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世界改変 ~アップデート~  作者: 、、、、、
4 秩序の破壊者
80/246

080_3つの来訪者1 使者


 ダークエルフの難民を保護し、ルニエスティとの夕食会を終えて、誰もが一区切りついたと思った矢先のことだった。

 火国の女王、レイランの元に来訪者が現れた。

 正確に言えば、レイランは現在主に研修所で寝泊まりしているので、その来訪者は研修所に直接会いに来たわけではない。

 レイランの居城がある、火国の首都にやって来た。


 その一行は、いかにも怪しげな恰好であった。

 顔をよく見られないように、頭をすっぽりと覆うフードを被っていた。

 長いマントは体を覆い隠し、パッと見た限りでは体型や持ち物、性別を判別することは難しかった。

 そんな輩が10人ほどの少数で首都に到着。

 入国審査でその者たちは遠くの国からやって来て、火国女王に内密の話があると申告した。


 入国審査業務をしていた担当者は上役を呼び、別室に案内した。

 そこで明らかにされた怪しい一行の目的と正体は、すぐにもっと偉い上役に伝えられた。

 報告はどんどん上に上がり、あっという間にに大臣のシュウライの耳まで伝わった。

部下からの報告を受けたシュウライは、その一行が怪しい集団ではなく、嘘を言っているのでもないということをすぐに見抜いた。

 一行の代表が証拠として渡したペンダント。

 それを見たシュウライは入国の許可と城までの案内を指示した。

 同時に、レイランと火国の監督官であるショウ伝達にした。


 一行はすぐに城の応接室へと通され、そこでしばらく待つように案内役から言われた。

 お茶と茶受けの菓子を出された一行は、安堵したためかくつろぎ始めた。

 被っていたフードを取り、マントを外した。

 全員、戦時中のような完全武装をしていた。



「それで、彼らの正体は間違い無いんだね?」


 彼らは秘密裡に行軍してきた風国の兵士だった。


「間違いございません、ラシル様。このペンダントは風国王家のものです。特殊な模様で、これを持つ者は他におりません」


「偽造の可能性は?」


「偽造されたとしても、王家の紋章を持ってわざわざ来るなど、事が露見すれば死罪です。それにマントの下は風の国の上級兵が纏う鎧でした。風国王からの親書も本物とみて間違いございません」


「来訪の理由は?」


「おそらく、女王の亡命のためかと。水国との戦争で劣勢にあるという状況が伝わったのでしょう」


「それでこの時間差での来訪か」


「おっしゃるとおりかと」


「で、どうする予定ですか?」


 大臣シュウライは迷いなく即答した。


「ラシル様の御指示に従います」


「うーん」

 ラシルは眼を瞑って天を仰いだ。


「風国王は同盟相手だったよね?」


「はい」

 一緒に聞いていたレイランが返事をした。


「人柄とか、どういう国なのか、改めて教えてくれるかな」


「それでは私から」

 シュウライが説明を始めた。


 風国は火国に国境を接しておらず、地理的に遠くに位置している。

 暮らしぶりは火国と同じ。

 北の大地は貧しいが、中央からの軍資金である程度は潤っている。

 北の玄武帝と共に、北方の悪魔の勢力から仙界を守っている、守人の役割を果たしている。

 風国王とは、現女王のレイランと面識はない。

 シュウライはレイランの父である前王の時代に桃源郷で何度か会っている。

 軍事に長けているが、温厚な性格をしているという印象だった。

 レイランの父と風国王は盟友であり、個人的にも非常に仲が良かった。

 今回、火国の現状を憂い、密使として亡命の手助けをしようと精鋭を送り込んできたのだろうと推察する。


「実際、会ってみないと分からないか」


「私も賛成です。風国王もラシル様の参加に下りたいと申し出るかもしれません」


「いや、シュウライさん。領土を広げたいとか、部下を増やしたいとか、そういうのはいいんだけど」


「ラシル様がそうおっしゃられるのであれば、御心に従います」

 シュウライはそういって恭しく頭を垂れた。



 禁城一階奥、謁見の間。

 こういう場所はやっぱり豪華な方がいいよねという設計者の意見から、この部屋は無駄に豪華な造りなっている。

 ここに来た相手に舐められないように、多少威圧的に、それでいて品がある部屋。

 贅沢は足元から。

 入口から玉座まで、ふっかふかの赤絨毯がひかれている。

 重工な大理石の柱が並び、

 玉座は必要以上に大きく、精緻な造りになっている。

 照明はないが、その代わりに等間隔に配置されたエレメントが頭上で淡い光を放っている。

 何かあれば、いつでも圧倒的な火力で防御と攻撃の両方が可能になる。

 侵入者の迎撃のためもあるが、来た者に威圧を与えるためでもある。

 

 玉座に腰かけ、隣にミイとショウ、そしてレイランやシュウライ、リャンエン将軍といった火国勢が並んでいる。

 自分の代わりに、この城の管理者であるクゥに任せようと思ったが、全員の反対にあってそれはやめた。


「ラシル様、威厳をお願い致します」とミイが笑顔で言った。


「あまり偉そうにするのもどうかと思うんだけど」


「偉そうにしなければ舐められます」


「舐められてもいいじゃないか」


「ダメです」


「レイランはどう思う?」


「私は威厳のあるラシル様も好きですし、いつものようなフランクなラシル様も大好きです」

 レイランは迷いなく言った。


「……」

 いや、ちょっと違うんだが。

 論点がずれている気がする。


「シュウライさんは外交経験豊富だよね。どうすればいいかな?」


「私は全王と現女王にお仕えしましたが、結果的に火国を戦禍に巻き込んでしまいました。私の外交経験は全て失敗談ですので、参考になりません」


「……」

 そういえばそうなのかもしれない。

 外交は隣国と円滑な関係を構築して戦争を回避するためのという側面もある。

 失敗と言えば失敗なのか。


「ショウは?」


「はい、師匠。いつも通りでよろしいかと」


「いつも通りか」


「はい。いつも通りで」


 みんなの意見を聞いたけど、全然分からなくなってきた。



「そろそろ来ます」

 ミイが部下と念話で話し、ゲストがこの部屋に来ることを伝えた。


 重厚で無駄に大きな扉が開いた。

 やってきた風国人は10名。

 その全員が完全武装をしていた。

 先鋭だそうだ。

 謁見ということで、相手方から軽武装への切り替えや武器を預けるなどの申し出があったそうだが、ラシルはその申し出を却下した。

 この禁城に入城した時点で相手の強さは大まかに調査済。

 どれだけ凄い武器を持っていたとしても、ここにいるミイには勝てない。

 それに頭上で輝いているエレメントも含めれば、過剰戦力になってしまう。


 それに相手方からすれば、王と名乗る、見ず知らずの、得体のしれない怪しい人に会うことになる。

 そんな時は自分も武器の一つや二つ持っておきたいものだ。

 自分も同じ立場ならそうしたいという理由で、武器の携帯を許可した。


 10人はこちらにゆっくりと歩いてきた。

 さすが精鋭。

 歩く姿を見るだけで、凛々しく、鍛え上げられているということがわかる。

 強さだけではなく、礼儀もしっかりしているようだ。

 失礼の無いように頭上や部屋の装飾品を見てキョロキョロするものなどいなかった。


 ……。


 いや、一人いた。


 10人の一番後ろにいた、女の子がキョロキョロしながら歩いている。

 上のエレメントを見ては驚き、部屋の装飾を見ては興味深そうにしていた。

 今回、彼等が来た理由は、レイランの亡命である。

 レイランが逃げる際の御付きの従者役なのだろうと、普通はそう思うだろう。

 その女の子はシュウライを見て、まるで知人にでも会ったかのように、軽く微笑んだ。

 可愛い女の子にシュウライだけが顔を青くしていた。

 シュウライは何かを伝えたそうに口をパクパクと動かしていたが、会談が始まったため、諦めて口を閉じた。


「私たちは風国王の使いで風国から来ました。第二師団団長のフェルウェンと私の部下です」


「こんには、フェルウェンさん。私がラシルと言います。長い旅路、お疲れ様です」


 フェルウェンは驚いた様子でラシルを見た。

 フェルウェンが想像していたよりも、あまりにも王様らしくない態度だったからだ。


「それで、今回の来訪の目的は?」


「は、はい。そちらにいらっしゃる、火国女王レイラン様の救出です」


 火国は朱雀帝から勘当され、土の国に利用地を奪われた。

 水国主導で戦争が始まり、風国としては苦々しく思っていたという。

 レイランの母親は、実は風国出身であり、火国と風国の結びつきは強い。


 風国としては、すぐに火国救援のために参戦しようとしたが、それは敵わなかった。

 参戦するためには玄武帝の許可が必要だし、もし許可が下りたとしても、朱雀帝が参戦してくる可能性があったからだ。

 玄武帝と朱雀帝の中は極めて悪く、実質的に玄武帝の従国となっている風国が参戦すれば、朱雀帝は青龍帝がちょっかいを掛けてきたと判断するのだ。

 そうなれば朱雀帝は水国側に付き、土国と一緒に火国に侵攻して来かねない状況だった。

 こういった理由から、風の国としても表立って動けなかったという。

 バランス均衡の国際政治だ。


 また、風国は玄武帝とともに北の悪魔たちからの防衛任務もある。

 距離的にも遠く、戦役もあるため、立場的にではなく物理的にも戦争参加が不可能だった。


 戦争が進むにつれ、憂慮していた事態が起こった。

 火国王の死亡だ。

 火国王と王妃が殺害され、首都も危ないという情報が入った。

 前王と王妃の子であるレイランだけでも亡命をさせるために、風国は秘密裡に精鋭を派遣した。

 各勢力に見つからないように、街道から外れたところを通ってきたため、到着が遅くなったとのこと。


 で、火国に着いたら驚いたのだそうだ。


 戦争の気配がないことに。


 事情を聴いたラシルは頷き、安心させるように言った。

「なるほど。しかしせっかく来ていただいたのですが、レイランはもう安全です。戦争も終わり、火国は徐々に活力を取り戻しつつあります」


「とても信じられないのですが、どうやら本当のようですね」

 フェルウェンは努めて冷静にしていたが、まだ信じられないようだった。


「それで、これからどうされますか?」


「レイラン様は安全なようですので、国へ戻って国王に報告したいと思います」


「分かりました。風国の情勢も聞きたいので、何泊かされていってください」


「それは、有り難い話です。部下は皆、長旅で疲れておりますので」


「それに、私のことをすぐには信頼できないでしょうし、あなた方が保護したいというレイランの意向も確認してください」



 戦争を収め、火国やその他の国を傘下に置き、君臨している正体不明の権力者。

 それが他人から見た今の俺だろう。

 風国からすれば、強力な独裁者が台頭したように映るかもしれない。

 数日滞在すれば、レイランが嫌々従わされているのではないということも分かってくれると思う。


「ラシル様、発言してもよろしいでしょうか」

 レイランが真っすぐにこっちを見ていた。


「いいよ」


「今この場で証言したいと思います」

 胸を張ったレイランが出番が来たとばかりに前に進み出た。


「あ、うん」

 別に今じゃなくても後々ゆっくりでもいいのだけど。

 まぁ、いいか。


 レイランは説明した。

 戦争は終わったこと。

 ここにいる俺が全て片付けたこと。

 戦争に加わらなかった水国や木国、土国の都市の者たちと一緒にギルドに入ったこと。

 これから大いに繁栄する予定であること。

 だからもう心配はいらないこと。


「すぐには、信じられません」とフェルウェン。


「愚か者の水国王はもう倒し、親の仇は打ちました」とレイラン。


「なんと」


「ですのでもう安心です。そう風国王にもお伝えください」


「まぁまぁ、レイラン。落ち着いて」


「申し訳ございません、ラシル様」



「フェルウェンさん、心配しなくても、ゆっくり休んでいたた後、風国までお送りします。そこで風国王とも会談したいと思うのですが、よろしいですか?」


「送っていただけるというのは、一緒にいらっしゃると?」


「ええ、もしよろしければ。数日滞在されて、信用できないというのであれば、拒否していただいて構いません」


「分かりました。ただ、長旅になります。それでもよろしいのでしょうか」


「大丈夫です。心配ありません」


 フェルウェンはおそらく陸路で行くと思っているだろうが、それは違う。

 転移で行けるのだ。

 ただし転移はギルドメンバーが既に行った所にしか行けない。

 後でニボシ辺りに偵察を頼もう。


「そうおっしゃるのであれば、我々と同行いただきたいと思います」


「フェルウェンさんありがとうございます。話が一区切りついたところで、本題に入りたいのですがよろしいですか」


「本題、ですか?」

 フェルウェンはラシルの言葉を吟味して首を傾げた。


「ええ、本題です」


「もちろんいいですが、どういった話でしょうか」


「そちらにいる白虎帝と会談したいのですが、よろしいですか?」


「なっ……」


 フェルウェンは絶句し、レイランは驚愕して目を見開いた。

 緊張した面持ちのシュウライ。

 フェルウェンの部下もざわつき始めた。

 平然としていたのは、俺とミイ、ショウ、そして名指しされた女の子だった。


 その女の子はラシルを真っすぐに見ると、ニヤリと笑った。



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