ゲームスタート!
変な夢を見た~っと思いながら眼を開けてみると、何故か青空が広がっていた。
…………………………ここはどこ?
訳が分からずゆっくりと起きてみると、ここは俺の部屋ではなく、どこか……捨てられた牧場……でいいのだろうか?
俺が寝ていたのは伸び切っていた雑草の上だった様だし、見渡してみると遠くに薄気味悪い、明らかに長い時間誰も住んでいませんと言う雰囲気の家があった。
俺は慌てて自分の姿を確認してみると、最後に家で寝た下着姿ですらない。身に覚えのない服、もっと詳しく言うとどっかのRPGに出てくる村人の服とでも言うべき簡素な服装だった。それ以外目立つ装備品はなく、見た目に対して物入り過ぎじゃない?っと思えるポケ〇ンのバッグの様な物すらない。
あまりにも唐突な状況に俺は再び雑草のベッドに寝っ転がった。
「ど~なってんだこれ?え、まさかさっきの夢マジ?マジで異世界転移しちゃったの??」
ようやく状況が呑み込めてきた事により、逆に絶望感しか感じなかった。
右も左も分からないどころか、世界そのものが違うのだから言葉が通じるのかどうかすら分からない。当然サバイバル技術など全く知らず、身一つで異世界に放り出されたのだからもう何が何だか分からない。
このまま雑草の上で寝ていても仕方がないので、とりあえず薄気味悪い家の方に何かないか探してみるか……
雑草から起き上がってから5分ほど歩いてボロボロの家にたどり着いた。
一応「お邪魔しま~す」っと小さな声で言ってから靴を履いたまま入る。人の気配どころか生物の気配もなく、ホラー系のゲームだったら確実に閉じ込められて強制的に脱出ゲームでもさせられそうな雰囲気……でもないな。
家の中に家具は1つもなく、ただ時間が経った事による床のきしみや穴が空いているところ以外何の特徴もない。誰も住んでいなかったので当然ホコリなどが積もっているが……怪しい部分など一切ない。
カーテンの切れ端すらなく窓から入る日の光はとても眩しい。2階もあるようなので上がってみたが……ベッドも机も何もないのだ。ここまで何もないと何かが起こるとは考えられない。
まぁ逆に言うと手掛かりも一切ないと言う事であり、収穫はない。
次の少し遠くに馬房の様な物が見えたのでそこにも行ってみたが……干し草以外何もない。
な~んにもない状況でどうしろと?ゲームでもここまで何もないって事はないだろ……
あ、ゲームで思い出した。
あの訳の分からない何かが言うにはゲームの力があると言っていた。俺はてっきり何らかのゲームキャラ転生だと思っていたが……そんな様子は一切ない。
俺が遊んだ事のある狩りゲーのキャラでもないし、プレイした事のあるゲームキャラと言う訳でもない。普通にリアルな俺のままだ。
それに俺は一体どのジャンルのゲームの力を得たと言うのだろうか?それを確認する方法は……
なんて考えていると自然と頭の中で何が出来るのか分かった。
分かったのは良いけど……えぇ~これで世界を救えってマジ?
俺が持っていたゲームの力はシミュレーション。なんちゃら無双とかそういう感じだったらまだ戦力になったんだろうが……何で箱庭ゲーなんだよ!!何でアルカディアなんだよ!!
思いっ切り戦闘と関係ないじゃん!モンスターを育ててどうしろと!?元々ポケ〇ンとかデジ〇ンみたいに育てて戦わせる感じじゃないのに!!本当にただ育てるだけのゲームなんだよ!!
何て言いながらも俺は出来る事を確認する。もしかしたらこの世界に来た事で俺が育てたモンスターたちが俺の代わりに戦ってくれるかもしれないし、戦えなくてもサバイバル関連で活躍してくれるかもしれないしな。
そう思いながらゲームの力を使うと真っ暗な穴のようなものが現れ、そこを通るとゲームの世界に俺はやってきた。その光景は画面で見ていた物と全く変わらず、ある意味この異常事態の中で安心できる光景だ。
そんなゲームのシステムの1つ、牧場を確認すると……俺が育てたモンスターどこにもいない!!
それじゃ新しくモンスターを育てる事は出来ないかと思って卵部屋と言われるモンスターの卵がある場所に来たのだが……水槽の中に卵が1つもない。
って事は何か?またモンスターを始めから育てる事も出来ないって事か!!
このアルカディアでは育てるモンスターの数に関して上限は存在しない。
ゲームによるモンスターの育成は全て卵から始まる。何と言うか……クローンとか培養生物とかが入ってそうな、ガラスの入れ物の中に入っている様な感じ?そこから卵を排出させてありとあらゆる魔物の先祖とでも言うべき赤ん坊を育てる所から始まる。
そこから先は食べ物だとか、運動だとか、環境に合わせて進化していくので実は結構適当でも色んな種族に進化する。ただ自分の求める種族に進化させるのは大変だし、Aランク以上となると進化条件が厳しくなるのでそう上手くはいかない。
だからこそ俺は1度に様々な地域で育てる事で進化の仕方を探していた訳だし、それに合わせてモンスターも大量に育てていたはずなのだ。
なのに今じゃモンスターを1から育てる事も出来ず、育てたはずのモンスターたちもいない。
これ一体何のバグ?あのクソ適当な仕事したんじゃねぇの??
そして無事なのは……モンスターに食べさせるエサ関連と環境を管理する火山とか海とか関連だけだな。
全種族に食べさせることができる肉が木の実の様になる木、畑で育てた根菜に葉の物、海洋系モンスターに食べさせる魚の養殖場、あと1部のモンスター専用の果物の生る木などなど、そう言う食糧関係に関しては無事なようだ。
俺の手入れは必要みたいだけど。
とりあえず普段ゲームをしている様に各食材関連を樹木を管理して次に手持ちアイテムの確認。
手持ちアイテムは……全部無事か。と言っても箱庭ゲーのアイテムだからスコップだとか短い鎌とかそういう感じのアイテムしかない。あとは肥料や水関係も無事、他のだと……あ、マイルームとかも無事だった。
マイルームと言うか、セーブするための家。
この家にはアイテムに入りきらないアイテムを保管する為だったり、セーブアンドロードのためでしかない。一応家の中を自分好みに改造する事は出来るのだが、個人的にそんな事をするつもりはなかったので何もいじっていない。
だがここなら清潔なベッドもあるし、家具も電気ガス水道も通ってる。包丁とか調理器具も揃っているので拠点として使えるかも知れない。
そこだけは本当に助かったと思いながら牧場から元の場所に戻る。
ここが元の場所と言うのは正直嫌だが、これが今の現実なのだから仕方がない。
この世界?の地図もないのにどうすればいいのかさっぱり分からないが、とりあえず飯と家に関しては問題のは運が良かったと言うべきか。
俺はとりあえず人が居るところを求めてさ迷う事にした。