〜お正月特別編〜第4弾 年越しパーティー (終)
ついにやってきた12月31日。
昨日途中だった作業も1時間程で終わらせ、掘りごたつで温まっていた。
冬休み前はやる気だったのに、『流石に年末は家族と過ごしたい』と言い出して、本輝と優奈は作業が終わると帰ってしまった。
「この部室クソ広いのにめっちゃあったかいよね」
「コタツがあったかいからやろ?」
「いや、違うぞ?」
「違うんかい。じゃあなんでよ」
「床は温水式床暖房システム、壁には二重構造の断熱材が入ってるから」
え、温水式床暖房?
ここ3階なんだけど、何考えてんのかな?
「俺らだけが得するわけじゃ無いぞ?
もちろん学校にとってプラスの面がいっぱいある。例えば配管が、みんなが使う上水を夏は冷たく冬暖かくする上に、三層の浄化フィルター付きとかさ」
『夏冷たく』らへんから月と桃ちゃん先輩の目が輝き出した。
「ちょっと待って?それってさ......」
「なんよお前ら、文句は今から言っても遅いからな?」
「「最高じゃん!」」
「お、おう」
なんて言ってる間に纈が遅れてやってきた。
「ねえねえ君たち、なんかすごいもの届いてるけど?」
数分後に、大量のダンボールと、今度はバリバリスーツの女の人が運ばれてきた。それも、台車に乗って。
なかなか立ち上がれないようで、運送業者のお兄さんに手伝ってもらってやっと立ち上がっていた。立ち上がるとなんとも言えないが、すごかった。
何がすごいって、顔、胸、お尻、太もも、その他全てにおいて。
今時スカートで、しかも、うん。ギリギリなのは珍しいと思う。
それだけじゃなくて、眼鏡の似合うできるお姉さんという感じだったのだが......
「あの、あなたは?」
「小桜松治こざくらまつじ統括官の秘書のものです」
見た目に合わず、ちっちゃくて可愛い声で秘書のお姉さんは答えた。
「で、このダンボールは?」
「正月祝いだそうです。あの、迷惑ですよね。私は伝言を伝えにきたんですけど、すぐ帰りますからっ」
なんか、追い詰められたウサギみたいで可愛い。声が。
「いや、そんなことはないですよ。それで、統括官の伝言って?」
いつのまにか纈ゆはたが鼻血を噴き出していた。
「あ、あのっ私が邪魔だからですよねっ。拒絶反応ですよねっ。失礼します!」
そう言って秘書のお姉さんは台車に戻り、運送業者のお兄さんに運ばれていった。
「なんかお父さんの信用度が落ちた気がする」
って言っていたら、父から着信。
「もしもし?なんなのあの子は」
ちょっと食い気味でかかる。
「いやあ、今月からの新入りなんだけど、なんか強烈でさ。どんな感じだった?」
「お父さんからの伝言も言わずに帰っちゃったけど?」
「それは......やばいね」
向こう側からハアーというため息が聞こえてきた。
「やばいよ。それで、伝言って何やったん?」
「ああ。特大プロジェクターを用意したから、ぜひ使ってくれ。その部屋、カーテンがロールスクリーンだろ?巨大画面にできるなと思って」
「ありがとう」
「うん。それじゃあ次の会議が始まるから切るよ?良いお年を」
「お仕事頑張って。良いお年を」
そんな感じで通話を切ると、特大プロジェクターが設置されていた。
最後に運送業者さんが一列に並んで「あざしたっ」って言ったのは面白かった。
その後、纈が買ってきたレースゲームを巨大モニターに写して4人で遊んだり、トランプで大富豪になりまくって優連への命令権100回分を手に入れたりと、ここ数年の年末とは比べ物にならないくらい楽しい数時間を過ごした。
「じゃあ、お風呂行くか」
「何言ってんの先生」
「桃ちゃん、学校の敷地内に大浴場出来るの知らないの?」
「文化部なので知りませーん」
「いや、私も文化部だけど知ってるし」
「はいはいストップストップ。その大浴場が、つい先日完成したのです!」
『おおー』と3人の拍手が鳴り響いた。
「持ってきたよね?着替え」
「ちょっと纈さん。覗いたらしばき倒すからね?」
「うわー。松治さんの娘とは思えなーい」
「むっかー!」
そんなこんなで2人でだだっ広い風呂に入って戻ってきたときには23時を過ぎていた。
「2人とも、長風呂だったねー」
「そういう冬志もタコみたいやぞ」
「先生、蕎麦ー」
「俺は蕎麦じゃない」
「あ、それ小学生の時に言われた!
『先生はトイレじゃありません!』ってさ」
「あ、お前ら立て!年越しの瞬間にジャンプするぞ」
「あーい」
「じゃあ10からな。せーのっ」
「10!9!8!7!6!5!4!3!2!ジャーンプっ」
来年もまた、こんな年末になったらいいなと思った。
これにて正月特別編は終了です。
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今後もよろしくお願いします。