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潔癖のフェアリー

「ティターニア様がお会いになられるそうです」


 ライトフェアリーの国会議事堂もどきにしつこく訪問し続けるうちにようやくティターニアに会えることになった。

 会えるよう訪問すること1週間。ようやく向こうが折れた様だ。

 多分いるす使っているだろうな~という予感はしていたが、1週間かかったのは想定外だ。


「それで今すぐか?」

「お会いするのであれば今すぐであることが条件です」


 なるほど。

 どうせ今日も追い返されると思って誰も連れてこなかった。だから1人の時に俺の事を丸め込もうとでも思ったのだろう。

 俺は内心でため息をつきながらなめられているな、と感じながらも俺はその誘いに乗ることにした。


「いいよ。その代わりちゃんと話させてもらうからな」


 そう言って俺は国会議事堂もどきの奥に向かって歩く。

 議事堂の奥はフェアリー向けに作られているのかかなり短い。

 そして気になったことを1つ聞く。


「オベイロンはいないのか」

「オベイロン様は現在不在です」


 短くそれだけ答える。

 オベイロンとティターニアの奴、熟年離婚でもしたか?もともと特別仲がいいと言う感じではなかったし、オベイロンの片思いと言う方がしっくりくる。

 元々オベイロンがめちゃくちゃ押して押して押し切って、それでくっついたような物だからどっかでほつれてしまったのは仕方がない部分もあるのかもしれないが。

 そう思いながら進んでいくと会議場と思われる場所に着いた。

 だがフェアリーサイズだから結構小さい。人間も入れるが……天井がかなりギリギリだ。


「よくいらっしゃいました。お久しぶりです、お父様」


 ティターニアは女王様っぽい雰囲気を出しているが、クレールとかルージュとかで慣れているので特に何も思わない。

 さらに大人の親指ぐらいの大きさしかないので非常に小さいのだ。小さい存在がえばっていてもちょっとかわいいぐらいにしか思えない。

 他のフェアリーたちもおり、それぞれの属性のフェアリーたちも俺に注目している。


「ああ、久しぶりだな。元気か?」

「はい。今は人間の子供達と一緒に暮らしています。それがこの国なのですがお父様から見てこの国はどう思われますか?」

「そうだな……いい国だと思う。自然と人間が住む場所がちょうどよく調和しているように感じる」

「そう言っていただけると嬉しく思います」


 本当にうれしそうに俺の言葉を聞く。

 ちゃんと人間向けのカップがあるが、中身は紅茶。

 ただし普通の紅茶ではなくかなり甘い感じの紅茶だ。紅茶そのものが甘いのに、フェアリーが作った花の蜜が入っているのでさらに甘い。

 俺にはちょっとくどいぐらい甘いな……

 一口だけ飲んでカップを置いてから俺は聞く。


「クラルテの所にあった闇カジノ。お前達のたくらみだったらしいな」


 俺がそう言うとティターニア以外の妖精たちは動揺したらしく、ほんの一瞬だが震えた。

 しかしティターニアは平然と紅茶を飲みながら言う。


「ええ。あれは私達が運営していたカジノです。それが何か?」

「別にカジノそのものを否定するわけじゃないが、あの悪趣味なゲームはやめておいた方がいい。商売で金持ちを狙うのは普通かもしれないが、魔物を使ったゲームだけでも手を引いておけ」

「それについては考えておりますが、そうなると人間同士の殺し合いなんてどうでしょうか?他の国で闘技場を作り、運営しているそうですから少し真似てみたいと考えています」


 ………………この2000年で結構精神的に変わっちまったみたいだな。

 ティターニアは大の子供好きで今のような過激な発言はしなかった。それなのにこんな発言をするという事は2000年間で価値観が変わるような出来事があったんだろう。

 当然と言ってしまえばそれまでだが、悪い方向に変わっていないと良いのだが。


「なぜそんなことで金を稼ごうと思う。今この国にいる人間たちだって働けるだろ。農業や樹木の医者、植物系の知識を持つ奴はくいっぱぐれることはまずないと思う。何ならグリーンシェルとかはどうだ?あそこはヴェルトの事を慕ってるから危険は少ないぞ」

「いいえ。我が子達を外の人間に触れさせることはしたくありません。外の世界は汚れ切っています」

「汚れって具体的になんだよ。この国にない酒か?それともタバコか?」

「心の汚さです」


 ………………へぇ。


「外の人間はみな汚い。平然と罪を犯し、当たり前のように生きている。そのような存在はこの国には必要ありません。そしてそれはこの国の子供達でも外を知れば汚れて帰ってくる。その汚れは他の子供達にも付着し、いつかは大きく、決して落とすことのできない汚れになるでしょう。そうならないための国、ライトフェアリーなのです」


 これはこれは。

 ずいぶんと心がひん曲がる事があったようだ。

 ここまで重症となると、俺の言葉でもダメかもな。


「なるほど。子供達が悪い事を覚えないようにこの国に閉じ込めておくってことか」

「はい。だからこの国の子供達は非常にきれいでしょう」

「でもならなんで外から来た人間を1部受け入れてる?完全にこの国の人間である方が自然だと感じるが」

「これは仕方がない事です。たまに外の血を混ぜないと危険ですから」


 それは多分血の濃さか?

 仮に本当にこの国にいる人間たちが全員血がつながっているとすれば、親せきと結婚したような状況に近くなってしまうのかもしれない。それを避けるためにたまに移民の受け入れを行っているという事か。


「でもせめて勉強ぐらいもうちょっと教えてやったら?農薬使ったりするのも計算が必要だろ?」

「そのあたりは私たちフェアリーの加護で十分に大地に恵みをもたらすことが出来ます」

「それだとお前たちに負担が大きすぎないか?」

「問題ありません。あの子たちが元気に育ってくれるのであれば」

「……そうか」


 俺は立ち上がる。

 これ以上話をしても聞いてはくれなそうな雰囲気を感じたからだ。

 今のティターニアは考え方が凝り固まっている。そんな状態で間違えていると言っても直すとは思えない。そうなるとその凝り固まった状態を解きほぐしてくれる誰かを見つけるところから始めるべきだろう。

 まぁおおよそはついてるが。


「お帰りですか」

「ああ。だが忠告しておく。今後裏カジノで似たようなことをするのは止めろ。素直に普通に稼ぎな」

「あら、カジノで稼ぐのも手段の1つでしかないでしょう」

「それでもだ。せめて悪趣味なゲームは止めろ、クラルテみたいに普通のゲームにしておくんだな」


 そう言ってから俺は会議室を出た。

 なんでティターニアはあんな考え方になってしまったんだろうと思いながら、帰ろうとすると1体のフェアリーが慌てたようにこちらに向かって飛んでくる。


「あ!父ちゃん久しぶり!!その様子だとティターニアとはちゃんと話できなかったみたいだね」


 そう言ったのはオベイロンだった。

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