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30 宣告
『私はエドワード=イシュテム。新たな秩序を敷く者だ』
『これから、一つの宣言をする』
『このグランブルトを既存の秩序とは塗り替える』
『王も貴族もない、全てが平等な世界をもたらす』
『明日の飢えも、今の不平も、苦しい暮らしも、すべて、すべて、なくしていく』
『貴族たちが取り上げたすべてを、正しく民に分配しなおし、豊かな世を作る』
『そして、無用な力を誇示してきたものは、等しく裁くとも』
『見本を見せよう』
曇天が瞬く。
一瞬のうちに、雲の下に星ができたよう。
「なんだあ、あれ」
呑気な声が聞こえてくると同時。
光の滝が、王の住まう城を貫いた。
『力に溺れた愚かな貴族たちはこの通りだ』
ぼろぼろと崩れ去る城を、国に住まう民の誰もが目にしたことだろう。
『要らぬ力は消し去っていく。必ずや、良い生活を、虐げられてきた人々にこそ与えるとも』
『だから、どうか。心待ちにしてほしい』
意思を込めて、力を込めて。
『必ずや、平等をもたらすとも』
己の夢を、見下ろす全てに、告げた。




