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最後のゲーム能力者が見付かった

 クラルテがいるかもしれないと言ってもそこに行く前に色々やらないといけない事がある。

 まずは普通にカーディナルフレイムから1度カイネに帰って野菜とか商業ギルドに卸さないといけないし、アレスさん達との契約もカイネに戻るまでという契約内容なので帰る必要がある。

 そのあとはネグルに行くための詳しい情報なども知りたい。

 クレールが知っているのはあくまでも国の名前とそういう場所があるだけという情報なのでどうやって行くのかまではいつものお約束としてクウォンに聞けば多分わかるだろう。ギャンブルで有名な国らしいし。


 そう思いながら帰る準備を進めていると、若葉が俺に話しかけてきた。


「ドラクゥルさん。少しお話良いですか?」

「良いよ~、どうかした?」


 気軽にそう聞くと、若葉はとんでもない事を言った。


「新しいゲーム能力者を見つけました。どうします?」


 …………ま、まさか見つかるとは思わなかった。

 そりゃ俺だって一応探してはいたよ、でもそんな簡単に見つかるとは思ってなかったし、何よりどんな能力を持っているのかどうか分からないのでだから手当たり次第という感じだった。

 見つかるとしても相当時間がかかるだろうな、と思っていたのだがまさかこの国で見つけてくるとは……


「どうしますって言われても……こっちの味方になってくれそうなのか?その人にはその人の生活があるだろ。それにホワイトランドの仲間にならなければいいって感じだし」

「本人に確認をとると条件を飲んでくれたら味方になってくれると言ってくれました。ただその条件が厳しくて……」

「どんな条件なんだ」


 少し緊張しながら俺は聞く。

 若葉が難しいというのだからとんでもない条件なのかもしれない。まさか仲間になる代わりにとんでもない金を払えとか?それともまさかうちの子供たちをよこせとか?

 もしそういった条件だった場合は手を結ぶつもりはない。

 確かにこれ以上ホワイトランドに戦力が集中するのは避けたいが、そのために子供達を危険な目に遭わせるようなことはしたくない。


「条件というのは仲間と一緒にカーディナルフレイムから出たいという内容でした」

「………………つまり移住?」

「はい。ほぼ移住みたいなものです。その方には大勢の仲間がいるのでその方達も一緒に居たいとの内容でした」

「仲間って何人?10人ぐらいか?」

「総勢50人です」

「50!?それもうちょっとした軍勢じゃん。残ってるゲーム能力は……アクションだから……大勢の仲間とやるアクションゲームってどんなのあったっけ?」

「ゲーム能力者は1人だけですよ。それに総勢50人というのは仲間のご家族を含めた数です。仲間の家族と一緒にカーディナルフレイムを出てほかの国で暮らしたいそうです」


 まさかお仲間の家族も連れとなるか……確かに難しい条件だ。

 それって多分家を見つけて安定した生活を得るまでが条件だろ?他国からの移住ってこの世界だとどれぐらいの難しさなんだ?元の世界じゃ特別な条件を満たさない限り移住は難しいみたいな感じだったと思うんだけど……

 そのあたりはブランとかクレールに相談だな。あの2人は国のトップなわけだし手続きとかが必要ならあっさりと済むだろう。

 でもルージュ的にはヤバいんじゃないか?国民の50人が集団で移住計画……国という単位では少ない方か?

 とにかくこればっかりはルージュにも話をしないといけないかも知れない。出て行きますって言う報告書類とかも必要なのかも知れないし。


「そうなると……1番現実的なのはホワイトフェザーかグリーンシェルって所か?距離的にはホワイトフェザーだけど、同じダンジョン都市という意味ではグリーンシェルの方が住みやすいかも知れないし」

「そうなるとミカエルさんとグリーンシェルの王様を呼びますか?」

「それはもう少し後でいいんじゃないかな?その人達がどっちに住みたいかとか色々あるし、1番楽なのはアルカディアに住んでもらう事だからな。この際従業員増やしちゃう?」

「お仕事が大変ならそれも良いと思いますが、大変でないならむやみに増やさない方がいいですよ。元々多くの方がいるんですから」

「まぁ子供達もいっぱいいるし、住みたいとは思わないかな」


 俺はこの生活をずっとしてきたからモンスターに対して何も思わないが、ダンジョン都市で生きてきたその人達にとっては恐ろしい場所かも知れない。

 その辺りはちゃんと話を聞いてからだな。こちらの想像だけで話を進めても意味がない。ちゃんと話聞かないと。


「とにかくその人達にいったん会うか。詳しい話とかはその後で」

「分かりました。それじゃその人とも一度会っていつ会うか話してきますね」


 こうして最後のゲーム能力者と会う話が浮上したのである。


 ――


 で、そのゲーム能力者と会う約束の日。

 意外な場所で話す事になった。


「なんで竜人の踊り子なんだよ」


 そう。待ち合わせの場所はジュラの店だった。

 確かに昼間は時間は閉じており、話す余裕があると言えるが、まさかこんな身近な所にゲーム能力者がいたとはな……


「とりあえず入っていいんだよな?」

「予定の時間にお店のドアをノックすれば開けてくれるって言ってましたよ」

「……日本人の感覚で5分前に来ちゃったけど開けてくれるかな?」

「冒険者は時間を守る事も重要なので少し早いぐらいなら大丈夫じゃないですかね?」

「あ、冒険者はそれでいいんだ」

「依頼主が指定した時間に来れなかった事で依頼をキャンセルさせられた冒険者もいるぐらいですから。でもそれは稀な方で2、3日遅れたぐらいじゃ普通は怒られませんけどね。中には遠くから冒険者を呼ぶ事もありますから。それにこの世界は時計が普及していないので時間に対しておおらかという面も感じますけどね」

「あ~分かる分かる。この世界ってデッカイ置時計はギルドとかデッカイ店とかにはあるけど、一般家庭や普通の店には時計おいてないもんな」


 腕時計すら開発されていないと仮定すると仕方ない様に感じる。

 俺はメニュー画面から今の時間とか分かるし、アイテムに腕時計とかも存在する。だから時間の感覚はこの世界に来る前とあまり変わらないが、この世界で過ごすと時間がゆっくりに感じるんだよな。

 やっぱ時間時間言わないからかな?


「あの、もう入って大丈夫ですよ」


 俺達がそんな話をしていると店員である幼い女の子がドアを開いてそっとこちらを伺っていた。


「それじゃお邪魔します」

「失礼します」


 今回はただの客としてではないので少し緊張しながら入る。

 何度か来た事のある店だが、従業員のほとんどが揃っているこの状況で俺だけ男、スゲー肩身が狭い。

 なんて思いながらも周りの従業員たちからはじっと見られながら手招きするジュラの前に俺達は座る。


「今回はごめんなさいね、ドラクゥルさん」

「いえいえ、ジュラさんのお願いなら出来るだけ聞いてあげないと」


 まずは軽い挨拶から始まった。

 そしてジュラの隣りにはアオイが座っており、俺の事をじっと見ている。

 交渉と言う物は正直全然得意ではないので早速本題に入る。


「それで、若葉が見つけた子と言うのは……」

「私です」


 そう手を上げながら言ったのはアオイだ。

 少しは可能性の中に入れていたが、まさか本当にアオイがゲーム能力者だったとはな。

 何というか、この世界の人間って元の世界の人間に比べると圧倒的に強いからさ、正直誰がゲーム能力を持っているのか分からないんだよ。

 サバゲーのアメリカ人は明らかにこの世界の文明とは違う武器を使っていたからすぐに分かったけど、ぶっちゃけ若葉の時だって意外だった。まさか女の子がこの世界に飛ばされて来ただなんて思いもしなかったしな。


「アオイだったか。それで50人ぐらいの人と一緒にこの国を出たいらしいけど、理由を聞いてもいいですか?」

「それはただ単にこの国では安心して暮らしていけないからです。正直ポールダンスも大変ですし」

「ノリノリで踊ってたと思ってたんだですど」

「あれは!!その……調子に乗り過ぎてしまって……いつも後からものすごく恥ずかしいって思っているんですから、あまり言わないで下さい……」

「そりゃごめん。それでジュラさん達もご一緒にと聞いていたんですがそれでよろしいんですか」

「いえ、この国の外に出て欲しいのは若い子達だけでお願いします」


 ジュラの言葉に少し前情報と違うと感じたが、アオイは言う。


「ジュラさんも一緒に行きましょうよ!ここでずっとダンスでやっていくのが大変って言うのは少しは分かってるんですよ!」

「でもねアオイ。あなたを拾った時に分かるでしょうけど、私はこの店を捨てるつもりはないわ。それにあなたの時や、他の子達の時みたいに路頭に迷っている女の子達を救うためにこの店を開いたのよ。他にもまだまだ困っている女の子達は大勢いる。だから私はこの店を閉じる事だけは絶対にしないわ」


 どうやらアオイの願望に近かったらしい。

 まぁ自分の家族だけならともかく、親しい従業員たちの家族もと言うとんでもない話は完全に周りの意見とか聞かずに言い出した事だったみたいだ。

 でも若い子達は外に出してあげたいか。それなら俺は話しを聞く。


「具体的にはどれぐらいの人数になりそうですか」

「そうですね、12人。いえ、5人でお願いします」

「12人でも構いませんよ。それで移住させたい子達はアオイさんの他にどんな子達ですか?」

「主に受付をしてくれている子達です」


 そう言ってジュラの後ろに立ったのは受付で見た事のある幼い女の子達。見た目通りなら小学校低学年から高学年ぐらい。

 確かにこの年齢の子供達にはこの国は厳しいかも知れない。


「分かりました。それで移住したい国は決まっておりますか?」

「え?選べるんですか?」

「一応参考程度にですが。1つはこの国から近い方のホワイトフェザーです。もう1つは同じダンジョン都市のグリーンシェルです。ホワイトフェザーの方なら俺の拠点である家がある町が丁度いいかと思います。グリーンシェルだと偉い知り合いの人がいるのでその人が仕事とか住む所とか探せるのではないかと思っています」

「なるほど……ちなみにライトフェアリーはありませんか?」

「ライトフェアリーですか。すみません。まだ行った事のない国なのであまり詳しく知らないものでして」

「あ、すみません。あの国は子供に優しいと噂で聞いた事があった物ですから」


 子供に優しい国ね。

 具体的にどんな国なのか分からないが、行ってみるのも悪くないかも知れない。

 でもその前にちゃんと伝えておかないといけない事がある。


「それから移住する前での住居ですが、かなり特殊な場所なので一緒に来てご確認していただけないでしょうか」

「特殊、ですか?具体的にはどのような所でしょうか?」

「俺が今住んでいる場所で気候とか色々安定しているのですが……魔物が居るので少々不安になるかも知れないので移住したい方達に確認してもらってから住んでもらおうかと思いまして。もちろんそこでの生活が気に入ったというのであればそちらで預からせていただきます」

「ドラクゥルさんが住んでる場所ですか。ある程度魔物が出る町、という事でしょうか?」

「その辺りはご自身の目でご確認ください。いつ頃ご確認いたしますか?こちらはいつでも構いませんが」

「それでは早速今から、なんて無理ですよね」


 ジュラが無茶ぶりだろうと言う感じで言ったが俺は構わない。

 特に何か隠しておきたい事なんてないし、見られて困る物もない。


「構いませんよ。そこでアオイさんを探していた理由などもお話しておきます」


 そう言ってから俺の背中にアルカディアに行くための穴を空けた。

 他の従業員さん達も驚いていたが、俺は気にせず言う。


「どうぞこちらに。みなさんの家族がしばらく、もしくは永住するかもしれない場所です。細部までご確認ください」

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