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世界改変 ~アップデート~  作者: 、、、、、
2 火国騒乱編
31/246

031_火国奪還戦2 会食


 一番の山場を乗り越え、レイランは部屋でグッタリとしていた。

 ラシルとの会議は上手くいった。

 まだまだ不安な事や分からないことばかりだが、出された条件は悪くない。

 むしろとても良かった。

 これ以上の好条件はないのではないか。

 会議での交渉というより、出された条件を謹んで承諾しただけなのだが。


 どこまで本当に約束を守ってもらえるのか。

 ラシルを見極めなくてはならない。

 その為の会食だ。

 同じようにラシルも火国を見極めて来るだろう。

 失礼の無いように、油断をせず、気を張り続けなければならない。



 そんな固い覚悟は早くも崩れそうになっていた。


「くはー」


「お姉ちゃん、下品だよ」


 案内された大浴場という部屋。

 食事の前に是非お風呂に入って欲しいとラシルに言われ、案内されたのがこの部屋だった。

 なんでも、暖かい水が張られた大きなお風呂があるという。

 それがどういうものなのか、聞いただけではちょっと分からなかった。

 

 姉妹そろってラシルに仕えることになるのだ。

 自慢じゃ無いが、見た目には自信がある。

 レイランはそういった事態も覚悟していた。

 正室とはいかないまでも、側室に迎えられるのではないか。

 妹のレイリンはノリノリであった。

 レイランもやぶさかではないと思っていた。


 これは身体を清めよという暗黙の命令なのだと受け取ったレイランだが、同時に疑問も抱いていた。

 それにしても、早すぎるのだ。

 レイランの常識では、そういう事は食事の後だと相場が決まっている。

 ラシルの常識がイコールでレイランの常識とは限らない。

 神様のような方だから、きっと常識ももっと高尚なものなのだ。

 それとも、食事後にもう一度入れという事なのだろうか。


 それとも食事の前に?

 まさか、食事中に?

 そんなアブノーマルな!

 皇帝の側近の中には、好んで食事中にそういうことをする者がいると聞く。

 もしやラシルもそういう趣味があるのだろうか。

 そんな不安をよそに、レイリンは何も考えていないようだった。

 部屋に案内されて感嘆の声を上げ、行く所行く所はしゃいでいた。

 完全に客人扱いされ、1人一部屋を与えられていた。

 流石に兵士の部屋はグレードを落としてくれとお願いしたが、それでも2人一部屋だというのだ。

 これ以上、下のランクの部屋は無いと言われた。


 そしてこの大浴場。

 女性はレイランとレイリン、3人の侍女を含めた5人だけの貸切。

 大きな風呂にどうやってか分からないが、大量のお湯。

 どうやって温めたのだろう。

 浴槽も1つではなかった。

 透明なお湯、濁ったお湯、黄色いお湯、青いお湯など何種類もあり、サウナと呼ばれる暑い部屋もあるそうだ。


 恐る恐る浴槽に入る。

 最初は水浴びだと思っていたので、足をつけた時に驚いた。

 そして肩まで浸かると、なんとも言えない気分になった。

 これまでの疲れが全て取れるような。

 びっくりするほど気持ちいいのだ。


 そして身体の底から出た感嘆の声。


「くはー」である。


「気持ちいいね」


 レイリンは2人きりだとタメ口だ。

 とは言っても、ここには連れてきた侍女が3名いるのだが。

 彼女たちは腹心なので心配ない。

 その方が良いとレイランが言っているからだ。

 いくら姉妹でも女王と従者なのだから、公の場ではそれなりの言葉使いで話すが、こういう時は素を出して良いと言っている。


「すごいな、これは」


「ラシル様ってすごいね」


「ああ、底が見えない」


「私たち、ラシル様のお嫁さんになるのかな」


「無理だろう。ミイ様始め、今日会議に出席された方々は我々と比べ物にならないくらいお美しい方ばかりだった」


「そうだねー。なんか気持ち良すぎてどうでも良くなってきたねー」


「何時間でもいられるな」


 侍女たち3人も別の浴槽でキャッキャキャッキャ言っている。


 たっぷり1時間。

 様々な風呂を試した。


 ラシルに仕えている侍女のササモリさんが、ボディーソープ、シャンプー、リンスなどを教えてくれた。

 よく分からないが、これで体や髪を洗うらしい。

 すごく良い匂いがした。

 汚れも驚くほど落ちた。


「すごいね、ラシル様って」


 もう驚きすぎて言葉も出なかった。


 とても良い気分で風呂から上がると、バスタオルという大きなタオルとドライヤーを渡された。

 バスタオルで体を拭き、ドライヤーは髪を乾かすというのだ。


 ドライヤーは、線を壁に繋ぎ、スイッチを押すと温かい風が出てくる。


「これは…」

 髪があっという間に乾いてしまった。


 洗っておきましたとササモリさん。

 綺麗に畳まれた服が置いてあった。


 ちなみにササモリさんにレベルを聞いたら、仙人種レベル100超えの大仙人というランクだという。

 信じられなかった。

 このくらいなら誰でもすぐになれますよ、とのこと。

 ちょっと何を言っているのか分からなかった。



 たっぷり温泉を楽しんだ後の会食。


 会食はラシルとミイ、ショウにクゥ、ロメリアという女性だった。


 こちらは連れてきた者全員。

 兵士や侍女は別の場所でとお願いしたが、別にいいじゃないか、みんなの話も聞きたいし。というラシルの言葉で同席する事になった。


 コース料理と呼ばれるものだった。

 まず運ばれてきたのは生野菜。

 色とりどりの葉っぱや根っこが小さく一口サイズに切られていて、その上から白い液体が掛かっている。

 これはサラダというものだそうだが、野菜を生で食べる習慣はない。

 ラシル様の食文化は意外と発達していないのでは?

 そんな考えが頭をよぎり、料理を口に運んだ。

 すぐに自分の考えが甘かったことを悟った。

 ラシル様は全てにおいて上を行く。

 考えられないほど美味しかった。

 生野菜なのに。

 ただの生野菜なのに。


 次にスープを飲み、雷に打たれたような衝撃を受けた。

 メインという肉料理も驚愕の美味さだった。


「このメインというのはなんの肉ですか?」とレイリンが聞いたら、「メインというのは料理の名前ではないですよ」とラシル様に笑われた。


 質問しなくてよかったと思った。


 兵士や侍女たちも最初は遠慮していたものの、料理の美味しさに全てを忘れたようにむしゃぶりついていた。

「ビュッフェ形式にした方が良かったですね」とラシル様が苦笑いした。


 何のことか分からなかったが、「いえ、とんでもない」と返した。


「明日の朝食はビュッフェにしますのて、堪能してください」と言われ、分からなかったが、「ありがとうございます」と丁寧に礼を述べた。


 どの料理も感動するほど美味しかった。

 どうせ食文化は違うのだから、食べられればいい。それよりも会話が大事だ。そう考えていた。

 料理というものが、ここまで心に響くものだとは考えていなかった。

 まだ料理は全然ダメですとラシル様は仰っていたが、どこまで上を目指されるのだろうか。

 ラシル様は到底計り知れない。


 会話を忘れて食べてしまった。

 何品も運ばれてきて、ようやくお腹が落ち着いた頃。


「ラシル様、このような美味な料理を食べたのは生まれて初めてございます」

 シュウライが感動と共に感想を述べた。


 リャンエンも感無量といった感じだ。

 誰もが放心していた。


 兵士や侍女たちも、この世のものとは思えないような料理を味わい、幸せの絶頂にいた。

 レイランでさえ、今こんな良い思いをさせて、明日殺されてしまうんじゃないかと思った。


 デザートと呼ばれる甘味が登場した。

 アイスと呼ばれる冷たくて甘いもの、ケーキと呼ばれる柔らかくて甘いもの。

 この2つが大盛りで運ばれてきた。


 食欲を見せたから気を遣わせたのかも知れない。

 けれども残念ながら、お腹がいっぱいで、もう入らない。


 そう思い、一口、口に運んだ。


 みんなの目が輝いた。

 レイリンは幸せそうな顔をしている。


 これは。

 いくらでも食べられる。


「とっても美味しいです!」

 レイリンが子供っぽく叫んだ。


 でも大丈夫だろうか。

 もしこの後ラシル様の部屋に呼ばれたら。

 こんなにお腹を膨らませた状態で大丈夫だろうか。

 もう既に、良いパフォーマンスができるかどうかギリギリの所だ。


 バクバク食べるレイリンを恨めしげに見る。

 そして自分もまた一口食べる。

 美味しい。


「良かった。ケーキは最近作れるようになったばかりなんだ」

 ラシル様からまた謎の名詞が出てきた。


 ラシル様は私や幹部の者たち、侍女、兵士たちに様々な質問をした。

 もちろん嘘をつく者などおらず、皆正直に、率直に答えた。

 どれもが当たり前の答えだったが、誰の話でも興味深く聞かれていた。


 お腹がはち切れそうなくらい食べた後、ラシル様から謝罪があった。

 ビュッフェでなくてごめんなさいというものだ。

 明日の朝はビュッフェにするからという。

 分からなかったが、こちらもお礼を言った。


 部屋に戻り、呼ばれたらいつでも行ける体制を作って布団に入った。

 布団は膝くらいの、ちょっとした高台にあった。

 これはベッドというらしい。

 驚くほどフカフカで、その心地よさはすぐに意識を狩りにきた。

 疲れもあったせいで、知らないうちにぐっすりと眠っていた。



 次の日の朝、とても気持ち良く起きた。


 ちょっと寝すぎたかなと思うような時間だった。

 いつもは日の出と共に起きるのに、日がすっかり登っていたからだ。


 朝食会場に案内されると、ぞろぞろと仲間たちが集まって来ていた。

 その足が入り口付近で止まっている。


 部屋の隅に、大量の料理が皿に盛られていたのだ。

 ササモリさん曰く、そこから好きなだけ、好きなものを取っていいというのだ。

 ビュッフェというらしい。

 なんということでしょう。


 飲み物でさえも何種類もあった。

 ジュースという、果実から絞った飲み物だそうだ。

 滅多に食べられない卵、肉料理、パン、ご飯といった料理まで、多種多様に沢山あった。


「本当にいいのでしょうか。私はただの女王付きの侍女ですが」

 侍女の1人が何度も確認するように問いかけていた。


「好きなだけ、存分に食べてください。ただし、お残しはいけません」とのことだった。


「本当にいいのですね?」と何度も確認し、確認が取れると、みんな獣のように食べた。

 どの料理もびっくりするくらい美味しく、何度もお代わりを取ってきた。


 ここは天国か。

 そんな言葉が聞こえてくる有様だった。


 朝食後の打ち合わせもスムーズにいった。

 こちらが構えていたほどの要求はなかった。

 属国になるのだからここまでしなくてはならない、というこちらからの提案も却下された。

 そこまでしなくていいという理由で。

 納税の義務や労働者の提供などであるが、必要ないと言われた。


 ラシル様は私たちのようなものをなぜ配下に置くのだろうかという理由は分からなかったが、そもそも私たちに分かるわけがないのだ。


 話は順調にまとまり、美味しい昼食をいただき、帰路に着いた。


 明後日から研修が始まるので、その準備をしなくてはならない。

 火国の主だった者と、各村から選ばれた者が参加する。


 研修は恐らく辛くて厳しいものになるだろう。

 ここまでのおもてなしは、最初だからこんなにいい思いをさせてもらえているのだという考えが主流だった。

 明日からはラシル様の配下の一員として、励まなければならない。


 転移術で送ってもらい、各村にも転移術で使者を出した。

 使者には、村で一番美人な者を最優先で研修に参加させることを厳命した。


 その中の1人でも、ラシル様の目にとまる女が出てくればいい。

 

 それで火国は安泰なのだ。





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