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異世界旅行者の冒険記  作者: 神祈
始まりの森
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第8話 エルフ族長


「おじいちゃん。ただいま。マコトを連れて来たよ。判定の技法(スキル)をしたから敵意はないからね!攻撃しないでよ!」


ロズの件もあり、先に釘をさす言葉をなげる。


族長の家というだけあって、木々で作られた家具にも工夫が施され、調度品よりも美術品と呼べる物が其処彼処に置いてある。


「ミリアル。大丈夫だよ。さ、お前はエリザの所へ行っておやり心配しておったぞ」


見た目は壮年だか、擁する魔力はかなり大きく容姿も流石はエルフといったところか、年齢を感じさせない。ミリアが軽く手を振りながら奥へと消える。いちいち可愛い仕草をしないと行動出来ないのか?


「初めまして。私はマコト=レイトバードと申します。ミリアルさんに森で彷徨っていた所を助けて頂きました。恐縮ですが、出発の目処が立つまで、滞在の許可を頂ければと思います」


余り畏まった場所に出た事がないので失礼がないように言ったつもりだが、どうだろうか黙ったままの族長を伺うが表情が変わらず判らない。


「人間にしては中々の物言いじゃな。滞在は許可しよう。好きなだけ此処に居ると良い。但し、条件がある」


それはそうだろう。毛嫌いする種族を村に住まわせるのは、危険が伴うと考え監視をつけるか、牢にでも入れてという辺りか?村人からの話しが聞ければ別に牢屋でも構わない。


「お心遣い感謝します。条件とは何でしょう?私に出来る事でしたら何なりと」


「ふむ。条件じゃが、お前さんの旅の目的を聞かせてくれないか?この時勢で旅をする者はほぼおらん。何か理由があるのじゃろ?それが条件じゃ」


そうきたか。おそらく部屋自体に技法(スキル)が張り巡らせており、嘘かどうか見抜くのだろう。

理由はまず理解されないが言わない訳にもいかないので首に手をかけ首飾りを外し、族長に手渡す。首飾りには特別な装飾も無くただ宝石のような澄んだ青色の石が取り付けられている。



「その先端にある石。それと同じような石を探しています。それが旅の目的です」



-----


そう言われ男から首飾りを受け取り見る角度を変えながら注意深く観察する

彼の身体からは緑のオーラが出てきた。嘘では無い。が、納得出来ないのも事実。


「正直、納得出来ん。確かに美しい石ではある。だが魔力が宿っている訳でもなさそうじゃし、特別な魔法が込められている訳でも無いようじゃ。同じような石なら、商人からでも買えそうな物ではないか?」


首飾りを返すと男は先端の石を掌で覆い力を込めていく。すると澄んだ青色から透明へと変わり薄らと光っているようにも見える。


「ご納得出来ないのも判ります。ですが特定の人物が魔力を込めれば、この様に透明になります。それに…」

「じゃから特別だと?お主の言う事が嘘でないのはわかる。だが到底納得できるものではない。先程も行った通りこんな情勢じゃで旅をするものはほとんどいない。それ程に価値があるとも思えない、ましてや形見という訳でもないのじゃろう?」



-----



答えを遮って族長からの質問が続く、口調は穏やかに聞こえはするが怒っているのだろう。それはそうだよな下手に出て帰って来た答えは透明になる石を探してますと来たもんだ。別の答えも用意してはいるが、こちらもなかなかに相手の心情を逆撫でするものだが…


「エルフの族長が価値を見出さないのです。その通りかもしれません。ご納得頂けないのは判ります。ですが、私にとっては必ず、いえ、命をかけて探し出す必要があるのです。本当だとご理解頂けているのですよね?」



-----



やはり技法(スキル)の事は見破られているか。この男はこんな訳がわからない物の為に命を賭けると言った。だが嘘では無い。即断即決が信条であるが処遇に迷うそれなりの理由であれば滞在も許可できる。たかだか色の変わる石の為に?思考していると、目の前の男からとんでもない提案が出た。


「お悩みになるのも判ります。そこで昼間の間は村の人々に話しを聞きたいので監視付きでも構いませんから外出許可を。それ以外は、もしあれば牢屋に入れて鍵をかけて下さい。それで如何ですか?」


監視に牢屋か……理解されないだろうとわかっている訳か。万が一を考慮して目の届く所に置いておくのが一番良いだろう。少なからずミリアルに好意があるようだからそれを使うか。


「判った。滞在は許可しよう。じゃが生憎と牢なんてこの村にはない。そこで滞在場所を指定する。それでどうじゃ?」


「わかりました。異論ありません。では滞在場所を教えて下さい。夜も更けて来ましたので、また明日お伺いします。」



-----



睡眠は必要ないが、眠る事は出来る。考えてみれば、ゴブリンとの戦闘、化け物のような少女から逃げ、森で彷徨い、ミリアと出会い、ロズとのいざこざ。一日の内容としてはなかなかにハードだった。族長が何故かニヤニヤと笑っているような感じがする。まだ何かあるのか……


「ミリアルや、すまんが来て貰えないか?」


ミリアに場所を伝えるのなら、直接言ってくれれば自分で行けるのに、わざわざ手間をかけるのがエルフなのか?そうこう考えているとミリアが現れる。昼間見たローブから淡い赤のローブに着替えいた。やはり綺麗だよな。何を着ても似合うのはどういった気分なんだろう。


「どうしたのおじいちゃん?マコトの事?」


「ああ。滞在場所をここの家にするから、寝床を準備してあげなさい」


「うん。判った。マコト、しばらくよろしくね」


ミリアはそう言うと、奥へ消える。開いた口が塞がらない。おい爺さん何考えてる!


「あ……いや……えっと……」

上手く言葉が出て来ない。


「監視はミリアルに任せる。あの子が連れて来たのじゃからな。お主もミリアルに酷い事はせんじゃろ?」


族長はそう言うと席を立って行ってしまった。

この技法(スキル)は心でも読むのか?ミリアが可愛い、綺麗だと何度か考えたが、それを察しての事か?


「マコト?準備出来たからどうぞ。まさかウチに泊まるとは思ってなかったよ。でも少し嬉しいかも。何かあれば、隣が私の部屋だから遠慮なく言ってね。また明日ね。おやすみ」


一人ポツンと佇む。まあ場所が確保出来たのだから、良しとしよう。装備を取り横になると

僅かながら、ハーブの香りがした。こういう気遣いもできるのかと関心しつつ、眠りについた。


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