〜お正月特別編〜第3弾 果たして、無事に正月を迎えられるのか
12月30日 11時30分――
今日は午後2時に集合らしい。
壁と床の張替え作業を午前中に業者にやってもらうそうだ。
とゆうことで今日はゆっくり行くことにした。
年末なだけあって、
父は晩餐会?母は忘年会、姉は冬のアリーナツアーに行っている。つまりは家に誰もいないと言うことである。しかも年末年始6日間。
「部活のみんなで年越ししてもいい?」
って聞いたら
「家に来なかったらどこで過ごしてもいいわよ。お泊まりでもしてきたら?」
と母が言っていた。
私の家は自由すぎないか?とこんな時は思う。
学区北第一門(通称N1と呼ばれている)に桃ちゃん先輩と集合して、一緒に行くことにした。
「同じ学年の子たちと一緒じゃなくてよかったん?」
「んー。私の家は中央区にあるからN(北)1から入るけど、優奈ちゃんとか本輝は住宅街の南区と東区に住んでるから東門かS(南)2から入るんじゃないかな?家が真反対だから一緒に登校とか無理なのです」
「ふーん」
興味ないんかい。なにふーんって。
「んで?そう言う桃ちゃんの家はどこにあるん?」
「ないしょー」
桃ちゃん先輩は自分の家を絶対教えてくれない。この質問をするのは15回目だ。そろそろ折れてくれないかな?と思う。
他愛のない話をしながら30分ほど歩くと
学校が見えてきた。
「おーい。月ー」
少し後ろから月と本輝がやってきた。
「二人も待ち合わせしてたんだー。付き合ってんの?」
「「付き合ってないから!」」
二人とも息ぴったりだし。
てな感じでいつも通り学校に忍び込み、第三職員室を訪ねたら、見事に杉の香る部屋が出来上がっていた。
「おう。今から家具届くから、みんなでいい感じにするぞー」
康本優連おそるべし。
杉にしたとかすげえな。
「元輝と桃ちゃんは業者きたら案内頼む。優奈と月は俺の準備室から要るもの持ってくる係な。冬志と俺は配置の指示するし。各自お正月のために頑張るぞー」
要るもの持ってくる係に任命された月と優奈は準備室に向かって長い廊下を歩いていた。
「部室広くなるのいいけど、教室から遠くなるのが難点だよねー」
「そうやなあ。てゆうかさ、康本先生の準備室なんやから、康本先生も来てくれればよかったのにね」
たしかに。いや、でも部員じゃない桃ちゃん先輩と本輝の扱い荒いしそっちの方が優先かな?
なんか、優奈ちゃんと喋るの久しぶりな気がする。
「あー!」
「どしたん」
「いや、学校で叫べる機会なんて滅多にないかなと思って」
「なにそれ」
「あー!」「おー!」
その後、廊下に2分くらい叫び声が響いていた。
その頃玄関前には本輝と桃ちゃん先輩が待機していた。
「なんで私達が外に行かされてるのかな?」
「さ、さあ。なんでですかねー?」
「敬語じゃなくてもいいよ?」
「了解です。じゃなくて、了解」
本輝の苦笑いがどこか可愛くて藤夏の顔も笑顔になっていた。
「えっと、なんて呼べばいい?」
「んー。皆には桃ちゃんって呼ばれてるけど?」
「桃ちゃんって、なんか恥ずい」
「じゃあ藤夏?」
「そうしよっかな」
なんて言っていたら、家具を積んだトラックがやってきた。
「行こうか藤夏」
『藤夏って呼ばれ方、なんか新鮮だなー』と思いながら本輝の背中を追った。
15時40分――
藤夏たちがすべてのトラックを案内し終わった頃。
「君たちは、此処でなにをしてるんだい?」
バリバリスーツのおじさんが声をかけてきた。
「えっと、あなたは?」
質問に質問を返す本輝に、おじさんの眉が引きつる。が、その顔はすぐに笑顔に変わった。
「君たちは、此処でなにをしてるんだい?」
「部室の改装をしてます」
今度は藤夏がおじさんの問いに答えた。
「学生だけで?」
「いえ、康本先生と纈さんと」
「纈?」
何故か纈の名に反応するおじさん。
「纈冬志さんです」
「纈くんに合わせてくれるかい?」
「は、はい」
言われるままに、おじさんを第三職員室に案内した。
「これでいつでも優連はゴロゴロできるんだね。うらやまー」
「あほじゃねえの?ここは他の校の生徒も集まる拠点だぞ?ゴロゴロなんて......」
こっちに気付く感じが一切なかったからどうしようか迷っていた本輝と藤夏を置き去りに、バリバリスーツのおじさんは纈たちに近づいて行った。
「おお、やはり纈くんか」
一瞬ギョッとした。さっきの野太い声がものの何秒で癒し系おじさんの声に変わっていたからだ。
「こ、小桜さん?どうしてここに......」
「ここで何してーるの?」
「地救部が各校で定着し出しているので、毎月の部会の会場として我が校の部室を改装していました」
全く上司に媚びない優連が何故かシャキッと敬語を使っているだと?
「こんな年末に?」
声は癒し系おじさんでも、威圧感が半端無い。いったいこのおじさんは誰なんだ?
藤夏と本輝の脳内で思考が加速していたとき、ちょうど月と優奈が帰ってきた。
「ねえ。そんな入り口で何してんの?こっちは寒いし重いし早くどいてよー」
2人は辞書が入った透明の衣装ケースを運んできた。
「って、お父さん?」
月が裏返った変な声を出した。
って、お父さん?お父さんなの?月の?
「ああ月!我が娘よ!」
「晩餐会に行ってるんじゃなかったの?」
「ああ、21時からね。学区が閉鎖されてるのに月の学校の制服を着た生徒が学区に入って行ったって知らせを受けて、見にきたんだよ。それがまさか、本当に自分の娘だったとは......」
これは、めっちゃ怒られるやつじゃん。と誰もが覚悟を決めたが、それは杞憂に終わった。
「月がやることならお父さんは何も心配しないから、気の済むまで改装?しなさい」
「ごめんなさいお父さんって、いいの?」
「もちろんだよ。予算も追加しようか?」
なんだこの茶番は。
「あの、月のお父さんって、何者なんですか?」
勇気を振り絞って優奈が尋ねる。
そして、その問いには月のお父さんではなく、纈が答えた。
「僕ら文部委員会の親。特別区統括官の小桜松治さんだ」
特別区統括官って......なんじゃそれ。
普通そんな偉い人が学区来ないでしょ。
「それじゃあ纈くん、康本くん、頑張ってね」
そう行って、月のお父さん(小桜松治)は第三職員室を出て行った。
なんだったんだ今のは。
「一難去って、また一難やな」
「いやいや月、もう難は来なくていいから!」
なんて会話をしていると、17時を知らせる鐘が響いた。
「もう5時か。今日はこれで解散かな。明日仕上げるから、みんな遅れんなよ。ほんじゃあ、解散!」
優連の合図とともに皆がさっさと帰り支度を始め、職員室(ではなくて、新しい部室)を出て行った。
「これで明日は無事に正月を迎えられるな」
「そうだね。経費でゲームカセット買っとくよ」
「それはダメ。いくら文部委員長でもそれは捕まる」
なんてゆう2人の会話のおかげで、今年は年末の校舎は寂しくないかもしれない。
第四弾で正月特別編は終了となります。




