリカンでひたすら毛を刈りながら精神を落ち着かせる。


「あの、こんな感じでいいですか?」

「あ~大丈夫大丈夫。細かい所は俺が直すから」

「かなり適当な返事ですけど本当にこれで大丈夫なんですよね??」

「ドラクゥルさんって疲れるとこうなるから、あまり気にしなくていいですよ。それに疲れすぎて敬語忘れてるし」


 アルカディアについてきた王子君とレオも一緒に毛刈りをしている。

 俺がアルカディアで仕事すると言ったらなんかついてきたので手伝わせている。

 色々質問しているがまぁ初めてする事だから色々確認したくなるのは仕方ない仕方ない。

 だがこいつら本当に数多いから手数が足りないんだよね……

 しかも人の好き嫌いが激しいから気に入らない奴には頭突きしてくるし、それ以前に逃げる。

 だから安易に他の子達に任せられないのが大変なんだよな……


 奴隷の子達でも毛刈りが出来るのは精々数匹、珍しく人懐っこい子達だけ。

 今レオと王子君が相手しているのもその人懐っこい子達だし、それ以外の子達はみんな俺の前に集まって整列する。

 単純に毛刈りの上手い下手もちゃんと見極めているから毛刈りの経験者かどうかもちゃんと知っている感じだ。

 多分レオの前に少し来ているのは毛刈りの経験があるからだと思う。

 普通の羊だったらどこにでもいるし、放牧している所も少なくないから1回くらいあるだろ。


「ちなみにこの羊達って何て名前なんですか?」

「ん?こいつ等の名前はドリーミーシープ。またの名前を夢魔羊」

「夢魔、ですか?」


 王子君の質問に答えると不思議そうに首を傾げる。

 多分効いた事がない種族名なんだろうが、見た目は完全に普通の羊だから見分け付かないだろう。


「寝ている相手に都合のいい夢を見せてそのまま相手の生命力を吸い取る厄介な羊だ。見た目はただの羊だし、普通の羊の中に紛れれば特定するのも難しいからな」

「で、でも普通に起きれば――」

「そう簡単に起きれるようにする訳ないだろ。都合のいい夢を見せ続けて相手は飯を食わず、水を飲まずだからどんどん衰弱していって最後はベッドの上で死ぬ。ま、ある意味幸せな眠りかも知れないけど」


 俺が淡々と言うと王子君はドリーミーシープを恐ろしい物を見るような視線を向けたが、それであっているから問題ない。


「危険な魔物なのに飼育されているんですか?」

「危険でランクが高い分こいつ等の毛がかなり良い素材になるんだよ。ちょっと加工して毛糸玉にした後セーターにしたり、ちょっと洗濯してそのまま布団にするのもよし。まぁ俺は羽毛派だから布団にしてないけど、結構肌触りは良いぞ。他にも加工次第ではボディタオルにも出来るし」


 レオの質問に答えるが結構この辺は好みで分かれるんだよね。

 ドリーミーシープの羊毛布団は少し重いが肌触りもいいし、その重みが良いと言う子供達もいる。

 羽毛に比べると使える事が多いのは羊毛の良い所。


「そんなに良い羊毛なんですか?」

「羊毛の質としては最高品質だな。あとで洗濯したやつあげるよ」

「洗濯?」

「羊毛も1回洗わないと泥とか草とか混じってるから洗濯しないと使えないの。だからこの羊毛持って洗濯しに行くぞ」


 バリカンで刈り終わった羊毛を持って俺達は洗濯しに行く。

 場所はコインランドリーの様な所で主に素材の洗濯をするために使っている大型洗濯機だ。

 これに羊毛を全部突っ込んで洗剤を入れて洗濯機を回す。


「とりあえずこれで良し。これで羊毛は綺麗になってその後加工して他の物を作る。こいつは洗濯から乾燥まで全自動だから後……2時間くらいすればいいかな」


 洗濯機を操作した後、俺達は野原でドリーミーシープを眺めながらお茶にする。


「何と言うか……色々規格外なのですね……」

「それがここでは普通ですから」


 レオと王子君が何か話しているが気にせずにまったりとする。

 洗濯が終わるまで暇だからぼ~っとしているとブランがやってきた。


「あれ?今日はレオちゃんとお茶会?」

「単なる仕事の休憩。ドリームシルクの毛刈りが終わったから洗濯中の休憩だ」

「そうなんだ。レオちゃん久しぶりー!」

「久しぶりー!元気してた?」

「元気元気!そっちの男の子は?」

「初めまして、私はロッゾ・カーディナルフレイムと申します」

「あ、ルージュお姉ちゃんの所王子様だ。初めまして、ブラン・ドラクゥルです」


 微笑ましい挨拶をする少年少女達。

 ブランの方も仕事が終わって休憩なんだろう。

 草原でのんびりしていると突然現れ、そして当然の様に他の天使達がテーブルとイスを用意しテーブルの上には菓子が置かれた。


「お茶のご用意が出来ました」

「ありがと。そんじゃ茶菓子を楽しみながら休憩するか」


 こうして休憩する俺達。

 そしてお約束のように王子君がうちの食材の良さに驚き、レオとブランが年相応の話をし、羊毛の洗濯が終わったので取り出してまた作業を行う。


「よし。あとはちょっとほぐして終わりだな」

「ほぐす、ですか?」

「流石にこのまんま密集している状態じゃ加工し辛いからちょっとほぐしてふわっとさせる。こんな感じで……ふわっとしたらオッケーだ」


 俺は1つの羊毛をほぐしてふわっとした所を王子君に見せてこんな感じと教える。


「フワフワだ」

「気持ち良さそう」

「実際に気持ちいいからな。他の羊毛と比べると保温性も高いし、肌触りもいい。羊毛の中では最高品質だからかなり良い。汚れたら洗えるけど、ペチャっとするからそのあともう1回今みたいにほぐす必要はあるけどな」

「ちなみにこれってどうするの?」

「7割を布団に加工してアビスブルーに送る。クレールから良い布団依頼されてたから毛刈りと丁度いいタイミングだったから毛刈りしに来たって感じ」

「残りはどうするんですか?」

「まだ相談中。高級なお土産として小物にして売るか、セーターにして売るか相談してるって聞いたな。まだ決定してないから何とも言えん」


 洗ってぺちゃんこになった羊毛をほぐしながらそんな雑談をする。

 このほぐす作業だけは奴隷の子達を呼んだりしてとにかくほぐし続ける。

 毛を刈るのは俺くらいにならないとできないが、羊毛をほぐすのは誰でもできる。


 とにかくほぐしまくってすでに夕方。

 レオと王子君はお帰りの時間になる。

 俺?俺はもうちょっとだけ作業してからグリーンシェルに戻るよ。


「本日は貴重な体験ありがとうございました」

「楽しかったです。ドラクゥルさん」

「それは何より。それよりほれ、これお土産な」


 そう言って持ってきたのは2人が刈った羊毛である。

 ちょっと失敗した所は少し手直しし、早速掛け布団に加工した物だ。


「これって……もしかして!」

「さっきお前達がもみほぐした羊毛。悪いけどこっちで布団にさせてもらった。品質は問題ないけど他の事に使いたかったら言ってくれ」

「いや!十分だよ!!話に聞いてたからこれで寝てみたかったんだ~」


 レオが嬉しそうに言うから多分成功だろう。

 王子君はちょっと戸惑い気味だったが受け取ってくれたのでよし。

 こうして2人は先に帰り、俺は少しだけ仕事をしてから寝るのだった。

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