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異世界旅行者の冒険記  作者: 神祈
二人の勇者
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第72話 急襲:王都炎上3

 ミラと共にマコトを追う。王都の人々は転移で王宮内へと退避(たいひ)させてあり、街に残るのは亜人だけだが、まさか吸血鬼の言う通り、本当に攻めてくるとは思いもしなかった。吸血鬼の情報を()た私達の前に張本人が現われ、この日の襲撃(しゅうげき)を話してくれたからこそできた作戦だけど、王都の復興(ふっこう)は随分と先になるだろうな……



「アレシア!あそこ!」


 ミラの声で考えを切り替えると、彼を見つけた。亜人の家族と何かしら話しているようで、こちらに気が付いていない。


「ミラ、行けるわね?」


「ええ。任せて!迸れ(ほとばし)!雷光の如く!上級火炎魔法(ノヴァ・スプレッド)


 周囲の炎が集まり、巨大な火球が出現する。今の彼の装備で何処(どこ)まで耐えられるかわからないが、当たれば消し炭になるはずだ。ミラが杖を振り下ろすと火球は勢いを増し彼に襲い掛かる。両手を広げ火球を受け止めるつもり?何処までも頭が悪い、()けられるはずだけど恐らくは後ろを走る亜人の盾になるつもりか?



 !? 次に見たときは彼は剣の鞘に手をかけ抜いていく。やはり火球を切り払うつもりか?火球と剣がぶつかると爆発が起きず、火球が剣にあわせて移動している!マズイ!跳ね返す技があるなんて!急ぎミラの前に(おど)り出て剣を抜く。



「え!?何?嘘?」


 ミラが驚くのも無理は無い。魔法を跳ね返すなんて芸当(げいとう)は誰にでも出来る事じゃない!火球はこちらに向かってくる。


「はあああああ!」


 剣を上から振り下ろし、火球を地面に叩き付けると爆発を起し、土煙が上がる。幸いリースの補助魔法のおかげで大した怪我もしなくて済んだけど、土煙がはれる頃には彼の姿を見失っていた。


 状況は良くないかも知れない。少しずつだけど確実に目覚めはじめている……急ぎ彼を探しながら、私達は王都を駆ける……



 --------



 路地(ろじ)を進むと、どうやら王都の入り口まで戻ってしまったようだ。そう言えば東が亜人たちの居住区だったな。もしかしたら誰か居るかもしれない、炎の勢いは留まるところを知らず勢いは増し続けている。なるべく急がないと、居住区(きょじゅうく)に入ると直ぐに左の家屋(かおく)から、泣き声が聞こえる。



 悪いとは思うが、ノックをしている暇は無い。ドアを蹴破ると中には子供と母親らしき人物が炎に囲まれている。


「無事か?今助ける!そこを動くなよ!」


 家財道具が倒れ炎を(まと)い、行く手を(さえぎ)る。飛び越えるのもかなりの難易度で水系の魔法も使えないし、雹炎(ひょうえん)の剣もない。式で吹き飛ばせばギリギリの所で支えている柱が彼女達を襲う。何か方法は無いのか!考えろ!……


「私は、いいですから!この子だけでもお願いします!」

「ママーッ!ママーッ!」


 引き離す母親と、しがみ付き泣きじゃくる子供、どっちかなんて選べるかよ!両方助けなきゃ意味が無いだろ!親子の退路を塞いでいるのは、燃えている家具と壁だ、なら壁を壊せばいい。助走をつけ頭から家具を飛び越えつつ前転し親子の前に着地した!……体操選手みたいな事が出来て、こんな状態だが少し嬉しかったりする。


「壁を壊して道を作る、こんな事しか出来なくて申し訳ない。このマントをかぶっておいてくれ」


 マントを外し、親子に被せる。ただ破壊するだけなら、式でいけるはず。


「に……人間がどうして助けてくれるのですか?私達は亜人ですよ?子供も小さいですし、どうか命を取るなら私だけに!何卒、お願いします!」


 土下座までして、子供は母親に(すが)り付いている。このやり取りにも見馴れてきたな、出来るだけ優しく声をかける。


「危険なら助けたいと思うのが普通じゃないかな?俺だって子供を守る為に命を投げ出したんだし、そこに人間と亜人の違いなんてあるのか?耐えると言うのなら、しっかり子供を抱えていてくれ、壁を壊すぞ!」


 息を整える、呼吸をするたび肺に煙が入るし、炎のせいで吸う息も熱を持つ。



 ーーーー参式 龍壊(さんしき・りゅうかい)ーーーー



 ーーズガーンッーー


 爆音と共に壁に大きな穴が開く。素早く親子を外に出すと、それに続く。ガラガラと壁の支えを失い家が倒壊してしまう。母親の悲嘆(ひたん)のため息が聞こえるが、命があるだけで我慢してもらおう。


「すまない。これしか思いつかなかった。取り敢えずここから避難してくれ、叱咤(しった)罵倒(ばとう)も受け入れる。だから今は……頼む」


 頭を下げると、小さな手が頭を撫でてくれた。


「おじちゃん……頑張った。凄い、壁壊しちゃった!ママ助けてくれた、ありがと」


 この位の子供にはおじちゃんか……言ってしまえば爺さんどころじゃないもんな。一応言ってみる。


お兄ちゃん(・・・・・)……な?ママと一緒に離れるんだ、後でお家を壊したことはしっかり謝るから、頼むな」


 親は何度も頭を下げ、子供は無邪気に手を振って行く。少しでも役に立てたかな。まだいるはずだ、さらに居住区を進んで行く。



 ーーーーーーーーーー



「急がないと!速くマコトの元へ行かなくちゃ!陛下、本当に良いんですか?ボクにおぶされば陛下自ら走らなくても……」


「大丈夫です。ルシアが大切に想う人を助けに行くのですから、友人の私も行きますよ!それに私も個人的に逢いたいのです」


 魔王城に登城したボクと陛下を待っていたのは、父様の苦しくなる程の抱擁(ほうよう)だった。今まで我儘(わがまま)言ってごめんなさいと何度も謝って、父様は無言で頷いてくれた。側近様からの状況を確認するとボクは制止も聞かず飛び出した。そこに追って来てくれたのが陛下だ。



 王都を襲撃する為の準備として魔力の糸というものを使い、防具に仕立てた。出来たのは鎧でもない、ただの服だが、通常の鎧よりも頑丈だし、魔力耐性もある。着る人を聞いた時、嬉しい反面とても不安になった。勇者が二人いて、魔法の使い手もいる。そこへ一人で行くなんて、無茶だ。だから約束を果たす為ボクは森を駆ける。絶対君の隣で一緒に戦うんだ!もっと、もっと速く、忘れた事なんてない。今でも大好きなボクのご主人様。待っててね。必ず力になるから!



 ーーーーーーーーーー



「居住区はここで終わりか?逃げ遅れたヤツも助けられたか?」


 居住区は網目(あみめ)のような構造で、自分の居場所すらよくわからない。とにかく声の聞こえる方へ向かって走って来たが、正面にそびえる城壁を前に辺りを伺うが、声は聞こえない。もう大丈夫か?なら俺も覚悟を決めるか、逃げ遅れた亜人を探すのが任務じゃない、勇者と戦うんだ。ミラやリースがいるし、もう一人の勇者もいる。全員俺より実力が上だ、だけどこっちだって、そう簡単に死ぬわけには行かない。



 上から殺気を感じる!城壁から飛び降りたのかよ!慌てて距離を取ると、轟音が響き砂煙が上がる、それを切り裂いて、金髪の男が剣を振ってくる、鞘ごと剣を受け止め……られない!これが勇者の力か!?呆気なく吹き飛ばされ、民家の壁を突き破り反対側まで勢いが止まらない。


「かなりの力技じゃないか……彼の者に癒しを、巡れ、治癒魔法(ヒール)


 治癒魔法をかけるが、あまり効果が見えない。さすがの才能の無さだ。崩れた家具を気にせずこちらに歩いてくる金髪の男、彼が王子様でもう一人の勇者。その表情には怒りも哀れみも感じない。


「さっきは言い遅れたね。天啓の勇者、オリアン=フォン=バルトだ。本当に君が勇者の、アレシアの騎士だったのか?何故勇者を裏切る、何故魔王と共謀(きょうぼう)する、君の行動が理解できないよ」


 アレシアの剣よりも一回り大きい。装飾が立派なのは同じか、剣をこちらに向けている。所々痛むが表情には出すな、俺に有利な状況だと思い込ませろ。


「ご丁寧にどうも。一応そうなっていると思いますよ、オリアン王子。お初にお目にかかります。マコト=レイトバードと申します。私も王子……いえ、勇者様の行動が理解できません。亜人といえど同じ命ではないのですか?」


「お互いに譲れないというところか?ならば人々の為魔王の手先を討つとしよう。安心していい、アレシアは僕が幸せにする。君がいなくなっても僕が彼女の側にいよう」


 向けた剣を振って、構える。見た感じオーソドックスな構えだ、だが吹き飛ばされた時の力を考えれば速度で押すか?こちらも腰を落とし左足を引き半身に構える。



「アレシア様は俺がいなくても、立派に成長されていらっしゃいますよ?あの方が俺を気にかけるのは別の理由かと」


「君に惚れているというのか?馬鹿な!ありえない」



 表情に焦りが見えた。王子様にはアレシアネタが通用するようだ。悪く思うなよ、俺も殺されるわけには行かないんだ。


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