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世界改変 ~アップデート~  作者: 、、、、、
4 秩序の破壊者
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081_3つの来訪者2 白虎帝


「良く気付いたな」


 フェルウェンの後ろに控えていた部下の1人、部隊の最年少と見られる女の子はガラリと態度を変えた。


「いつからだ?」

 少女は尊大な態度で問うた。


「最初からだよ。来る前から分かっていた」


「ほぅ」


「君は妖怪仙人だね。人型の形をしているけど、元の種族は猫だ」


「そこまで看破されているか」


「ここの拠点管理者と一緒だから不思議はないよ。それで、ここへ来た目的は?」


「そうよの、観光じゃ」


「へぇー。白虎帝ともあろう一国の長が? 護衛も付けずに?」


「何か問題あるか?」


「問題はないけど。どうして風国の人と一緒に?」


「吾輩の領地を通ったフェルウェンがここに来ると聞いてな、同行したのじゃ」

 白虎帝は。不敵に笑った。


「私から説明を」

 フェルウェンが青ざめた顔で言った。


 風国から火国まで街道を外れて隠密行動をしてきたフェルウェンの部隊。

 白虎帝の領地を横切る際に白虎帝に見つかり、一緒に連れて行けと頼まれたらしい。

 拒否すれば通行させないと脅され、仕方なく同行を許したのだった。

 他国の領土を通過するのだから、その許可はもちろん白虎帝の権限の話だ。

 それに許可なく通行しようとしたフェルウェンの方に非がある。

 レイラン救出の邪魔はしないという約束は最低限取り付けた。


「ここには観光できるような場所はないけど」


「そうでもないぞ。この禁城とかいう城は興味深い。それに、この部屋だって十分に面白い」

 白虎帝は上を指さした。


「ただの照明だよ」


「嘘じゃ。精霊じゃろうに」


「おっと、精霊を知っていたんだ」


「ふん。まあいいわ」


「それで、本当の目的は?」


「だから観光じゃと言うておる」


「まぁいいや。それは追い追いで」


「一つだけ取引がしたい」


「何?」


「お主と戦いたいのじゃが」


 戦いたいとはどういうことだろう。

 不意打ちでかかって来ればいいだろう。

 もしくは大きな軍事力があるのだから、戦争でも仕掛けれは手っ取り早いのではないか。


「戦争か?」


「違う違う。1対ぬの試合じゃ。戦争などせぬわ」


「対戦か。でも勝てないよ?」


「分かっておる」


 分かっているのか。

 白虎帝のレベルは100に届かないくらい。

 これでは普通に戦っても俺たちには勝てないだろう。

 レイランといい勝負をするくらいか。


「俺と戦いたいのか?」


「別にお主の仲間なら誰でもいい」


「うーん」


「ただ手合わせを願いたいだけじゃ。おぬしらが勝ったら色々と教えてやろう」


「何を教えてくれるんだ?」


「吾輩はこれでも長生きをしているのでな。この世界のことじゃ」


 へぇー。

 理由や目的は分からないけど、対戦するくらいなら安いものだ。

 他にスパイが紛れ込んでいないのは確認済だし、ダークエルフの時のように遠距離通信ができるアイテムは持ち合わせていない。


「わかった。対戦をして、買ったら情報をもらう。それでいいか?」


「うむ」

 白虎帝は満足そうに頷いた。


 会談を終えた後、長旅の疲れを癒してもらうために禁城でゆっくり休んでもらうことにした。

 対戦は今すぐにでもいいと白虎帝は言ったが、負けた時に疲れていたと言い訳をされても困る。万全の状態で臨んでもらうために対戦は明日にすることに決定。

 こちらも対戦相手の選定をしたり、場所を考えたりしなければならないので、対戦開始は明日の午後とした。


 白虎帝は一応国家元首、それも各国王族よりも格が上ということで、それなりの待遇をすることにした。

 とはいっても、大浴場の解放は誰にでもしていることなので、料理の食材をちょっと豪華にしたくらいだ。


 大浴場を満喫した白虎帝と風国の騎士たち。

 白虎帝は大浴場がかなりお気に召したようで、1時間ほど入っていたようだ。


「満足したぞ。あの大浴場は素晴らしい」

 風呂から上がった白虎帝はご満悦だった。

 気に入っていただけたようで嬉しい。 

 入浴後の夕食時はあくまでも外交なので礼服にしようか考えたが、それはいらない、もっと楽な服でいいと言われたため、甚平を支給。

 灰色の甚平に身を包み、ピョンピョン飛び跳ねてはしゃいでいた。

「これは楽じゃの」


 噂に聞いていた、武を追い求める白虎帝という怖いイメージが完全になくなった。

 

 今日のおもてなしはもちろんビュッフェ形式。

 コースで一品一品出すよりも好評だったためだ。

 嫌いなものや苦手な料理が出てきたとしても、ビュッフェなら好きな物を好きなだけ食べることができる。

 食の好みも入浴前に聞いている。

 白虎帝はお肉なら何でも。

 風国の騎士たちは特に苦手な料理はないという。

 

 というわけで今日のメニューは肉料理。

 じっくり時間を掛けて焼いた鳥の丸焼き、ローストチキン。

 丹念に一つ一つ手作りをした高級ソーセージ。

 ローストビーフ。 

 骨付きのラム肉。

 どれも通常の肉とは一味違う。

 選りすぐった特別な家畜を使用し、腕によりをかけて作ってもらったものだ。

 付け合わせに様々なソースを用意した。


 サラダも豪華だ。

 希少な薬草をふんだんに使った一品。

 肉料理と合うように、さっぱりとしたドレッシングを用意。


 そして一番手間をかけたのはお酒だ。

 白虎帝はお酒が大好きなのだそうだ。

 お酒は主にベッフィーの拠点の専門チームが開発している。

 醸造や発酵といったものは化学的な分野だからだ。

 開発された品の味見はロメリアの拠点のドワーフとメルバコルの拠点の悪魔たちが行っている。

 そこで味見をパスした品が、次は品評会にかけられる。

 そうした過程を経て完成したレシピが、ロメリアの拠点とメルバコルの拠点で生産されるのだ。

 ロメリアの拠点ではビールやウイスキー、日本酒、ブランデーといったもの。

 メルバコルの拠点ではワインを生産している。

 ちなみに、原材料は禁城周辺の畑で採れたものを使っている。

 料理に関してはゲームの世界で豊富にあったし、色々とレシピがあるので簡単に再現できた。味覚が無かったので、ほとんど形だけであるが、データとしてはあったのだ。

 一方、お酒に関しては、ゲームの世界では酔うことが出来ないため、ほとんど需要がなく、運営もプレイヤーもそこに力を入れなかった。

 基礎的な作り方はなんとか情報としてあるが、それを流通している程度に美味しいという次元まで持ってくるのが大変だった。

 


「この度は急な来訪にも関わらず、歓迎をしてくれて感謝する」

 長湯のせいか、若干し上気した顔の白虎帝は真面目な顔で感謝を述べた。

 見た目は中学生くらいの女の子。

 甚平から伸びる手足は細くて白く、顔と同じように火照っていた。

 肩まで伸びた紙髪の毛は、色素が少し薄めの黒髪で、所々白くメッシュを入れたようになっている。

 顔はネコ科だからなのかどうかはわからないが、どこか愛嬌のある人懐っこさが出ていた。

 美人で可愛い。

 クゥと同じ動物から妖怪へと進化した存在。

 クゥがいつもとっている人型の姿よりも少しだけ成長させて、目元を穏やかにした感じだろうか。

 

「滞在中は好きなだけ寛いでいってください」


 給仕のために控えていた神仙に頷くと、部屋の隅にテーブルと料理が現れた。


「もう食べてもいいかの? 料理はどうするのじゃ? 誰か取ってきてくれるのかの?」


「給仕に申し付けてもいいですが、自分でとりに行くとより一層楽しめますよ」


「そうじゃな」


 白虎帝は嬉しそうに椅子からピョンと飛び降りると、小走りで料理の方へと走って行った。


「さぁ、風国の皆さんも。好きな物を好きなだけ」


 遠慮していた風国の騎士たちはラシルの言葉に促されて白虎帝の後を追った。

 みんな甚平が似合っている。


「さぁて、俺も取りに行くか」


 

 席に戻ると、白虎帝は7枚の皿に料理を大盛にして待っていた。

 満面の笑顔でほくほくしていた。

 風国の騎士たちはもちろん1皿。量も普通だ。


「では食べましょうか。その前に飲み物を」


「おススメの酒を頼む」と白虎帝。


 風国の騎士たちもみんな酒は窘めるようだ。


 まずはビールから。

 キンキンに冷えたビールジョッキを給仕の神仙がアイテムボックスから取り出していく。

 その様子を白虎帝が鋭い目で見ていた。

 アイテムボックス、亜空間収納が珍しいのだろうか。

 でもビールは直前までキンキンに冷えていなければダメなのだ。生でなければ。


「では、乾杯!」

 グラスを突き合わせ、ビールを呷る。


「くぅー!!!」


「美味い!!」


 歓声が上がった。


「おかわり!!」

 白虎帝が空のジョッキを給仕に見せていた。


「ラシル様、この酒は研修所でも飲んだことがないのですが。いや、同じビールは飲みましたが、これはちょっと違いますね」


 火国のリャンエン将軍がジョッキを見て首を傾げている。


「よく気付きましたね。改良を進めていたのです。ようやく満足のいくものが最近できました」


 名付けて、ラシルスーパードゥラァイ。


「ほぉ、新作をいただけたと言うことですか。これは有り難い」


「ロット生産に乗せますから、もうすぐ食卓にも登場しますよ」


「おぉ、それは有り難い。さすがはラシル様」


 当然だと言わんばかりにミイがどドヤ顔をしている。

 いや、お前じゃないだろう。


「リャンエン将軍、その、こういったお酒や料理を毎日食べているような言い方ですが」

 フェルウェン団長が驚いた様子で尋ねた。


「今日の料理はいつもよりさらに高級のような気がしますが、概ねこんな感じです」とリャンエン将軍があっさり答える。


「いつも?」


「ええ、いつも」


「毎日3食、夢のような食事じゃわい」とシュウライ大臣。


「3食? その、言いずらいのですが、火国は戦争を終えたばかり。民は飢餓に苦しんでいるのでは?」とフェルウェン団長が訝し気な顔をした。


 俺たちや王族だけ贅沢をしているという想像をしているのだろう。

 そんなことはない。

 ギロチンはいやだ。


「そんなことはありません。食料問題はすべて解決していますよ」とレイラン。


「いったい、どうやって?」

 

「それもこれも、全てラシル様のお陰です」


「にわかには信じられません」


「まぁ、その話も追い追い」

 深刻な話になりそうなので、話題を変えよう。

 後で仕組みを教えて視察でもなんでもしてもらえばいい。


「おかわり!!」

 白虎帝が空のジョッキを掲げた。


「次は違う酒を試してみないか?」


「うーん」

 白虎帝は悩んでいるようだ。ビールが余程気に入ったのだろうか。


「いつもはどういう酒を飲んでいるんだ?」


「蜂蜜酒。いわゆるミードだ」


「次はワインはどうだろう?」


「葡萄酒か。なかなかいい葡萄が取れなくてな。よし、それを頼む」


 給仕に頷き、ワインを持ってきてもらう。

 選ぶのは任せると言われたので、適当な物を見繕ってもらった。

 肉料理なのでもちろん赤。

 風国の希望者にも勧めた。


「んー!!! 濃厚だ。肉に合う」


「良かった。料理は口に合うかな?」


「美味しい。非常に美味しい。悔しいがうちの国よりも断然上じゃ」


 白虎帝の皿はもう2皿が空いていた。

 次はラムチョップにむしゃぶりついている。

 マナーは気にしないようで、口の周りにソースをたっぷり付けていた。


「風の国のみなさんはいかがかな?」


「非常に美味しいです」


「ここまで大量の肉は見たことがありません」


「風国も悪魔との交戦のために周辺国や中央からの物資の供給があるのですが、ここまでの質のものは」


「羊肉は我が国の特産品で、今日まで風国が最も優れていると思っておりました。それにしてもこの肉は美味しい」



「この肉はちょっと特別な肉で、生産コストがかかっているんだ」


 その後も会食は順調に進んだ。

 

 ワインの後はまだ少量しかないミードを持ってきてもらった。

 白虎帝は一口飲んで目を見開いた。


「今日一番驚いたぞ。これは美味い」


 火国の状況よりも、謁見の間の精霊よりも1杯の蜂蜜酒のほうが驚いたというのか。


 風国の騎士たちの長い旅の話も聞いた。

 ここまで来るのに3か月もかかったそうだ。

 街道を避けて行軍したのと、途中から馬を捨てて徒歩で来たらしい。

 道に迷うことはほとんど無かったが、食糧調達に苦労したとのこと。

 町や村はどうせ飢饉になっていると思っていたし、極力目立たないようにするため、ほとんど森で狩りをしたりと自給自足だったそうだ。


 肉料理をたらふく堪能した白虎帝は、テーブルとビュッフェコーナーを往復していた足が止まった。

 他のゲストの箸も止まったようなので、(といっても実際はナイフとフォークなのだが)デザートタイム

突入した。

 白虎帝の蜂蜜好きを考慮したメニューにした。

 料理はアイテムボックスに作り置きして収納してあるものなので、急なメニュー変更でも即座に対応できる。

 アイテムボックスは時間経過や劣化がないので、作りたてのままのものが提供できる。


 蜂蜜のアイスクリーム。

 蜂蜜漬けにした果物を載せてこんがりと焼いたパイ。さらにその上にダメ押しで蜂蜜を掛ける。

 ふんわりと焼きあがった極上のパンケーキ。


 白虎帝はまずパイを2切れ食べ、次にパンケーキを3枚食べた。

 俺がパンケーキの上にアイスを乗っけているのを見ると、それを真似して食べ始めた。

 アイスオンザパンケーキを口に入れた瞬間、白虎帝が至福の表情をした。

 目がとろんとなり、もう一口食べると、頬が大きく弛んだ。


 風国の騎士たちも、今までろくな食事にありつけなかったのか、お腹がはちきれそうになるまで食べていた。


 こうして、会食が終わった。


 風国の騎士と火国の首脳陣が親交を深め、込み入った話をしたいというので、二次会会場を用意した。

 俺も誘われたが遠慮した。

 

 明日はゆっくり起きても良い旨を伝え、明日の協議をするために執務室に戻ろうとすると、誰かが裾を引っ張っていた。


 ミイかなと思って振り向くと、とろんとした目をした白虎帝だった。



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