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世界改変 ~アップデート~  作者: 、、、、、
2 火国騒乱編
39/246

039_火国奪還戦8 首都奪還


 配下が各地で活躍していた。

 圧倒的武力をもって、火国奪還に励んでいた。


 ではラシルはといえば。


 首都、火府の近くにいた。

 皆の行動状況を把握し、進捗を管理していた。

 護衛の神仙が数名と、火国の女王一行と一緒にいる。


 不安そうなレイラン。

 自信に満ち溢れているレイリン。

 姉妹の様子は対象的だった。

 同じ研修を受けて、訓練をしているはずなのだが、レイランは自国の民の心配をしている。

 レイリンはこれだけ強くなれるのだから、ラシルに任せたら安全だと思っている。


「レイリン、不安はないか?」


「ございません。ラシル様とその優秀な配下の皆様が負けるはずがございません」


 いや、うん。すごい信頼だけど。

 信頼されすぎるのもちょっと困る。

 なんかエアノワリスのところのプリーストのようになってきてはいないだろうか。

 彼女達にはちょっと盲目的な所がある。


「レイランはどうだ?」


「はっ。心配がないと言えば嘘になります」


「勝てるかどうか?」


「それもあります。ですが、こんなに上手くいっていいものかと」


「姉さん、それはラシル様に不敬ではありませんか!」


「申し訳ございませんラシル様」


「姉が申し訳ございません。姉の無礼をどうぞお許しください」


 姉妹が揃って頭を下げる。


「そんなに畏まらなくてもいいよ。思った事を言ってくれた方が助かるから」


「ありがとうございます」


「ラシル様の優しいお言葉、胸に沁みます」


「それに大丈夫。俺たちの作戦に抜かりはないさ」


「他の拠点は交戦中だけど、もうすぐ方がつく頃だと思うよ」


「はい。そのとおりでございます」


 答えたのは転移術で移動してきたミイだった。


 終わったのか。早いな。


「敵を駆逐し、殲滅を確認しましたので、後詰に引き継いでまいりました。召喚した配下に死体も食べさせたので、綺麗になっております」


「流石だな、ミイ」


「そ、そんな、もったいないです」


 顔を赤らめ、下を向いてしまうミイ。


「それで、他の都市の状況は?」


「クゥの担当している町はほぼ相当完了。残りの敵を駆逐しつつ、掃討戦に移行中。死体の処理は他の神仙に任せ、順次、次の町へと移動しています。軽い混乱が発生していますので、落ち着くまでもうしばらくかかります。メルバコルが担当している町も間もなく殲滅が完了するようです。催眠術を使ったようで、戦闘後の状況制圧も容易いでしょう。敵兵を生きたまま捕らえ、魔王城に送致しています。同様にロメリア、ショウについても、第一目標は制圧完了し、次の町へと移っています。神仙が向かった拠点も順調に落としています」


「それはよかった」


「ただ、一つだけ気がかりな点が」


「なんだ?」


「はい。解放して判明したことですが、町に元々いた火国人が予想より少ないようです」


「殺されたのか?」


「死体は発見できませんでした。大量の人間を殺して埋葬した後も確認できません」


「つまり」


「どこかへ連行された可能性が高いと思います。恐らく奴隷になっているかと」


「そうか」


 青い顔をしているレイランに尋ねた。


「どう思う?」


「はい、ラシル様。私には分かりかねます。ですが、労働力となるもの達を大量に虐殺するとは…考えられません」


 レイランの声は震えていた。

 自分の国が他国の占領下にあるというプレッシャーは、凄まじいものなのだろう。

 占領された町の民はどうなったのか。

 それを想像するだけでも、顔を青ざめる理由としては十分すぎるほどだ。


「少しお待ちください」

 ミイが通信をしている。


「たった今、連絡がありました。大半の者が、水国、木国、土国に連行されたようです。残っていたのは兵士の世話をする係で、他は奴隷の労働力として他国に移送された模様」


「くっ」

 レイランが唇を噛み締める。


 相手が一枚上手だったようだ。

 拠点を奪い返せたとしても、連れていかれた人は戻らない。

 この奪還戦に勝っても、戦争終結にならないのだ。

 逆に火国に侵略された時に、人質として活用するためもあるだろう。


 もう少し情報を集めるべきだった。

 下手をすれば、この奪還戦の影響で連れていかれた火国人が殺されてしまう可能性もある。


 だが幸運なことに、上位の仙術者でなければ遠距離通信術式は使用できない。

 戦場には我々を圧倒するような仙人がいないので、通信術式などは使用されていないだろう。

 人や馬などをつかった情報伝達だと推測されるので、到達までには時間がかかる。

 首都を落としてから、どのくらいの時間があるか考えた。


 通常であれは1か月ほど。

 もし昼夜問わずに伝達されれば、恐らく10日もあれば伝わるはずだ。

 異変を察知するまでにかかる時間を計算に入れると、もう数日は見てもいいかもしれない。



 ふむ。我々もそろそろ動くべきだろう。

 異変に気づいた首都を占領している敵が、火国人を害する前に。


「そろそろこちらも行くぞ」


 そう宣言して見渡すと、レイランとレイリンが燃えるような目をしていた。

 他の火国兵も緊張している面持ちだ。

 ミイはいつも通り平然としている。

 どこかワクワクしている感じだが、それでも油断はしていないようだ。


 全員を引き連れて、転移術式を使用。

 光の粒子が全員を包むと、次の瞬間には首都の王座の前に出現した。


 本当にここが王座の間なのだろうか。

 そう誰もが思うほど、弛緩しきった雰囲気だった。

 今は戦時中のはずだろう。

 偉そうな人間が数名、談笑しながら酒盛りをしていた。

 水、木、土、それぞれの国の将軍級の者たちだと推察される。


 近くには奴隷にされた火民が鎖に繋がれ、控えていた。

 どういった目的で近くに侍らせているのかは分からない。

 しかし一つだけ言えるのは、奴隷となっている女性は、ほとんど服を着ていなかった。


 自国民の在り様を見て、レイランの殺気が大きくなった。


「落ち着け」

 レイランの肩に手を置く。


「はい」


 ようやく俺たちの存在に気付いたのか、酒盛りをしていた1人が乱暴に立ち上がって怒鳴り声を上げた。


「き、貴様ら、ここにどうやって入ってきた!」


 他の将軍たちも椅子から立ち上がった。


 戦時中に占領した他国の首都、それも王座の間で宴会とはいい趣味をしている。

 脇には奴隷にした占領国の民を侍らせて。


 なんだかイライラしてきた。

 例えにすると違うかもしれないが、末端の立場の弱い人間が搾取され、それをめでたいことだと喜んでいるクズにしか見えない。


 元の世界でもそういう奴は沢山いた。

 権力欲の強い、立場の高い人間ほどそういう傾向がある。

 いや違うな。立場の弱い人間でもこういう傾向のクズは沢山いる。

 それに、自分だってこの戦争が終われば息抜きの1つくらいするだろう。

 多分、宴会なんかもする。

 他人のことは言えないか。

 だったらもはやエゴでもいい。


 それでも最後に確認しよう。

 何らかの合理性や情状酌量の余地があるかもしれない。

 気に入らないものを気に入らないという理由だけで全否定するのはいけない。

 それは自分が最も嫌っていることの一つではないか。

 だから聞いてみよう。

 聞かなければならない。


「お前たちはなんだ?」


 いきなり現れた不審者から己の正当性を問われても、それは不快だろう。

 ちょっと言い方が厳しかったかもしれない。

 将軍たちは一斉に眉を顰め、その内の1人が叫んだ。


「守備兵はどうした!!」


 怒号を聞いた兵士がぞろぞろと入口の扉から出てきた。

 距離を取って回り込み、将軍たちの元へ行く。


「ここの守備の責任者は誰だ!!」


 将軍の1人で最も太った者が兵士たちに問いただした。


「私であります!!」


 兵士の一人、他の兵士よりも少しだけ上等な装備を身に付けていた男が名乗り出た。


「後で覚えておけ、侵入者をここに通した罰、たっぷりと受けさせてやる」


「ははぁ!!」


 顔を青くした守備の責任者は頭を垂れて跪き、立ち上がると侵入者である俺たちに向き直った。

 その顔は決死の表情をしていた。


 剣を抜いた兵士は将軍をかばうようにして並び、更にその前に槍を装備した兵士たちがこちらに向かって槍を突きつけている。


 俺はさりげなく、近くの敵に聞いた。


「おい、そこの守備兵、お前はなぜ戦争をしている」


 少し場違いだったかもしれない。

 守備兵は睨みつけ、だんまりを決め込むばかりで答えない。


「なぁ、お前達はどうして戦争をするんだ? 奴隷が欲しいのか? 労働力や食料目当てか? それとも武力がほしいのか?」


 将軍の一人が息をのんだように叫ぶ。


「そこにいるのは火国の女王じゃないか!」


「なんだと!!」


 守備兵が前に出る。

 後ろからも大量の増援。

 前と後ろで挟まれてしまったみたいだ。

 レイランはじめ、火国の兵士は臨戦態勢。

 ミイは相手の強さを見抜いているのだろう。

 一応は警戒しているが、リラックスしている。

 

「人に侵略するのであれば、お前も侵略されるぞ。人を奴隷にして苦しめるのであれば、お前たちも苦しめられるだろう。その覚悟があるということでいいか?」


 俺は諭すように言った。

 俺の言葉はずっと無視され続けている。

 まぁ当たり前かもしれない。

 こんな現れ方をした人間相手に友好的に振る舞うほうが難しいだろう。


「捕まえろ!!」


「ミイ、頼む」


「かしこまりました」


 ミイの周囲から数十匹の黒い狼が出現。

 現れたと思ったその時には前衛の兵士の喉を食いちぎっていた。

 そこからは蹂躙戦。

 一瞬にして黒い影が兵士たちを飲み込んでいく。

 死体さえ残らない。

 狼たちが食べているからだ。

 火国兵の何人かビビッて地にお尻を付けていた。


「そこのお偉いさんたちは生かせ」


「承知しました」


 すぐに兵士たちがいなくなり、俺たちと将軍、そして奴隷だけになった。



 誰かが失禁したのだろう。

 アンモニア臭がした。

 早めに終わらせよう。


 腰を抜かしていたお偉いさんのうち、2人だけ立っている者がいた。

 腕に自信があるのだろう。


「貴様!!」


 仙術発動の気配。


 ミイがすかさず前に出る。


 水術式。

 水の刃が迫る。


 水のない場所で水を作り出せるというのは、この世界では上位の者しかできない。

 致死的な飛び道具を一瞬で作り出し、それを相手にぶつけるという技。

 一般人は太刀打ちできないだろう。

 常に十を持ち歩いていて、意思の力でいくらでも使えるのだから。

 仙術使いというのは、この世界では圧倒的な存在のだ。


 ミイは特に何もせずに、水は消え失せる。


「馬鹿な」


 木の術式も迫ってくる。

 戦意を失っていない、もう一人の将軍が手から木の枝をいくつか出し、それが殺人的な勢いで迫ってくる。


 当然無効。


 攻撃が一段落し、敵対行動に移った者も含め、敵方は全員呆気に取られていた。


 

 ミイが手をかざす。

 重力魔法だ。


 もうここまでレベルアップしたのか。

 確かミイは仙人種の後、悪魔種に進化したはずだ。

 魔法を行使し、重力魔法まで使用できるようになっているとは。

 さすがである。


 将軍たちが勢いよく地面にたたきつけられる。


「殺すな」


「はい」


 ミイは魔法を少しだけ緩める。


 悪魔種の眷属召喚を発動。

 召喚された悪魔たちがその場にいた者たちを捕らえる。


「移送する前に聞きたいことがある。お前たちは何のために侵略しているのだ。火の国に落ち度はあったのか?」


「馬鹿か。強い国が弱い国を侵略するのは当たり前だろう」


 ふむ。

 弱肉強食を体現しているだけということか。

 そりゃそうだ。

 元の世界でもそんなものだ。

 納得した。


「わかった」


 ゆっくり情報を聞き出すとしよう。

 現在の状況から思考回路まで。

 移送先はミイの拠点。

 情報を引き出すためだ。

 ミイの部下には優秀な情報収集部隊がある。

 その優秀過ぎる者たちとミイに任せれば大丈夫だろう。


 その後は実験台としてベッフィーの実験室に送る予定だ。


 残りの部隊は殺してもかまわないだろう。

 術式を発動。

 ショウが使ったものと同じ、炎の術式だ。


 この城だけではなく、首都にいる者で、味方以外全員炎に包まれる。


 建物内にいようが、地下にいようが関係ない。

 死体もすべて綺麗に燃やす。


 それは1分も掛からずに終了した。


 さて、終わった。

 他の拠点はどうだろう。


「ダメージレポート。状況報告」


 俺は通信を展開し、拠点管理者と副官全てに発した。


「メルバコルです。損害ございません」


「全ての町や村の解放に成功」


「敵は1匹も逃がしておりません」


 続々と報告が上がってくる。



 うん。

 終わったかな。


「一先ず戻ろうか」


 そう言って後ろを振り向くと、レイリン以外の火国の者たちが座り込んでいた。

 レイランは戦闘開始前よりも顔を青ざめさせている。

 兵士たちの中にも震えている者がいた。

 奴隷となった者も泣いている者が数名。


 多分疲れたんだろう。

 緊張の糸が切れて。

 良かった良かった。


 さて、事後処理と今後の方針の会議だ。

 火国王として、やるべきことは沢山あるだろう。

 奴隷になった者たちの解放や、事後処理を任せた。


 そして転移門を開いて、いったん禁城へと戻った。







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