息子と釣りをする
「で、突然こんな所に連れ出して何がしたいんだ。クラルテ」
「そりゃ息抜きだよ。たまにはこうしてぼんやりするのも良いよね」
本日の朝、今日も畑仕事をしようとしたら麦わら帽子に釣竿を2本担いだクラルテに会った。
そして有無を言わさずにこの釣り堀島に連れてこられた。
釣り堀島とは前に創ったネタ島の1つであり、釣りをするためだけに用意した島だ。
直径10メートルの円状の島、中心には海の家レベルMAXがぽつんと建っているだけで他には特にない。一応船着き場もあるがメニュー画面で来れるので形として一応あるだけ。
あえて言うなら釣りを楽しむためにベンチを所々に置いてあり、そこで釣り糸を垂らす事ができるくらいか。
そんな釣りをするためだけの島に俺はクラルテに連れてこられ、久々に釣り糸を垂らしていた。
突然すぎてよく分からなかったし、今日は畑仕事をしていないので出来れば帰りたい。
「なぁクラルテ。今日も畑の管理をしないといけないんだが?」
「一日くらいサボっても問題ないでしょ。それにメニュー画面からも出来たよね?」
「出来るけどさ……状態を確認するならやっぱり直接見た方が分かりやすいんだよ。メニュー画面だと伝わりにくい部分もあるし」
「ほんと親父って真面目だよな。たまにはこうしてぼ~っとしないと疲れるぞ」
「お前はぼ~っとしてる時間の方が長そうだけどな」
そんな事を言いながら俺達は釣り糸を垂らす。
ここは様々な海流がぶつかる地点であり、北からも南からも魚が来るので結構いい釣り場だ。
そんでもってクレールのおやつ地点でもある。おやつになる魚が大量に居るからな。もとの姿に戻っておやつを食べるのは美味しいらしい。
そして多分だがここを選んだ理由でもある。
ここなら必ずクレールが発見するだろうし、違ったとしても誰かが見つけてくれるからだろう。
とりあえず俺達は魚がかかるまでただひたすらに待つ。
朝早かったので欠伸をしながら魚を待ち続ける。
「親父。軽く聞いてもいいか?」
「なんだ」
「親父って結婚しないの?」
…………1番結婚しなさそうな息子からそんな事を聞かれるとは思ってもみなかった。
「結婚する予定はねぇよ」
「何で?向こうはともかくこっちでは結構モテてるんじゃないの?俺にはそう見える」
「それはお前の目が節穴だからだ。一体誰と良い雰囲気になった」
「ライトって言うブランの所の巫女さんと、レオって呼んでる女の子」
「………………お前俺の事バカにしてる?娘の友達と友達の娘に手を出す最低野郎に見えるのか?あぁん」
俺がわざとチンピラみたいな声を出していってみたがクラルテはウキを見たまま真剣な顔で言う。
「友達の娘とかそういう所は置いておいてさ、悪い子ではないじゃん。こっちの事情も分かってくれてるし、お偉いさんだから結婚すると色々特典も付いて来るのに?」
「そこまで損得勘定だけで結婚出来るかよ。それにこの世界から見たら俺は異世界人だぞ。いつか帰る身なのに異世界で身を固める事なんて出来ねぇよ」
「あ、帰る気はあったんだ。まずそこにビビった」
「なんでビビるんだよ。家に帰るのは普通だろ」
「だってこっちの世界で生き生きしてるじゃん。向こうに居た時は何だか疲れた顔してたし、こっちに住む方が良くない?」
………………
まぁ確かに。こっちの世界の方が何かと都合がいいのは認める。
向こうの世界では俺はただの凡人で、何か自信をもって行える事はあるかと聞かれるとぶっちゃけない。
都合がいいと言うのは向こうでは認められなかった俺が認められていると言う点もあるし、好きな事をして生きていけるだけでこの世界を選びたいと思う事もある。
本当に腹の中のもの全てをぶちまけると、向こうに帰るメリットよりもこの世界に残る方がよっぽどメリットがある。
でも……
「でもな、帰らないといけねぇんだよ」
「何で?」
「俺の親もまだ生きてるんだよ。しかも母ちゃんは元々心配性だし、向こうでどれくらい時間が経っているのか、それとも全く問題がないのかも分からないからな。それを確かめるって意味でも一度家に帰らないといけない。お前らが俺の事を慕ってくれている様に、俺も俺の親の事を慕ってるんだよ。だからこれだけは損得勘定で動くつもりはない。俺は必ず帰る」
「…………そっか。なるほど。そりゃ帰らないとダメだな」
クラルテが呟くように言うとまたしばらく沈黙が続いた。
その沈黙の間にお互いに魚を2匹ずつ釣れたのでそれを使って朝食を作る。
と言っても超簡単に米とみそ汁、さっき釣った魚を塩振って焼いただけの簡単朝食。
魚は隠し包丁を入れて焼いただけ、みそ汁の具は豆腐と切ったネギ、あと色合いの調整で卵焼きを用意した。
海の家にも食材はある程度揃っている。
まぁ滅多に使わない所だから基本的な食材しかないけど。
そんな朝食をただ黙々と食べた後、また釣りに戻る。
ぶっちゃけそれ以外やる事がない島だ。釣り糸を垂らしてぼんやりするしかない。
今度はどんな魚が釣れるかひたすらに待ち続ける。
時々あくびをしながらぼ~っとしていると時々釣り糸が引っ張られる。
上手く釣れたり逃げられたりを繰り返しながら俺はなんだかんだで3時間で2匹釣れた。
クラルテの方は俺より釣りがうまいので引きが当たったら確実に釣り上げているので3時間で8匹も釣り上げた。
ポイントは悪くないはずなので純粋に釣りがうまいかどうかの差だろう。実際何度も逃げられてるし。
昼になったらまた釣った魚を料理して飯にする。
クラルテが結構釣ったので刺身やつみれにしたり色々調理できるので助かる。
味噌汁につみれが入っているとちょっとした贅沢のように感じるのは何でだろう。
「親父って料理好きだよな」
「好きっていうよりは自然と覚えたと言った方が正しいけどな。こうして料理した物の方がお前たちの成長につながりやすいし、食材そのままボリボリ食わせるのもなんか嫌でな。それで覚えた」
「ふ~ん。俺も料理覚えられるかね?」
「覚えようと思えば覚えられるだろ。お前ら全員俺より賢くて、真面目なんだから」
「俺に真面目って言葉を使うのは親父だけだろうな」
いや、きっと他のみんなも思っていると思うぞ。
自分の時間を作るために真面目に働いている事。
意外と誰かの下につくと自分の時間と言うものを持つのが難しくなるものだ。
でもクラルテはこうして俺と釣りをする時間をきちんと作ってきてからこうしているわけだろうし、そのあたりは全員認めてると思う。
昼飯を食った後は軽く昼寝をしてから再び釣りで暇つぶしでもしようかと思っているとお迎えが来た。
勢いよく泳いでこちらに来るのはクレール。
この島よりも巨大なシャチが思いっきりこっちに向かって泳いでくるのはさすがに迫力が違う。
島にぶつからないように止まると思っていたが、クレールは大ジャンプをして島を飛び越えたかと思うとようやく止まった。
その水しぶきのせいでずぶ濡れだが、これは勝手に釣りをしていた罰として受け取ろう。
『お父様。さすがにそろそろ帰ってきてください』
「分かった。それじゃクラルテ、帰るぞ」
「へ~い」
『待ちなさい。あなたの事は乗せませんよ』
クレールはクラルテの事を乗せるつもりはなかったらしく、俺を乗せるとすぐに泳ぎだしてしまった。
ありゃ?っと思ったがクラルテは少し苦笑した後元の姿に戻ってクレールの後を追う。
クラルテの元の姿は日本でおなじみの龍の姿に近い。
翼はなく、緑色の鱗に覆われた蛇のようにひょろ長く、手足が短い。
そんなクラルテは空を泳ぐように蛇行しながら飛ぶ。
そして俺はやっぱり思う。
風の吹くままに自由にやっているクラルテが1番らしいなっと。
種族 カネルドドラゴン
名前 クラルテ・ドラクゥル
ランク SSS
細い緑色の鱗に覆われた世界に6体しかいないSSSランクモンスターの1体。司る属性は風、世界を飛び回る事で世界に恵みの雨をもたらす。
束縛されることを嫌い、自由に世界を飛び続ける。彼を怒らせると暴風と共に現れすべてを吹き飛ばす。
補足
クラルテは非常にチャラくて周りから見るとどうしても浮いた存在になってしまう事が多い。
特にギャンブルなどの遊びばかりしているので真面目な性格の兄弟達とよく口論になっていた。
しかしSSSランクの中でムードメーカーとしてふるまっているので、本当に嫌われているわけではない。




