お手伝いを頼まれました
こうして裏では一応いいよと決まったお見合いに対してカーディナルフレイムの動きは異常と言えるほどに素早かった。
ルージュが帰って約束を取り付けたと伝えると同時に第三王子はすぐさま王様に報告、すぐに使者を送り正式にお見合いの話をしたいと使者を送り出した。
グリーンシャルもそれを了承し、前金と言うとあれだが、よろしくお願いしますとマグマスラッグの肥料を山のように持ってきたのと他に激レアな魔物の素材や宝石を大量に渡したそうだ。
王族同士のお見合いと言う物は随分大変そうだ。
何の予告もなく突然婚約したいですと言いだしたからこれくらいは普通、何だろうか?
とにかく素早過ぎるカーディナルフレイムの動きに疑問を持った俺はルージュに聞いてみた。
「ルージュ?まさかと思うが第三王子って嫌われてる?それとも政治利用のために何か考えてる?」
俺がついそう聞いてしまうとルージュは困った表情を浮かべながら答えてくれた。
「えっと……カーディナルフレイムでの婚姻は他の国と比べても非常に速いの。王族貴族なら5歳6歳で結婚して大人になったらすぐにその、夫婦になるのが多いくらいだし、だから子供が生まれるのも早いの。カーディナルフレイムはダンジョンに囲まれた国だからやっぱり子供の死亡率が高いの。事故とか、魔物に食べられたとか。病気にかかったけどカーディナルフレイムの医学じゃ治せない、他国に言って治療してもらうのに時間が掛かり過ぎるとかね。国として大人しいドラゴン達を利用してドクターヘリの真似事はしているけど、それでも対応が追い付いていないって現状で……」
「もっと短く」
「……ロッゾ君。カーディナルフレイムだとかなり行き遅れてるの。今年で16歳なんだけど婚約者どころか親しい女の子も居ない、せめて好みの女の子は?と聞いても思いつかない。そんな返事ばかりでみんな、特に王族達は困ってたの。私としては第一王子には既に子供がいるし、第二王子の妻も最近妊娠したと聞いたから大丈夫なんだけど……やっぱり第三王子だけ未婚って体裁が悪いらしいのよ。だから王族として唯一ロッゾ君が結婚したいと興味を持った女の子、レオちゃんと確実に結婚させたいと思っているのよね」
「……何となくだけど、分かった」
つまり結婚してない子供に早く結婚しろとカーディナルフレイムの王様達は言っている訳だ。
そしてあまり女の子に積極的ではないロッゾ君が興味を示したのがレオで、なら確実に結婚できるように全力でサポートしようと動き出した。と言う事なんだろう。
「それじゃグリーンシェルに持ってきたマグマスラッグとかは……」
「急に婚約の話をしてしまって申し訳ありません。これはお詫びの品です。ですから考えてみてくださいって物。裏では話が通っているとは言え礼儀は必要だから」
「よく分からんけど宝石も一緒に送ったって聞いたぞ」
「宝石に関してはあの辺で採れる宝石だから問題ないの。それもちゃんと一級品を選んで送ったはずだけど」
「レアな魔物の素材」
「それ私の鱗。アルカディアじゃないと加工できないお守り感覚の品よ。グリーンシャルでヴェルトの背で生える気の枝をお守りにしてるのと変わらない」
いや、ルージュの鱗って結構激レアじゃね?と言うか本当に渡してよかったの?
でも裏の裏と言うか、後ろめたい事がなかったと分かっただけマシか。
もう俺はただ傍観するだけで何もやる事がないだろうと思っていたら、2方向からまた頼まれた。
「「仲介人として訪問が終わるまで2人と共に行動して欲しい」」
カーディナルフレイムの巫女さんと一緒に来たかディナルフレイムの王様と、グリーンシャルの王様が同じタイミングでやってきた。
非公式の会談を行うのにアルカディアは非常に魅力的な場所であり、俺は政治に一切かかわろうとしないので色々都合がいいと言う。
だが本当にこうして運良く?2人の王が顔を合わせる事になったのは本当に運が良かったのだろうか?
「え~っと。2人ってレオとロッゾ王子の事でよろしいでしょうか?」
「そうだ。もちろん2人には護衛もメイドも共に行動するが、仕事柄2人の間を取り持つには少々荷が重い。故にドラクゥル殿が適任なのだ」
「ドラクゥル様。私からもお願いいたします。初めてお会いしていきなりこのような不作法申し訳ありませんが、私共はともにグリーンシェルに向かう事は出来ないのです。ですので何卒、平にご容赦願います」
初めて会う王様に片膝付かれて言われるのはプレッシャーだな……
俺全然偉くないよ。ただのルージュたちの父親だよ。
「顔を上げて下さい。私はただの農家であり、息子娘達が私に似ず育ってくれただけなのです。ですからグリーシェルの王の様に王として堂々としていてください」
「しかしルージュ様の御父上となれば神の父、それはあまりにも不敬かと」
「やめておけ。ドラクゥル殿は平穏を望んでいるのだ。我々から神の父として扱われるのは居心地が悪いらしい。それに神の言葉を聞くのであれば、神の意志を聞き、そのように振る舞うのが信仰と言う物だろう」
え、グリーンシェルの王様そんな風に考えてたの?
そりゃ色々あったかも知れないけどさ、友達だと思っていたのは俺だけか。
ちょっと寂しい……
「……それでよろしいでしょうか」
「それで構いません。それで俺は何をすればいいのでしょうか?」
2人と一緒に居ろと言われても正直何をすればいいのかよく分からない。
だから具体的な話を聞きたい。
「簡単に言うと2人の仲を取り持って欲しい。上手くいくようにな」
「でもレオ姫はまだ彼の事を見た事もないのでは?」
「すでに姿絵は見せている。ただ一言良いんじゃないだけだったが……どうせならうまくいって欲しいと願っている」
「ついこの間まで見定めると仰っていたのに?」
「ロッゾ王子の求婚から始まり他の貴族や他国の王子から見合いの話が出る様になったのだが、どれもあまりいいとは言えなくてな。現在見合いをしたいと言う中でもっともよいと思えるのがロッゾ王子なのだ」
「ロッゾはカーディナルフレイムのためにも植物に関する研究に関わりたいと考えており、いずれはカーディナルフレイムにも植物が育つ環境にして生きたいと願いを抱いている。親のひいき目かも知れないがロッゾは我が子の中で最も知識に長けている。どうか仲介役をこれからも続けてはもらえないだろうか」
正直ロッゾ君がどんな子なのか俺はよく知らない。
ルージュからもロッゾ君について色々聞いてはいるが直接会ったのはたった一度きり。それでロッゾ君の事を知っているつもりにはなれない。
友達の子供の結婚相手を見定めると言う他の人経験した事あるのかな?ないよね??って状況だが両方の両親から頼まれて断れるほど図太い心臓をしている訳でもない。
「……分かりました。でもそれでもレオが嫌だって言った時はレオの味方をさせていただきます。それでもよろしければ承諾いたします」
こうして俺はレオとロッゾ君の間を取り持つ事になったのだった。
やっぱ普通他人の結婚に首突っ込む事ないよね?




