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ゴブリン帝国に捕まった

 様々な獣人の村を巡りながらゴブリン帝国を目指す。

 どの獣人の村もナダレ達が起こした吹雪のせいで食糧難になっているらしく、肉を見せると色々話してくれたのは良かったというべきか、罪の意識を持つべきか。

 それでも俺達は少しずつゴブリン帝国に近付きながら村を巡っていると、とある村で言われた。


「ここから南西に向かって歩けばゴブリン帝国はあるが、人間が近付くのは危険だぞ」


 そう言われた。

 ならゴブリン帝国はもうすぐだと思いながら森の中を歩く。

 森は相変わらず深いのにこの先ゴブリンの帝国があるなんて思えない。でも少し人の気配の様な物がする。特に監視するような視線をとても強く感じる。


「わっかりやすいぐらい警戒されてるな。人数は……かなりいるな」

「親父そういうの分かるっけ?」

「いや、ただ単に凄い視線を感じるからかなりの人数が居る様な気がするだけ。具体的に何人居るのかとかは分かんねぇ」

「なら言っておくぞ、ホブゴブリンが8体だ。特別な種族ではないが狩りとかに経験があるみたいだ。親父よりは確実に強いな」

「俺より弱いモンスターなんてそういないだろ。居るとすれば精々ベビー系だけだろ。普通のゴブリンにすら勝てる自信ない」

「それぐらいビビってる方が助かる。それでどうする?無理矢理行くか?」

「見張りが居るって事は確実にゴブリン帝国に近付いてるって事だろ。向こうが攻撃してこないならこちらから攻撃する必要もない。こっちは侵入者とそう変わらないだろうからな」

「だが何もする気がないならこの警戒も解いて欲しいんだがな」


 そう言ってヨハネがどこかを見る。

 多分ヨハネの視線の先にホブゴブリンが隠れているんだろうが、俺にはさっぱり分からない。

 そう思いながら細かくゴブリン帝国があると思われる方向を確認しながら進むと、大勢の人の足音が聞こえる。

 あまりいい雰囲気がしないものの、立ち止まってその集団が来るのを待つと、武器を持ったホブゴブリン達が現れた。

 見ただけで分かる槍を持ったランサーホブゴブリン、皮の鎧を着たホブゴブリンソルジャー、杖を持ったマジックホブゴブリンなどなど、俺達2人に対して随分大袈裟な歓迎だ。多分ヨハネを警戒しているんだろうが、どれだけ本気なんだ?


「そこの獣人と人間、止まれ」


 槍を向けてくるホブゴブリン達にヨハネはムッとしたが俺は止める。

 俺達に声をかけてきたホブゴブリンジェネラルは続けて言う。


「私はホブゴブリンジェネラルのジェラルディン。汝らの目的は何だ!!」


 強気に言っているがヨハネの力を正確に分かっているのか警戒心が非常に強い。

 とりあえず俺は正直に目的を言う。


「知っているゴブリンを探しに来ただけだ。見付けたら素直に帰る」

「ゴブリンだと。我らの帝国に普通のゴブリンは存在しない!」

「ゴブリンの名前はゴブタ。知らないか」


 俺がそう聞くとホブゴブリン達が非常に動揺した。

 特にホブゴブリンジェネラルは分かりやすいぐらい動揺し、怒号に近い叫び声を上げる。


「貴様!!どこで皇帝の名を知った!!」

「最初から知っているからどこも何もない」


 ジェネラルの言葉と視線に一切動じずに俺は真っ直ぐ目を見る。

 それが気に入らなかったのか剣を抜いて俺に向けながらジェネラルは言う。


「貴様、名を名乗れ!!人間ごときがゴブタ様とどのような関係だ!!」

「俺の名はドラクゥル。ゴブタから見て俺は親だ」


 そういうとホブゴブリン達の動揺はさらに広がり、ざわざわと煩いぐらいにホブゴブリン達がそれぞれ相談し始める。


「俺の名はゴブリン帝国にとって知られている物なのか?」

「さぁな。でもこの空気は良くないぜ」


 そう言ってヨハネが警戒している時にジェネラルが周囲を黙らせる。


「落ち着けお前達!この人間の男がドラクゥル様のはずがない!!この男は嘘をついているのだ!!その大罪、見逃す事は出来ん!!」

「真実なんだがな。それでゴブタはどこだ、やっぱり寿命を迎えたか?」

「何と恐れ多い!ゴブタ様はご存命だ!!この男をひっ捕らえよ!!」


 槍を構えたホブゴブリン達がじりじりと近付きながら、その後ろにいるゴブリン達が手錠を持って行動する。

 ヨハネは戦闘体勢を取るが俺はそれでも待てと手で示す。


「何でだよ親父!!このまま捕まったら何されるか分からねぇぞ!!」

「それでもだ。俺達の目的はゴブタと会ってゴブタ達をアルカディアに連れて帰る事、だから殺し合いはなしだ。でもヨハネ、お前だけは逃げろ。どうせ会う事は出来る。お前は外側からゴブリン帝国を探れ、俺は中から探る」

「探るって捕まるんだぞ。何をどうやって探るつもりだよ」

「その辺りは子供達の力を借りて、だな。情けない父親で悪いな」

「……ちゃんと頼れよ」

「当然。俺に戦闘能力はないからな」


 そう小声で言い合った後、ヨハネは即座に逃げた。

 まるで最初からそこには誰も居なかったかのように、音もなくすぐに消えたのだからホブゴブリン達も驚いて周りを見渡すが見つからない。

 ジェネラルは俺に剣を向けて怒声を浴びせる。


「貴様!あの獣人をどうした!!」

「先に逃げろと言っただけだ。そして俺は逃げ切る力もないから大人しく捕まるよ」

「ふん。大人しく捕まるというのであれば少しはマシな待遇にしてやろう。その人間に手錠を付けろ、そして連行する」


 こうして俺はホブゴブリン達に捕まった。

 手を後ろに回した後に手錠をされて、たった1人の人間のために大軍勢が俺を牢屋まで連行する。

 その道中俺はゴブリン帝国を歩きながら見たが、文明レベルは他の大国とそう変わりはない様に感じる。

 城を中心に広がる町、建物などはレンガを使用してるようでここに住んでいるのがホブゴブリンではなく人間だったとしても違和感はない。


 そして少し見ただけでも本当にこの帝国に住んでいるのはホブゴブリンだけのようだ。

 各獣人の村で聞いた物々交換のために来たという獣人達とは服装からして違う。獣人達の服はボロボロだがホブゴブリン達の服は人間達も普段着ているような服で、獣人達に比べると上質と言っていい。

 それに街の大きさだけで言うならホワイトフェザーよりもはるかに大きい。

 おそらく本来であれば国に点在する町や村という物がない代わりにこの城壁の内側に牧場も畑もあるから余計にそう感じるんだろう。

 中心に城、その周りに公園、店が集中したエリア、住民達の家、畑や牧場と言う感じで広がっている。


 だから俺1人運ぶだけでも馬車を使っているし、かなり広い。

 そして俺は意外な事に城裏口の様な所で下ろされた。


「なぁ。普通牢屋ってのは城から遠い所にあるんじゃないのか?」

「貴様は特別待遇だ。尋問や拷問できる牢屋は城にあるからな、精々楽しみにしているといい」


 ジェネラルからそんなお言葉をいただいてしまった。

 俺はため息をついた後にホブゴブリンジェネラル様自ら俺を牢屋まで連れていかれる。

 城の地下でじめじめとした空気の中、鉄製の檻の中に石で作られたヒンヤリするベッドもないただの牢屋に入れられた。


「おい。トイレぐらいないのか」

「トイレならそこにバケツがあるだろ。そこに用を足せ」

「俺相当な罪人扱いみたいだな。ひどすぎるだろこれ」

「貴様がドラクゥル様の名を語るからこうなるのだ。どこでその名と皇帝の名を知ったのかじっくりと尋問させてもらうからな」


 そういった後ジェネラルはどこかに行ってしまった。

 さて、今の内に仕込みを開始しますか。

 種族  ホブゴブリン

 ランク C~B


 ゴブリンの進化系ではあるがゴブリンロードが居ないと進化しない種族である。そのためランクがCからなのはその育成の難しさから来る物である。

 通常のホブゴブリンはみなCランクであり、ホブゴブリンソルジャーやジェネラルの様なホブゴブリンはクラス付きと言われ、Bランクとして扱われる。

 他のモンスターと比べて戦闘能力よりも知性が高い事が特徴であり、普通のゴブリンよりも手足が長くなったことでより武器の扱いなどが上手くなった。魔法を使える個体も多く生まれやすくなっており、とても人間に近いモンスターである。

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