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探すしかない

 少年から子供達が何を食べているのか、どんなトレーニングをしているのかなどのデータをまとめた資料をもらった。

 それを見てみると明らかに変だ。


 何が変なのかと思うと、まるで効率を重視した食事内容だったからだ。

 最短で進化できるように食事とトレーニング内容が調整されている。やはり印象的なのは進化する最短を知っていたと言う感じ。

 俺が進化させる食事方法に慣れてその方法を知っていたような感じだ。

 しかも少年達が俺に聞いて指示通りに進化させたのならともかく、子供達が自分の意思で行なったというのが気になる。

 最短でなりたい種族に進化する。その結果どうなるのか俺は予想すら出来ない。


 そしてゴブタとゴブコの葬式が終わった後、クレールを連れてゴブリン帝国にやってきた。

 葬式が終わってすぐというのも失礼な気がするが、ゴブタに伝えた事をゴブオにも伝えないといけない。ゴブオは無事ゴブリンロードに進化した。これによりゴブオは正式にゴブリン帝国二代目皇帝になったのである。

 ぶっちゃけゴブオがゴブリンロードになれなかったら、どうなっていたんだろうと思うが、ツッコミはしない。

 そしてゴブタとゴブコに伝えていた事をゴブオとゴブリン帝国の重鎮たちに説明した後、ゴブオ達は相談する。


「またホーリーランドか。あいつらも本当にしつこいな」

「仕方がない。あの国は人間主義の代表と言える国だ。一応ホワイトフェザーの属国と言われているが今もパープルスモックの事を強く敵視しているからな」

「食人種が多くいる国だからな、人間から見れば脅威と言えば脅威だろう」

「人類の敵を排除する、これがホーリーランドの掲げる大義だからな」


 ホーリーランドの行動に疑問を抱かない分あっさりと納得している。

 ただ問題はそのリアムの戦闘能力であり、近代化学兵器の力に剣や槍で立ち向かう事が出来るかどうか分からない点だ。

 だからゴブオは言う。


「クレール様、よろしければその武器を我々がどれだけ使えるのか確かめた後に、販売していただいてもよろしいでしょうか」

「構いません。お客様に売る前にその性能を見せてこそでしょう。十分にご検討した後にお買い求めください」


 ゴブオの言葉にクレールは答える。

 銃という武器に対してどのような意見を持つのか少し気になる。


「それじゃ俺はここまでだ。ゴブオを中心にアルカディアに行けるようにしてあるから好きなだけ来ればいい。俺は酒呑が居ると思われる山に向かう。あとはそっちで調整してくれ」

「少々お待ちを。ルージュ姉ちゃんが居ると思われる国はカーディナルフレイムです。あの国は武力による支配が行われています。そのため危険な国ですよ」


 ゴブオはそう言った。

 どうやらルージュが支配しているだけあって元気が有り余っている国らしい。

 更に詳しい話を聞くと、ヴェルトが居るグリーンシェルとはまた違ったダンジョンがある国であり、天然物のダンジョンが多く存在する国だそうだ。


 天然とそうでないダンジョンの違いはダンジョンの生まれ方らしい。

 まずヴェルトの居るダンジョンは天然ではない。何故かと聞かれると、ヴェルトの居るダンジョンはヴェルトがグリーンシェルに来た事で生まれたダンジョンだ。逆に言えばヴェルトが居なければダンジョンとは言えない。

 ヴェルトを狙って魔物達が寄ってきている訳だから、ダンジョンになっただけで違うそうだ。


 そして天然物のダンジョンという物は発生するらしい。洞窟や森、様々な所にいつの間にか発生し、魔物や宝の類まで生まれるそうだ。

 いまだにどうしてダンジョンという物が発生するのか解明されておらず、世界の謎とまで言われている。


 そんな天然のダンジョンに囲まれた国がカーディナルフレイム。

 ダンジョンで発生した魔物を狩ったり、お宝を手に入れて売るというゲームによくある様な感じで発展し続けた国であり、実力こそが全てという過激な国だそうだ。

 一応法はあるが基本的に強い奴が偉い。王族もかなりの武闘派でその先祖は元高ランク冒険者だったとかなんとか。

 自由と力で生まれた国、それこそがカーディナルフレイムという国だそうだ。


「なので力、武力のない爺さんがあの国に行くのはかなり厳しいんだよ。入国するには最低でも冒険者ランクC以上じゃないと入国できない。実力至上主義の国だ」

「それって他の商人とかはどうしてるんだ?流石に商人とかも居るよな?」

「居る事は居るが、ほとんどが元冒険者でCランク以上だった人間ばかり。爺さんの様に商売だけで国に入るのは相当の豪商じゃないと無理だ」


 どうやら俺とは相当相性が悪い国らしい。弱い奴に厳しい国だ。

 俺は腕を組んで考えると、クレールは言う。


「ゴブオ。優秀な護衛を付けるのではダメなのですか?必要ならエルやアレクサンダーを護衛に付けましょう」

「それでもダメだと思います。あそこは個人主義の国ですから。一応手がない訳ではありませんが……」

「それは何?」


 クレールが強く聞くとゴブオは答える。


「唯一自由に通行していい道があります。その道はダンジョンになっており、最低ランクAという普通の人が通ればまず命はない道とは言えない場所です。新参者の力試しとして有名なダンジョンですが、爺さんが通るとなるとかなり厳しいでしょうね」

「私達が護衛をしてもですか」

「はい。元々そのダンジョンは道の下は常にマグマがあり、ただ通るだけでも皮膚を焼きかねません。そんな道を爺さんが通るとすればただ魔物から守っているだけでは不十分です。爺さん自身がマグマの熱に耐えられるような身体でないといけません。この辺りは魔道具などである程度は大丈夫かも知れませんが」


 つまり俺はその道を通るだけでもかなり大変という事らしい。

 自然環境の猛威って奴だな。こればっかりは俺個人の力でどうにかするしかないのかも知れない。魔道具という奴でどうにか出来るのだとすれば購入するのも手かもしれないしな。

 とにかくすぐに行きたいからといって簡単に行ける様な場所でもないという事は知った。それだけでも良かったというべきだろう。


「分かった。そのカーディナルフレイムに関しては一度考えてから入国方法を考えよう。ルージュの事もそうだが、まずは酒呑に会う方が先になるかも知れないしな」

「まずはそちらからの方がよろしいかと」

「酒吞童子……彼は彼で暴れていないとよいのですが」


 クレールが心配して言ってくれるが、当然だと言えるだろう。

 酒呑は酒吞でかなり好戦的な性格だったからな。茨が居てくれたらまだマシかもしれないが……どうなんだろ?今までの傾向で同種族は同じ場所に現れる様な感じだし、多分一緒だと思いたい。


「それで詳しい場所は?」

「実は詳しい場所までは教えてもらっていないのです。ただ全く手掛かりがない訳でもないのですが……」

「ゴブタの言っていたカーディナルフレイムの国境近くの山の中だろ?」

「はい。ですが逆に言うとそれしか知らないのです。どこかでまた酒を造っているようですが、場所までは流石に」

「酒?また酒造ってるのか」


 あいつ自分で作って自分で飲むんだよな。どんどん腕を上げてかなり上質な酒を造っていたが、うちに残ってる酒ももうないんだよな……うまく連れて帰ったらまた造ってくれないかな……


「ですから土産というと毎回(これ)です。ですが以前来た時はこの世界にある果実などでは美味い酒は出来ないとグチっていました」

「ゴブリン帝国に来てたんだ。それなのに詳しい場所教えてくれなかったんだ」

「父もそれとなく聞いていたのですが、答えてくれたのが例のカーディナルフレイム近くの山としか仰ってなかったのです。あとはひっそりと酒を造っているとしか」

「まぁだいたいは分かった。ところでその空き瓶もらってもいいか?なんかのヒントになるかも知れない」

「どうぞ。同じ空き瓶はいくつもありますから」


 こうして俺は酒呑童子が居ると思われる証拠をもらったのである。

 さて、酒呑童子とルージュは本当にカーディナルフレイムに居るのかどうか、探してみますか。

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