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008_周囲の探索4 森進出

 異世界生活3日目。

 天気は良好。

 体調も良好。

 絶好のレベリング日和。


 今日はレベル6まで到達した小隊2つと共に、森方面を探検することにした。

 他の隊は中隊単位で草原フィールドを徘徊させる。

 夜の見張りもあるため、睡眠時間も十分に取らせることについても考慮した。


 森へ行く2つの小隊は、別々ではなく一緒に行動するように指示して、比較的安全な森の入口付近のみの探索を徹底した。

 森の木々は背が高く、日光が地面まで当たりずらいために意外と暗い。

 そんな中で奥深くへ行くのは危険が伴うからだ。

 地理的にも迷いやすいし、木が邪魔になって敵の発見が遅れることもある。

 具体的には入口から50メートル以内。

 また森には様々なモンスターがいる可能性もあるため、よく考えて行動するように言った。

 敵の数が半数以上なら即座に撤退戦に移行することも厳命した。

 

 パーティは俺を含めてミイ、クゥ、ショウの4人だ。

 小隊2つと途中で別れて森に入ると、警戒する間もなくすぐにラットの群れと遭遇した。

 相手は全部で5匹。

 そのうち2匹がこちらに気付いたようだ。

 1匹が突撃するように走り出し、もう1匹が他の仲間に危険を知らせるように威嚇して唸った。

「グルグル」と唸っている1匹に吸い込まれるようにして矢が刺さる。

 ショウの仕業だ。

 さすがである。

 死亡には至らなかったが、致命傷を与えた。


「フォーメーションB! プランデルタ!!」


 現状を踏まえた指示を叫んだ。

 こちらより敵の数が多く、敵のレベルが未知数であるため、撤退戦にしようか迷った。

 しかし、ショウの矢による相手のダメージを見る限り、レベルの誤差はこちらとプラスマイナス2程度と断定。

 1匹に致命傷を与えたことから脅威は同数と認定した。

 よって、撤退戦ではなく前衛を2人にした防御戦に決めた。

 それがフォーメーションB、プランデルタである。

 

 最初に突進してきたラットが素早く爪で攻撃を仕掛けてくる。

 ミイ見逃さず、素早く前に出て受け止める。

 その間にショウが矢を連続で射た。

 別の2体の身体に刺さるが致命傷には至らず。

 動きを少し鈍くしただけだ。


「自分の攻撃の低さに力に悲しくなってきます」


「また強くなればいいさ」


 呟くショウを励まし、最も近い1匹に切りかかる。

 爪で受けられたが、そこにキューちゃんがお腹に一撃。

 怯んだラットに再度切りかかり、致命傷を負わせる。

 すこし逃げて距離を取る。

 2匹が追いついて来た。

 ミイは1人で2匹を相手にしている。

 槍を上手く使って近寄らせないようにしている。

 俺とクゥは2人で1匹と戦う。


「ショウは残りのけん制! 俺とクゥで仕留めたらミイの援護!」


「了解です! 師匠!」


「クゥ!」


「確実にいくぞ!」


 俺の剣でラットの爪を受け止め、クゥがお腹を切り裂く。

 トドメはクゥに任せ、僕は素早くミイの前に出る。

 ミイに跳びかかろうとしている1匹にフェイントを喰らわせ、追いついて来たもう1匹の方へ行く。

 クゥがミイとの共闘開始。

 俺は矢の刺さったラットを下から切り上げる。

 爪で防御されるも、ラットは後ろに吹っ飛んだ。

 すぐに振り返り、ミイの槍を防いでいるラットの後ろに一撃。

 背中に大きな傷を受けたラットが崩れ落ちる。

 トドメの一撃をミイが槍で食らわせる。

 飛ばされたラットに向き直ると、そいつは体制を持ち直し、突進しようとしていた。


「ミイ、防げ!」

 

「もちろんです!」


 ミイが前に出て、ラットの爪を防ぐ。横からラットの腹を切りつけ、トドメの一撃。

 クゥとショウは最後の弱った2匹を片付けたようだ。


「数は狼よりも多いですが、強さは狼には及ばないようですね。素早さが足りません」


 ミイが冷静に敵を分析をする。


「これはあまり食べたくないですね」

 

 ショウは死体の近くで見分している。

 狼と違ってネズミは食料にならないようだ。

 というよりしたくない。


「この調子でどんどんいこうか」


「はい!」

「クゥ!!」



 その後もラットの集団を狩っていった。

 ラットのレベルは草原にいる狼と同じくらいだろう。

 攻撃力は大したことはない。

 実際草原の狼よりも、攻撃力に限定して言えば低い。

 しかし危険度はこっちのほうが高かった。

 なぜならラットは5匹から8匹程度で集団で生活しているからだ。

 それなりにチームワークが取れている。

 数が多いと厄介なのである。

 

 2、3回ほど集団のラットを狩ると、危なげなく1人で1匹を担当できるようになった。

 ミイや俺は、1人で2~3匹相手にしても倒しきることは難しいが、防御に徹してで引きつけることはできるようになった。

 最大で8匹程度の集団であれば、撤退戦にしなくてもよくなった。


 フォレストウルフとも交戦した。

 草原に生息していたものを「ウルフ」と呼び、森に生息しているものを「フォレストウルフ」と命名することにした。

 本当は別の名前もあるのかもしれないが、一先ずはこれでいこうと思う。

 フォレストウルフはラットと違い、1匹~3匹程度で出没していた。

 この数は草原と同じだった。

 しかしレベルはフォレストウルフのほうが高いだろう。

 ウルフがレベル5程度だったのに対して、レベル8~12といったあたりか。

 ちなみにラットはウルフと同じで5くらいである。

 正確なレベルは不明だが、戦った感じ、このくらいで間違いないだろう。


 他にも蛇に似たモンスターやアヒルに似たモンスターも出現した。

 どのモンスターも多くて1度に3匹程度の出現率だった。

 レベルはフォレストウルフよりも少し弱い程度。

 だけど蛇は毒を持っていたし、アヒルは素早かったので少し苦戦した。

 

 草原よりもモンスターの出没する確率が高かった。

 そして森のモンスターは草原よりも強く、数が多い。

 おそらく、このどちらにも理由がある。


 一番大きな理由は、森は食物の宝庫だからである。

 木が生えているということは、食べ物がある。

 森の恵みが沢山あるのだ。

 木の実やキノコ、草原よりも栄養豊富な草。

 木の蜜だってあるかもしれない。


 草や落ち葉もあり、それは虫にとってのご馳走だ。

 その虫を食べる爬虫類のような動物。

 それを捕食する小型のモンスター、小型のモンスターを食べる中型のモンスター。

 そして数は少ないが、それら全ての頂点に君臨する大型のモンスター。

 草原にいるモンスターは森の食物連鎖からはじき出されたのだ。

 恐らく弱すぎて。

 また、森には隠れる場所が沢山ある。

 外敵も多いが、身も守りやすいのだろう。


 そんなこんなで、1日を終えた。



 

 次の日、俺たちはより深く森に入ることにした。

 もちろん、強い敵が出てきたらすぐに撤退を前提として。


 森の奥へ行くほど、思った通りモンスターは強くなった。

 現在、森に入って200メートル地点くらいに到達。


 ラットも強くなっており、レベルは10を超える。

 数も多かった。

 10匹以上が集団で生活していた。

 俺たちは数に苦戦し、撤退しつつも、何とか捌いていった。

 

 禁城へと帰り、確認するとレベルがたくさん上がっていた。

 ミイと俺はレベル17、クゥとショウがレベル16。

 他に森に入った小隊もレベルが13~15くらいになっていた。

 草原で戦った者たちも、最低でもレベル5、最高でレベル9になっていた。


 これで大隊3つはレベル平均7~8くらいなので、明日から森への挑戦を解禁する。

 草原よりも危険だが、モンスターの数も多く、遭遇スピードも速いため、レベリングの速度も上がるだろう。

 残りの大隊3はまた草原だ。


 このレベルアップのスビートは早いのか。遅いのか。

 比較できないのでわからない。

 とにかく上げる。

 上げられる所まで上げる。

 それが一番だ。



 数日かけて、俺たちはどんどん森を攻略していった。

 奥地に行くのはまだ危ないので、安全マージンを十分に取って行動する。

 2倍以上の数の敵と遭遇したら、原則撤退する。

 できれば複数人で1匹、最低でも2人で1匹のモンスターを相手にする。



 森の入口から1キロ地点まで進むと、狂暴なウサギがいた。

 防御力はそれほど高くないくせに、素早さと攻撃力が高い。

 石を鋭く研いだような、針型の石剣を持っていた。

 レベルが上がっていなかったらちょっとした傷くらいは負っていただろう。

 それでも歴戦の強者である俺たちは注意こそすれ、まだまだ余裕があった。


 ウサギたちは5~6匹で生息しており、倒すのに苦労した。

 その凶悪性から『キラーラビット』と名付けた。

 素早いので1人1匹を相手にするのが限界だし、後衛の守りを考えたフォーメーションにしなければならない。


 そのキラーラビットエリアの攻略に2日費やした。

 先に進むことはできるのだが、簡単に倒せるようにならなければ先に進んだ時にもっと苦労することになるからだ。

 そうなれば誰かがやられてしまうかもしれない。

 デッドエンドを防ぐためには先に進みたいという欲望を抑えて、粘り強く取り組む必要があるのだ。


 森で木の実なども取れ始めた。

 キノコはどれが食べられて、どれが食べられないのか見分けがつかないため、採集を諦めた。

 禁城の住人の中には、キノコに詳しい者もいたが、ゲームの世界のルールがここでも同じように通用するとは限らない。

 食べられると思ったキノコと、食べられないキノコが、この世界では反対かもしれないのだ。


 森では肉も取れた。

 実験的に持ち帰ったラットの肉は狼よりも不味かったが、キラーラビットの肉はなかなか美味しかった。

 最も美味しかったのは、イノシシのようなモンスターの肉だった。

 独特の臭みがあるが、焼いて食べると程よい脂が口の中で溶けた。

 調理法を工夫し、香辛料などがあればもっと美味しく食べられるだろう。

 仙術が使えるようになれば、ある程度キノコや草を見分けられるようになるので、それも楽しみだ。



 規則正しい生活が続いた。

 朝起きれば1日中レベリング。

 昼は外でアイテムボックスから出したパンや穀物を食べ、日が暮れるまでレベリング。

 夕方に水浴びをしてレベリングの成果確認。

 夜は採れたモンスターの肉を食べながら会議。

 一日中体を動かしたせいか、ベッドでぐっすりと熟睡。


 元の世界にいたときとは比べ物にならないほど充実していた。

 もうこのままで良いんじゃないだろうか。

 早くもそう思えるようになった。

 元の世界では悪い記憶ばかり。

 未練が無いといえば嘘になる。

 それでもこっちのほうが楽しかった。

 

 こんな生活がそれから3日ほど続いた。



 そしてようやく、戦闘レベルが30になる日がやってきた。



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