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いつかあなたとあの海で心中したい  作者: 兎虎彩夜華
第1章 選択のその先
7/14

6星 彼女たち






何かにクスクスと笑われている。

高めの話し声が目の前を通り過ぎて行く。人が寝ているというのになんなんだ。

あれ。なんで寝てるんだったっけ?

ああ、急に優奈ちゃんが倒れて、私も気を失って。その後、康本先生が来て......


「月」


その声は私を呼ぶ声。

目の前の“黒”に隠れたさっきの彼女らの声。


「月、おいでよ!」


なんだか安心できる優しい声。

白いベールに隠された彼女はまるで花嫁のよう。赤子を抱く母のように腕を広げてやってきた。


「月、おいでよ?」


今度は後ろの“白”から彼女の声が聞こえてくる。

振り返ってみると......黒いベールにくるまれた彼女がゆっくり近づいてきた。まるで母に歩み寄る子のように。


自分に触れる直前、今度は黒と白が混ざった曖昧な空間から声が広がる。


「月、まだ行くな」


「戻って来い」


どこに?てゆうか誰......誰。

聞き覚えはあるけど誰の声?


「生きたいなら早くこっちへ」


そう言って誰かわからないその声は何処かへ消えていった。生きたいならって、何?

そう思った瞬間、前後から右手と左手を優しく掴まれた。


「「おかえり」」


そう言って彼女らに手を引かれ、ゆらめく灰色に足を踏み入れた。


途端、まばゆい輝きがまぶたをかすめ、反射的に目をつむる。


「「起きてっ」」


空気だったはずの背後に柔らかい感触。

土の匂いに空の匂い。

ゆっくり目を開けると、そこには虹色の空が広がっていた。夜の紺、夜明けの白群、朝露の緑、夕暮れの黄、夕焼けの橙、日没の赤、そしてまた......思わず見入ってしまう美しい光景。


気づかぬうちに頭の左右に白と黒。

彼女らが座っていた。


「私たちのこと、忘れちゃった?」

「私たちのこと、覚えてる?」


未だベールに隠れて見えないが、その顔が微笑んでいるのはわかった。


「もう時間切れかぁ」

「もう時間切れだぁ」


交互に喋る彼女らは、徐々に下から透明になって空に薄れて行く。


「「いってらっしゃい。私たちのこと、今度こそ忘れないでね」」


そう言って彼女らは、虹の彼方に消えていき、自分の存在も風化する。


機械音の混ざる水槽で目を覚ましたのは、運ばれた1週間後だったそうだ。

更新、遅くなって申し訳ありません。

今後もよろしくお願いします!

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