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世界改変 ~アップデート~  作者: 、、、、、
2 火国騒乱編
26/246

026_火国の女王5 火南都市防衛戦


 この世界に来て初めての人との対戦。

 この世界では、死んでしまった人間は生き返らないという。

 しかしそれは正しくない。

 先日捕らえた水の術者から情報を聞き出した。

 ミイの拠点に連れて行って、協力的になるようにあの手この手で説得したのだ。

 手段など選んでいられないので、少し強引なやり方だったかもしれない。

 持っている全ての情報を取り出した後は、ペッフィーの拠点で実験に付き合ってもらっている。


 この世界においても、人間は復活する。

 ただし、時間的な制約がある。

 すぐに復活させると効果はあるが、死後1時間以上経過すると、できなくなる。

 これはアイテムを使用した場合で、復活魔法はまだ試していないが、それもこれから判明してくるだろう。


 

 都市の防衛と敵軍の排除について、レイランとの話は済んでいる。


「レイランさん。まずは俺が術を掛けます」


「わかった。打って出たいところだが、籠城を覚悟している」


「俺たちが敵を倒したら、奴隷となって囚われている火民の救出をお願いします」

 レイランとその配下に、何を言っているのだこいつはという目で見られた。


「ラシル殿、確かにあなたはお強いかもしれない。しかし…」

 どれだけ強くとも、6万の軍勢相手に勝利するなど無謀だと言いたいのだろう。


「まぁ、見ててください」


 レイラン達は城壁まで到達した者たちを順次撃破していく計画だった。

 それは逆に言うと、城壁に到達していない敵は自由に処分していいことになる。

 レイランの計画に矛盾しない。

 まず俺が攻撃を食らわせる。

 その後にまだ元気にかかってくる者をレイリン達が防御優先で叩く。

 段取りはこのようになっている。

 が、実際にはそうはならない。


 アイテムボックスの中から宝貝を取り出す。

 死印判。

 神級武器、ランク3。

 数の多い雑魚モンスターを倒すときに重宝する。

 術者の力が強ければ強いほど、この武器の効果範囲と威力が増す。

 通常武器である死印判をベッフィーに改造してもらって強化させたものだ。

 この武器の原理は禁城の防衛機能にも組み込んでいる。


 本当はクゥに攻撃を任せたかった。

 クゥは攻撃、戦争といったものに長けている。

 ふさわしい役目だとは思ったのだが、譲れない。

、これは、この世界に来て初めての人殺しとなるからだ。


 誰が何と言おうと、まずは自分がやらなければいけないのだ。

 これは自分自身の覚悟を決めるための儀式でもある。

 この世界で生き抜くという覚悟。

 そのためには他を排することも辞さないという覚悟。



 敵陣のほうから大きな音がした。

 爆発音のようなものだった。

 花火らしきものが打ちあがり、上空で音を出したのだ。

 敵の攻撃開始の合図だった。


 少しして、地鳴りが聞こえ始めた。


 敵が一斉に歩き出してきた音だ。

 その進軍はゆっくりだった。

 こちらには対抗できる戦力がないと思っているのだろう。

 確かに火国には戦力がない。

 道士20名。

 兵士も消耗が激しく、新兵が多い。

 城門の守りも危うい。


 だが、この俺がいる。

 それだけで、この戦争は相手の負けが確定している。


 敵方の道士が大規模術式を展開。

 木の術式である。

 巨木の根が大地から出現し、城壁に襲い掛かる。

 同時に地面から土が盛り上がり、城門を壊そうと襲い掛かる。


 無意味。


 全ての攻撃がミイのバリアに弾かれる。

 それを見た敵指揮官が新たな命令を発令。

 仙術攻撃の一時中断と歩兵の進軍。

 物理攻撃をすればバリアを抜けると考えたのか。

 兵士たちが走ってくる。


「こちらもやるか」


 クゥがキラキラした目で見てくる。

 そんなに期待されたらやりづらい。

 これからやることは人殺し。

 復活ができる世界だとしても、人間の命を奪うという行為だ。

 カッコいい行為ではないし、美化してもいけない。

 自分が正しいと思ってはならないのだ。



 深呼吸をする。


 死印判を構える。


 目標は全員。

 大仙人にまで進化すると、扱える力の量が莫大になる。

 そしてそれを補助してくれるのは装備しているアイテム。

 仙力を補強倍増させるもの。

 ゲームの世界にいた時の、ペッフィーの力作である。


 MPにはどうしても上限がある。

 それは武器のスペックでも補えない。

 それを何とかできないかとペッフィーに開発を任せた。

 そうしたら、純粋なエネルギーだけの物質を生み出した。

 一度使えばそれっきりの大きな乾電池のようなものである。

 使い捨てではなく、仙力を再度充電すれば使えるようなる。

 瞬発力のある石炭やガソリンのような存在。

 各拠点の施設の維持にも使われるものだ。



 そのアイテムを100個ほどリンクさせる。

 一撃で決めるために。


 言い過ぎかもしれないが、アリを踏み潰すように。


 情報把握。

 敵は弱いので、威力は最小限に抑え、その分の余力で数を増やす。

 奴隷になっている者などを除いた、約5万人に照準を合わせる。


 術式展開。

 今回は数が多いので、攻撃は単一の風術式。


 空間術式で相対位置を把握し、固定。

 一人一人に照準が定まる。

 敵方の兵士は、戦争もここまでくると自分たちが勝てると信じて疑っていないようだった。

 水、木、土の連合で火国に宣戦布告。

 当初は火の国の前王であるレイランの父親の武勇に苦戦した。

 しかしそれも過去の出来事。

 三大連合による兵力差、合体術式により戦況は動いた。

 火国の前王を倒し、勢いづいた連合はそのまま火北都市を制圧。

 近隣の町や村の制圧と占領が終わり、優雅に領土分配。

 その後の首都への攻勢。

 そして大勝利。


 火国の王を倒すことも捕らえることもできなかったが、残る勢力は南の都市に集結。

 敗残の兵の寄せ集めであり、逃げてきた火民がいるだけ。

 戦力など無いにも等しい、ただの寄せ集めの集団。

 後はその都市を制圧すれば全て終わる。

 完全勝利間近だった。

 自分たちは負けるはずがない。

 進んで来る兵士たちは誰もがそう確信しきっていた。

 攻め滅ぼすことができれば略奪できる。

 余りある火民の奴隷も手に入るかもしれない。

 揺ぎ無い自信と、深い欲望がその表情に現れていた。


 そんな兵士たちを城壁の上から見下ろす。

 別にどっちだっていい。

 どっちの勢力についてもいい。

 現時点でのラシルの目的は、自己保存である。

 この世界での自分と周りにいる配下達の安全。

 それさえ実現できればいいのだ。

 もしその目的に忠実であるならば、こんなことはしていない。

 火国を助ける必要はない。

 戦争に介入するのはリスクが大きすぎる。

 なにより、圧倒的に優勢な敵方の勢力に与するほうが、安全保障上正解だろう。

 しかし、それでも。


 大きな判を押す仕草をする。

 腕を思いっきり引く。

 引き切った後に、素早く押し出す。

 パンチのように。


 光の粒子が兵士たちに送り出される。


 幻術展開。


 リンクした全ての敵の顔前が急に赤く光った。

 ロックオンされた者は、何が何だか分からないだろう。

 彼らの顔の前にはただただ赤い光。

 それを少し離れて見ると、死という字になっているが、誰も気づかない。

 そもそも文字が違うのだから、意味が分からないだろう。

 ただの模様としてしか認識できないはずだ。


 これは恐るべき術式なのだ。

 ロックオンをした者と宝貝との間で一定時間空間的なリンクが形成される。

 そのリンクは物体の相対位置を固定するため、動いても死という文字は付いてくる。

 離れたところから攻撃を仕掛けても、力はその相対位置から発動される。

 このロックオンから外れることは術者と同じレベル、つまりこの場合は大仙人レベルでしかできない。

 

 何千人かが異変に気付いて立ち止まる。

 その者たちも後続に押されて勢いでまた歩き出す。

 これはなんだというざわめきの声も聞こえる。

 そのざわめきが進軍を停止させるほど十分に大きくならないうちに、ラシルは次の行動に移る。


 目印は死の印。

 風の術式を展開。


 圧力上昇。


 再度、腕を思い切り引っ込め、パンチを繰り出す。


 判を強く押す仕草。


 発動。

 


 発動条件が満たされた術式は急速に展開し、世界に変化をもたらす。

 急激な変化。

 魔法ほどではない。

 魔法は変質させる力。

 この力は、あくまでも物理法則に従っている。


 次の瞬間、すべての者の顔前から爆裂術式が展開。

 破裂したような音が響きわたる。



 5万の人間の頭が吹っ飛んだ。



 勢いはそのまま、体だけ前に倒れていく。


 一瞬で死体に変わった。



「敵の殲滅を確認しました。さすがはラシル様です」

 ミイは無感動に殲滅の事実を告げ、俺の活躍に対してのみ、喜びの感情を発露させた。


「クゥ、あとはまかせた」


「任されたのじゃ!!」

 クゥが嬉しそうに飛び跳ねた。


 クゥが火の術式を展開し、死体を順次焼いていく。


 レイラン、レイリン、その配下はポカンとしていた。

 目の前で起こった現象が理解できないとでもいうように。

 実際理解できていないだろう。


 むしろ、レイランとレイリンだけに幻術をかけたほうが省エネだし、そういった力の使い方のほうがどちらかというと一般的かもしれない。

 だから二人は理解するのに、たっぷり1分ほどを費やした。

 幻術を疑っていたとしても、どうやって解いたらよいか分からないに違いない。

 しかし、それで終わりではない。

 事態はまだ進展していく。


 クゥが死体を処理するための大規模術式を次々と発動。

 各所で人体発火が起きる。

 燃やす。

 死体をそのままにすると見た目が悪いし、なによりこの状態を放置すると疫病が流行る。

 ゲームの世界では死体は一定時間経つと淡い光となって消えていくが、ここはそういう世界ではないのだ。

 誰かがどうにかしないと、死体はずっと残る。

 長い時間をかけて、他の生き物に食べられたりしながら腐敗していく。

 そしてその間に、必ず感染症系の病気が流行る。

 殺した者の義務として、それを適切に処理するのは当然のことだ。


 焼いた死体を土に還していく。

 骨まで焼き尽くす温度の炎は、人の体を塵にしていく。

 その作業をひたすら繰り返す。

 全て何もなくなるまで。



 飛行術を使い、呆然としているレイランの元へと飛んでいく。


「ではレイラン殿、捕虜の救助をお願いします」


「は、はい」

 声が震え切ったレイラン。


 頭が理解して返事をしたというよりも、反射で言葉を返したという表現が適切だ。

 目の前で起こった光景をまだ現実のものと認識できないのだろう。

 それもしょうがない。

 これまで圧倒的に負け続けていたのだから。


 レイランに後のことを任せると、今度は転移術式で本陣へと戻る。

 本陣はこの町で一番大きな館。

 その客間で俺は肩の力を抜き、寛いだ。


 数名の護衛が付いている。

 ほどなくしてミイも加わり、死体の処理の終わったクゥも一緒になった。


「この度は私の活躍がありませんでした」

 良いところを見せたかったのにと、隣で佇んでいるミイが残念そうに俯く。


「そんなことはないさ。ミイがいるお陰で思いっきり戦えたんだ。ありがとう」


 ミイがニボシ達をまとめ、怪しい動きをする者を監視し、何かあったときの護衛まで務めてくれた。

 ミイはそういった、連絡調整、全体の状況の俯瞰といった仕事が得意だ。

 彼女のおかげで安心して戦いに集中できたのだ。


「そんな、私のおかげだなんて…」」

 ミイは頬を赤くし、また俯いた。

 手を顔に当てて左右に首を振っている。


「妾も頑張ったのじゃ」

 クゥも負けじとアピールしてくる。


 炎系の術式はクゥの得意分野とはいえ、あの数の死体の処理は大変だっただろう。

 クゥにも労われる権利があるというものだ。


「クゥもよく頑張ってくれた。すごいぞ、クゥ!!」


「全然なのじゃ!」

 クゥはそう言って胸を張ってふんぞり返る。

 頑張ったのか、当然なのか、どっちなんだよ。


 嬉しいこともあった。

 大仙人がカンストしていた。

 これで進化して神仙になれる。

 アイテムボックスから取り出した仙桃を食べると、神仙レベルも10ほど上がっていた。

 大量殺戮にはなってしまったが、人間の経験値はすごい。

 しかしこの方法は使えない。

 いくらレベリングが大事だといっても、人を大量に殺すというのは色んな意味でマズイ。



 数時間後、捕虜が無事救助されたとの報告があった。

 今後のことも含めて雑談をしていると、ノックの音がした。



「失礼いたします!!」




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