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世界改変 ~アップデート~  作者: 、、、、、
4 秩序の破壊者
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092_失意の革命家2 修羅場


 セドゥラモントとジョナサンはラシルに促されるまま、席に着いた。

 立派な椅子とテーブル。

 恐らくここはダイニングで食事をする場所だろうということは、元王族であったセドゥラモントにも分かった。

 食事をするというのはあながち嘘ではないのだろう。

 エルフというのは嘘だったが。

 いや、変装はしていたものの、ラシルは自分はエルフだと言うことは一言も言っていなかったとセドゥラモントは思った。

 まだ私は騙されていない。

 他人には騙されないように、必要以上の注意を払って生きてきたセドゥラモント。

 そんな用心深い彼が、まだ騙されていないと思ってしまった。

 意図せずして、信じたいという願望が芽生え始めていることに他ならない。

 ラシルに対する自分の警戒心が下がっていることに、セドゥラモントは気付いていなかった。


「少々お待ちください」とラシルに言われ、席に着いて暫く待っていたセドゥラモントとジョナサン。

 料理でも作っているのかなと推測し、何か匂ってこないかと鼻をクンクンするセドゥラモント。

 隣を見ると、ジョナサンも同じ事をしているのを見て恥ずかしくなり、前を見るとその全てを笑顔のラシルに見られていたことでもっと恥ずかしくなった。


「これは失礼。このような場所に来るのは久しぶりなもので」


「いいえ、気になさらず。もうすぐ集まります」


 そこから数分ほどした後、女の子の煩い声が響いた。


「主様-!!」


 ジョナサンと同じ見た目の14、15歳くらいの女の子だろうか。

 下着に毛が生えたような破廉恥な衣装で登場した。

 毛が生えたというのは文字通りで、ブラジャーとパンツから猫の毛のような、灰色の動物の毛がモッサリと生えている。

 頭の上からは猫耳が生えており、お尻からは猫の尻尾。


「じゅ、獣人か!?」

 セドゥラモントが椅子から立ち上がりかける。


 女の子は真っすぐにラシルの所へ走っていき、わざとらしくジャンプしてラトルに飛びついた。

 顔を胸に擦り付けて「久しぶりなのじゃ~」とやっている。


 ラシルは苦笑し、ミイは尻尾を強く握って引っ張っている。

 ラシルから引き離そうとしているのだろう。


「どうしてそんな恰好なんだ?」


「主様からご飯を一緒に食べようという誘いじゃからのう。気合いを入れてきたのじゃ」


 煽情的な、直視できない衣装。

 猫カフェと〇〇リフレの良いところ取りをしたようなお店のキャスト。

 明らかに違法だろう。

 抱き着かれている腕の感触を意識すると、理性が吹っ飛びそうになる。

 ラシルは溜息をつくと、業務連絡が曲解された可能性について考えた。


 そのすぐ後に火国女王レイランとその妹レイリン、風国王妃エザイア、木国王に水国王オキサイド、火国大臣シュウライ、火国将軍リャンエンに水西フォリオまで集まった。

 ラシル、ミイ、ナスカ、メルバコル、ルニエスティのエルフ国へ行ったメンバーに加え、ロメリアとエアノワリスが加わった。


「みんな忙しいのによく集まってくれた」


「ラシル様がお呼びしあらば、いつでも駆け付けます」とレイラン。


「ラシル様との会食以上に重要なことなどありませんからな」と木国王。

 オキサイドやシュウライたちもうんうんと頷いている。


「それで、本日はどうされたのですか?」とエザイア。


「ゲストを呼んだので、食事をしながら話し合いでもできればと思って」


「ふむ。エルフじゃの。もう一人は、ハーフかの?」と白虎。


「鋭いね。まぁまぁ、まずは食事にしましょう。今日はゲストのリクエストで野菜をふんだんに使った料理です」


 ラシルが壁に控えていた神仙に頷くと、部屋の隅に料理が乗ったテーブルが現れた。


 セドゥラモントとジョナサンは完全に雰囲気に飲まれていた。

 大勢の知らない人達。

 各々がリラックスしたような雰囲気で料理を取りに行っている。 


 どうしようかと2人で顔を見合わせていると、家に訪ねて来たダークエルフと恰幅良い中年男性に声を掛けられた。


「お料理を取りに参りましょう」と笑みを向けるルニエスティ。

 

「野菜料理をリクエストされたとラシル様が仰っていたが、儂もここの料理の虜での」と木国王。


 ジョナサンはルニエスティと一緒に、セドゥラモントは木国王に連れられてビュッフェコーナーへ行った。


 美人のルニエスティに連れられたジョナサンは、顔を赤くして照れまくっていた。


「ジョナサン君は肉を食べたいんだったよね?」とルニエスティ。


「はぃ」

 子細い声のジョナサン。


「ローストチキンとラムのステーキ、どっちにする?」


「どっちも……」


「ジョナサン君は欲張りなのね」


 ジョナサンは俯いて真っ赤になってしまった。


 一方で木国王に連れられたセドゥラモントは、数々の野菜料理に感動していた。


「これは、どういう料理ですかな?」とセドゥラモント。


「これはホウレンソウのキッシュですな。儂も一度食べたことがある。卵と生クリームを加えてパイのように焼いたものです。絶品ですぞ」と木国王。


「ほほぅ、それではこれは?」と、知識欲が覚醒したセドゥラモントが質問攻めにしている。

 木国王もまんざらではないようで、料理の知識を披露している。


 席に着いて食べようとしたジョナサンにルニエスティの待ったがかかった。


「ほら、汚れるよ」

 ナプキンを取ってジョナサンに付けてあげるルニエスティ。


「ぁ、ありがとう」


「どういたしまして」


 ジョナサンはローストチキンを口に運んだ。


「ん!!」


「美味しい?」


「美味しい!!」


「このソースを掛ければもっと美味しくなるわよ」

 ルニエスティはグレイビーソースを取って、ローストチキンにかけ始めた。


 ジョナサンも同じようにソースをかけて、また一口食べる。


「美味い!!」


「よかった」


 他の王族たちが「いただきます」をして食べ始めて少し経った頃。

 ようやく席に戻って来たセドゥラモントと木国王。

 二人は並んで座っている。

 席に決まりはなく、自由移動になっている。


 キッシュを食べたセドゥラモントが目を見開き、次々に口に運んだ。


「ここの料理はすごいじゃろう」と木国王。


 口に沢山食べ物が詰まっているセドゥラモントは首だけで肯定する。



 ラシルもご飯にありつく。

 昼間はエルフの大衆食堂でほとんど食べなかったから、お腹が減っていたのだ。

 グレイビーのたっぷりかかったローストチキンを食べ、キッシュにもグレイビーを掛けて食べる。

 やっぱり美味しい。


 周りを見ると、皆それぞれ話し込んでいるようだ。

 最近ここに来たエザイアはリャンエンと話している。

 シュウライとフォリオは何か相談しているみたい。

 オキサイドはレイラン、レイリン姉妹に挟まれて、お喋りに付き合っている。

 意外なグループは、白虎を中央にして、左にロメリア、右にエアノワリスが座っていた。

 ロメリアとエアノワリスが白虎に何か詰め寄っていて、白虎が困っているようだが、白虎が押さえられているのでよしとする。

 少しくらい困ればいいのだ。



 食事がほとんど終わりかけているのを確認して、話の本題に入る。

 テーブルの上にある小さなベルを鳴らした。

 出席者は静かになり、ラシルに注目した。


「それでは皆さん。引き続き食べながらでいいので、今日お呼びした本題に入ります」


 全員、真剣な顔になった。


「まず本日及びしたゲストを紹介します。中央エルフ国の現国王の実の兄でいらっしゃる、セドゥラモント卿です」


 場が凍りついた。

 ラシルはかまわず紹介を続けた。


「セドゥラモント卿の隣にいるのは、エルフ国王の実の息子であり、ハーフエルフのジョナサン君です」


 硬直している王族方。

 ギルドの幹部たちは平気な顔でラシルの次の言葉を待っている。


「なお、セドゥラモント卿は半世紀前に国内で起こった奴隷解放運動に加担したため、先王から蟄居謹慎処分を受け、都市の外れで暮らしています。現王との仲も非常に険悪です」


 言葉を区切って辺りを見回すと、白虎だけが口をパクパクと動かしていた。


「次に、ジョナサン君ですが、現王の息子とはいえ、母親は奴隷身分だった元木国出身の人間だったので、ハーフエルフです。こちらも、現王から非常に疎まれております。付け加えますと、母親はジョナサン君が生まれた際に死亡しています」


 木国王を見ると、俯いて暗い表情をしていた。


「それでは当方の紹介に入ります。私の部下は割愛させていただきますが、セドゥラモント卿の隣にいるのが木国王、火国女王とその妹君、水国王、風国王の奥方、白虎帝、そしてそれぞれの国の関係者と、後はジョナサン君の隣にいるのが中央エルフ国に故郷を奪われたダークエルフです」


 ラシル様がぶっこんだ。

 また修羅場をお作りあそばされた、とメルバコルは思った。


「では紹介も済んだことですし、本題に入ります」


「ちょっと、ちょっと待つのじゃ」口を挟んだのは白虎だった。


「どうした?」


「ちょっと混乱しておる。エルフだとは知っておったが……」


「うん。白虎と木国王には少し刺激が強かったかもしれない」


「いや、良いんじゃ。戦はそういうものだからの。ただ心の準備が」


「白虎は意外と仲間想いだもんな」


 「意外と」の部分を聞いて吹き出したのは水国のフォリオだった。

 白虎に凄い形相で睨まれ、フォリオの顔が真っ青になる。


 フォリオに毒気を抜かれた白虎は、ふぅと息を吐いて謝罪した。


「話を遮って悪かったの。主様」


「他には?」とラシルが笑みを向ける。


 さっきまで楽しそうたったセドゥラモントとジョナサンは険しい顔をしている。

 ジョナサンにしてみれば、自分の出自を公の面前で暴かれたのだから、怒っても仕方ないだろう。


「では、話を進めます。なぜ皆さんに集まっていただいたかを説明します」


 ラシルは説明した。

 発端は禁城とは別の拠点の近くにルニエスティが長を務めていたダークエルフの集団がエルフに追われて逃げてきたこと。

 彼等を保護し、エルフを追い払ったこと。

 その後セドゥラモントから使者が来て会見したいという申し出があったこと。

 そして今日、エルフの王に会って来たこと。

 やり取りの内容は酷く、おそらく近日中に全面戦争に突入するだろうということ。


 ここまで説明し、一呼吸置いた。


「ただ、ここで一つ問題がある」


 メンタルを持ち直した木国王も含め、全員ラシルの次の言葉を待っていた。


「国民の約9割が奴隷なんだ」


 レイランを始め、眉をひそめた者が数人。


「ラシル様、発言してもよろしいでしょうか」レイリンだった。


 ラシルは頷いて発言を促した。


「奴隷になっている者全員を解放することはできないのですか?」


「それには2つ問題がある。1つ目はミイから説明しよう」


 ラシルの指名を受けたミイは、説明を始めた。

 セドゥラモントのとしの概要。

 人口と奴隷にっなている種族の構成比。

 奴隷契約に使われている術式とその解除方法。

 精神術式ではなく、契約という点も詳しく説明された。



「事実上、皆殺しにするしかないということか」と白虎。

 他の王族も黙り込んでしまった。


「そう。そして次の問題点を説明しよう」

 

 ラシルはこの奴隷解放の意味について説明した。

 エルフの国がダークエルフの一件で宣戦布告してくるのであれば、戦うのは問題ない。

 しかし、その後の奴隷解放となると、おせっかいが過ぎるのではないか。

 先の戦争の時はあくまでも火国に肩入れし、火国人の解放という名目があった。

 また、滅ぼした都市はいくつかあるが、それは戦争行為継続中の一環であり、自由意志で攻撃対象都市に居住していたものだ。

 今回のケースと前のケースは同じように見えて、意味合いが全く異なる。


 このラシルの説明に、各王族は理解を示した。


「そこで、あなたたちに相談したい。火国は周辺各国からの被害を受けたし、水国は王が暴走していた。風国は悪魔種に対して抵抗があり、白虎帝はエルフと交戦中だ。ダークエルフはエルフに対して思うところがある」


 取れる選択肢は3つ。

 エルフの国とは価値観が合わないので、現体制と国交を樹立することはないことが前提だ。

1つ目、派兵された武力攻撃のみに対処し、内政である奴隷は黙認する。つまり、そのままにして放っておく。

2つ目、奴隷解放に全力を尽くす。

3つ目、その他の方法。体制の転覆を狙ったり、宗教的手段を使用して価値観を変える。しかしこれには時間がかかる。


「どうすればいいだろう。こちらの正義を押し付けるべきだろうか」

 

 誰からも回答は無かった。

 当たり前だ。

 そんなすぐにポンと答えが出るものでもない。

 とりあえず共有することが大事なのだ。

 今日はこれでよしとしようとラシルは思った。


「よし。難しい話はこれくらいにして、デザートとお酒にしよう」


 ラシルは卓上にあったピンク色のベルを鳴らした。

 今日、さっき食べている時に思いついた案。

 皆の注意を引くための黄色いベル。

 もう一つが料理を発生させるためのピンクのベル。

 高くてあまり目立たないような音になっている。


 料理が乗っていたビュッフェテーブルに、デザートが出現した。


 話が重すぎたせいか、誰も席を立たない。

 困ったなとラシルが思っていると、白虎が席を立った。


「そうじゃな。今は深く考えてもしょうがない」


「そうですね」とレイランが同意して席を立つ。


 2人につられて、他のみんなもデザートとお酒を取りに席を立つ。


 ジョナサンもルニエスティに声を掛けられてデザートのテーブルへ。

 と思いきや、お酒に手を出している。

 ウイスキーを取ろうとしたラシルは、たまたま隣に来たジョナサンに話しかけた。


「ジョナサン、さっきはごめんな。プライベートなことをみんなの前で暴露するようなことをして」


「いえ、良いんです。最初は感情的になりかけましたけど、ここにいる皆も一緒だって思うと。それにラシルさんが真剣に考えていることが伝わりましたから」


「ありがとう。そう言ってくれると嬉しいよ」


「それより、料理すっごく美味しいです!」


「良かった。今日エルフの大衆食堂で食べたけど、ちょっと酷かったから」


「ですよね。火を通していないなんて、食べ物じゃないですよ。まったく」


「はは。それは一理あるかもね。そういえばジョナサン、お酒飲めるの?」

 ラトルは何気なく確認した。


「はい。今年で30歳になりますので」

 見た目が16歳くらいのジョナサン。


「ふふ。30歳かぁ。生意気盛りね」とルニエスティ。


 まさかの同い年のラシルは、何も言えなかった。

 ルニエスティは一体何歳何だろう。


「さぁ、ドゥラモント卿、儂らも行こうかの」

 木国王がドゥラモント今日の方に手を添えている。


「木国王殿」


「デザートもお酒も素晴らしいぞ?」


「それは楽しみじゃ」


「ぉ、いける口かの?」


 ドゥラモントは木国王に促され、席を立った。


 


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