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異世界探偵 京二郎の目糸録  作者: 水戸 連
終章:執念と情熱の讃美歌
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28 雨の中、途絶えぬ炎

 ざあざあと降りしきる雨が顔を濡らす。

 服と荷に染み込み、重い枷となる。

 アルセトは荒い息をつきながら、暗がりの路地で歩みを進む。

 背中に怪我を負った探偵を担ぎながら、ノロノロと濡れた地面を踏み締める。


 目的地は果てしない。

 病院という病院は怪我人でごった返し。

 休息できそうな場所は破壊されるか、あるいは先約が存在し、まともに立ち入れもしない。

 辿り着く先を見失った足が、一度止まる。


「はあ、まいったな」


 アルセトはせめて、背中の男の安全を確保してやりたい、と考えるが周囲の状況がそれを許さない。


 誰もに、何もかもに、余裕がない。

 災害のように襲いきた竜の被害はあらゆるところに及び、社会の歯車を破壊した。

 交通は馬車もなければ、道すら竜の爪痕でめちゃくちゃ。

 その余波で、食糧を満足に配分することすら危うい。

 医療品も不足し、包帯ひとつすら、かき集めるように走り回る。

 死の匂いが、蔓延している。


「――ずいぶんな平等だな」


 思わずぼやいた声に。


「よう、そいつ、見てやろうか」


  ガシガシと頭をかく男の姿を、アルセトは冷めた目で見つめる。

 医者の瞼は気だるそうに小さくしか開いてないくせに、奥に見える瞳はぎらついている。


「何者だ」

「通りすがりの医者だよ」


 アルセトは目を細めながら、無言で一歩後ずさる。

 髪は軽くまとめ上げられているものの、ボサボサと荒れ放題。

 かろうじて手袋くらいが清潔そうな程度で、とても医者とは見えない。

 怪しい、と言わざるを得ない風貌だった。


「なんだ、信用できないか。――まあ仕方ないな。誰が敵かもわからん状況だしな」

「――いや、信用、していい」


 アルセトの背中から、絶え絶えの声がアルセトに聞こえる。


「――アンタ」


 医者を名乗る男はその声を聞いて、たじろぐように一歩引いた。


「彼はいい腕の錬金術師だ。そうだろう、ドクター」


 医者は探偵の顔を見て、一瞬目を見開いた後、懐かしむような笑みを浮かべた。


「嬉しいねぇ、オレなんかのことを覚えていてくれるなんて」

「――私は、確かな志を忘れたりはしないさ」


 それだけ言い残して、探偵はまた力なくもたれかかる。

 アルセトは探偵を担ぎなおしながら、医者に向き直る。


「まあ、こいつが信用するっていうならいいけどさ、アンタの方は余裕あるのか?」


 医者は気だるげに「そうだな」とつぶやきながら、首をならす。


「ちょうど大物の治療が終わったところでね、手に余裕はある。そもそも、そいつは患者だ。余裕くらい、なけりゃ作るさ」


 くたびれた怪しい風体とは裏腹に。

 眼と、言葉はひどく、自信と力に溢れている。


「急いでやってくれ、ここまでずいぶん血を流しすぎている」

 アルセトとしても、信頼しない理由はなくなっていた。




 ふう、と医者が一息つくと、近くの椅子を引き付けて、ドカリと座り込む。

「施術完了だ」

「具合はどうなんだ」

「大した傷だったが、命に別条はないところまではもってきてやったよ」


 医者は得意げに笑う。

 アルセトはその顔を見て、ほう、とため息をつく。


「――よかったよ、本当に」


 漏れた言葉とともに、がたん、と椅子に倒れるようにもたれかかる。

 どさり、と音と共に肘をつく姿は、全身の疲れをこれでもかと表現していた。


「アンタもずいぶん無理してきたんだな」

「貴族のように膨大な魔力があるわけでもないからな、男一人背負って街を練り歩くなんてすいぶんな重労働だったよ」


 ぼやくような言葉に。

「そのおかげでこの男の命を救えたんだ――ありがとう」

 医者は真っすぐな言葉で応え。

 アルセトは思わず顔を上げた後、気恥ずかしそうに視線を背け頬をかく。


「そんな真摯な言葉を向けられるような行為じゃあないさ、ただの贖罪だしな」

 つぶやきながら、背けた視線の先に入ってきたモノを見て、つい手を伸ばす。


「気になるか、それ。お手製なんだぜ」

 医者の声を聞き流しながら、くるくると手の中で回す。

 木箱の中に、細い糸で魔力を敏感に感知する結晶がつるされていた。


「魔力検知針か、これは」

「そいつで辺りの魔力の乱れの向きを見るんだ。手術針の操作にはちょっとの乱れでも影響が出るからな」


「なるほど、場所が違うと使い方もまるっきり変わるもんだ」

 感心した様子のアルセトに興味が出たのか、医者も隣に座って覗き込んできた。


「アンタはどう使うんだ、こういうの」

「ゴーレムの肉体を作るときに軸がぶれるとよくないからな、土の中に埋め込むことがあるんだよ」

「へぇ、今からすると贅沢な使い方だ。こんな状況じゃ針一本作るのも苦労したもんだぜ」


 医者はガラの悪い笑みを浮かべながら、ピン、と指先でテーブルの魔力検知針をはじく。

「しかし、よくこんな状況で医療なんてできたな」

「――人間てのは、存外強いもんだ」

 医者の向く方へ同じく視線を向ける。

 そちらには、手を大きく振る獣人種。

 巨体に押される手押し車の上には、積み上げられた、と言えるほどの荷物。


「旦那ァ、頼まれたもんは運んできたぜ」

「ありがとう、手が早いな」

「まあな。――で、どう使うんだ」


 医者は親指を立てて後ろを差す。


「大きい木箱はベッドがわりにする。適当な布と一緒に奥に運んでおいてくれ」

「あいよ、こっちの骨片だの木の藻屑だのはどうすんだ?」

「錬金の材料にする」

「錬金術ってのはもっとちゃんとした薬草じゃないといかんと聞いたぜ?」

「腕次第さ」


 医者は見せつけるように、とんとん、と自信ありげに自分の腕を叩く。

獣人の男はにやりと笑うと、「信用してるぜ」と医者の肩をばんばんと叩いた。


「腕前はさっき見たしな。他に手伝うことはあるか?」

「なら、仮設医務室の準備の方を手伝ってくれ」

「了解したぜぇ、ドクター」


 ぐるんぐるんと腕を回しながら外に出ていく獣人。

 それを見送った後に、アルセトは感心したようにため息をつく。


「懸命なひともいるもんだな」

「一人じゃあないぜ」


 医者が視線を向けた方には、缶詰や干物といった、日持ちのしそうな食糧を両手に抱えて走る獣人の少女の姿があった。


「あの子は周囲の住人と協力して、臨時の配給所を作ろうとしてる。復旧の見通しは立たないが、数週間ならどうにかできるだろう、って爺さんたちと話し込んでたよ」


 視線を変えれば、屈強な男たちが数十名、集って折れた柱を持ち上げていた。

「よし、そこでいいぞ!」


しゃんとした声の号令と共に、ドスン、と柱が通路を塞ぐように降ろされる。

幾重にも積み重なった柱の山は、ひどく歪だが、城塞のような威圧感を見せていた。

「さて、もう少し必要ですかな」

 指令を出していた男が身を屈ませ、そばにいる老婆へ伺うように声をかける。


 老婆の姿に、アルセトは覚えがあった。

「――学長じゃねぇか」


 老婆――学長はニヤリと笑いながら、積み上がる石の柱に手をかける。

「いいねぇ、こんだけあれば十分だ。アタシが防護の術式を描いとく、アンタたちは他に当たりな」

「了解、行くぞ野郎どもォ!」

 声を張り上げながら、男たちが石の壁をうずたかく築いていく。


「ありゃあ即席のバリケード作成部隊だな。いくらバケモノと言っても、質量を持った物体で、適切な対処をすれば押しとどめるくらいはできる、って話だ」

「押しとどめたところでどうにもならないんじゃあないか」

「弱点がないでもないらしい。あくまで生物を模した兵器のようだからな、関節みたいな区間はあるから、そこから脚力を奪うなりはできるようだ」


「よくもまあ、そこまであがけるもんだ」

 アルセトの思わずこぼれてしまったような言葉に。

 医者は無邪気に笑う。

「懸命だよ、誰もがな」


 医者のつぶやきは、ひどく実感がこもっていて。

 この疲弊と焦燥に満ちた風景の中で、なお、悦びがにじみ出ていた。

 その様子を見て、アルセトもゆっくりと立ち上がった。


「なら、オレもやれることぐらいしていくか」

「いいのか、この男と知り合いなんだろ、休むついでについてたっていいんだぜ」

「いいさ、看病なんて柄でもないし、体を動かしてる方が心は休まるし。その辺で手伝いしてくるよ」


「殊勝なモンだな」

「そうでもないさ。ただ、たとえどうなるとしても自分のやれることはやっておきたい、ってだけなんだ」

 アルセトはきぃ、と建付けのゆがんだ扉を開いて、外へ歩き出していった。




 医者は外へ出ていったアルセトを見送ると、小さく笑いながら立ち上がる。

 自分も、負けてはいられない、と足に力を籠める。

 ちょうど、コンコンと扉をたたく音。


「――おう、入ってくれよ」

 扉を開けて入ってきたのは、ロビン=アーキライト。

「失礼します、何かお呼びでしょうか」


「ああ、ちょうどキミの知り合いが運ばれてきたんでな」

「――先生!」

 ロビンは声を上げると同時に、バタバタと駆けよる。

「命にどうこう、って事態はもう切り抜けてるよ。しばらく安静にしとけばまた元気になるだろうさ」


「――本当に、ありがとうございます、ドクター」

 万感の意がこもった、体の震えが言葉に伝わるような声。

 ドクターは「よせよ」と困ったような笑顔を見せる。


「君にまで言われるとオレの居心地が悪いったらありゃしない。罪を雪いでるだけで、マイナスをゼロに戻してるだけなんだよ」

「過去がどうあっても、今先生の命を救ってくださったのは事実ですから」

「ま、その礼は受け取っとく――けどよ」


 医者は頬を書きながら、膝をつく少年に視線を向ける。

「あんま思い詰めんなよ」

「――そんな、まさか。僕なんかよりも大変な目にあってる人が多いんですから、まさか僕程度が」

 よろり、と立ち上がる姿は危なっかしいほど不安定だ。


「それが思い詰めてるんだ。隣の部屋で休んでな、少しはその青い顔にも生気が戻るだろうよ」

 医者は、とん、とロビンの肩に手を添えながら椅子に座らせると、手術道具の詰まったカバンを指先に引っ掛けた。




 ロビンは閉ざされた扉を睨みつけたまま、椅子にもたれかかる。

 はあ、と思わずついたため息は、自身の想像以上に疲れがにじんでいた。


 ――ああ、なんて情けない。


 自分はまだ、ずっと、走ることしかできていない。

 それなのに、多くの人に助けられるばかりで、守られるばかり。


 ――もっと、もっと、自分ができることをしないと。


 自分の心を焚きつける炎がある。

 なら、立ち上がらないと。

 たとえ、身を焦がそうと、こんな情けない姿ではいられない。


 今は、あの竜たちが脅威だ。

 一体でも多く、やっつけられれば、それだけ街の平和は近づく。

 力不足なんて言い訳にならない。

 命を懸ければ、一体や二体くらいなら――。


 ――ジリリリ。


 思考を遮るように鳴り響いた、壁に取り付けられた、『伝話』の音。


 ――いったい誰が。


 もしかしたら誰かが助けを求めてダメもとで駆けてきたのかもしれない。

 慌ててその受話器をつかみ取る。


「やあ、こんばんは」


 発せられた言葉はどこか、とてもはるか遠くから発した声かのように反響を繰り返す。

 音質もとても悪くて、聞き取るのがやっと。


「――どなたですか」


「さて、このタイミングでは残念ながら名乗る名を持ち合わせていないよ。だからこそ、『伝話』ができている、のだけどね」


 男か女かも分からないほど、向こう側の誰かの声は謎に満ちている。

しかし、ロビンはその不確かな音からにじみ出る、その語り口から一人の男を想像した。


「先生、ではありませんか」

「いやあ、残念ながら、君にそう呼ばれるような人間ではないよ、私は」


 受話器の向こうの声は愉快そうに笑う。

 それはそうだ、とロビンは思い直す。

 探偵はたった今、重症で倒れ伏しているところを見たばかり。

 少なくとも、どうあっても、こんな元気そうな声を発せられる状態なんかじゃあない。


「すみません、どうにも知り合いに似ていたもので」

「いいさ。見間違い、聞き間違いは人の常だ。それより、だ」


 受話器向こうの声が、一段低くなる。


「君は今、ずいぶんと――考えすぎてないか」

「そんなことはないつもりです」

「自分が悪いとか、もっと自分が頑張らないと、とか」


 心の奥までも見透かされたかのような声に、思わずロビンは言葉を失う。


「それは構わない。懸命であることはとてもいいことだ。けれどね、何事も過ぎてはいけない」


 諭すように、けれど、あまりに柔らかく、気遣うような声。


「君は多くの人に助けられたと思っているかもしれないが、君もまたおおくの人を救ったことになった」

「――不思議な言い回しをしますね」


「君が救った国王がいるだろう。たとえ今のクーデターの主導者がいなくなっても、混乱は残るし、乗ずる悪党も少なくない。しかし、彼の存在があれば国民はまとまるし、被害は本当に最小限で済む」

「……」

「他にも君の姿を見て元気になった、やるきになった人間は多いんだ。たとえ直接的でなくても、君もまた、未来へ続く礎の一つなんだよ」

「――まるで、未来を視てきたようですね」


 受話器向こうからは、意味深に笑う声。

「誰だって未来を視てるものさ」


 ロビンにも、体よくごまかされているとは思った。

 けれど、不思議と心地よく。

「そうですか」


 返事とともに、笑みがこぼれていた。

「ああ。私はそれ以上でも、それ以下でもない。もちろん、君も、君は君でしかない」

「僕も、僕でしかない、ですか」


「だから、少し休むといい。身の丈以上に、働こうとしなくてもいいんだ」

「けれど、それは、身の丈程度なら働いてもいい、ってことですね」


 受話器の向こうの声は面食らったように詰まると、吹き出したように笑いだした。


「そんなへ理屈、誰に似たんだか。まあ、自棄になっての行為じゃあないなら、引き止めはしないよ」

「ありがとうございます」

「変な話だ、私はただ無駄話をしただけだよ」

「いいえ、無謀を止めてくださりましたから」


「――成長したね」

 ひどく、優しい声だった。


「え?」

 思わず、ロビンからは困惑した声が出てしまうほど。


「さようなら。君の人生が確かで豊かで、そして輝くものであることを祈ってるよ」


 かちゃん、と通話が切れた音がして、それきり。

 受話器からは、掠れたノイズすら聞こえなくなった。

 いったい誰だったのか、なんて疑問はきっと、抱く意味もあまりない。


 とても、自分のことを親身に気遣ってくれるだれか。

 そんな人が居るのだと、そう自覚するだけでも。

 歩く先が見えるように、光明が視界に宿ってきた気さえした。




「ドクター、ただいま戻りました」

 医者はロビンの顔を見て、にやりと笑う。

「へえ、いい顔になったじゃないかアーキライト卿」

「捨てた地位です、ロビンとお呼びください、ドクター」


「そりゃ失礼、ロビン」

 医者は陽気に笑みを浮かべながらロビンの肩を叩く。

 ロビンは不思議そうな顔をしながら口を開く。


「それより、なにかお手伝いできることはありませんか」

「そうだな、まずは区画の整理をしてもらうか」

「その辺りは済ましておきました」


 医者は驚いたように目を見開くと、「さすが」とつぶやき、口元を吊り上げる。

「手が早いこった。そうだな、なら魔術の腕を見込んで助手でも――うん?」


 歩き出そうとした足が、止まる。


 二人は一瞬顔を見合わせた後、周囲を見回す。


 わずかに身をかがめ、耳を澄ませ、視線を這わせる。

 わずかな痕跡を探し出すように、そして緊張を張り詰めきったような表情。

 まるで、敵地にでもいるかのような、真剣さ。


 近くにいた獣人の大男が二人の様子をいぶかしむ。

「どうした?」

「――なんだか、魔力を感じたような気がしてな」


 医者の声に応じるように。

 机の上でガタガタと震えるような音が響く。


「――なんだ、これは」

 震えていたのは、魔力検知針。

 先ほどまでのゆらゆらと揺れるような動きと違い、嵐の中のように針が荒れている。


「ドクター、これはどういうことなんですか」

 ロビンが魔力検知針を指さしてドクターに問う。


「分からん。だが、よほどの魔力の圧の流れでもないとこんなバカみたいな荒れ方はしない」

「どこかその辺で魔術を使って暴れてる人がいるとか?」

 医者も困惑したように首をかしげる。


「――いや。そうじゃあない」


 二人の会話に割り込むように、高い声が響く。

 視線が、声の主へ向く。

 ざあざあと降りしきる雨を背に。

 びしょ濡れで、ボロボロのローブを纏う影がいた。

 かつかつと靴音を立てながら。荒れる針の流れにそっと手をかざす。


「そんな小規模なものじゃあなく、『世界の流れ』レベルの奴が捻じ曲がるようなことでもないとこんなことは起きない」


 つらつらと話される語り口。

 魔術への理解の深さも相まって、二人は一つの名前を思い出す。


「――クルビエさん」

「よう、ロビン君。元気そうでなにより」


 ロビンは応えようとして、息が詰まった。

 視線が合った瞳は、随分と憔悴していて、今にも倒れそうだと、理解してしまったから。

「それに『ドクター』。刑務所暮らしは終わったらしいな」

「奉公と引き換えに臨時で外に出てるだけだ。――そんなことより、オマエ、立ってるだけで瀕死だろう、それ」


「いいんだ、それこそ大した話じゃあない」

「――オマエがそういうならそれでいいが」


「必要なのは今の話だ。そこの君たちまで含めて、どでかい規模の魔術を試みようとしている奴に心当たりはないのか」


 周囲の人間も、その様子に心当たりはない、と首を横に振る。

 その疑問を遮るように。

 ちりん、ちりん、と鈴の音が響く。

 周囲の視線はその音源へ向く。


「――『伝話』?」


 崩れ落ちた壁の下に、土ぼこりをかぶった『伝話』。

 誰かがその受話器を取る前に。


『――諸君』


 深い声が。受話器から響いてきた。


『私はエドワード=イシュテム。新たな秩序を敷く者だ』


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