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世界改変 ~アップデート~  作者: 、、、、、
4 秩序の破壊者
99/246

099_女性幹部会議5 キャラ被りと積極性の件


 ラシルに召集された本会議の後、女性幹部会議が召集された。

 会議の発議者はクゥ。

 議題はもちろん、最近仲間になった例の女のことだ。


 どこか余裕を見せているミイ。

 なぜか少し嬉しそうなエアノワリス。

 憤慨しているのを隠さないクゥ。

 いつもどうりニコニコしているロメリア。

 腕を組んで偉そうな態度のセシュレーヌ。

 超然とした様子のベッフィー。

 妖艶な気配を振りまくセデナ。

 真面目な表情のナスカ。

 真摯な態度で臨むカトリーナ。

 そしていつものごとく、居心地の非常に悪そうなショウ。

 どうしていつも僕なんだろう、という困惑と諦めが入り混じったような目をしていた。


 女性幹部たちは、全体的にどこか浮足立った様子だった。

 何人かの例外はいるものの、それでも彼女たちの表情はいつもより明るい。

 ソワソワしていると表現するのが適切だろう。

 それはつい先ほどの会議で、ラシルが各拠点を訪問することが決定したからだ。

 発議者のエアノワリスはもちろんのこと、他の拠点管理者や副官たちも、ラシルをどうやってもてなすか、今から色々と考えているようだ。

 それを想像するだけで楽しいのだろう。

 ショウにはそう見えた。


「それでは引き続き、会議を始めます」

 ミイがどこか余裕のある声音で会議の開催を告げた。

 お喋りが止み、各々が会議に集中する。

 これは大事な会議だ。

 ここでの決定が、そのままラシルの意思決定となることもあるからだ。


「では、招集者のクゥから今日の議題を」

 ミイがクゥにバトンタッチした。


「皆も知っておると思うが。とんでもない女が仲間に加わった」

 クゥの鼻息は荒かった。

 これでも感情を抑えているのだろうということが、他の会議の参加者に伝わった。

 ショウはクゥの副官だ。

 だから痛いほど言いたいことが分かるしね気持ちも分かる。


「白虎という猫の事じゃ。直接会った者もおろう? あ奴は今までのこの世界の女とは一線を画す。危険じゃ」


「一線を画すかどうかはわからないけど、危険であることは認める」

 珍しく発言したのはベッフィーだった。


「じゃろう? じゃろう?」


「この世界の住人の中で強くなるポテンシャルを秘めている。何より、仙界の4帝の一角を占めている。火国のレイランよりも地位が高い。そして頭も良いと思う」

 ベッフィーが白虎の印象を話した。

 印象というよりも、どちらかというと事実に基づいている情報だった。


「悪い子ではないと思うわ」とロメリア。

 まさかの白虎のフォローに回った。


「はぁ?」

 クゥがはぁ? という顔をした。


「この前一緒にお酒を飲んだけど、可愛い子だったわ。ねぇ? エア」

 ロメリアはエアノワリスに同意を求めた。


「そうね。可愛い子。純粋で、一途。ちょっと不器用なだけだと思う」とエアノワリス。

 ちょっと知ったような口ぶりだった。


 あなたが言うセリフかとショウは内心で突っ込みを入れた。

 エアノワリスは天使族。

 信仰の対象はラシル。

 一途とか純粋とか不器用とか、白虎なんかよりも言葉がそのまま当てはまるような存在だ。


「納得がいかんのじゃ!」

 クゥが吼える。


「何をそんなに納得できない?」

 セシュレーヌが当然の疑問を挟んだ。

 確かに、ここにいる皆はラシルを慕っている。

 ラシルに新しい女が出来るのは好ましくないことで、ラシルがその女にかまっているのを見るのは多かれ少なかれ不快なことだ。

 しかしそれは今に始まったことではない。

 ここに来てからのラシルの女誑しぶりは最初からなのだ。

 女誑しとか聞いたらラシルは全力で否定するだろうが。


「ラシル様にグイグイ行き過ぎじゃろう? 腕に抱き着いたり、肌の露出の多い衣装を着てみたり、ぶりっ子を装って気を引いたり、膝の上に座ろうとしたり。あれはビッチじゃ!」

 クゥはすごい剣幕だった。


「クゥ様は白虎の態度というよりも、アレがいけないのよね?」

 セデナが妖艶に笑う。


 セデナの指摘にショウが溜息をついた。

 

 クゥがギリっとショウを睨みつけた。

 え? 自分? 行ったのはセデナだろう。

 そう思って軽く首を振ると、メンチを切られた。


「アレ、とは?」とナスカが掘り下げなくてもいい部分を掘り下げる。


 エアノワリスが肩をすくめ、ミイが意味ありげに微笑む。

 カトリーナが首を傾げ、笑いをこらえているセシュレーヌ。

 遠い目をするショウ。

 そして生暖かい笑みを浮かべるロメリアがぶっこんだ。


「似ているのよねぇ。二人とも」


 ……


 …………


「キャラが被っているということか」

 少し驚いた後、得心したような表情のベッフィー。

 

 今ので他の人たちも明確に気づいてしまったようだ。


「そうじゃ。あのビッチは、妾のキャラを盗んでいるのじゃ!!!」

 クゥが雷を落とした。


「盗まれたんですか?」と真顔で聞くカトリーナ。


 もう止めてあげてと頭を抱えるショウ。


「そうじゃ! そうなのじゃ! これは妾の存在意義に関わる問題じゃ!!」


 憤慨して激おこのクゥ。


「ちょっと違うと思うわよ」とエアノワリス。


「私もそう思う」とセデナ。


「何が違うと言うのじゃ?」

 クゥが眉をしかめた。


「ラシル様の世界で言うところの、クゥ様の立ち位置は小学校高学年の童女。でも白虎は中学生です」とセデナ。


「そうね。それは最早違うジャンヌよ」とエアノワリス。


 小さい順に並べよう。

 小学校高学年、元気いっぱいのクゥ。

 実は長生きなのだけどそれは公然の秘密。

 中学校三年生。15歳でお年頃。生意気盛りのセシュレーヌ。

 高校二年生、16歳。理系のお姉さんベッフィー。

 高校二年生。17歳。黒髪美少女ミイ。 

 高校三年生。永遠の18歳、エアノワリス。

 大学1年生。19歳、真面目盛りのナスカ。

 20歳。ちょっとエッチな大学生のお姉さん、セデナ。

 大学3年生。21歳カトリーナ。

 みんな大好き、いつも優しいお姉さん。年齢不詳のロメリア。


 みんなそれぞれこういった設定がある。

 設定というのは、文字通りの意味で、実際の実年齢と乖離する。

 実際は、もっといっている。

 公然の秘密だが、ギルドの誰もそれについては言及しない。

 本人たちが幸せならそれでいいのだ。


「つまり、キャラはともかく、年齢層的にはクゥ様というより、セシュレーヌ様と被っているということですね」

 真面目な顔でナスカが的確に事実を述べる。


「な、はぁ?」

 セシュレーヌが、はぁ? という顔をする。


 ミイやエアノワリス、セデナは余裕の表情。


「ラシル様はどちらかというと、大人の女性が好みのタイプだと思います。ですので、私はそんなに心配しておりません」とセデナ。


「キャラは被っているようで、被っていないかもしれません」


「どういうことじゃ? カトリーナ」

「どういうこと? カトリーナ」


 クゥとセシュレーヌが被った。


「白虎は猫です。クゥ様は狐であり、セシュレーヌ様は竜でしょう。白虎は猫派で、お二方共はどちらかというと犬派です」とカトリーヌが説明する。


「妾は犬派か…」

 何か重要な真実を言い渡されたようなクゥ。


「否定はできない」とセシュレーヌ。


「犬派か猫派というのは、ラシル様の世界で二大派閥だと聞いています。果たしてラシル様はどちら側の人間なのか…」

 カトリーナの放った爆弾の威力は凄まじかった。


「犬派だろう! ラシル様は気分屋の猫よりも常に主人に忠実な犬が好きなはずだ」

 そう手中したのはセシュレーヌ。


「そうじゃ! ラシル様は忠義に愛をもって答えてくださる」と便乗するクゥ。


「それはどうかしら」

 待ったを掛けたのはセデナだった。


 ショウはいまのやり取りを聞いて分析する。

 セデナ以外、みんな分類するなら犬っぽいと。

 そして驚愕の事実に行き着くことになる。

 限りなく、どうでもいいことだと。


 そこから会議は紛糾した。


「ともかく、問題なのは、あそこまでグイグイ行く女子が今までいなかったことじゃ。これが問題なのじゃ」とクゥ。



 ラシル様への直接的な愛情表現と媚び。

 事実、これは誰もしてこなかったことなのだ。

 白虎という存在が、初めてそれを実践している。


「そうね。私たちももっと積極的にいったほうがいいのかしら」とセデナ。


「積極的…」と、何か深く考え込むベッフィー。

 

「アピール不足」落ち込むセシュレーヌ。


 会議室はそれぞれ思考に耽るための沈黙に包まれた。

 その中で、我関せずという態度を取っている者が2名ほどいた。

 それを目ざとく見つけたエアノワリス。


「どうしてミーナはそんなに上機嫌なのかしら」


 エアノワリスの少し棘のある声。


「え?」

 私、知らない、どうかしたの?

 そんな風に見えるミイ。

 でもエアノワリスは騙されない。


「あなた、ラシル様の血を吸ったわね」


 エアノワリスの一言に、会議室がざわめいた。


「さぁ、何のことかしら」


「とぼけても無駄よ」


「あら。だって私、吸血鬼だもの」

 明確な否定をしないミイ。

 実の所、ラシルの血を吸ったミイは上機嫌だった。

 身悶えするほどの独占欲。

 身も心もラシルで満たされたのだ。

 ミイにとって、ラシルとの吸血行為と比べれば、どんなことでも些事なのだ。


 会議室が羨望の溜息と、激しい嫉妬に包まれた。


「まぁいいけど。それより、ナスカも随分と余裕があるように見えるけど?」

 エアノワリスの追及の矛先がナスカに向いた。


 そしてナスカが平然と爆弾発言をする。


「皆さんには申し訳ないのですが、私はラシル様と一線を越えました」


「越えていないだろう、糞エルフ」

 どこの誰だろう。

 あえて言及はしない。


「越える予定です。今はもう8合目付近です。確定事項と言っても過言ではありません」


 どういうことか説明しろと言った意見が相次ぐ。


「ラシル様は、私のお尻を愛でられると言いました」


「なっ!!」

 会議室が歪む。

 誰かが無意識に魔法を発動しようとしたようだ。

 

「自重してください!」

 堪りかねたショウがアナウンスする。

 これはミイ様の役目では?

 という疑問は最早どこかにいっている。


「ラシル様は胸ではなく、お尻を重視されると明言されました。それも、私のお尻を」


 暴動が起きそうな会議室。

 ようやくここで、その場に居合わせて一部始終を見ていたミイが説明した。

 説明を聞いて、安堵の溜息が会議室に満ちる。


「ナスカ、お主もまだまだじゃのう」とクゥ。


「ラシル様はお尻よりも胸よ、胸」とセデナ。


「ラシル様は顔だと思う」とセシュレーヌ。


 各々、それぞれ自分が一番自信のある所を、ラシルが一番好きなポイントだと力説する。



 ショウはそれを半ば別世界の出来事のように聞いていた。

 彼にとって、目下の関心事項はラシルから直々に命令された、行政機関の構築任務だ。

 今目の前で繰り広げられている舌戦は、ショウにとって無関係とまでは言い難いが、限りなく関係のないもので、できればあまり関わりたくない類のものだった。


「それで、皆さんは結局どうしたいんですか?」


 ショウの発言に場が静まり返る。

 おっと。

 やべー。

 やべーぞ。

 みんなこっちを見てる。


「それは良い指摘だ」とセシュレーヌ。


「妾たちがどうしたいか。それが重要じゃな」とクゥ。


「私は、お尻を磨く」とナスカ。


「私は胸かしらねぇ」とロメリア。



「そういうんじゃなくて、僕たちはこの世界に体を持って、生物として生まれた。聡明な皆さんには、この意味が分からないわけではないでしょう?」

 ショウは半ば呆れて言った。


「分かっているわ」とミイが皆を代表するように答えた。


「それならいいんですが。これは、チャンスですよ。決して結ばれることなんてなかった皆さんがラシル様と結ばれる機会です」


 会議室は、先ほどとは異なる意味で静まり返った。

 そうなのだ。

 ショウの言う通り。

 ラシルはプレイヤーで、自分たちはゲームの世界のNPCという存在。

 ラシルに恋をしようが、好きになろうが、どれだけ一緒の時間を過ごそうが、所詮はゲーム。

 キャラクターとして好きになってもらうことはあっても、本当の意味で愛してもらうことなど原理的に不可能だったのだ。

 それが今までの状態。

 望んでも、願っても、どうしても無理だった世界。


 だけど、世界改変がされた後である、今の状態は?


「ショウ、いいこと言うわね」とエアノワリス。


「流石、妾の副官なのじゃ」とクゥ。


「改めて、事態の重さに気付いた」とセシュレーヌ。


 あっ………

 事態を収束、鎮火しようとして、ショウは変な火を付けてしまったと悟った。


「各々、自分の存在意義を再確認する必要があるようね」

 ミイが皆を見渡して言った。


 それぞれ、無言で頷く。


「会議はこれで解散にするけどいいかしら?」

 ミイの提案に誰も反対しなかった。


「エルフ国との戦争、そして各拠点へのラシル様の訪問。分かっていると思うけど、抜かりの無いように」


 クゥの目が妖しく耀き、エアノワリスの目が冷徹で無感情なものになる。

 セシュレーヌの尊大な態度が大きくなり、ベッフィーの表情が引き締まる。

 それぞれのスイッチが入ったようだ。


「では、解散」


 会議終了後の世間話もほとんどなく、幹部たちは一旦禁城の1階ロビーを経由して、各拠点へと戻っていった。



「ショウ」

 鋭い声で名前を呼ばれ、ショウは振り返る。

 呼ばれた瞬間、声ですぐに上官のクゥだと分かった。


「クゥ様」

 ショウも答える。


「打合せじゃ。付き合え」

 いつにもなく真剣なクゥ。


 やべーなと思いつつも、どこかワクワクしてしまうショウ。


「畏まりました」



 ショウは、ミイとまだ部屋に残っていた各拠点管理者に頭を垂れ、クゥの背中を追って会議室を後にした。


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