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ダンジョン捜索準備中

 さて、酒呑を見付ける事には成功した俺だが結局カーディナルフレイムに行く方法に関してはまだ見つかっていない。

 カーディナルフレイムの端っことは言え酒呑なら何か知らないだろうか?


「なぁ酒吞童子。お前カーディナルフレイムに行く方法しらね?」

「そんな事聞いてどうする?普通に行けばいいじゃねぇか」

「その普通が俺にとって大変なんだよ。しかも商人は行けずに冒険者ばっかりの国らしいじゃねぇか。俺みたいに戦えない一般人が行くにはどうすればいいんだよ」

「そんなの簡単だ。冒険者になって強い奴の荷物持ちでもやってればいいだろ」


 そんな事を当然のように言った。


「え、でもそれってCランク以上じゃないとダメなんだろ?」

「大丈夫だ。高ランクの冒険者になると小間使いみたいな奴が必ずいるもんだ。若い冒険者が高ランク冒険者の戦いっぷりを見て学ぶんだと、その中にアイテムや食料を持った荷物持ちがいるんだよ。特にアイテムボックスつ~魔法だかスキルだかを持っている奴が多い、ジジイはその振りをして高ランク冒険者の後ろを歩いてればいいんだよ」


 なるほど。

 あくまでも高ランク冒険者の後ろを付いて行く新人的な感じで行けば怪しまれる事はないという事か。


「そんな抜け道があるなんて知らなかった」

「地元の奴しか知らないもんだったのかもな。ところでカーディナルフレイムに行って何するんだ?」

「ルージュを探しに行く。ルージュの事知らないか?」


 俺がそう聞くつ何故か苦虫を噛み潰したような表情をする。


「あ~、会いに行くのか?ルージュに」


 何やら聞きにくそうに言う。


「やっぱいるんだな。なら行くさ」

「……気を付けろよ。あいつは感情的だから」

「分かってる」


 酒吞が俺の心配をするという事はあまりいい雰囲気ではないのかも知れない。

 でもそれも覚悟の上だ。不満があるというのであれば、受け止めるしかない。


「ちなみにどれぐらい険しい道なんだ?」

「かなりあちーぞ。道の下はマグマで落ちればまず死んで間違いない。出てくるモンスターはほぼマグマに耐性を持ってっから突き落とした所で意味がねぇ。熱すぎて本来効くはずの水魔法が使えない~みたいな人間は結構多いらしいぞ」

「環境による影響って所か。熱が強過ぎて水が蒸発しちまうんだな……」


 なんか他のゲームで似たような仕様があった様な……ダンジョン探索系のゲームだっけ?特定の技とか使えなくて製作者の殺意が凄まじい奴。

 それ以前によくある感じで火の弱点は水ってのはこの世界でも当てはまるのか?よく分からないけど。


「それカーディナルフレイムに行くには……」

「強い冒険者の後ろでこそこそしてればいいだけだ。冒険者の知り合いとかいねぇの?」


 冒険者の知り合いは……いるな。結構時間経っちまった気がするけど、カーディナルフレイムに行くと言ったら一緒に行ってくれるかな?

 でもそれ以前に彼らのランクがどれくらいの物なのかさっぱり分からない。そういえば若葉って冒険者として優秀な類だと聞いていたが、若葉のランクっていくつなんだろう?基準程度に聞いておこうかな?


「それから酒呑、酒蔵の酒の状態ってどうよ?」

「状態は悪くねぇが……調理酒が大分なくなってるな。みりんとかもねぇし」

「その辺急いで作ってもらうと助かるんだけどどうよ?」

「まぁこの酒蔵なら簡単にできる。機材もジジイが管理してくれたおかげですぐに使えるし、酒樽の状態も悪くない。ただ人手がな……」

「そっちは新しく育ててる子供達が興味持ったら手伝わせるよ。でも」

「飲ませるな、だろ。分かってら、ガキに酒を飲ませるなんざねぇよ」


 アルカディアの酒蔵で俺と酒呑童子の会話だった。


 ――


「私の冒険者としてのランクですか?」

「そうそう。今度行くところ冒険者ランクが高くないといけないんだってさ。だから若葉ってどれぐらいなのか基準にしておきたくて」


 昼飯中、早速冒険者のランクについて若葉に聞いてみる。

 ついでに酒吞達もいるのだが、こちらは今後作る調味料についてガブリエル、医療用エタノール開発にドクター、ラファエルと話していた。


「う~ん。でも私ドラクゥルさんが思っているよりもランクは高くないと思いますよ」

「え、そうなの?グリーンシェルじゃ優秀な冒険者だって言われてたのに」

「優秀と言うのはあくまでも探索や索敵、薬草などを見付けるのが上手だからです。高ランクのほとんどの人、というよりは高ランクの人は強い魔物を倒してこそですから、あまり戦闘に出ない私みたいな人はランクその物はあまり高くないんですよ」

「それ若葉のランクっていくつなんだ?」

「Cランクです。探索系冒険者としては結構上の方なんですが、活動そのものが地味ですし、全く目立たないので戦える冒険者から見ると下に見られる事が多いです」

「でも若葉みたいなのが重要なのはみんな知ってるんじゃないの?」

「知っているのはベテランの冒険者のみなさんだけですよ。若くて簡単にランクを上げて言った人達なんて私達の存在の事なんてどうでもいいと思ってるんですよ、優しくしてくれるのはベテランのおじさん達だけです」


 ……なんか若葉が遠い目をしてる。冒険者時代かなり精神的にきついというのは聞いていたが、思い出したくない事思い出させちゃったかな?


「その、何というかごめんね。嫌な事思い出させちゃったみたいで」

「いえ、これぐらい何ともありませんよ。それからですね、私はCランク以上には決してなれません」

「え、何で?」

「Bランクからは必ず魔物の討伐記録や山賊の討伐記録などが重視されるからです。これに関しては実際に戦った経験などを重視されているからですが、Bランク以上は絶対に強い魔物と戦った記録が必須なんです。この辺りは私みたいな探索系の冒険者はパーティーを組んで倒すのでそれなりに実績があると判断されるんですが、ソロでずっと何かを殺す様な事は避けてきたので実績がないんです。だからずっとCランクのままなんですよ」


 …………なるほど。少しは冒険者と言う物を分かった気がする。

 冒険者の仕事というのはとても広い。若葉の様な探索系や採取系、魔物を討伐する冒険者などが多く存在するが、そのほとんどは魔物がいつ現れてもおかしくない環境に居るために強さを重視される。

 でもこの世界ではそれが普通だったとしても、俺達の世界では違う。

 俺達の世界で野生動物を捕まえたりする職業は非常に少ないイメージが強い。食べるのであれば牧場で育てた牛や豚、鶏などを食べるのが一般的だし、薬の成分となる物は合成したり何らかの素材から抽出すると言う方がイメージしやすい。

 そんな危険とかけ離れたところで育った俺と若葉は生き物を殺すという事そのものが非日常であり、避けるべき事だと学んできたので必要だと思っても行動に移せない。


 若葉はその考えを貫き通している。

 俺から見れば立派だと思うが、この世界ではただ甘いとしか評価されていないのかも知れない。でも若葉はこの世界でできる事、ダンジョンでの薬草などの素材を回収したり、時に行方不明の冒険者を探しに行ったりと貢献してきている。

 でもこの世界ではこれだけではまだ足りない。

 生き物を殺さないという覚悟は、この世界では評価されない。


「悪いな。嫌な事はなさせて」

「いえ、これは自分で勝手に決めた事ですから」

「それでも若葉は立派だよ。俺だったら適当に言い訳して、行動してたかも」

「きっとその方が自然だと思いますよ。この世界ではそれが当然ですから」


 暗い雰囲気なってしまったので俺は切り替えるつもりで今後の予定を若葉に話す。


「とにかく、カーディナルフレイムに行くためには天然ダンジョンを突破する必要がある。だから若葉のその探索能力の力を借りたい。頼んでいいかな?」

「いいですよ。でも最低がCランクのダンジョンなので私1人じゃ多分は居る事すら出来ないと思いますよ?そこはどうします?」

「1組だけ俺と関係のある冒険者のパーティーが居る。その人達を見付けて説得するつもりだ」

「ちなみにその人達のランクは?」

「ちゃんと聞いてないから分からない。もしダメだったら素直に諦めるつもりだよ。かなり危険な所みたいだし、無理に言うつもりはない」


 俺がそう話すと若葉は何か考えながら俺に改めて聞く。


「その人達のパーティーに名前ってあります?」

「パーティー名?あったけどどこもあるだろ?」

「実はパーティーと冒険者ギルドで正式登録されるには最低でもCランク以上のパーティーだと認められる事が条件なんです。だとしたら大丈夫かも知れません」

「…………ん?その、パーティーとしてのランクと冒険者個人のランクって同じじゃないのか?」

「違いますよ。私が知っているCランクパーティーはBランク1人、Cランク2人、Dランク1人のパーティーでした。パーティーでのランクは個人ではなくその団体の強さで決まるので全員冒険者ランクはCでもBランクの冒険者パーティーなんていう所はありますよ」

「へ~。個人と団体じゃ評価が違うんだな」

「はい。なのでパーティーで行動している間に団体での功績が認められて全員一緒にランクが上がるという事もあるらしいですから」


 それなら行けるかもしれない。

 きちんとパーティー名を言っていたし、団体でCランクを超えているのは確実という事だ。

 なら今度カイネで探してみよう。

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