047_龍王城へ
セシュレーヌが管理している龍王城。
城の付近は偵察の結果により、周囲100kmが山脈地帯だと判明している。
山脈地帯には人が住んでおらず、少数のモンスターの他には、竜族が生息している。
多属性の竜族の存在を確認しており、それぞれ群れで生活している模様。
群れには必ず集団を率いるリーダーが存在する。
各竜族の群れにも、主のような個体が存在がいるらしい。
主は集団内で最も力を持つ存在なのだが、セシュレーヌの見分によると、我々にとっての強者はいないという。
セシュレーヌは可能ならば竜を仲間に引き込みたいと進言してきた。
ギルドにとって戦力増強という面もあるが、彼らをほっておけないという彼女の気持ちが強いようだ。
この世界の竜族を理解して判断するためにも、学校を作ったら仲間探しの旅に同行することにした。
セシュレーヌ領の龍王城は、禁城の南に位置していた。
ゲーム世界からの転移による拠点のランダムな配置。
しかしそこには一定の規則性というものか、徐々にではあるが明らかになってきている。
この龍王城も山脈に住む竜族の近くに転移してきたのだから、同じ種族の場所の近くと考えていいかもしれない。
龍王城と禁城は険しい山脈を挟んで目視できないほど離れているが、他の拠点と比べれば物理的に一番近い。
その竜王城の前に、広大な盆地がある。
最近ギルメンがレベリングに使っている場所だ。
東京ドーム何個分とかでは測れないほどの広い土地。
草一本生えていない、土がむき出しになった荒野だ。
石ころやゴロゴロとした岩があり、足場はそんなに良くない。
だからこそ、戦闘訓練には適しているといえる場所だった。
「この場所はラシル様のお考えに適していると思います。周囲の山脈を少しばかり削り、宿泊施設を作ってみてはいかがでしょうか」
セシュレーヌがキラキラとした目で見つめてくる。
龍族特有の整った顔立ち。
ピンク色のフード付きトレーナーを着ていて、なぜかフードを被っている。
トレーナーには大きく『らしる』と、平仮名でポップに書かれている。
恐竜チックの耳の付いた、可愛いデザインのトレーナー。
そのままでも可愛いのに、ラシル様の世界の服を着たいといって聞かなかったので、見繕ってプレゼントしたしたのだ。
着ているのはちょっと大きめのサイズ。
トレーナーの丈は膝の上。
綺麗な素足にトレーニングシューズを履いている。
完全な人型になれるはずなのに、ちっちゃくて可愛い翼を背中に引っさげ、ちょこんと可愛い尻尾までトレーナーの下から出している。
超絶可愛い。
しかし、下はいったいどうなっているのか。
ちゃんと下着を付け、短パンなりを穿いているのか。
竜族はちょっとルーズなところがある。
親心としてとても気になるところだ。
これだから思春期の女の子は。
エアノワリス曰く、女性の拠点管理者はみんな結婚願望があるそうだから。
どこの馬の骨ともわからない変な龍と付き合わなければいいが。
まったく困ったものだ。
そもそもセシュレーヌは、元々が竜なので防御力が高い。
本気を出せば外皮に鱗が生えるし、頭から角だって生える。
純粋な物理攻撃力と物理防御力でいうと、ギルドで一番だ。
身体能力も高く、人型に進化して鍛えた戦闘技術も凄い。
タイマンの対戦で、戦術や魔法といったチートを使わなければ、たぶん一番強いはずだ。
セシュレーヌは真っすぐな性格をしている。
龍族という種族は、曲がった事が大嫌いで、義を貫く性格の者が多い。
それは生物的に強者ゆえという理由から来るものなのか、もともと生まれ持った性格や資質なのかは分からない。
だけど一つだけ言えることがある。
セシュレーヌは決して嘘を言わない。
嘘つきを否定するわけではないが、少なくとも彼女にとって、嘘を付くことそれ自体に価値が無いのだ。
嘘は弱者が方便で使うもの。
セシュレーヌはそう信じている。
そんなとても可愛いセシュレーヌ。
結婚なんてまだ早い。
キラキラした目をされたらパパは断れない。
採用決定。
少し威厳のある、低い声音を意識して言った。
「では、ここにしよう」
「ありがとうございます」
セシュレーヌはそう言って跪く。
俺はアイテムボックスの中から設計図を取り出した。
「それはなんですか?」とミイが尋ねる。
「これは研修施設の設計図だ。ちょっと奇抜だけどね」
これを作るんだ。
魔法があればすぐに作れるものだけど、材料となる資材が必要だ。
資材はお金で何とかできるのだけど、できればあまり金貨を消費したくない。
だってほら、俺って貧乏性だから。
金貨の鋳造はベッフィーが開発した工程に則って、もうすでに初めている。
補充の見込みはあるけど、それもやっぱり貧乏性というやつだ。
建物に必要な部材のリストをミイに見せる。
「これをまず調達する。そのあと魔法で部材を作成して、最後に魔法で建設だ」
「畏まりました」
材料は神仙が100名と悪魔種をカンストした悪魔が100名、金属加工術が得意なドワーフが20名。
これだけいれば十分。
強大な力でなんでも揃う。
鉱物を精製する班、木材を調達する班、加工をする班を作る。
それぞれの班に分かれて作業開始。
神仙が木術式で巨大な木を発生させ、それを加工班が切断して形を整えていく。
土術式と悪魔種の黒魔法を使い、土を鉱物に変換していく。
優秀なギルメン諸君のお陰で莫大な量を調達できる。
資材は加工され、設計書の寸法と一寸たがわない材料となっていく。
一時間ほどして、宿泊施設を1棟建てられるだけの材料が集まった。
素晴らしい。
設計図を基に大規模魔法を展開。
材料が宙を舞い、まるで逆戻りでもしているかのように集まっていって、形を作っていく。
あら不思議、建物が完成。
地上13階建ての建物。
全体は緩やかな円錐のようになっている。
丸い筒が空に伸びて行って、頂上はロケットの先のようだ。
本当は、設計者はホテルだと言っていた。
激しい戦闘訓練をして、泊まるところがボロくてヘボいとやる気がでないだろう。
疲れを癒しね最高の環境で頑張ってもらいたい。
ギルドのために頑張ってくれる人にはちゃんとしたリターンをしたい。
なので中もびっくりするような代物だ。
高級というよりかは、洗練されている感じ。
二階と三階が食堂兼カフェテリアになっており、立派な図書室やアクティビティールーム、最上階には絶景のお風呂まである。
エネルギーや水などは竜王城とリンクさせている。
ここまでギルメンが進化すれば、エネルギー問題に直面することなどもうない。
料理は別の場所で調理したものを転移することができる。
洗濯も専用の機械があるし、掃除もスイッチ一つで魔法と仙術が完璧にしてくれる。
宿泊できる定員は約500名。
最高の施設だ。
これでよし。
材料は多めに作っておけば後からいつでも作ることができるので、引き続き作業をしてもらう。
仙人も悪魔もドワーフも、自分たちが役に立つとあって、みんなノリノリで頑張ってくれている。
俺のために。
ちょっと宗教チックな権力だ。
自分でも怖い。
これで俺の人気がなくなったらどうなるのだろう。
想像するだけでもっと怖い。
そうなったその時に考えよう。
実際のところ、それでもいいと思っている。
個人の自主性と選択が大事なのだから。
離れていくなら、それはそれでいい。
敵対だけはやめてくれれば。
それよりも学校だ。
学校というよりも研修所や訓練所と表現したほうが適切なのかもしれない。
まずは大人に研修を受けてもらって、戦力アップと先生の育成。
もうあと数日後には選抜されて来る手筈になっている。
せっかくの学校なのだから、入学式とかすべきだろうか。
あとは学校といえば、部活。
せっかくの学校なのだから。
これが無ければ学校じゃない。
とても日本式な思考だと自分でも思うけど、このシステムは人間関係を広げるチャンスととらえてほしい。
参加はもちろん自由参加にして、最高に面白いものにしよう。
夕方から夜にかけて練習したいという者がいることを願って。
そして修学旅行。
これも俄然、必須イベントだ。
各拠点を回るツアーもいいかもしれない。
現在、各拠点は元のゲームの世界と同様、相互に連結している。
どこでも自由に行き来できるようになっているのだ。
仙人種以外にも種族があって、そこにも違う世界があることを見せたい。
全部回るのは多すぎるから、選択制にすればいいかもしれない。
禁城は必須として、残りの拠点は6つ。
龍王城、ミイのとこ、エアノワリスの教会城とメルバコルの魔王城、ロメリアの精霊の里、ベッフィーの魔女の館。
一週間とかの期間に設定して、禁城プラスあと2つか3つ選択できるようにすればいい。
6泊7日で。
夢が広がる。
見学してインスパイアされて、さらに上のランクを目指す者も出てきてほしい。
違う世界を見るというのは、絶対良い刺激になる。
留学というやつだ。
それに就職先なんかも検討させることがでればもっと良い。
なんか楽しくなってきたぞ。
本格的に検討しよう。
「ラシル様、引き続き資材調達の任に当たりますが、どのくらい必要でしょうか」
「そうだね。とりあえず、いっぱい。今回は200くらい作る分があればいい。もっと増やすかもしれないから、作れるだけ作ってほしい。1000くらいあれば十分かな」
「畏まりました。作業に慣れてまいりましたので、スビートも向上いたします。恐らく2、3日で完了するでしょう」
え、そうなの?
それじゃあ他にも作ってほしいかも。
「他にも材料が欲しいものがある。設計図を渡しておくから、2週間で作れるだけ作ってくれ」
「畏まりました。全力で造らせていただきます」
ミイが満面の笑みを向けてくる。
ちょっと怖い。
多分本気でやるのだろう。
「あまり、無理をしないようにな」
「はい。ラシル様の為に皆全力で頑張ります」
いや、だから違うって。
「ほどほどにな」
「はい」
ミイはとても嬉しそうに返事をした。




