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閑話 他の転移者達

 ホワイトフェザーからとある国に帰る馬車の中に3人の人物がいた。

 その馬車の周りには多くの騎士が存在し、夜に国に帰ると言うだけでもその規模の大きさは察する事が出来るだろう。


 馬車の中にいるのは絵本に書かれているようなふくよかな王様。冠に宝石のあしらわれた杖、赤いマントと本当に絵本に描かれる太った王様が出てきたような容姿だ。

 もう1人はその王の孫にあたる姫。こちらも物語に現れる可愛らしいお姫様と言うにふさわしい可憐な姿をしている。真っ白なドレスに頭には小さなティアラ、熱心な白夜教の信者なのか胸には白夜教の白く光る聖印を身に着けている。

 年は見た目通りの12歳でまだまだ姫として成長中という感じだ。


 そして最後にそのお姫様の隣に座るのは男の子。

 お姫様と同じ12歳の少年なのだがどういう訳か大人よりも強く、魔法の腕も剣の腕も強い。まるでどこかの英雄が少年の姿になってしまったかのような感覚もあるが、言動や行動はまさに子供なので余計に周囲を混乱させた。

 その男の子に向かって王様は言う。


「あれがこの世界の神だ。君から見てどう思う?勇者殿」


 勇者と呼ばれた少年は不思議そうに言う。


「あれってドラゴンですよね?神様って人間の姿をしてるんじゃないの??」


 子供らしい疑問に王様は笑って答える。


「それは問題ない。あれは神が我々に偉大さを教えるためにあえてあの姿をしているだけの事、本来は幼い少女の姿をしていると聞く。あれはあくまでも神の威厳を見せるための仮の姿、少女の姿では神であっても威厳を感じさせるには不向きと言う事なのだろう」

「へ~。でも神様なら女の子の形でも大丈夫な気がするけどな~」

「勇者様はそんなに神様の人の姿に興味があるのですか?ちょっと嫉妬してしまいます……」

「え!?僕浮気なんてしてないよマリーちゃん!!」


 嫉妬と言う言葉は知らないが、不注意な発言をしたと感じたようで少年は少女に謝る。王は2人の関係が良好な物だと確信し、満足げに頷く。

 そして王様は真剣な表情をして少年に向かって言った。


「では勇者殿。彼の闇の魔王、ノワールの討伐を願いたい」


 ――


 とある国にて1人の大男がとある神殿に来ていた。

 その男は見るからに軍人と言う姿であり、筋肉が盛り上がっている。顔も精悍せいかんで戦場を駆け抜けてきた実績を感じさせる。

 だがそんな彼を連れてきた男はそれを上回る。

 男の身長は3メートルを超し、筋肉も戦士としての顔もここに来たばかりの彼とは比べ物にならない。


 男は渋々と言う感じで片膝をつける。彼はこの地で大量の魔物を倒した冒険者としてこの謁見の間に連れてこられた。

 こういった堅苦しい雰囲気は嫌いなので前の職場でも常に現場を仕切り、口だけ上司と戦ってきた。

 その上司のような存在に会うのは釈然としないが、仕方がないのでこの場にいる。


 第一ここが謁見の間と言うのもおかしな話だ。

 ここの正面には玉座などなく、ただの水族館にある巨大なガラスが張っているだけであとは何もない。奇妙な場所を謁見に選んだものだと心の中で嘲笑する。


「神が参られる。決して面を上げるな」


 彼は男にそう言われた。

 彼は神など信じていないし、居るとも思っていない。

 だが、男がそう言った瞬間すさまじい冷や汗があふれだした。自然と体が震え、さっきまでの神などいないと言う考えがあっという間に吹き飛んだ。

 神の威光と言うよりは本能的に敵対してはならないと察した感じではあるが、ここで顔をあげれば殺されてしまうと本気で思った。


『よくぞ参った。小さき者』


 男が神と言ったものの声だろうか。その声は低く、体全身に響く。それだけで彼はがちがちと歯が鳴ってしまう。

 神はそれに気にすることなく一方的言う。


『小さき者の働き、見事であった。だがそれにより我が民も傷ついた。二度とするな』


 そう言った後威圧感はどこかに消えた。

 彼は気配が消えると同時に両腕を地面につけて汗をぼたぼたと流しながら荒い呼吸を落ち着かせようとする。

 隣で見ていた男は彼に言う。


「分かったか。あれが神だ」

「……ああ。ありゃ確かに神と呼ぶにふさわしいんだろうよ」


 あれは確かに彼に向かって二度とするなと言った。

 彼の戦法により被害は最小限に収まったと言うべきではあるが、同時に味方への被害も出ていたのでそれをやめさせるためにわざと謁見させたのだろうと察する。

 あれに逆らってはならないと体に叩き込ませるために。


「……クッソ」


 誰にも聞こえないような声で彼は悪態をついた。

 この力があれば自分は最強だと信じていたのにあっさりと打ち砕かれたことに、苛立ちを隠せなかった。


 ――


「すまないが次のダンジョンの捜査をしてもらいたい。今回は第5層に向かった冒険者たちが行方不明らしい」

「分かりました。いつも通りにしていいんですね」

「ああ。それにしても……仕事熱心だな。もう少し遊んだらどうだ」


 グリーンシェルの冒険者ギルドに2人の人物が話していた。


 片方はグリーンシェル内のギルド長、少しずつ頭には白髪が増え始めているがその肉体はまだまだ全盛期と言われても信じられる肉体を持っていた。


 もう片方は最近冒険者になった13歳の少女で、採取、探索を中心に行っている。

 彼女はかなり優秀でこのギルドにやってきてから1か月しかたたないのに依頼完了率は100%だ。この数字は驚異的であり、たとえ自分に合ったランクの依頼だったとしても期限内に薬草などを採取できなかったり、魔物に襲われて失敗する事があるからだ。

 彼女の場合そう言ったトラブルなどがあったとしても期限を守り、確実に依頼をこなすのでかなり重宝されている。

 自分には手に余る依頼は絶対に断ると言うしっかりとした部分も大きい。


 そんな彼女は年ごろなのに一切遊びの様な物にかかわらないのでギルド長は少しぐらいどうだと聞く。


「いえ、今はお金を稼ぐ事と信頼を得る事が重要ですから。今はそんな時間ありません」

「しかし……お前さんと同じぐらいの娘達はホワイトフェザーの祭りに行くと言ってたぞ。息抜きも重要な事だぞ」

「自己管理はちゃんとできてますよ。それよりも人命救助の方が大切です」

「それも分かるんだがな……」


 グリーンシェルにはダンジョンと呼ばれる不思議な場所が多い。それは6大大国の中で最大の数を有している。ダンジョンからとれる魔物の素材や魔石と呼ばれる石を見つけて持ち帰るのが目的だ。

 そのため魔石と魔物の素材を主な産業として栄えているのがこのグリーンシェルである。

 その分他の国よりも冒険者が多く、死亡率も高いが。


 今回彼女に頼んだのも、とあるダンジョン内で行方不明になった冒険者たちの捜索と保護。死んでいた場合は冒険者カードを回収してくると言う仕事だ。

 もちろん彼女も最初の頃は人の死体と言う物に吐き気を覚えていたが、今ではある程度慣れている。


「出来るだけ死体は見たくないので早速行ってきます」

「分かった。それとこの仕事が終わったらしばらく休みにする。1か月ずっと働いているんなんておかしいぞ」

「……分かりました」


 しぶしぶと言う感じで彼女はその話を承諾した。


 ――


「お疲れー」

「あ、お疲れ様です」


 とある闘技場で2人の女性が話している。

 先輩の女性が今戦い終わったばかりの新人に水を投げて渡す。投げ渡された新人はうまくキャッチした。


「おごりだからありがたく飲みな」

「ありがとうございます」


 先輩女性が新人である女性にさっぱりとした形で言う。

 新人は戦い終わったばかりでまだ肩で息をしていたが、ちびちびともらった水を飲む。

 先輩はさっきの感想を言う。


「さっきの試合はなかなか良かったよ。お互い新人同士でまだまだ遠慮が見え隠れしていたが、あんたの実力は確かだから人気は出るだろうが……もうチョイ学ばないとダメだね」

「どのあたりを学べばいいんですか?」

「いいかい。私達がやっている事は剣闘士と変わらない、言ってしまえば女同士で本気で殴りあう見世物なのさ。だから観客の連中が楽しめる技ってものも覚えないといけない。それは向こうにも同じことが言えるんだけどね」

「……なるほど」

「ただ強くて一撃で勝っちまったら観客はブーイングの嵐を起こすだろうよ。そう言ったことが起きないように演技力も磨けって事さ」

「そうですね。でもやっぱり男性ばっかりなんですね、観客って」


 この闘技場では女性しか出てこないが観客席には男女問わず集まってはいるが圧倒的に男性の方が多い。

 それに関して先輩は呆れながら言う。


「あいつら全員変態ばかりだからね。女同士が殴り合って痣を作ったり、フラフラになるのを楽しんでる。まだ戦っている間に衣装がずれて胸とか尻とか見れるのを期待してる連中の方が健全だよ」


 そのあたりの感覚は新人にはまだよく分からないが、とにかく女同士の戦いを見せると言う事に何らかの障害が生まれるのは仕方がないと新人は思った。


「さてと、次は私の番だね。ちゃんと見て学ぶんだよ」

「はい!」


 そして先輩は闘技場に向かって歩いて行った。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんだ主人公を呼んだ存在はわざわざモンスターを引き離したのかな? 物語の為のご都合展開なのは分かるけど、一緒にしてた方が手間にならないし合理的だと思う。無駄なことしてむしろ足を引っ張りかねな…
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