ライトフェアリーに到着
大変遅れてしまい申し訳ありません。
仕事の方が忙しくなりそうなのでしばらく更新にブレが出来ると思います。
最低1週間に1話は投稿しますのでお待ちください。
列車から降りた俺達はライトフェアリーでホテルを探しながら軽く街の様子を見て回っていた。
きれいな町並みで街路樹が植えられていたり、公園には必ず木々や花が植えられていたりと上手く人が住む環境と自然のバランスが取れているように感じる。
そしてすれ違う人たちはやはり子供達が非常に多い。そして子供や赤ん坊を抱きかかえて散歩する非常に若い夫婦の姿もある。
「やっぱ若い人達がかなり多いな」
「聞いていた通りですね。若くないと言っても20代後半ぐらいの方しか見えませんし、30代ぐらいの方は……多分抱えているのはお孫さんではないでしょうか?」
ライトさんが予想して言う視線の先には確かに自分たちの子供、と言っても違和感のない夫婦がもっと若い夫婦と会話しながら歩いている。
とりあえず日本では見られない光景だな。20代の子連れって相当レアだろ。
「ぱっと見は平和でいい国に見えるけどね。子供もいっぱい居て、特に悪い感じはしないと思うんだけどな~」
「それならそれでいいんだよ。変な事してなければ」
アオイがそう言ったので俺は特に否定したりしない。
子供が元気に安心に遊べる場所があるのはいい事なのだから。
あまり観光客が来ることを想定していないのか、ホテルを探すのにそれなりに時間がかかったがどうにか見つかった。
ホテルを探し回っている間に気が付いたが、どうやらこの国は綺麗な四角で出来ている。
分かりやすく言うと京都だ。大きく区切られた四角が連続している。そこに家が建っていたり、公園があったりする。
そして入ったホテルは2階建てで、あまり大きな感じはしなかったが全員泊まれるだろうか?
「珍しいですね。ライトフェアリーに観光する方は」
「ここは宿屋だろ?そんな外国からの観光客は珍しいのか?」
「珍しいですよ~。多くは国内のお客さんばっかりですからね、ちょっと遠くからどこかの公園で遊びに来たって家族が多いですから」
そんな話をしてから俺達はそれぞれの部屋に泊まる。部屋割りはネグルと同じにしておいた。
それから細かい事だがこの宿には個室が少なく、家族連れか団体連れを想定した部屋ばかりになっている。
その日1泊した後、俺達はこの国と礼の裏カジノについて関係のありそうな人を探してみる。
「フェアリー様がどこにいるか?あの人達は自由にしているから必ずここに居るって場所は知らないな」
「フェアリー様は気まぐれだからね。こっちから探しているとむしろ逃げちゃうかも」
「フェアリー様は子供が好きだから保育園にはいるんじゃない?」
「確実にいるフェアリー様はオベイロン様とティターニア様だけだと思うよ。この国の中心にある公共施設の中にいるよ」
色々町の人に聞いてみると意外とあっさりと返事が返ってきた。
なんだか警戒心が低いと言うか、素直というか、見ず知らずの人に声をかけられたら普通は警戒すると思う。
なんだか違和感を覚える。素直すぎる住人が奇妙に感じるのは何でだろう?
ある程度情報を集めた後、ノワールたちに合流して情報交換をする。
「そうか。そちらもあまり変わらないか」
「フェアリーが気まぐれなのは知ってるが、この国の住人のほとんどが幼い。敬語という単語すら知らなかった」
「え、マジで?そんなことあんの??」
「実際にそうだったとしか言いようがない。どうやらこの国では小中学校までは存在するようだが、高校らしき教育施設は一切ない。それにより幼いままなのだろう」
「高校がないってだけでなんで幼いってことになるんだ?」
それがいったいどういう意味なのかさっぱり分からない。
その説明はクレールがしてくれた。
「高等教育機関とは子供に論理的な説明ができるように教育するための場でもあります。他にも先輩後輩と言った上下関係の学習、それにより自然と敬語なども覚えていきます。おそらくこの国に人間が敬語を使用しないと言うよりは、本当に知らないと言う方が正しいのでしょう」
「え?でもホテルの人とかは――」
「彼女は他国からの移住者だそうだ幼いころにこの国に来たが、敬語などは両親から教わった、前に住んでいたところで覚えた、と聞いている」
「え。てことは本当にこの国で敬語とかを使えるのは……」
「移住してきた方々だけですわ。それ以前に商売をしている方が移住してきた方々ばかり、私達のような数少ない観光客から少しずつお金を稼いでいるようですわ」
「ん?でも普通にこの国の人達もホテルに泊まったりしてるんだから金稼いでるだろ?」
「この国は社会主義に近い。客から稼いでいるというよりは、国からの寄付で賄っていると言っていい」
社会主義。
学校で大まかに習ったが詳しく覚えていない。
「え~っと。社会主義って国が作れって言った物を作って一般家庭に流通させる、みたいな感じだっけ?」
「おおまかに言えばそんな感じだ。だがこの国の場合その表現すらあっているのかどうか分からないがな」
「何でだよ?国だろうが何だろうが稼がないと維持は出来ないだろ?そのために国家予算とはそう言う言葉があるんだろ」
「だがこの国の住人に仕事は何をしている、と聞くと木々や農業に関する仕事をしていると全員が答えた」
「ほら、働いてるんじゃん。何も変な所は――」
「しかしその働いていると言うのは木々が病気にかかっていないかどうかを調べる仕事ばかり。他国に向けた仕事は一切していないようです」
「他国に向けたって言っても全く貿易をしていない訳じゃないだろ?朝食べた肉や魚だって、完全に国内で作られた物とは思えないじゃん。流石にこの国で全て必要な物を作る事ができるなんて無理だろ」
「ああ。そこまで優れた事をしている訳ではない。だが属国と言われている国々から無理矢理徴収しているとしたら?」
ノワールがそんな事を言った。
いやいや。そんな事無理だろ。
いくら属国で、ライトフェアリーの方が偉いと言っても全ての要求を通らせる事なんて不可能だ。
「無理だろそんなの。その場合ライトフェアリーってどれだけの権力があるんだよ?他の国々が文句言えなくなる様な弱みでも握ってるのか?」
「流石にそこまでは分からないが、まぁ行けば分かるだろう」
そう言ってノワールが見る方向にはこの国の中心、国会議事堂のような建物が建っている。
「……あそこにオベイロンとティターニアが居るのか……本当に会えるんだよな?」
「恐らく」
「何か悪い事をして逃げてなければ、ですが」
そんなイタズラ感覚で出来る事でもないと思うけど。
そう思いながら俺達は国の中央に向かうのだった。




