会場準備中
その日から俺はここならいいだろうと思ったとある島に会議場の建設を始めた。
もちろんゲーム仕様なので放っておいても自然と完成するが、建築などを得意とする子供達が多く進化しているので、その作業スピードは以前吸血鬼達の家を建てた時よりも早い。
それに物を作る特性を持った子供達にとってこう言った建設系はストレス発散にもなる。
こう言っては何だが、アルカディアは既に完成された世界だ。だから基本的に新しい家などを作る必要がない。
当然アルカディアを始めた頃はあっちで畑作り、こっちで建設など色々と作業があったが今では新しい住人がやって来るまでそう言った仕事はない。
まぁ最近は新しい住人が増えたりしているのでちょいちょい仕事はあるが、それらが一切ないと物を作ると言う特性を持ったモンスター達にとってストレスになってしまうのだ。
「ところで父ちゃん。本当にここに建てるのか?」
ヘルメット被って雰囲気だけ現場監督の様にぼさっと見ていると巨人の子供が俺に聞いてきた。
まぁ子供と言っても5メートルはあるけど。
「おう。ここなら外から入ってきた人間達がそう簡単にアルカディアを探索するなんて事は出来ないだろ」
「それは分かるけど……驚くだろうな~姉ちゃん達」
そう言ってから肩に担いだ資材を指定された位置に持って行く。
まぁここは実験島だからな。そんなところに各国の国王を集結させる会議場を建設させるとは思っていなかったかもな。
実験島とは俺が勝手にそう言っているだけの誰も住めないただの小島。
俺がアルカディアを始めたばかりの頃に試しに作ってみた名のない島の1つでしかない。
本当に始めたばかりの頃はこのアルカディアの大陸から作ろうとしていた。多分本当に箱庭ゲームが得意な人はその辺りも完璧に作れていたのかも知れないが、俺にはそんな才能はなかった。
極端な例になるが南極や北極に当たる場所に南国は作れない、赤道付近に極寒の地は作れない、みたいな感じでリアリティがある。
そんな制限から本当に0から、大陸から作るのは難しいので俺は既に用意されていた地球の大陸をそのまんまパクるやり方でゲームをスタートさせていた。
あ、ちなみに俺の家だけは自分で作った太平洋のほぼ真ん中にある小さな島を作って住んでいる。流石に小さな島ぐらいは許されたようで、経度緯度に関してはほぼ日本と変わらない座標にしているので俺にとっては異常に住みやすかったりする。
そんな我が家兼我が島を作る際に実験してそのまんまにしていたのが実験島と言う訳である。
まぁほとんどネタばっかりで住めるけどかなり小さい、住めないぐらい個性的という島ばっかりでろくに使えないけどね。
そんなネタで作った島の1つに今回の会議場を建設中。周りは海で何の準備もしていない人がどれだけ泳ごうが決して他の大陸にたどり着けないくらい離れているのでアルカディアにこっそり住むなんて出来ない。
まぁメニュー画面を操作すればどこにいるのか分かるけどね。逆に言うと調べないと分からないとも言えるけど。
でも俺は家族の安全を最優先しなければならない。
それが親と言う物だと思う。
過保護と言われても仕方ない気がするが。
とにかくそんな感じで会議場の建設を続けていた。
資材はアルカディア内の物を使っているので全てタダ。とりあえず立派なのを作って各国の王達が来ても問題ない物を作ればいいだけだ。
こうして俺達は建築を続けていく。
――
建築を始めて1週間後、会議場は完成した。
最後はブラン達に中を確認してもらい、部屋の数や足りないものはないか確認してもらったが問題はないと言う結果となった。
唯一問題があるとすれば建設した場所だろうか。
実験島に作ると言ったが、ここに作るとは思ってなかったらしい。
「パパ……一応各国の国王たちが揃うから建物だけじゃなくて外観もいい感じが良かったんだけど……」
「どうせ数時間しかいない連中だろ?これでも良くない?」
「その数時間を何日も繰り返すの。もう」
「しかし防衛という意味ではこれ以上ない配置とも言える。ブランの言う通り国賓を迎える場所らしくないのは否めないが」
ブランは頬を膨らませて可愛く怒り、ルージュは俺の事をちょっとだけフォローしてくれた。
いやこれフォローになってるのか?
まぁいろんな国の王様を招く場所に相応しくないのは最初から分かっている。でもそれ以上にアルカディアの防衛の方が大事だと思ったんだよ。
「だって今度会議に来る人達ってここの事全く知らない人達ばっかりだろ?それならこれぐらい防衛しても良いじゃん」
「防衛って言った。ハッキリ言った」
「だってこの会議場にあの銃撃バカが来るかもしれないじゃん。もしそうなったらこの場で戦う事になるかも知れないだろ」
「その辺は大丈夫だよ……各国の国王が居る中でそんな事をしたら世界に喧嘩を売るのと同じ。それにライトの話しによると来るのは正義君らしいから大人しくしていると思うよ」
「それならいいんだが……抜け出して探索しようとする人とか居ない?」
「居ないって……みんな王様達のお世話で忙しいからそういう事をする暇はないよ。あとコンロとかの設備に関してはアビスブルーからの技術提供って事にしておいていい?」
「俺は良いぞ。その辺はクレール達と相談してくれ」
別にアルカディアの技術を外に向かって公開する訳じゃないし、その辺はどうでもいいや。
「それよりも中は大丈夫なんだよな」
「うん。中に関しては大丈夫。これから家具を入れるんだろうけどそっちも多分大丈夫でしょ」
「そっちも依頼してある。アビスブルーの職人たちに頼んであるから会議前には届く様になってる。デザインもこの会場に合うよう頼んでおいたから大丈夫だろ」
「それなら安心だね」
こうして会場の準備は着々と進んでいく。
そしてブラン達が買ってくれた大量の食材は厨房に運び、食料も問題ない。
さて、あとは国王たちが来るのを待つだけか。




