表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/246

010_周囲の探索6 森のキング


 俺、ミイ、クゥ、そしてショウ。

 森の中、いつもの4人でラットの軍勢を相手にしていた。


 ごつい防弾チョッキにヘルメット。

 端から見たら、警備員達がモンスターを駆逐し、森の警備をしている。

 これで警棒とか持っていると、本当に何かの事件が起こっているような見た目だ。


 ラット退治をして、狼と戦う。

 テロリストのようなラビットを鎮圧する。

 とてもシュールな光景である。


 1度目の上限突破を迎えたことにより、戦闘にかなり余裕が出てきた。

 身体能力の大幅な向上、武器もグレードアップさせた。

 短剣を装備していた俺は普通のソードに。

 攻撃範囲が広がり、攻撃力も向上した。

 槍を装備していたミイは薙刀に。

 力で押すよりも、相手を早く切り裂くことを目的にしている。

 弓を装備していたショウは金属製の弓に。

 威力と飛距離が大幅に向上した。

 クゥに装備はないが、体が一回り大きくなり、爪の威力向上した。

 こんな武器も仙術も使わない野蛮な戦い方は嫌だと口では言うが、結構楽しんでいるようだ。


 4人の連携も上手くいっている。

 これまではミイが盾役だったのが、今では俺とクゥが盾役兼攻撃を担っている。

 厳密に言えば、俺たちに本当の意味での盾役はいない。

 防御を主目的としたメンバーがいないのだ。

 この場合の盾役とは、相手の初撃を受け止める担当である。

 ミイは俺が前に出ることを嫌う。

 絶対に危険だと言って聞かなかった。


「俺のフォローはお前にしか任せられない。頼むぞ」


 こんな詐欺めいた一言でミイを撃沈させた。

 自分でも悪いと思っている。

 罪悪感もある。

  

 ミイは中衛で状況を判断しながらの支援。もちろん盾役も可能だ。

 クゥは我先にと突撃するし、ショウは変わらず後衛を担っている。



 ラット達の数は多くても、脅威ではなくなっていた。

 1人で2~3匹を相手にしていても、怪我をせずに余裕をもって倒すことができた。

 難なく10匹の群れを撃破。

 さらに森の奥へと進む。


 森の中ほどでフォレストウルフが群れを成していた。

 15匹。

 撤退戦にしようか迷ったが、レベルはこっちのほうが上なのでラットと同じように対処することにした。

 陣形は崩さずに俺とクゥが前衛を受け持ち、防御に徹する。

 その間にショウが1匹ずつ仕留めていく。

 1撃とまではいかないが、2~3回の攻撃で確実にフォレストウルフを倒すことができた。

 ミィは状況に応じて守ったり、倒したり、臨機応変に対応している。非常に頼もしい。


 殲滅完了。


「まだ余裕がありますね」

 そう言いながらショウは油断なく周囲を警戒ししている。

「当然なのじゃ。妾と主様がいる限りね負けることはないのじゃ」

「あら、私もいるんですけど」

 ミイも油断なく警戒しながら軽口を叩く。

 この調子であれば、まだまだいけそうだ。


 出現するモンスターのレベルは高くて20くらい。

 個々の力はそれほどでもないが、なにせ数が多い。

 それでも、レベル30の上限突破した俺たちの敵ではない。

 まだ必殺技も出していないのだ。


「先に進むか」

「はい!」

「ラシル様が向かわれるところなら何処へでも」

「妾はもっと強くなるのじゃ」

 皆やる気満々である。



 さらに数百メートル森を進んだところで熊と遭遇。

 元の世界の熊と変わらない見た目で、真っ黒な毛に大きな体。

 戦闘力が高そうだ。


 ミイと二人で先制攻撃。

 熊は爪で受け止める。

 その力は強く、二人がかりで抑えても、熊は片腕で一人を相手にするくらい、まだ余裕がある。

 押し負けそうになったところでミイが熊の足を切り裂く。

 クマの力が一瞬弱まる。

 その隙をついてクゥがお腹の辺りを爪で切り裂く。

 熊は雄たけびを上げた。

 ショウが援護した矢も何本か刺さっているが、あまり効いている様子無い。


 一旦距離を取る。


 ショウが目を狙って矢を放つ。

 命中。

 熊の右目が潰れ、熊が怯んだ。

 必殺技を発動。

 溜めていた力を解放し、熊のお腹へ向けて一直線に飛ぶ。

 すぐ後ろを同じく必殺技を発動しているクゥが続く。

 抜群の連携。


 俺の攻撃はお腹へ吸い込まれ、クゥの爪は喉の辺りをかき切った。

 ダメ押しにミイが薙刀で突く。

 ようやく熊は倒れた。


「しぶとい奴でしたね」

 死体に近づいてきたショウが言った。

「ああ」

「これ美味しいでしょうか」

 ショウが矢を抜き、アイテムボックスに死体を放り込んだ。

「熊だからな。たぶん旨い(美味い)と思うぞ」

「妾は料理が苦手だからのう」

「私も人並にはできるのですが。将来のためにもっと勉強しないと」

 ミイは顔に手を当て、頬を赤らめている。

 どんな将来を想像しているのだろうか、少し気になる。


 まだまだ余裕はあったものの、熊との戦闘に苦戦したのでこれ以上深く入るのは控える。

 今日はこの地点から北上することにした。


 フォレストウルフ、ラビット、ラットの集団を次々撃破し、戦果も上々だった。


 他の部隊もレベル20に到達する者が出てきていた。

 



 翌日、ショウを禁城の守護に残し、ニボシを連れてきた。

 ニボシは初めてのパーティ入りだった。

 背筋を伸ばし、警備服をピシッと着こなしている。

 ショウは背が小さいので子どもっぽく見えるが、ニボシが着ると様になっている。

 俺はどちらかというと着崩しているからね。

 

 ニボシは少ないレベリングの時間ながらも、よく頑張っていた。

 今日でもう30に届くだろうと思われた。


「ニボシ、調子はどうだ?」

「はい、マスター。とても良いでござる」

「ラシルでいいよ」

「はい、ラシル様。ラシル様と一緒に冒険ができるのがとても嬉しいでござる」

 ニボシが嬉しそうにハキハキと答える。

「こらニボシ、調子にのるでない!!」

 クゥがものすごい剣幕で怒る。

「申し訳ございません」

「お前ごときが主様と言葉をかわせると思うな」

 ニボシがシュンとして頭を下げてきた。

「クゥ、いい加減にしろ」

「ですが」

「もう言わないぞ」

 今度はクゥがシュンとしてしまった。

 クゥは上下関係にうるさい。

 組織のトップである俺と気軽に話をするのが許せないのだろう。

 クゥに尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「妾の部下が主様に対して不快なことを申し上げるかもしれないからのぅ…」

 しょんぼりしてクゥが言った。

 クゥが怒ったのは部下想いの裏返しだったのだ。

 でも俺はそんなことを気にしていない。

 上下関係にあまり良いイメージがない。

 年功序列や上下関係というのは良いことが起きない気がする。

 上下関係自体が悪いことではないが、上下関係をしたい人間がしたい者同士でやっていればいいのだ。

 他人に押し付けてはいけない。

 でも実質的にニボシの上司はクゥになるわけだし。

 あまり俺がうるさく言えばもっと状況をこじらせることになる。

 でもこれだけは言っておこう。

「いいかクゥ、俺はお前たちみんなのことを大切に思っている。俺がそういう気持ちだと覚えておいてくれ。そしてニボシ、俺に話しかける時はそんなに緊張しなくていい」

「はい!」

 クゥとニボシが声をそろえて返事をした。

 


 ニボシはニンジャである。

 情報収集を得意とした、潜入系の術が得意なNPC。

 ゲーム内に禁城を作った時、クゥを拠点守護者にして、その下に配下として何名か住民の中から引っ張り上げた。その内の一人がニボシだ。

 ニボシは寡黙でほとんど喋らない。

 もちろん俺やクゥが話しかければ喋る。

 それは俺やクゥが彼の上司であるからだ。


 NPC達には序列のようなものがある。

 俺と費やした時間や与えられたもの、関わった程度、かけられた言葉によってNPC達は独自の基準で考え、進化し、ユニークな結論を出す。

 その積み重ねが濃厚であればあるほど、親密度が高まり、NPC離れしていく。

 限りなく特異的な存在となるのだ。


 現在、この世界に来て親密度の数値は確認できないが、それは継承されているのかもしれない。

 過ごした時間が多く、イベントなどで個別に関わった者たちが今の拠点管理者とその副官を務めている。


 ゲーム開始初期に俺と出会って旅をした最初の三人。

 その内の一人がミイだ。

 暫くしてからゲーム内のイベントで仲間になった者たち。

 それがクゥやショウだ。

 その他に住民の中からたたき上げで仲間になった者、それがニボシだった。

 クゥとニボシの立場には結構な開きがある。

 クゥは、ショウが直接俺と話すことは許せるのだが、ニボシは許せないのだという。


 ここは俺が積極的に話すべきか。

 話すとまた事態が悪化するか。

 そんなことを少し悩んだが、答えが出なかったし面倒くさくなったので、自然体でいくことにした。

「ニボシ、他の住民たちの様子はどうだ?」

「皆強くなることに喜びを見出しているでござる。これでラシル様の力になれると」

 ニボシは嬉しそうに答えた。

「そうか、それはありがとう」

「もったいないお言葉。より一層精進するでござる」

 ニボシは綺麗な姿勢で深く頭を下げた。


 ニボシのレベリングを助けるため、俺はアイテムボックスの中から盾を出した。

 強化プラスチック製で、透けて見えるやつである。

 機動隊なんかが使うような、頑丈で軽い材質のもの。

 俺が盾役となり、モンスターの動きを止めて、その間にニボシにトドメを刺してもらう作戦だ。

 モンスターの数も多く、盾役が必要な時もあるので、好都合だ。


 ラットや狼なんかは屁でもない。

 爪や牙なんてもう効かないし、突進攻撃も盾で簡単に防げる。

 下手をすれば盾だけで殴り殺すことができる。

 盾に当たった瞬間、「キャイーン」となる。


 もちろんウォーラビットの攻撃も効かない。

 鋭い針も盾で防げる。

 素早い動きも身体強化のおかげで見切ることができるし、簡単にかわすことができた。

 これは数匹で来られても同じだった。

 熊は中々強いが、問題にはならなくなった。 

 必殺技のタメ攻撃で一撃だ。



 我々はどんどん進む。

 ラットの群れを駆逐し、フォレストウルフの群れを蹴散らしていく。

 それにしても不思議だった。

 遭遇するモンスターたちは魔法を使わないのだ。

 どれも普通の動物、普通の獣と一緒だ。

 もしかしたらモンスターですらないのかもしれない。

 そこに住んでいる動物をレベリングの為にただ倒しているだけ。そう考えると、ちょっとモンスターに悪いなという気持ちになった。

 しかし倒したモンスターは有り難く頂いているのだ。食物連鎖に則っているのだから仕方ないだろう。


「ラシル様、この辺りの敵もほぼ駆逐できました。また湧いてくるかとは思いますが、レベリングにはもう適さないでしょう」

 ミイが冷静に分析する。

「そうだな。奥へ進んでみるか」

 

 さらに50メートルほど進むと、異様に強そうな個体がいた。

 多分あれがここら辺の主。エリアボス。領域守護者というやつだ。

 どでかいイノシシだった。

 太くてお大きな牙。先端は尖っているので、強力なランスのようなものが2本顔に付いていると思ったほうがいい。お腹周りも太いが、それは鍛え上げられた筋肉だった。

 あの巨体で突進されたらひとたまりもないだろう。

 巨大イノシシの周りには20体ほどの普通サイズのイノシシの群れが侍っていた。

 キングイノシシと命名。勝負に挑むことにした。


「キングには俺とクゥで行く。ニボシは周りのイノシシたちの処理。ミイは臨機応変に援護」

「はぃ!!」

「では、いくぞ!!」

 叫ぶなり、キング目がけて走った。

 クゥも遅れずに横を駆ける。

 イノシシたちがこちらに気付き、戦闘態勢を取り始める。

 彼らの得意技は突進である。

 つまり、突進発動前に攻撃するか、軌道上から外れていれば問題ない。

 躱すのも難しくないが、直撃すると大きなダメージとなる。

 それにこれだけ数が多いと、どこから突進されるかわからない。

 気を付けつつ、クゥと共にイノシシたちを超えてキングの正面に出る。

 キングも突進を食らわそうと前足で何度か地面を蹴っていた。

 イノシシは幾度となく対処してきたので、必勝法は理解した。

 すぐに正面から側面へと回り込む。

 正面が強いキングは、側面が弱い。

 俺は右側面、クゥは左側面。

 同時に剣と牙を突き立て、そのまま走る。

 キングの体の前から後ろまで切り傷をつけることに成功。

 ミイも足に一撃を入れて離脱。

 効いている様子はない。

 キングはこちらを忌々し気に睨んでいる。


 ニボシは大きめのクナイを使う。

 それを2本両手に持ち、二刀流の剣士のようにクナイを操っていた。

 ニボシの長所は、素早さである。

 このメンバーの中ではたぶん一番遅いが、禁城の住民の中では一番だろう。

 その素早さを生かして、ヒットアンドラン攻撃が得意なのだ。

 前傾姿勢で低く構え、そこから走り出し、クナイでもってイノシシたちの足を切り裂いていく。

 イノシシの機動力を削ぐために。

 一旦離脱し、動きの鈍くなった個体を一匹ずつ確実に屠っていっている。

 

 ミイは全体を見て援護に徹底している。

 突進を繰り出しそうな個体に駆けていき、側面から攻撃をすることで、相手の攻撃を防いでくれている。


 キング相手にミイを除く3人でヒットアンドランを繰り返し、だんだんとキングの動きも鈍くなってきていた。

 縦横無尽に走り回っているため、キングは突進の狙いが定まらない。

 ニボシがほぼ半数のイノシシを倒した頃、キングが咆哮を上げた。


「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーー!!!!!」


「来ます!!」とミイが叫ぶ。


「回避優先!!」


 俺が指示を出した次の瞬間、キングががむしゃらに突進してきた。

 それに呼応した他のイノシシたちも突進を始める。

 ドーンと大きな音がして、いくつかの木がなぎ倒される。

 そしてまた突進。

 キングはこれを3回繰り返した。


 周りの木がめちゃくちゃに折れている。

 体力がなくなったのか、キングは荒い息で動きを止めていた。

 イノシシたちの数は多いが、直線的な攻撃は読みやすい。

 予測できる攻撃を食らう者はいないので、こちらはみんな無傷だった。

 今がチャンスとばかりに、俺たちは追撃を加える。

 今度は俺とクゥが前足を狙い、ミイが胴を切り裂く。

 ニボシも3匹一気に撃破していく。

 キングの右前足を無力化に成功。

 キングは体重を支えきれずによろけている。


「ニボシ、トドメだ!」


「はっ!!」


 ニボシがキングの懐に入り込み、首筋にクナイを二本同時に突き刺す。


 一瞬ピクリとして動きが止まり、その後ゆっくりとキングの巨体は倒れていった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ