4星 部活と生徒会(1)
<今日の学準>4/23
部活どうしようか悩んでます。優奈ちゃんと一緒の部活がいいけど、桃ちゃん先輩とも一緒の部活がいいし、なんかいい方法ないですかね。
<返答>
①こっそり帰る?×
②行きたいと相談してみる?
まあ悩め。
「部活どうしよー」
月は誰に話しかけるでもなく、呟いた。
「だから、一緒に美術部入ろって言ってるやん」
それに不満げな顔で応じる優奈。
「んー。たしかに先輩優しかったし、でも勉強もちゃんとしたいんやって。そりゃあ優奈ちゃんと一緒がいいに決まっとるけど」
2人は残りの3段を華麗にジャンプ。
「わかったけど......チャイム鳴る」
階段を全力疾走で下りながら2人の少女は会話を推し進める...が、少々運動音痴の2人にはきつかったようだ。
「音楽の後に......理科と......か、きつすぎやろ」
「マジでそれな」
一言ずつ言葉を交わし、今度は2段とばしで階段を上る。
理科実験室は2つあるが、どちらも北校舎4階の西側。さっきまでいた第2音楽室は北校舎2階の東の果て。他校ならば、普通に3年生の教室の前を横切って4階に上って行けばいい話なのだが、「他の学年の階の廊下は通ってはいけない」という謎のルールにより、まず1階に降りてから長い廊下を歩き疲れた上に4階まで上らなければいけないという面倒なことになっているのだ。
「この階段はこれから文化部で活躍する私らにとってもきついな」
やっとの思いで着いた理科室には、いかにも『階段なんて楽勝』感溢れる運動系男子が集まっていた。
「お前ら、階段でそんなに疲れとったら、運動部に入部しても1日で辞めるんじゃね?」
「あーありそう。想像できるな」
そうやってからかわれ、「だからどの部活入るか悩んどるんやんか」と小声で呟きそうになりながらも、口に出さず無事通過。
チャイムと同時に椅子にフィットした。
「ちょっと私のタイムスケジュール完璧すぎてすごくない?」
微笑交じりに月は優奈にドヤ顔で振り返るが、予想以上にふてくされた顔が出迎える。
「結構ギリギリやったけど」
「何気にさっきからちょっと冷たくない?」
そもそも怒ったりすること自体が少ない彼女は、怒ったり機嫌が悪い時、表情があまり変わらないことがあり、思考がたまに読みずらい時もある。だが、親友精神でどうにかできる。だからこんな時は直球が安定の近道。
「別にそんなことないけど」
と返す彼女に、月はすかさず質問。
「怒ってる?」
「......まあちょっ」
「きりーつ」
質問に応えようとする優奈の声に、学級長ー 杉光 本輝の声が上書きされる。ガタガタと椅子を引く音が連なり、皆が立ち上がる。そして優奈の口は閉じられた。
「優奈、理科終わったら聞かせて」
「......」
「気を付け 礼 着席」
理科の授業が始まった。いつも最初の15分間は先生の昔話。これがなかなか面白い。先生が話し終わっても大爆笑が5分以上止まない。1年に1度くらいは、授業で50分間ずっと先生の話の時もある。今日はその1年に1度の日で、大爆笑の嵐が起こった。
「面白かったな。共住地域でも猿に引っかかれること、あるんやなぁ」
「うん。私も猿、見たことあるで」
「え、初耳なんやけど。なにそれ面白そうな予感がするー」
「まあ、おもしろかったけど、思い出し笑いでお腹痛いから、今度月の家で話すわ」
「おっけい。もう、怒ってない?」
「あー、その話ね。私は月と一緒に部活したいけど、でも私がわがまま言ったら月が後悔するかも知れんから、月のやりたいようにすればいいと思うよ」
「私は一緒に部活したいけど」
「どっちよ」
「とっちでも」
「やっぱ、優奈ちゃんと一緒に部活しよっかな」
優奈の口元が緩む
「ぜひそうしてくれー」
「やっぱ桃ちゃんと部活しよっかな」
「どっちよ。てゆか桃ちゃんって誰」
「あー。小学部の時からの先輩。カルチャークラブのジャパンホームに入ったら一緒になって、ペアなったりもしたし、仲良くしてたんやって。桃井 藤夏で桃ちゃん」
「へー。ちょっとトイレ行ってくる」
優奈はへの字に口を曲げ、月に背を向けた。
「あ、小桜じゃん! 」
「おー。桃ちゃん先輩。先週ぶりー。ちょうど部活どうしよって話しとったところやったんやで」
「おう。お前知っとるか?生徒会役員になればいいことあるんやで」
にいっと笑顔で、「聞きたいだろ?」という顔を向けてくる。
「い、いいことって何?」
「よーしよし。耳をかっぽじって聞きたまえ」
ごくっ。
「融通が効くんだよ。例えば兼部、とかな。他には」
「他には?」
「藤夏、いこー」
後ろから藤夏の知り合いらしき女子がやってくる。
「まあ、自分で調べたまえよ。一緒に部活しようぜ。じゃあねっ」
「ありがと。考えとくわ」
桃井と別れた後、しばしの間トイレの前で優奈を待ち、2人で図書室に立ち寄った。
「すいません。生徒会議事録、ありますか?あ、もういらしてたんですか」
扉を開けた先にいたのは担任の康本優連だった。
「おう、月、優奈」
新しい人が出て来たので、登場人物紹介に追加しときました。桃井藤夏を知りたい方はぜひそちらまで....
今後ともよろしくお願いします。