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両国の現状確認

 俺は会議室に行くと、そこには既にみんなが集まっていた。

 特に多いのは吸血鬼達。彼らに関する話なのだから当然だ。

 俺が座るとノワールが話し始める。


「ではこれよりパープルスモックで起きた戦争の再開について話し合う。まず彼らは国を守るために戦う事は既に決まっている。故に今回は我々が手を貸すか、貸さないかを決めようと思う」


 そんな風にノワールは話し始めた。

 正直俺個人として戦争に子供達を参加させたくはない。

 なので手を貸すとしてもいざという時の逃げ場所としてこのアルカディアを使わせるぐらいの感覚だ。


「それでは父さんの考えを聞かせて欲しい」

「ん?戦争に参加ってつまり殺し合いに参加するって事だろ。俺は絶対に認めないからな」

「だそうだ」


 俺がはっきりと言うと他の吸血鬼達は複雑そうな表情をした。

 俺がいない間、2000年近くを一緒に居たのだから仲間意識があるのは分かるし、しょうがない。

 でも戦争だけは参加させたくない。子供を好き好んで戦地に行かせる親がどこにいる。


「……だが、いざって言う時のためにアルカディアに緊急避難できるようにするぐらいなら許す」


 俺がそう言うとほっとしたように吸血鬼達は胸をなでおろした。

 とりあえず俺の考えは伝えたので俺はノワールから詳しい話を聞く。


「それで、パープルスモックとホーリーランドの戦争っていつ頃再開されるんだ?」

「先日ホーリーランドより再戦の通知を持った使者が現れたそうです。戦争再開は今日を含めて1ヶ月後、ホリーランドは進軍しなければならないのでその移動時間を含めての時間でしょう」

「戦争する場所はどこでするんだ?」

「以前同様にパープルスモック近くの深い森の中で行われます。地の利はありますが、戦闘が得意な我々がいないので苦戦するかと」

「パープルスモックの戦力はノワール達がいなくなったことで弱体化、ホーリーランドはホワイトフェザーの加護を失った代わりに例のアメリカ人がいる。戦力差は激しいな」


 俺の言葉に頷くノワール。

 いくら吸血鬼達であっても近代化学兵器についてどれぐらい知っているのかどうか分からないし、むしろ知らない方が自然か。


「勇者君の方はどうしてる」

「それは彼女に聞くとしましょう」


 彼女?

 ノワールの言葉に誰だろうと考えていると、ミカエルと一緒にライトさんが現れた。

 頭を1度下げた後ライトさんは言う。


「この度は申し訳ありません。ホーリーランドの軍事行動を許してしまいました」

「いえ、多分仕方がない事ですよ。いくら世界最大の宗教と知っても他国の事に干渉することは難しいでしょうから」

「それでもこれはこちらの落ち度です。船の上で加護を外すと言ったからこそ、このような行動を許すことになってしまったのです。再び加護を与えるから戦争をやめろ、と申しましたが、やはり例の男の兵器はすさまじいらしく、ホーリーランドの軍部は非常に活気付いているようです」

「過ぎたことを悔やんでもどうすることもできません。まずは座ってください」


 俺が座るように促すとライトさんはようやく座った。

 座った後ライトさんは続けて言う。


「まだましと言えるのは勇者本人はあまり今回の戦争にやる気を見せていない事です。こちらの使者が確認したところ、例の男とは馬が合わないようで時々衝突しているという情報をつかんでおります。今回の戦争でも目立って行動しているのは例の男であり、勇者は人間牧場の方々を開放することに力を注ぐ様子です」

「教えてくれてありがとうございます、ライトさん。前回の戦争である程度牧場から人を分捕ったと聞いていたが、残りはどれぐらいだ?」

「大型の牧場で4つ、小型の牧場ならあと20ほどです。どちらも首都から離れているので時間稼ぎに使えると思います」

「ついでに家にいる奴隷君たちみたいな上級奴隷たちはどんな感じ?」

「役職を与えられた上級奴隷たちは牧場で飼育されたものではありません。各貴族たちが奴隷たちを繁殖させた後に才能があるかどうかで判断するので牧場にはいません」


 ……完全にペットの品種改良か動物実験みたいな感じだな。

 まぁ食人種だし仕方ないか。


「ごく稀に牧場で購入した血袋に才能があった、なんて話もありますがまずそれを実際にしようとする物好きはいません。ですので各貴族達が所有しているはずです。逆に才能がないと判断されて牧場に送る場合はありますが」


 う~ん、その辺にしておこうか。ライトさんが物凄い複雑な表情になってるから。

 必要な大国の1つとはいえ人間をこんな風に扱っているのだから複雑に思うのは仕方ないだろう。それが気に入らないと言って戦争を仕掛けてきたのがホーリーランドだし、ある意味間違った行動はしていない。


「分かった。それで貴族たちは全員戦うつもりってことでいいのか?逃げ腰の吸血鬼ぐらいいるだろ?」

「いますがほとんどの者は戦うことを決めています。母国の危機に立ち上がらずいつ戦うのかと奮起しています。ですが娘や妻、幼い子を持つものはその者達だけでも避難できないかと連絡を飛ばしてきました」

「それに関しては許可する。今から家を作る訳だから少し時間がかかるけど、小さい屋敷をいくつか作ればいいか?」

「私達が住む屋敷のタイプを作っていただければおそらく足りるでしょう。ただ1つ注意点が」

「注意?」

「父さんの場合我々と同じように作るべきだと思うかもしれませんが、わざとレベルを落とした屋敷を用意してもらいたいのです。これは格付けです」

「ふむ……あんまり住まわせてやってるんだからなって雰囲気は出したくないんだけど、必要なことなんだな?」

「はい。ご存じだと思いますがあちらの吸血鬼達はプライドが非常に高いので最初から同等に扱った場合すぐに調子に乗るかと。ですので最初の内はある程度ランクを落としたものにしていただきたいのです」

「分かった。それならすぐにできるだろうから……レベル5の屋敷をいくつ用意しておけばいい?」

「5つ用意していただければ十分です。確かレベル5で50名住むことが出来ましたよね?」

「そんな感じ。奴隷も含めて250人分か、やっぱ奴隷のほうが多いんだろ?飯ぐらいは同じように与えていいよな?」

「はい。ですがしばらくはブラッディピーチは与えないようにしておきましょう。最初は今まで通り人間の血を飲むでしょうから」

「それじゃしばらくは奴隷達の分だけでいいな。ライトさん、例の男の方はどうですか?」


 ノワールとの新しい人たちの打ち合わせを大体終わらせ、ライトさんに例のアメリカ人について聞く。

 少し時間をおいてからライトさんははっとしたように言う。


「あ、はい!例の男に関しての情報ですが、かなり好戦的な性格なのはまず間違いありません。既にホーリーランド周辺の魔物を手当たり次第に倒し続けているとの情報が入っています。それにより魔物の脅威が減ったという報告も受けていますが、同時に他の冒険者達がホーリーランドで魔物が狩れないという理由から離れてると聞いています」

「そりゃそうだよな。冒険者だって商売で来てるんだから商売にならないなら出て行くだろうな」

「そういった事によりホーリーランドから冒険者が減少、更に国を守る者を十分に置いているので戦場に向かったのは精鋭のみだそうです」

「文字通り少数精鋭って奴か。よく戦争起こす気になったな」

「数が少ないというのは利点も大きいのです。補給部隊に送る食料や維持費などが軽くなりますから、もちろん数が多い方が有利というのはありますが」

「そんな風に聞くとあれだな。意外と数の面では五分五分か?」

「こちらもそのように踏んでいます。ただ……例の男と勇者が手を組んだとなるとかなり厳しいかと」

「正義君、あの男の事好きになるとは思えないけどな……」


 ぶっちゃけ正義君はいろんな面で子供らしい。

 例えば彼の憧れている物がアニメか特撮に出てくるヒーローの様な物だったり、大人の言葉を聞いてそれが良いと思ってしまったり、でもやっぱり自分が思っている事と合わないと不満を表情に出したりと普通の子供だ。

 そんな正義君があんなのに付いて行くとは思えないけどね。


「それに馬が合ってないっていう情報は信じていいんじゃないか?そうでなきゃ勇者君とアメリカ人が別行動するとは思えないんだけど。普通一緒になって吸血鬼倒す作戦考えるんじゃない?」

「それは……確かに」

「先に相手の親玉を倒してあとはゆっくり牧場の人間達を持って帰ればいい訳だし、危険を犯して同時進行する必要はないだろ。効率的とも言えないし、危険でもある。そうなると上手くかみ合ってないからわざと別々に行動させてるって考えた方が自然だと俺は思う」


 俺の考えを言うと意外と納得した表情を作る子達が多かった。

 まぁ結局俺がやるのは新しい吸血鬼達の家を用意する事だけだけどね。


「それでは今日の会議はここまで。後日改めて進展があった場合また会議を開きます。では解散」


 ノワールの言葉で会議が終わる。

 そして俺は聞く。


「ライトさんってもう晩飯食べちゃいましたか?」

「いえ、まだです」

「それならついでに一緒に食べませんか?腹をすかせた状態で帰らせるのも何というか、あれですし」

「ありがとうございます。それではご相伴にあずからせてもらいます」


 こうしてライトさんも一緒に晩飯を食ったのだった。

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