072_進捗
まずはレベリングについて。
戦闘レベルは幹部だけでなく、ギルドメンバー全員がカンストしている。
最初の種族レベルについてもほとんどの者がカンストしているという。
今週中には全員カンスト予定だ。
ラシルは仙人種、精霊種に続き、竜種をもうすぐカンスト。現在のレベルは477。
ミイは仙人種の後、悪魔種を選択しそれもカンスト間近。490。
クゥは仙人種の後、精霊種をカンスト。竜種を着手し465。
メルバコルは悪魔種と竜種をカンストし精霊種をレベリング中。482。
エアノワリスは天使種をカンストして仙人種を頑張っている。462。
ロメリアは精霊種の後仙人種を選択し、カンスト。次は竜種を選択。430。
セシュレーヌは竜種の後悪魔種を選択しカンスト。精霊種をレベリング中。460。
学校をまかされたので、召喚できる種族のほうがいいという判断だそうだ。
ペッフィーは悪魔種に続いて仙人種をレベリング中。457。
取得にはある程度の相性がある。
仙術を操る仙人種は、自然の力を操作するという考え方構成された術を使う。
熱エネルギーや風エネルギー、重力、そういった類のベクトル操作である。
科学的な物事の理解と、演算を必要とするため、エアノワリスやセシュレーヌが苦手としている。
逆にそういった感覚が得意なペッフィー、メルバコル、ロメリアは得意だ。
ベッフィーとメルバコルは理論的思考が得意だし、ロメリアは操作する力の元となる精霊エネルギーを司る存在だからだ。
竜種は直接戦闘の得意不得意による。
武器を使っての戦いが苦手なのはロメリアとペッフィー。
逆に、エアノワリスやクゥが得意だ。
悪魔種は変化を想像し、世界を騙す力だ。
仙人種と同様、物事の本質を見破る力や、それを元に理知的、合理的な変化を加える。
更に、変化後の事象の姿も正確に想像できていなければならない。
元々の悪魔種であるメルバコル、ベッフィーが得意とする分野。
そもそも色んな意味で騙す必要がないと感じるエアノワリス、セシュレーヌ、ロメリアが苦手としている。
エアノワリスの天使種はそもそも信仰心によって新たなものを創造する力だから、今あるものは無視する傾向にある。
セシュレーヌはどちらかというと力押し。
ロメリアもどちらかというと強大な精霊の力があるから、そもそも小手先の変化を加える必要性を感じていない。
天使種は信仰心とかそういったものが必要になる。
世界を根本から書き換える力だ。
盲目となり、物事や事象の前提を無視すればするほど強まる力になるため、前提を無視できないクゥ、メルバコル、ベッフィーが苦手である。
因みに、ギルドメンバーの信仰心の対象はラシルである。
得手不得手があるといっても、そこはやはり幹部。
幹部に転生できない種族はない。
ただ単にその種族のレベリングが遅くなったり早くなるというだけのことだ。
ラシルやミイはオールラウンダー。
苦手な種族は無い代わりに、これといって得意な種族はない。
種族を超えての進化を転生と言ったりするのは、それが本来難しいからである。
基本的に、一つの存在が進化できるのは1種族と限られている。
例えば、悪魔として生まれた者は、戦闘レベルをカンストし、悪魔種へと進化することで上位存在となる。
戦闘レベルでさえ100もあるのだから、普通に生活していて上位存在になれるのはごく僅か。
そこから希少な進化の実を食べて進化する。
そこからもさらにレベルが200もある。
ゲーム世界で魔王と呼ばれる存在は悪魔種をカンストしたレベル300の者なのだ。
レベリングをし続けたり、どこかと戦争し続けるなど、ずっと戦闘する環境に身を置いた者でしか到達できない。
また、それぞれの種族に転生するためには必要な資質がある。
それは知識や想像力、理解力といった能力である。
例えば、悪魔種をカンストして天使種へと進化したいという者は、信仰心が無ければ進化できない。
その信仰心は何に対してでもいいのだが、なかなかうまくはいかない。
世界を理解して変化させる魔術をー極めた者が、その考え方を一度捨て、何も考えず信仰心のみで何かを創造するという技術を会得するのは至難の業だ。
力任せの竜種が操作系の仙人種への進化が難しい様に。
今までの経験を一度全て捨て、積み上げていくという意味で、転生なのだ。
苦手なものは転生できない場合があるし、できたとしてもレベリングが遅い。
だから火国のレイランはじめ、研修所開設前からレベリングしていた者も、知識の習得に時間がかかっている。
神仙に成れたはいいものの、転移術式ができないのだ。
空間や重力、エネルギーといった概念の理解が必要で、それは科学や物理学の分野となる。
教えることが得意な、メルバコル先生の元、現在勉強中である。
セシュレーヌやエアノワリスは説明が感覚的すぎ、ベッフィーは口数が少ない上に説明が高度過ぎたからだ。
理知的でわかりやすいメルバコルに白羽の矢が立った。
転移術を使えるようになれば仙人種をカンストできるようになるし、それこそ、他の種族への進化も可能になる。
元からいるギルトメンバーと遜色ない戦力になる。
元からいたメンバーは、既にゲームの世界でその力を使えていたので、改めて学習する必要はない。
既に持っている知識だからだ。
次に研修所の話。
大成功を収めつつある。
もうすぐ1ヵ月が経過し、すべての者が戦闘レベル100となる見込み。
最初は戸惑いや衝突があったものの、今では未来志向で物事が進んでいる。
この世界の環境に比べれば、王様でも経験できない最高の衣食住を提供しているのだ。
それも精神の安定に寄与したのだろう。
近い将来、学び終えて研修所を出る頃には人格的にも人間的にも変化が生じているはずである。
その際、ギルドに対しての帰属意識はなくてもいいが、敵対関係だけ避けられればいい。
戦争を起こそうという気がなくなり、自分の村や町の発展に寄与してくれればいいのだ。
戦闘レベルカンスト以降の次のステップは仙人種への進化。
仙術の使用には、戦闘訓練はもちろんのこと、知識がいる。
火、水、風、土、木の五大基礎系統の知識は元の世界の小学校で習う科学を元にした内容だ。
数学や化学、物理、工学などもさらにその次のステップとして、カリキュラムに組み込む予定だ。
ここでは元の世界の教科書が役に立った。
元の世界の書籍はすべて電子化されて収集されていたので、それをこっちの言葉に翻訳した。
他の本も同じである。
話し言葉は同一なのに、書き言葉は異なっている。
文字の翻訳は悪魔種を取得すると可能になるので、編集と出版はペッフィーとメルバコルに任せた。
仙術の取得と同時に農業技術や他の技術も学ばせるつもりである。
そうすれば食糧問題が一気に解決する。
そして数名ずつを帰らせる。
それぞれの進路も決めなければならないだろう。
やることが盛りだくさんだ。
次に各国の状況と世界情勢。
これが少しややこしいことになっている。
専守防衛と軍備増強、ある程度の融和路線でここまで来たが、本格的に攻略をしなければならないかもしれない。
その前に、レイラン達各国の王族の話をしておこう。
レイランはじめ、各国の王族や代表もレベリングが進んでいる。
ペースの早い遅いはあるものの、全員仙人を超えた。
その後他の種族に転生するかどうするかは判断に任せるとしているものの、みんなやる気満々だ。
レベルの上昇と進化を最も喜んだのは木国王だった。
木国は地理的に禁城から一番離れており、大森林のエルフや白虎帝など、大きな勢力の狭間に位置している。
木国人は平和主義の温和な民族だが、近くで戦禍が絶えないのが怖くて怖くて仕方がなかったのだという。
ラシル同盟の参加に入るという選択をしたのも、そういった事情から来る。
今では各国王族の間ではラシル同盟と呼ばれている。
それはさておき、超巨大勢力、軍事国家から距離を取り、なおかつ安全に国を守るためには、どこかに取り入らなければならない。
ラシルという正体不明の存在に不安はあったものの、大きな賭けは成功したと言っていた。
木国王が仙人に進化した時には、彼自身、涙を流して喜んでいた。
これで安全保障の目途が立つと。
ラシルのギルドメンバーが途轍もなく強いのは理解できたが、それが木国人にとっても同様に恩恵として享受できるのかは懐疑的であったらしい。
本当に望む者すべてを進化させるという現実を実感できたらしい。
また、木国王は料理に興味を持っていた。
他の王族も研修所で提供される多種多様な料理に感激し、毎回の食事を楽しみにしていたようであるが、木国王は他の国の王族とは情熱の度合いが違った。
料理を習いたいというのだ。
木国は地理的な要因で、森林から森の恵みを享受してきた。
木の実や香草、多様なモンスターの肉など、食糧事情に恵まれており、美食家も多かった。
木国一の美食家である木国王でさえも驚くほどの質と量。
ぜひとも木国人に料理を学ばせたいと、何度も嘆願された。
そのプロジェクトも現在進行中である。
龍王城で料理教室を開催し、研修を終えた研修生をそのまま龍王城で下働きとして雇い、修行をしてもらう制度を準備している。
新たに水国の王に着任したオキサイドは、水南都市出身であるからなのか、商業的な目で物事を観察していた。
研修所の建物を水国でも建てられないかとか、中にある技術を享受したいとか、料理を水国でも普及させられないかといった要望がある。
これらは全て仙人種とその先の種族をある程度カンストすれば実現可能になる。
また、研修所の設計図の他にも、戸建ての家とかマンションとかの設計図もあるので、それは無償で提供できる。
無償でいいよ、その代わり技術を会得してからねと回答すると、オキサイドは平伏して、タダほど高い物はございませんと言っていた。
オキサイドには考えがあったらしく、それを使って禁城周辺に町を作りたいと申し出た。
それはこの前話したフーリュという少女の意見とも合致する。
この話はもっと詰めなければならないが、火、水、土、木の四か国で、禁城周辺を東西南北に区分けして、町づくりを委託しようと思う。
もちろん設計図は提供するが、彼ら主導で任せたい。
「町づくり、非常にやりがいがあります」と、オキサイドは邪悪に笑った。
商人は怖いなと思った。
彼に任せれば大丈夫だろう。
次に土国の都市の代表たち。
彼等は分類するのであれば、戦闘狂だった。
強くなることに喜びを見出し、もっと強いモンスターと戦わせろと言って来ている。
言い方はもっと丁寧だが。
それはセシュレーヌの心の琴線に触れたようで、彼らの心意気を組み、猛特訓をしている。
また、鉱物の発掘と武器精製で生計を立てていた民族らしく、武器に興味を持った。
彼等をドワーフに師事させるのも面白いかもしれない。
水西都市の子ども当主フォリオ、その側近の摂政が興味を持ったのは本だった。
毎日訓練の後は図書室に入りびたり、次々と読破していっている。
土日はずっと籠っているそうだ。
この前会った時には恍惚の表情で、「私は世界の全てを手に入れたような気分です」と言っていた。
深く考えず、話題に沿うように、「世界を取った気分はどうですか?」と聞くと、「手に入れた世界は新しい世界に毎日塗り替えられていっています」と言っていた。
ん?
付いていけなかった。
フォリオとその側近は図書室にある全ての本を読むと豪語している。
中でも彼等が最も興味を持ったのは政治哲学の本だった。
「ラシル様はどのような支配形態で運営なされるのでしょうか」とフォリオに尋ねられた。
「一応、最終的にモンテスキューは踏襲したいと思っている」と答えると、驚愕の顔をされた。
側近と何か話し始め、「てっきりラシル様はプラトン様の哲人王をされるのかと愚考いたしました」
そう言って、側近と共に深々と頭を下げてきた。
全然分からない。
フォリオはまだ小さいのに頭が良いと思った。
フォリオからも要望があった。
図書室の本を読み終わったら、他に本があればもっと読みたいというのだ。
各拠点に貯蔵している本がある。
適当に選んだ本だが、蔵書はかなりの数に上る。
禁城には日本史や中国史などの歴史と東洋の伝説、東洋思想関係、小説などが主に収められている。
ベッフィーの所は学術書。
ロメリアの所は西洋各所の伝承や伝説。
エアノワリスの所は宗教と芸術関係。
こんな感じでそれぞれの拠点の特色を出している。
政治と思想はベッフィーの所とメルバコルの所にあったと思う。
全て読むとなるといったい何年、いや何十年かかるのかわからないが、好きなだけ学んでもらおう。
本と言えば。
火国のレイランは女性誌やファッション誌を好んで読んだ。
こっちの世界に来てから、最新版は無いが、雑誌でファッションやメイクの仕方などを見て楽しんでいるらしい。
先日会議で会った時、服装とメイクが洗練されていて、思わずドキドキしてしまった。
すぐに後方から殺気が飛んできたので、感心した風を装って何とか誤魔化した。
他の王族たちの中にも研修所に行きたいと希望するものが多数いるという。
最初はこのシステムに懐疑的ではあったものの、レベルの向上や暮らし振りを聞き、心惹かれたようだった。
彼等も随時受け入れていくとする。




