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世界改変 ~アップデート~  作者: 、、、、、
2 火国騒乱編
43/246

043_隣国侵略戦2 会談


 水国王は連絡を待っていた。

 火国を征服し、攻め滅ぼしたという吉報を。

 ついこの間、火国首都である火府は落ちた。

 火府さえ落としてしまえば、もう勝ったも同然だ。

 戦争の山場は越えたのだ。

 後は勢力を結集し、生き残って徒党を組んでいる勢力を撃破すれば終了。

 火国は完全に滅ぶのは時間の問題。

 それなのに、火南都市からの連絡が来ない。


 遅い。

 まだ来ない。

 イライラする。


 今日の会議でもそれが主な議題だった。

 会議のメンバーは5人。

 王に加えて各都市の代表が4人。

 出身である水北都市の代表は自分の手駒である。

 水西都市は、まだ戦争は終わらないのかと言っている。

 会議の席には都市の代表がまだ10歳と若いため、摂政が代わりに臨席。

 水南都市の領主はいつになったら吉報が届くのだとやきもきしている。

 水南、オキサイドは無言を貫いている。


 水南と水西は戦争に消極的だ。

 派兵にも簡単に応じず、兵站を担当している。

 戦利品である奴隷もお金もいらないというのだから、それは別にいい。


 密かに調べさせているが、火国と内通している気配もなし。


 内通しているのであれば、もっと声高に反戦を叫んだり、妨害工策があってもよいのだが、それもなし。

 事態に受動的に対処して、静観を決め込んでいる。

 表立って反逆しないのであれば、粛清の必要はない。


「それで、火国最後の都市の攻略はどうなっている?」


「原因不明の行方不明事件があったというではないか」


「王よ、占領している火府から第二陣の兵が今日にでも出立するでしょう。今しばらく吉報をお待ちくださいませ。水東殿、その件についても調査中です」


 本当は火府は奪還されており、火南都市侵攻のために第二陣で集められた兵も全滅していた。

 しかしそれはここに集まった者たちは知らなかった。


「女王は生きて持ち帰れよ。あと、その妹も。この俺直属の奴隷にしてやる」


「承知しております」

 オキサイドは無表情になった顔を隠すように深く頭を下げた。



 2日に1度の会議が終わり、町へと戻ってきた。

 水の上とはいえ、移動に1時間程度はかかる。

 水南都市の領主、オキサイドは溜息をついた。


 武力に秀でた水北。

 政治力に長け、精神支配が得意な水西。

 最も人口が多く、大きい水東。

 水南の商業都市。

 元々は、水、それ自体を操ることに長けていた、シャーマンたちが興した町だった。

 水の術式を織り込んだアイテムを作ったり、回復薬を作ったり、そういった、術式を練り込んだ加工品を作ることに長けていた。

 それを売ることで、商業的に繁栄してきたのだ。


 この戦争で、回復薬の特需が生まれいた。

 兵士の代わりに兵站と情報、そして技術力を差し出すことで、国王の機嫌を取っていた。

 都市全体は特需で潤っているが、回復薬の費用を捻出しているのも都市である。

 回復薬は税金から購入される。

 ではその税金支払うのは誰か。

 水南人である。

 だから結局、水南人は自分達のお金で自分たちの商品を購入して、王に差し出しているのだ。

 都市全体としてはプラスマイナスゼロ。むしろマイナス。

 回復薬販売者のみが得をしている状況である。


 オキサイドは戦争などどうでもよかった。


 なぜそんなに争うのだろう。

 自衛の為ならば仕方がないと思う。

 ある程度は容認できるとしても、占領し、侵略したとして、その次の戦略はあるのか。

 戦争を仕掛けようとする土地に住む人間に、そこまでの恨みがあるのか。

 その土地が、何かの死活問題になっているのか。

 争う必要が感じられない。

 仙桃の供給も、今のままでそんなに困っていないではないか。


 それに……

 オキサイドには先代の火の王との盟約もあった。

 不可侵条約である。

 協力し合えばもっと良くなるから手を取り合おう。

 そう話し合って出た結論だった。

 先代火国王とオキサイドは仲が良かった。

 とても良好な関係だった。


 しかし状況が一変した。

 水北からの新しい王の台頭。

 火国への宣戦布告と侵攻。

 戦火の拡大による火国王の死亡。

 

 同盟の効力は生きていたが、実質意味をなしていなかった。

 情報収集が得意で、集めた情報を元に意思決定をするのが水南人の得意とするところ。

 それなのに、状況の変化が早すぎで何もできなかった。

 反戦を訴えたが、ダメだった。

 火国王の亡命も画策したが、木国と土国の都市を共闘関係に引き入れた水国王の軍勢は圧倒的で瞬きする間に火国の半分以上を占領してしまった。

 オキサイドは自分の都市の安全保障もあるため、表立った動きがてきない。


 それでも、火国の女王だけでも助けられないか。

 そう思っていたのに、苦々しい。


 いつものように、執務室でオキサイドが悩み抜いていた時だった。

 ノックの音がし、オキサイドに使えている従者が手紙を持ってきた。


 最近、悪い知らせばかりが多かった。

 オキサイドは愉快ではない気分で手紙の封を切り、読み始めると驚いた。


 火国の女王だ。

 間違いない。

 内容は至急協議したいことがあるという。


「生きていらっしゃったか」

 オキサイドは天を仰ぎ、神に感謝した。

 これで助けられる算段が練れる。


 すぐに返事を書いた。

 いつでも来てくれ、いつでも保護し、亡命を助けるという内容で。


 使者だという深いフードを被った男に渡した。


 そして1時間後、火国の女王は現れた。



 火国の女王が見えた。

 従者からそう告げられ、応接室へと急ぐ。


 まだ手紙を出したばかりであった。

 手紙が届くまで1週間以上はかかると覚悟していたのに、1時間もしないうちとはどういうことなのか。

 恐らくもうこの都市まで来ていたということなのだろう。

 オキサイドがそう考えたのも無理はなかった。


 応接室に行くと、火国女王レイランと将軍、そして見慣れない者たちがいた。


「オキサイド殿」


「これは火の国の女王様。よくぞご無事で。本当にふがいない私をお許しください。あなたのお父様との盟約を果たせないことも、本当に申し訳ない」


 懺悔をしたオキサイドは跪いた。


「お立ちください。オキサイド殿」


「それで、いつから水南にいらっしゃったのですか? 手紙ではなく直接いらっしゃればよろしかったのに。まぁ、会ったこともない私に直接会うと身の危険があるとお考えになるのも分かりますが」


「いえ、私はついさっきまで火府にいて、今到着したばかりです」


「は? これは失礼。どうやって?」


「転移術です」


「まさか。使える者など限られているでしょう。我が国にもいないのに」


「いえ、こちらの方が」

 そういってレイランは紹介した。

 見慣れない服を着た男性。

 どうやら水国でも火国でもない者のようだった。

 この近隣の国の人間ではない。

 もしかすると風国か。

 転移術を使えるというのだから、風国と関係の深い玄武帝の手の者かもしれない。

 オキサイドは一瞬でそこまで推測した。


「こんにちは」


「こちらの方は?」


「ラシル様です。ラシル様は火国をお救い下さいました。残すは奴隷となった者達の解放だけ。現在、私はラシル様にお仕えする身となりました」


 聞き捨てならない情報があった。

 ラシルにお仕えする身というのは一体。

 思考に一瞬の空白が生まれ、頭が理解をするのを拒否した。

 オキサイドは想像していた状況が何倍も複雑になることに頭痛を覚えた。

 情報収集とその分析を得意とし、水国では一番だと自負していた。

 水国内だけならともかく、世の中の動きにはどうやら付いていけていないらしい。


「そんな、かなり危うい状況と聞きましたぞ」


「いえ、火国の都市や町、村に至るまで、すべて奪還いたしました。」


「え?」

 オキサイドは素の表情に戻ってしまった。


 レイランから初めから終わりまでを説明してもらい、ようやく事態の全貌が飲み込めた。


「そ、それが本当なら」


「水国も、もうすぐ攻める予定です。あと5日後に」


「そうですか。わかりました」


「ご理解いただきね感謝いたします」


「戦争は仕方ないでしょう。我々水国人がしでかした罪は重い。私の都市はどうなりますか。やはり私も同罪でしょうが」


「いえいえ、ここには奴隷もいないようですから」

 ラシルと紹介された者が代わりに回答した。


「と言いますと……」


「この都市の無事はお約束します」


「本当ですか」


「ええ。水国で攻めるのは北と東の都市、そして中央の水府にします。西は極力中立を保っている様ですから、戦争が終わった後に会談でもしてみます」


「ありがとうございます。それで、その、こんなことを質問するのは失礼かもしれませんが、ラシル様というのはどういったお方なのでしょうか」


「神様です」

 レイリンが至極当然と言った風に答えた。


「わが妹、レイリンの言う通りです」

 レイランも同調した。


 オキサイドは混乱した。

 状況は整理できたのだが、聞けば聞くほど突拍子のない事態になっていた。

 突然現れたラシルと名乗る者に国を救われ、今はその支配下にいる。

 どうしても懐疑的にならざるを得ない。


「皇帝陛下に近しい方などでもなく」


「皇帝よりも尊い存在です」

 レイランが断言した。

 隣ではラシルが困ったなといった風に苦笑している。


「そ、そうですか。しかし、疑うようで恐縮ですが、本当にできるのでしょうか」


「ええ、できますよ。本当は今すぐにでもいいのですが、いろいろと準備がありまして」


「そのような強いお力を行使されるのでしたら、準備も必要でしょう」


「ええ、まぁ」

 

 もし他の火国人の情報もあれば聞きたいという申し出を受け、オキサイドは情報を開示した。

 開示した情報は、ラシルが掴んでいた情報とほぼ同じだった。

 ただ一つ、他国の都市の代表の情報だけは役に立ったようだった。

 木国の中央都市と北部都市、土国のいくつかの都市は水南と同じで戦争反対派。

 元々火国し同盟を組んでいた都市なので話し合ってほしい旨を伝えた。

 それぞれの代表のの所に行くのであれば、知り合いなので一緒に行きたいというのを申し出た。


「一緒に来ていただければ助かります。話がスムーズに運ぶでしょう」




 いつ行きましょうかという話から、もし可能であれば今すぐにでもという流れになり、ラシルはレイランとオキサイドを引き連れて、木国へと向かった。


 転移術なので一瞬。


 オキサイドに話を通してもらい、木国王と謁見。


「これはこれは、オキサイド殿。こんな遠いところまで、さぞ長旅でお疲れのことでしょう」


「いえいえ」

 オキサイドは「一瞬でした」とか言えば、さっきの自分と同じように混乱すると思い、流した。


「そちらは火の国の女王では?」

 レイランを見て驚いた様子の木国王。


「まさか我々に報復を……」と、顔を青くする木国王。


 とても温和そうな表情がころころと変わる。


 オキサイドが事情を説明。

 話を聞いた木国王が難しい顔をする。


 木国は元々、平和を愛する国なのだそうだ。

 それを南部の都市は何を血迷ったか、戦争に加担した。

 水国の入れ知恵や情報操作もあるのだろうが、戦争に参加することの重みを分かっていないと憤慨だ。

 また奴隷などを使い、虐待していることから、事実上、国交断絶中であるとのこと。


 戦争を推奨する白虎帝の意向もあり、火国に加担できない状況だったとのこと。

 申し訳ないとレイランに頭を下げた。


 なかなかの常識人だとラシルは思った。


 レイランがこれからの計画を説明。


 南木都市は亡ぼすことにする。

 その後は木国で好きに統治してかまわない。


「本当にそんなことが可能なのですか」と木国王が聞いてきた。


 みんな疑り深い。


 いや、当たり前だ。

 この世界の実力を考えれば。


「可能です。ラシル様は神様であらせられますので」


「神様ですか……」

 どうしていいか分からない様子の木国王。

 そもそもこの世界に神様はいるのだろうか。

 神という概念はあるにしても、この仙界圏での神という概念はどうなっているのだろう。


 侵攻開始の日時を告げ、木国王と別れた。

 北木都市には王から連絡してくれる約束を取り付けた。


 次は土国。

 オキサイドが懇意にしている土の国の2つの都市の代表とそれぞれ面会。


 話はスムーズに進んだ。


 しかし、土国の3都市は戦争に加担しており、土国王を含む他の都市は不干渉を貫いている。

 彼らとは話が通じないとのこと。

 とりあえず2都市は亡ぼす旨説明し、了解を得た。


 これで根回しは完了。





 帝国の動きや土国の他都市の動きは気になるが、何かしてきたらその時に対応する。

 各都市での食料や物資の状況、受け入れ態勢も整いつつある。

 役割分担も決まった。

 俺とショウが水の国。

 一つずつ都市を無力化していく。


 ミイが木国担当。

 セシュレーヌとエアノワリスが土国。

 ニボシも同行する。

 クゥは俺の護衛。

 ロメリアはミイに同行。


 メルバコルとペッフィーは禁城の防衛。


 決戦前夜、俺たちは打合せのために集まっていた。

 幹部たちはもちろん、レイランやレイリン、火国の将軍たち、木国からは王と北部の代表、土国の2都市の代表、水国のオキサイド。

 それに加えて水西都市の代表も来ていた。

 まだ10歳くらいの子供で、摂政を連れてきた。

 オキサイドが説得し、会議だけでも参加するようにと交渉したのだそうだ。


 ミイが侵略の流れを説明をする。

 三都市同時攻撃。

 木国は攻撃と同時に奴隷の退去を。

 土国は奴隷の退去後に総攻撃を。

 水国は攻撃後に奴隷の解放を。


 そして他国の方には、それぞれの国の都市の事後処理をお願いして、了解を得た。


 そもそも、木南都市は現在人口が激減しているそうだ。

 元々戦争が嫌いな木国人は性格が温和な民。

 巻き込まれないようにと関係ない者たちは親戚を頼って中央や北部へと避難していた。

 残っているのは数万。

 土国も同じで、戦争を開始した3国からの移住者が後を絶たないとのこと。

 本来なら50万人規模の町に、こちらも数万人しか残っていない。

 水国でも同様、水南都市に移住したり、近くの村に引っ越したりしているようだ。


 また、各国からの申し出があった。

 戦闘を見学させてほしいと。

 本当に都市を亡ぼせるのか見たいという。


 いいだろう。


 ということで、会議が終了。

 ゲストの方々には今日はゆっくりと禁城に泊まっていただき、明日は侵略開始だ。





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