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世界改変 ~アップデート~  作者: 、、、、、
4 秩序の破壊者
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084_3つの来訪者5 モーニング


 朝起きると、10時を過ぎていた。

 二日酔いで頭が若干重く、体も気だるかった。

 魔法を使えばこういったバッドステータスは即座に解除されるのだが、それはしなかった。

 この気だるい雰囲気も悪くはないからだ。

 二度寝したい気持ちを抑えて、部屋を出る。

 歯磨きや洗顔は魔法を使って一瞬で終わる。

 ベッフィーが開発した生活魔法だ。


 この魔法の開発には苦労した。

 大量破壊魔法や攻撃魔法、農業魔法といったものよりも、こういった魔法の方が難易度が高い。

 攻撃魔法はいかに相手を殺傷するかを極めていけばいいだけだし、農業魔法なんかは決まった手順の合理化を進めて行けばいい。

 しかし、自動で口腔内を清潔にするというのは難しいのだ。


 当初は口腔内細菌と歯垢プラークのみを除去するために放射線を発生させる魔法を使った。

 イモータルで試したところ、被爆して大ダメージを受けた。

 生身の検体だったら死んでいただろう。

 次に口内で爆発を起こすという発想を実現した。

 最初の何度かは頭が吹っ飛んだ。

 調整して顎のみを吹っ飛ばすことに成功。

 吹っ飛ばした顎を再生魔法で治すという方法を使ったが、何度試しても直した顎は歯磨き前のものになった。

 顎を吹っ飛ばして再生すると同時に時間魔法を使って巻き戻すという手法も試みられたが、どの時間軸まで巻き戻すのかが魔法使用者によって異なるという結論に達して断念。

 天才ベッフィーは次の日にはその問題を解決した。

 口内細菌とプラークのみを爆破する魔法を開発。

 試したところ、細菌とプラークが口の中で飛び散っただけで、全く意味の無い結果に終わった。

 爆破ではなく除去という概念に着目し、細菌とプラークのみを転移させる魔法を開発。

 しかし数が多く、制御も難しいので実用化を断念。

 何度か成功したが、口臭がとれたりすることはなかった。

 細菌とプラーク除去だけでは意味が無いことに気付く。

 いよいよ行き詰まりを見せた研究だったが、エアノワリスの登場で状況が一変。

 最終的には白魔法と水の魔法を融合させた形で完成した。

 これを他の研究と同時並行しながら、3日という短期間で完成させるのだから、ベッフィーは凄い。


 磨いたばかりの歯に思いを馳せながらダイニングに入ると、そこには先客がいた。

 3名の風国の騎士たちだった。

 騎士に扮していた白虎を除いて、9人いた内の3人。

 彼女たちは全員女性だった。

 残りの6人は男性。

 レイランが女性ということで、同性の騎士も少数ながら派遣されたようだった。

 彼女たちはすっかりリラックスしたような雰囲気で、食後のお茶を楽しんでいた。 


 俺の入出に気付くと、みんな慌てて立ち上がった。


「いいですよ、そのままで。どうぞ続けてください」


 3人は1礼した後、再びおしゃぺりを始めた。

 心なしかさっきよりも声のトーンが落ちていた。


 朝食のビュッフェに行ってトレーを取る。

 もうこの時間だと昼食も兼になるかもしれない。

 麦がゆと梅干、紅鮭とノリを皿に取っていく。

 スクランブルエッグとソーセージ、葉物のお浸しを追加。

 飲み物は超濃厚な野菜ジュース。


 少し迷った後、さっきの騎士たちが座っているテーブルへと近づいて行った。

「ご一緒してもいいですか?」


 3人は再度立ち上がると「はい!」と元気よく返事をした。

「僕は王族でも貴族でもないので、そんなに畏まらなくてもいいですよ」と言うと、苦笑された。


 席に着くと、さっきから良い香りのしている麦がゆをすする。

 うん、おいしい。

 次に梅干しを食べて、また麦がゆで酸っぱさを中和。

 あーたまらない。


 視線に気付き、顔を上げると、注視していた3人と目が合う。

「あの、ラシル様ですよね?」

 長い黒髪の、目鼻立ちがはっきりした女性が話しかけてきた。


「はい、そうです」


「あの、ラシル様私たちお食事のお邪魔でしたら……」

 栗色の髪を三つ編みにしている女性が、遠慮がちに退席したいと申し出る。


「気を使わせてしまってすみません。少し話をしたくて」


「私たちと、ですか?」

 問いかけてきたはショートヘアの女の子。どこか勝気な顔をしている。


「迷惑じゃなければ」


「迷惑だなんてそんな」


 彼女たちは自己紹介をしてくれた。

 長い黒髪の子はメイア、三つ編みの子はワーメル、ショートの子はファムと名乗った。


 ここまでの長い旅路の話をしてくれ、それはとても興味深かった。

 携行食料が2週間で無くなり、食べ物探しが大変だった話。

 そこからルートを変更して、最短ルートではなく、森との境界を歩いてきた話。

 森の方が木の実や食べられる草が多く、獲物となる肉も多いからだ。

 村や町を迂回し、接触を避けてきたこと。

 そのために夜間行軍をした苦労話を聞いた。


「帰りは町や村に寄って行けるから、気持ちがだいぶ楽」とワーメルが言って、「だよねー」と他の二人が相槌を打った。


「帰りは送って行きますから、すぐですよ」


「え? どういうことですか?」とメイア。


「転移術が使えるんです」


「転移術ですか? あの、一瞬で移動できるという」


「はい。ですので、帰りは一瞬ですよ」


 3人は驚きで目を丸くしていた。


 紅鮭の最後の一切れを口に入れ、麦がゆで流す。

 あー、最高。


 ショートヘアのファムが目を逸らして言った。

「ここすっごく居心地がいいから、正直帰りたくない」


「ずっと住みたいなー」とメイア。


「そんなに居心地がいいですか?」


「はい、とっても!」とファムが即答。


「昨日入った温泉は最高でしたし、料理も素晴らしかったです」とメイアが目をとろんとさせて言った。


「お酒も、久しぶりに飲みました」とワーメル。


「気に入っていただけたようで何よりです。お風呂は24時間いつでも入れますからご自由に」


「本当ですか?」


「ええ。あと好物とかはありますか? 教えていただければ夕食にお出ししますよ」


 三人は顔を突き合わせて密談を始めた。

 どうやら一つに絞るようである。


「1つに絞らなくてもいいですよ。3人とも仰ってください」

 俺はそう言ってにっこり笑った。


「はい、ではお言葉に甘えて。私は魚料理です。レイラン様はここの料理は全て美味しいとおっしゃっていました。火国や風国は内陸部にあるので、あまり海の魚を食べる機会がありません。美味しい魚料理を食べてみたいです」とワーメル。


「私はラーメンというものを食べてみたいです。レイラン様が絶賛されていたので、興味があります」とメイア。


「私はクレープとパフェというものを。夢のようなデザートと聞きました」とファム。


「分かりました。今日の昼はラーメンを、夜は魚料理をメインにして、デザートはクレープとパフェをお出ししましょう」


「ありがとうございます!!」


 給仕兼案内役でいた神仙を呼んで、今の内容を伝えた。



「それで、他の騎士の方たちは?」


「男性陣は訓練をしています。なんでも、白虎帝様の試合の前に火国のリャンエン将軍と戦うという話に昨日なりまして」


「負けられないと練習をしているようです」


「へぇーそうなんだ」


 それから少しお喋りしていると、訓練を終えた騎士たちが戻って来た。

 今後の予定についてフェルウェン団長と打合せをした。

 試合開始時間は2時で最初に風国騎士団対火国リャンエン将軍、その後に白虎帝対クゥ。

 試合後に水国や木国、土国とそれぞれ会談する予定。

 夜は他国の王族も交えた夕食会となる。

 研修所を見学したいという要望があったので、明日の午前は龍王城へ行く。

 そして午後は火国各地の村や町の状況視察。

 そのまま風国に転移で送っていってもいいのだが、騎士たちの強い要望によりもう1泊。

 帰るのは明後日になる。

 なお、白虎は基本的に騎士たちと同行する。


 打合せが終わった頃、眠そうな顔の白虎がダイニングに入って来た。

 俺の顔を見るなり眠気が覚めたように目をぱっちりさせ、小走りで近寄って来た。

 隣に腰かけ、腕を掴もうとする。


「それじゃあ、お昼はラーメンなので楽しんでください。また後で」


 俺は急いで立ち上がると、その場を離れようとした。


「主様~」


 しょぼんとした白虎の頭を撫でて、席を立つ。


 ダイニングから出ると入れ違いでレイリンを連れたレイランと会った。

「これはこれはラシル様、ご機嫌麗しゅう」とレイリン。


 誰?

 どうした。


 キャラが変わっていないか。

 レイリンは昨日来れなかったので、風国の騎士たちとはこれが初見だ。

 仲良くやってほしい。


 さっき朝食を食べたばかりでお腹が空いていないので、ラーメンはまた今度。


 予定の時間まで龍王城に転移して体を動かす。

 メルバコルに付き合ってもらい、レベリング。

 龍王城から最も離れた空き地に不可視フィールドを展開しての戦闘なので、研修生にはバレない。


 SS(シャドウソルジャー)の首を刎ねながら、メルバコルと念話で話す。


「なぁ、メルバコル」


「はい、ラシル様」


「これからどうすればいいと思う?」


「これからというのは、全体的にでしょうか」


「うん、そう」


 前衛のSSを壊滅させ、後衛で魔法を展開しているSSに向かって走る。


「そうですね、ラシル様がわからないとなると、私にもわかりません」


「メルバコルは元の世界に戻りたいか?」


「正直、戻りたくありません」


「理由は?」


 後衛のSSの制圧完了。


「ちょっと長くなりますが、よろしいでしょうか」


 メルバコルは魔族の上位種を30体とエルダーリッチ15体を召喚。


「いいよ。お前の思いを聞かせてくれ」


 上位種の数体が近接戦闘を仕掛けてくる。


「元の世界はゲームの世界でしたので、安全が保障されていました。致命的に誰も死んだりすることはありません。ラシル様とギルド全体の安全を考えるのであれば、元の世界の方がいいのかもしれません」


「うん。でも違うんだな?」


 魔剣と魔槍、イービルアクスが三方から襲う。


「そうです。こちらの世界では、ずっとラシル様がいらっしゃいます。ログアウトせずに、24時間ずっと一緒にいられます」


「まぁね」


 華麗に回避しつつ、魔剣の上位魔人に切り込む。


「それに未知というのはとても面白い。システムで決められた規定路線を行くより、ずっとずっと面白い」


「うん」


 防御担当の上位魔人が絶対防御を発動。

 こちらも魔法を発動しようとするも、エルダーリッチの爆撃攻撃。


「フルで五感を得ることができ、味覚で料理を味わうことができるようになりました。それは素晴らしい体験でした」


「確かに。お前たちは食べる必要が無かったからな」

 

 吹っ飛ばされた風を装って退避。

 上位魔人5人が詠唱完了。

 精霊のようなバチバチした球体から数十本の触手が伸びてくる。

 その球体が5つ。


「はい。情報量が多彩で、生きているという実感があります」


「俺は生きていた時、死んでいたようなものだったから何とも言えないな」


 転移でエルダーリッチの後ろに回り込み、1体の首を刎ねる。

 そこに大量の矢が射かけられる。

 すぐに別の場所に転移。


「現実のほうですか?」


「そう。ゲームをやっている時、現実的に死んでいる時の方が生きているという実感があった」


 3体のエルダーリッチが詠唱完了。

 転移術が封鎖された。

 ちょっとヤバイ。


「そうですか。それは難しいですね」


 物理攻撃のみという縛りを外して魔法も併用する。

 重力魔法を展開、迫って来る触手と上位魔人のスピードを落とす。

 

「なかなか上手くいかないことばかりでな」


 ブラックボックスを複数召喚。

 重力にとらわれない闇のレーザービームを連射。

 ブラックインフェルノ、ダーククキュリトス、ペインリザレクションを発動。


「ラシル様でさえうまくいかないとなると、それはそうとう難易度が高いのでしょうね」


 地面を砂地に変え、同時に砂の中から出てきた大きな針でエルダーリッチの体を砕く。


「高かったなー、難易度。俺にとっては高かった」


 回避したリッチには闇の炎が襲う。


「結局逃げていたんだと思う。現実から。ゲームをやることで」


 ブリュエールトを発動。

 

「ラシル様は元の世界には戻りたいですか?」


 上位魔人3体の体が溶けて液体になっていく。 

 ブシャエールトを発動。


「戻りたくないかな。でもこっちの現実でもうまくやれるか分からないけど」


 上位魔人2体の体が風化していく。


「それなら大丈夫です」


 ガンマブレス。


「どうして?」


「今は僕たちがいるからです。元の現実はラシル様一人。僕たちは一緒に行くことがてきません。ラシル様が困っていても、何もすることができません」


 上位魔人の皮膚がはがれ、筋肉がむき出しになる。

 残りのエルダーリッチが錯乱状態になる。


「そうだな」


「この世界には僕たちがいます。きっと大丈夫です」


 地面を蹴って、最後の仕上げ。


「何だか泣きそうだよ、メル」


 苦痛にあえぐ魔人たちを物理攻撃で次々と屠っていく。


「ラシル様もメルって呼ばないでください」


「メルはいい子だ」


 討伐完了。


「ちょっとキツイの行きますよ」

 

 様々な動物のパーツをぐちゃぐちゃに混ぜたキメラが20体。

 その上位種の悪魔の羽を持っているものが10体。

 麒麟が5体。

 悪魔種と竜種の混合生物が3体。


「鬼か」


「自業自得です。元い、ラシル様のためです」


 麒麟が咆哮を上げ、虹色のブレスを口から出す。


「やっば」


「それはそうとラシル様」


 キメラの胴を貫き、もう1匹の首を飛ばす。


「なんだ?」


 胴が割れて2体に分裂。

 もう1体の首が生えてきた。

 

「こういった話はミイやエアノワリスにはしているのですか?」


「お前、魔力込めすぎだろう」

 

 物理攻撃では次から次へと復活していく。


「これくらいじゃないと楽しめないでしょう」


「くっ!」


 ロードオブダークネスの称号を持った竜だ。

 極めて無敵に近い魔法耐性。

 これはキツイ。

 魔法だけしか使えないというのはエグい。


「どうなんです?」 


「言ってないよ。言う訳がないだろ」


 腐敗魔法を風の刃に乗せて無数に放つ。

 次の魔法までのけん制だ。


「どうしてですか?」


「ミイたちを不安にさせるわけにはいかないだろう」


 猛スピードで上空に飛翔。

 大規模術式展開準備。 


「そんなことないですよ。逆に喜ぶと思いますよ」


 空間内で上下が逆転した。


「いや……それはないな」


 少し間のあった後のラシルの答えを聞き、メルバコルは肩をすくめた。 






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