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√真実 -020 入院四日目-1 (おっはー!?)

二話ほど投稿ミスにより夜にUPしております。

日中しかチェックしていない方はご注意ください。



「...んっ。ん?」

「あ、やっと起きた?」


 病室のドアが開いて人の入ってくる気配に気付いて、俺は一気に覚醒する。ああ、寝た気がしないな。目を(こす)りつつ、身を起こす。


「もうベッドの背もたれを起こさないと起きれないって事は無くなったわね。痛みはどう?」

「あ~。痛いには痛いけど、随分と楽にはなったかな?」

「そう、それなら明日は学校に行けそうね?」

「そうだね...無理はしないようにするよ」


 朝は検温に血圧や脈拍の測定等、何かと忙しい。もうじき勤務が終わる看護師たちにとっては今日最後の業務になるだろうが、フロア全員を分担して回らないといけないので結構大変なのだろう。そんな中を予定より二晩も余分に居座ったから、頭が上がらないな。


「聞いたわよ?陽子の通う道場で一緒に護身術を習ってるんだって?」

「ええ、まあ。でも未熟なんでこの様なんだけどね」

「あら、でも人を躊躇なく庇えただけでも立派よ?普通の人ならそんなところには飛び込まないし、飛び込めないわ」

「...そうかな?」


 俺はシーツを捲って足をベッドの外へ放り出す...のだが、そのはずみで病着が捲れてしまった。


「あら♥今朝も元気ね~♪でも、これも今日で見納めか~。残念」

「わわっ!ちょっ!み、見ないでよっ!!」

「あら、誘ってるのか態と見せてるんだと思ってたわよ?でも残念。そういうのは余所ではマナー違反で追い出されるわよ?注意しなさいね?」

「さ、誘ってなんて無いし、態と見せてる訳じゃないよっ!!母さんがパンツを持って来てくれないんだよっ!!」


 すっかりこのフロアの看護師たちにノーパン男として認識されてしまった俺。しかも毎朝病着が乱れてシャウ○ッセンがおっはー!してるのを見られ...嗚呼、お嫁に行けない...我が愛しのシャウエ○センよ、毎朝ハッスルするのは良いけど、人前では控えてくれないか?主である俺が恥ずか死ねる。てか、あら♥じゃねぇよ!特に♥って何だよっ!文字変換出来ねぇじゃねぇかよっ!!

 が、俺のそんな馬鹿な思考を遮る者が。


「煩せぇぞっ!!こっちはまだ寝てぇんだっ!!静かにしろっ!!」

「ひぃっ!」


 同室人が恫喝してきた怖いよこの人そのうち殴り掛かってきそうそれだけじゃなくて窓から突き落とされそう。

 ...スミマセン、取り乱しました。だって、昨夜にも...


「あら、起きてたのね。ちょうど良いわ。体温や血圧を測らせて貰うわよ」

「煩せぇつってんだろ!!僕は寝る!!」

「直ぐ済むから。それに今測らなきゃ何度も起こしに来るわよ?それに朝ごはんを食べないつもり?時間が経ったら食べられなくなるわよ?」

「...ふんっ!さっさと測れ!メシは要らん!僕は寝るからな!!」


 おおう、流石は看護師様。肝が据わってらっしゃる。てか、昨晩はこの威圧的な人に散々な目に遭ったんだよな。お陰で寝不足気味だ。



 まず、晩飯は味が薄いだのもっと肉が食いたいだの量が少ないだのと騒ぎまくった。騒いだって味付けを変えて貰える訳でも量を増やして貰える訳でもないのにな。黙って食えよ。

 そして夜中。この病院では消灯時間は夜の十時だ。余所では九時消灯のところも少なくないらしい。俺としてはこのくらいで丁度良いのだが、そいつは違った。

 一旦は大人しくしていたのだが、夜中に騒いで看護師たちとエキサイティングしていたのだ。


 最初はムホォとかファッとかの奇声を発していたのだが、あまりにも大きい声に普段は目を覚ます事のない俺が目を覚ますと、何やら部屋の天井が青や黄色や白の光に照らされている事に気付いた。ん?これって...テレビを観ているのか?とぼんやり考えていると、突然「キターッ!ファイッ!ファイッ!ウ~ファイッ!!」とリズムを取りながらの大声を。な、何だ?と思ったら、今度は「さすミサたんっ!さす俺の嫁っ!!」と。

 は?ミサたん?俺の嫁?おい、ちょっと待て。ミサたんって、あのミサじゃないよな?道場でいつも俺の相手をしている、あのミサじゃ...


 夜中なのに急に頭が覚醒してゾッとする俺。するとその騒ぎに気付いた看護師たちが病室になだれ込んできて、その男とテレビを消せ!消さない!リアルタイムで観なければ意味がない!邪魔だ!と更に騒ぎが大きく。

 目を覚ました俺に気付いた看護師が、深夜アニメを見た男が興奮しているのだと教えてくれ、ミサとはそのアニメのキャラだと知りホッとしたのだが、何れにしてもこんな夜中に騒がれては安眠妨害の何物でもない。


 病院によってはタイマーでテレビを見れなくしている所もあるそうだけど、この病院ではそこまではしていないらしく、こうして深夜にこっそりとテレビを見ている人もいるのだとか。それでも奇声を発する事はそうそう無く、隠れて見ている程度だと言う。

 中には外国で行われるサッカーの試合とかを夜中にみんなで見たりする事もあるようだが、基本的には夜中はテレビは付けない決まりとなっている。まぁ、当然と言えば当然だが。


 しかしだ。この男は家でもそうであるようで、深夜にアニメを見るのが日課であり、こうして騒ぎながら見るのが当たり前の様だ。勘弁して欲しい。

 結局、応援で来た事務っぽい男の人がテレビに差し込まれている、テレビを見るのに必要なカードを取り上げた事で、散々ごねた後に漸く拗ねて眠りに就いたのだった。ホント、勘弁して欲しい。てか、この部屋って呪われてないか?



 そんな昨夜の出来事があり、近くの病室の患者たちも寝不足気味らしいのに、その原因たるこの男は自分勝手に朝は寝て過ごすつもりらしい。今日は日曜なので、みんな見舞いに来る人を心待ちにしていたそうだが、昨夜の件で不機嫌な人もチラホラいると言う。


「はぁ~。前にもあったのよねぇ、この人。だから真実君が昨日退院する予定だったから丁度良いと思ってたんだけど...ゴメンね、寝れなかったでしょ」


 男の検温等を済ませた看護師が声を殺して俺に話し掛けてきた。


「はぁ、まあ。でも、前にも入院してたの?」

「ええ、そうなのよ。本当は入院する程でもないんだけどね」


 入院する程でもないのに入院...何だそれ?と思ったけど、それ以上はプライバシー云々の為に教えて貰えなかった。

 その後、運ばれた朝食を食べようとすると、またガチャガチャと煩せぇ!!とお叱りの言葉。煩いのはどっちだよ。音を立てないように気遣いながら食う飯の味と言ったら...(涙)



 朝食を食い終わり、静かになった病室でうとうとしていると、面会時間になったのか次第に外が賑やかになってきた。と思ったらドアをコンコンと叩く音が。ん?俺に?いや、入院が延びた事は誰も知らない筈だし...もしかしてあの男への見舞いか?


「やっぱり!まだ退院してなかったのね~?真実君」

「えっ!?ミサさん、言ってなかったのにどうして!?」

「昨日の夕方に道場寄ったら、昭一さんが来てて、まだ入院しているらしいって聞いて~。一昨日は追い出されちゃったし、バイトもあったし...やっとお話が出来るよ~」


 ドアを開けて入ってきたのは、まさかのミサ。そのままの勢いで起き上がった俺に飛び込んできた。ぐぼはっ!


「い、痛いよ!ミサさん、痛いってば!!」

「あっ!ごめんなさいっ!!真実君、どこが痛いの?(さす)ろうか?」

「いや、大丈夫。大丈夫だから!少し離れて貰えないかな」


 病院内という事で油断していたから、ミサの突撃をモロに受けてしまった。いや、逃げようとしても、ベッドの上だから逃げられなかったけどな。


「それで、治るまでにどの位掛かりそうなの?」

「先生が言うには、二~三週間だって...」ガンガンッ

「煩せぇぞ!静かにしろっ!!」


 激しい金属の音を伴って、ミサとの久し振りな会話を早々に遮ったのは、やはり同室の男だった。






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