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世界改変 ~アップデート~  作者: 、、、、、
2 火国騒乱編
34/246

034_配下のレベリング3 エアノワリスの場合


 火国を支配下に置き、幹部は忙しくなった。

 ショウは人間の国との調整で忙しそうだし、セシュレーヌとメルバコルも火国民たちのレベリングの先生として駆り出されている。

 もうすぐ火国の各都市の奪還戦が近づいているので、ミイも何か動いている様子。

 ペッフィーもレベリングの合間に研究をしているそうだ。


 天使エアノワリスはまだ主だった仕事を与えられていない。


 食糧生産の監督の仕事を与えられているが、こういう野菜が欲しいという要望を出すだけで、あとは勝手に作ってくれる。

 生産量なんかも、ショウが火国の状況を綿密に把握してくれているので、言われた量をただ他の人に指示するだけ。


 一刻も早く重要な仕事をしたい。

 大きな成果をたくさん上げて、ラシルに褒められたい。

 でもそれはまだ叶わない。

 今日も、今の自分ができる最大限の貢献、つまりレベリングに励んでいた。


 早く強くなりたい。

 強くなれば自分がラシルを守ることができる。

 このギルドで一番強くなるんだと張り切っていた。


 それに昨日、ラシルからの実質的なプロポーズを受けたのだから、頑張らないわけにはいかない。

 これだけ気分が良い日は生まれて初めてではないか。

 ずっーとラシル一筋で、寝ても起きても、何をする時でもラシルのことを考えていた。

 それが昨日、何の脈絡もなく、結婚の話が出てきた。

 将来の話をして、気持ちを聞かれた。

 あれは間違いなくプロポーズだった。

 100人いたら、100人ともプロポーズだと言うだろう。

 その場にミイという最大のライバルも一緒だったのは悔しいが、そのマイナスを加えても、十分にお釣りがくる。


 ラシルはいわゆる鈍感な男子だと思っていた。

 「結婚したい」とか、「一番大事」とか、「花嫁になりたい」とか、「一生一緒にいたい」とか、常日頃からラシルに宣言しているのだが、彼はいつも笑って「ありがとう」と言う。

 最初はラシルも同じ気持ちなのだなと思い、幸福感で満たされていたのだが、どうやら違うようだった。

 ミイやベッフィー、クゥやロメリア、そしてメルバコルにさえも、ラシルに本気にされていないと断言されるのだ。


 そして気づいた。

 本当に、自分は本気にされていなかったのだと。

 ラシルの今までの態度や対応を振り返ってみたのだ。

 ラシルの「ありがとう」は、戦闘でエアノワリスが前衛で戦った時に言ってくれる「ありがとう」と同じだった。

 ミイがイベントの攻略情報を教えた時や、ベッフィーがアイテムや武器を作った時と同じだったのだ。


 それは衝撃の事実だった。


 しかし、エアノワリスは成長した。

 自分の想いを伝えるだけではなく、相手の行動をよく観察するというスキルを手に入れたのだ。


 そのスキルを使わなくても分かった。

 昨日のあれは、プロポーズである。

 念のため同席して、同じくプロポーズを受けたミイに確認したら、間違いないという太鼓判を押された。


 これでテンションが上がらない方がおかしいのだ。

 神であるラシルの伴侶となれる。

 自分は必要とされている。

 これを幸福の絶頂と言わずして、何という。


 深い幸福感に包まれながら、エアノワリスはアンデットを殴り殺していた。


 ラシルが最初にしていた頃と、レベリングのやり方は大幅に変わっていた。

 セシュレーヌ領の山脈地帯。

 龍王城の前にある、広大な盆地がロケーション。

 モンスターは悪魔種、竜種、精霊種に進化している者を捕まえてきて、召喚してもらう。

 天使族には召喚魔法がない。

 そのため、自力でモンスターや悪魔を呼び出すことができない。

 だからレベリングには召喚魔法を行使できる者の協力が必要不可欠なのだ。

 配下の者を悪魔種や龍種などに進化させればその限りではないのだが、それには至っていなかった。



 今日もそこら辺にいる手頃な悪魔種、メルバコルを捕まえて、訓練していた。

 エアノワリスの配下には、ホーリーナイトとプリーストがいる。

 彼らはエアノワリスのように純粋な天使種ではなく、人間種から天使種に進化した者たちだ。

 だからエアノワリスのように天使の羽など生えていないし、頭の上に光の輪っかを出すこともできない。


 ホーリーナイトは盾役で、防御力に秀でている。

 プリーストはヒーラーである。

 ラシル配下の中でも、エアノワリスの部下は防御力と回復力が断トツで高い。

 有事の際には人海戦術でラシルの盾となれる。


 しかしながら、プリーストは天使種に進化したとしても、どこまでいってもヒーラーである。

 つまり、回復魔法しか使用できない。

 ではどうやってレベリングするのか。


 最初の戦闘レベルのカンストまでは魔法の使用はできないので、物理攻撃になる。

 そのためメイスを使う。

 彼女たちは力が強いので、砕くのが得意だ。

 メイスというのはカッコいい言い方をしたもので、有り体に言えばこん棒だ。

 そのこん棒を振り回して戦う。


 振り回される相手はアンデット。

 骨なので剣や槍、弓などの先の尖った武器には耐性があるが、打撃面積の大きいこん棒には弱い。


 プリーストたちはアンデットの骸骨たちを次々と粉砕していく。


 では、戦闘レベルをカンストしたプリーストはどうなるのか。

 カンストすれば信仰系魔法が使用可能となる。

 信仰系魔法は回復はもちろん、自身の身体レベルや防御力など、ステータスアップの魔法だ。

 攻撃魔法はない。

 つまり魔法での攻撃はできない。

 元からの天使種は、同じ信仰系魔法でも攻撃に使用できるが、後発の人間種には不可能なのである。


 では回復系に特化した彼女たちはどうするのか。


 心配はいらない。

 相手はアンデットだ。

 アンデット様様なのだ。


 魔法を使うそれは回復魔法。

 アンデット系モンスターは回復魔法自体がダメージとなる。

 プリーストは敵に回復魔法を使用することによって、敵を倒すことができてしまうのだ。

 また、怪我をすればすぐに回復できるので、かなり無茶な戦い方も可能となる。



 エアノワリスは空中で全体の様子を観察していた。

 眼下には、メルバコルに召喚してもらった大量のアンデット。

 その数、およそ数万。

 フィールド全体を埋め尽くしている。

 それはどこかの墓場のような光景であった。

 もちろん墓などない。

 でもこれからアンデットの墓場となる。

 人間対魔族の人魔大戦争の様を呈していた。


 アンデットの群れが、わずか100人ほどの人間の集団に襲いかかる。

 アンデットの武器は様々だ。

 剣、槍、弓、こん棒の混成部隊。

 奥に行けば行くほど、アンデットのレベルも上がる様に調整してもらっている。


 前衛は進化前ホーリーナイトの盾役が自陣に入られない様に死守している。

 そのさらに前方では、遊撃部隊となっている進化前のプリーストたちが敵に切り込んでいる。

 この場合は叩き込んでいるという表現のほうが適切かもしれない。

 後方では、進化して信仰系魔法が使えるようになったプリーストたちが大規模回復魔法を展開。

 自陣と敵陣両方にまたがる様に魔法をかけている。

 それにより、自陣の兵士は回復し、敵陣のアンデットはダメージを受ける。


 信仰系魔法の白魔法は攻撃力のない代わりに、唯一回復や蘇生を可能とする。

 対して、悪魔族の使う黒魔法は、自分の欲望を叶えるために力を使うものであり、白魔法の願いや信仰とは異なる。

 魔法はいくらでも無限に使用できるわけではない。

 マジックポイント、MPがその値となる。

 それは時間とともに回復するが、上限がある。

 レベルが上がれば上がるほど、HPや他のステータスと同様、上限値が上がる。

 白魔法、黒魔法、仙術の使用も全てMPである。

 ちなみに、純粋な精霊種はMPの固まりなので、体力もMPとなっているが、その分MP値は非常に高い。


 信仰系魔法は信仰することによって、行使される。

 奇跡の力であり、現実の法則を捻じ曲げる。

 それは信じているもの、神に対する祈りがその力の源である。

 その信仰対象が強大であればあるほど、効果も大きくなる。

 また、信仰心が強ければ強いほど、効果が大きくなる。

 逆に、信仰心が無ければ、その魔法は発動しない。

 諸刃の剣のようなシステムになっている。

 ではその信仰対象は何か。

 もちろんラシルである。


 強大なアンデットの群れにホーリーナイトたちが一歩も引くことなく、物理攻撃をしつつ、固持する。

 ステータスアップの魔法が大量にかかっており、大規模なヒールも何分かに1回かかるので、たとえ攻撃を受けたとしても傷一つつかない。

 無双状態である。


 後衛としてプリーストたちがヒールを唱えている。

 呪文は彼女たちの願いを叶えるためのものだから、別に声に出さなくてもいいはずなのだが、気分的な問題だという。

 声に出したほうが気合いが入り、効果が大きくなるそうだ。

 また、呪文に決まった定型文や名詞はない。

 各々の願いの叶いやすいと思い込んでいる単語がそのまま呪文となる。

 これなら効く! と思う言葉が発せられる。


「ヒール!」

「メガヒール!!」

「ギガヒール!!!」

「ギガントヒール!!!!」


 という叫び声がそこら中で聞こえてくる。


 中には、


「ラシル様!!」


「麗しいラシル様!!!!」


 などという、ラシルが聞くと恥ずかしい呪文もある。

 これは果たして呪文なのか?

 呪文なのである。

 白魔法は理屈ではない。

 その点、黒魔法のほうが理にかなっている。


 凄まじい勢いでアンデットの軍勢がどんどん駆逐されていく。


 戦闘が行われている上空にいるエアノワリスは部下の奮戦ぶりを確認しつつ、満足そうに頷いた。

 自らも強くなろうと敵陣に突っ込む。


 守備特化の軍勢を指揮している彼女が、唯一の積極的な攻勢部隊である。

 彼女の好きな戦闘スタイル。

 単騎特攻。

 敵中に単身急降下。

 地上を埋め尽くすアンデットの中に降りてきた天使、その手に持っているのはこん棒。

 嬉しそうにスケルトンたちを壊していく。

 バットで大量の花瓶を破壊している猟奇的なヤンキーのようだった。


 あえて派手な魔法は使わずに、ほとんど物理攻撃のみで倒していっている。

 可憐な天使の少女が、不浄な存在に断罪でもするように。

 鼻歌を歌いながら、ダンスでもするように軽やかにステップを踏む。

 ダンスの相手になれるような強者はいない。


 一時間もしないうちに数万のアンデットは駆逐された。




 ふぅ。

 ちょっと休憩っと。


 メルバコルは倒されたスケルトンの群れと、倒して喜びに沸いているエアノワリスの一行を見ていた。

 フィールドの外の近くの小高い山に座り、レベリングの状況を監視している。

 「我らの神の勝利です」とか、「神は我らを見捨てなかった」と、勝利に湧いている。

 邪魔をしないように、巻き込まれないように、彼女たちとは距離を取っている。

 たまったものではない、とメルバコルは思う。

 倒されたスケルトン達の召喚主はメルバコル。

 そしてメルバコルはラシルの配下。

 同じ神に仕える仲間のはずなのだが。

 彼女たちの頭の中はどうやらそうなっていないらしい。

 腹立たしいというか、恐ろしい。


 彼女たちはメルバコルの召喚したモンスターを倒すことでレベルアップするが、自分は全然しない。

 自分で召喚したモンスターを倒しても、経験値に加算されない。

 自傷行為とみなされ、経験値判定されないのだ。

 メルバコルがレベルアップするためには、龍種が召喚する竜か、精霊種が召喚するエレメントか、悪魔族の召喚するモンスターでなければならない。


 自主練のためにラシル様に召喚してもらうわけにはいかない。

 自分より強い悪魔族はいない。

 セシュレーヌには火国の者たちを鍛える仕事がある。

 こういった事情があって、なかなか自分のレベリングが進んでいないというのに。


 エアノワリスはどうだろうか。

 彼女は比較的時間に余裕がある。

 それなのに今日も彼女の都合優先でレベリングに付き合わされている。

 自分は利用されてばかり。

 メルバコルはなんとも言えない気持ちになった。


 休憩が終わり、また召喚を要求される。

 こっちのMPもタダではないというのに。


 ちょっと意地悪してやろう。

 大量の数万体のアンデットに加えて、信仰系魔法が効かないモンスターも複数召喚する。

 アンデットの配置も、彼女たちを取り囲むようにした。

 これで四面楚歌だ。

 はっはっは。

 少し苦しめばいいのだ。


「ちょっと!! 変なのが混ざっているわよ!!」

 すぐにメルバコルの悪意を見破った正義のエアノワリスが、抗議の声を上げる。


「強くなるのはラシル様の為じゃなかったのか?」


「当たり前よ。でもこれはなんなの!?」


「どんな状況でも対応できないなんて、ラシル様への信仰心が足りないぞ」


 脳筋女。

 聞こえないようにボソッと悪口を言う。


「メル、言ったわね!!」


 メルバコルはビクッとした。


 聞こえたのか。


「あんたでもいいこと言うじゃない! 私の信仰心を見せてあげるわ!!」


 どうやら聞こえていなかったようだ。


 空中にいたエアノワリスは、さっきと同じようにアンデットの群れに突っ込んでいった。


「望むところよ!!!」


 火をつけてしまったようだ。

 エアノワリスの配下たちも奮起している。

 円陣を組み、外側にニシュを筆頭としたホーリーナイト。

 内側にプリースト。

 進化前のプリーストが円陣から出て奮戦している。

 困難な試練を与えられるほど燃える奴らだということを忘れていた。

 困った特性だ。


 あぁ、あと何回付き合わされるのだろう。


 メルバコルは静かにため息をついた。





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