↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界旅行者の冒険記  作者: 神祈
命の重さ
53/84

第52話 謁見

「そうだ、これが切欠(きっかけ)で旅行者になったんだよな・・・でも何で今頃思い出すんだ?・・・わからんな」


寝台から飛び起きると、冷めてしまった朝食を食べてみる、人間に合う物と言っていたがこれは美味い。

陶器らしき物の中には、香りの良いハーブのお茶が入れてあり、カップに移して窓の外を眺めながら飲んでみると、これまた美味い。


「凄いな魔王城、料理も一級品だな」


窓から眺める森の奥、湖の上を優雅に飛んでいる龍を見つける。どのファンダジー世界でもほぼ生態系の頂点に君臨していたし、そして前回命を使ってまで加護をくれた龍皇。感慨深いものがある。今回も友好関係を築けるといいな。


---コンコン---


ノックの音に振り返る。今度は失敗しないように、窓から離れずに声を出す。


「どうぞ」


「失礼します。準備が整いましたのでお迎えに上がりました。どうぞこちらへ」


入ってきたのは先程のメイドさんだ。相変わらず胸元は大きく開き、膝下までのスカートから覗く白いストッキングが素晴らしい。この衣装を設定したヤツは本当に天才だな・・・だが、また失礼があってはいけない。落ち着いて、紳士的に・・・


「先程は、申し訳ありませんでした。朝食ありがとうございます。とても美味しく頂きました」


謝罪とお礼を言っては見るが、彼女の表情は全く変わらない。あれ?魔王城の人々は、こういうのは逆効果なのか?貶すとか?いや、さすがにそれは出来ないな。


「いえ。それが私の仕事ですので、それでは準備が出来ましたら、ご案内します」


なんだか機械的な言い方だな・・・気にしても仕方ないか、メイドの後に続き魔王城を進んでいく。いつだったか、こういう風に魔王城に仲間と共に進んだ事もあったな、王の住まう城だけあって、置いてある調度品は磨かれており、絵画も飾られてある。床には赤いカーペットまで敷いてあり魔王というよりは、どこかの王族だな。


ついて歩くと、T字路に出た。正面と左は先が見えないほど伸びており、右には一際大きな黒い扉、しかも装飾が施されており、謁見の間のように見えた。


「魔王様、マコト様をお連れしました」


「入れ」


中からの声で、メイドが大きな扉を両手で開く。


「うお・・・すっげぇ・・・」


赤いカーペットは部屋の奥、玉座まで伸びており、左右には数十人のメイド、皆同じ服を着ている髪の色は多少違うが、軽く頭を下げたまま、微動だにしない。天井には大きなシャンデリアが幾つも連なっていて、左右の壁には等間隔でステンドグラスが煌いていた。芸術には全く詳しくない為、こんな言葉しか出ない

自分が恥ずかしい。


メイドに続き歩を進める。カーペットは足を優しく受け止め歩く音さえしない。玉座に座る魔王、その横が側近のシュベルト、その脇には、奇妙な服の男、真っ赤な燕尾服に白のシャツを着崩し、肌の色は薄い青で髪は青く長い。反対側には2人の男、1人は獣人だろう、立派な鬣と銀色の胸当て、筋骨隆々の腕や足、そして何より、ルシアに見た尻尾、その隣は・・・間違いない龍だ、銀色の鱗に黒く大きな羽、腰の辺りから生えている尻尾の先は鋭く、剣のような隆起したものが生えている。


メイドの行動を真似る。彼女が膝をつき、頭を下げれば、それに倣う。ここは声が掛かるまでこの体勢でいるべきだろう。


「改めて、ようこそ魔王城へ。さあ、面を上げ、名を名乗れ」


ゆっくりを顔をあげる。満足そうに笑っている魔王とその隣で頷く側近。ここで名を名乗ればいいのか。


「お初にお目にかかります、私はマコト=レイトバード。ご用命により参上致しました」


「うむ。早速だがマコトよ、龍化して見せよ」


魔王の言葉に暫し考えるが、ここは正直に全てを話した方が良さそうだ。


「申し訳ありませんがそれは出来ません。ですが、お話ししたい事がございます。とても信じられる事では無いかと思いますが、全て真実です」


否定の言葉に獣人が攻撃体制に入るが、側近に止められる。奇妙な格好の男は不思議と次の言葉を待っている様で、龍も腕組みをしたまま動かない。


「出来ない理由にも関わるのなら聞かない訳にも行くまい。話してみよ」


魔王の言葉に礼を言い、異世界旅行者の事、前回の世界で龍皇の逆鱗から装備をもらった事、装備が揃った時点で引き金(トリガー)となる魔法を使えば、龍の力が得られる事、装備が無くなってしまい龍化は出来ない事。その時に拾った破片も村で燃やしてしまった事を告げた。


当然、誰もが信じられないといった表情をしていた。1人を除いて。


「成る程、理解は出来ませんが、辻褄は合っている様に思います。申し遅れました、私は悪魔王リグハルトと申します。お見知り置きを。さて、魔王様、私は(しば)し席を外します」


「リグハルト様!まだ途中ですよ、勝手に席を離れられては困ります!」


シュベルトの制止を魔王が手を伸ばし止める。どうも力関係が良くわからない、魔王が頂点なのは判る。だが側近、悪魔王、獣人、龍。彼らは同等なのか?


「良い。リグハルト、せめて向かう先を言ってからにしてくれ。何か思い当たる事でもあるのか?」


「そうですね、先ずは装備品を燃やしたという村へ行きます。剣の破片(はへん)がそう簡単に燃え尽きるとは思えません。なので、残っていれば持ち帰り龍王に見て頂こうと、そうすれば何か判るかも知れません。それと、マコトさん・・・でしたね。貴方の隣に美しくどんな物でも斬れる剣があるとしましょう、そして、その反対には決して砕ける事のない盾があるとしましょう。ですが貴方はそれに気づかない。気付いているのかも知れませんが、認識出来ていない、これが私から見た貴方です。それでは魔王様、席を外します」


リグハルトは手を胸に当て腰を折ると、一瞬で姿を消した。奇妙な事を言っていたな、剣と盾があるけど気づかない?無いじゃないか、それにその剣と盾は『矛盾』の例えか?そんな事くらい知っている。悪魔王というのは格好もそうだが、奇妙な奴だな。


「では、リグハルトが戻るまで少し待つとするか。その間に紹介しておこう。我が忠臣の2人だ」


獣人が前に来る。


「獣王のデュオンだ。人間は嫌いだが、お前は別の様だ・・・ん?おい!お前!何処(どこ)で会った!」


急に俺の右腕を取り匂いを()ぎながら訳のわからない事を言って来る。何だよ、そんなに匂わないだろうが!失礼な奴だな。今度は胸倉を掴まれ前後に揺さぶられる。


「おい!何だよ・・・ちょ・・止めろ!何だか知らないが、落ち着けよ!」


デュオンの両手を払い、少し距離を取る。腰の剣に手を伸ばすが、ここは王の間だ、無闇に剣を抜いて罪に問われないか?というか魔王城だから平気か?


「止めろ!デュオン、何をしている。我が呼び寄せた客人だぞ。無礼は働くな」


魔王の一声で止まってはくれるが、敵意を(あら)わにしている。牙を剥き出しに唸る声は、腹の底に響く流石は獣王だ。すると視線を遮る様に大きな巨体が目の前を覆う、顔や体つきは人間の様だが黒い翼と銀色の尻尾、そして体を覆う鱗は見間違うはずがない。


「儂は龍王ジルク。お主同様疑われている、正直お主の言う事信じられん。この世界の他にも龍がいてその皇の加護を貰ったなど・・儂なら与えぬ、リグハルトが戻るまでは危害を加えぬ事をここに誓おう」


「助かります。俺も例え世界が違えど恩義のある龍と争いたくありません。(しばら)くお世話になります」


手を差し出すが、握手はして貰えなかった。嫌われたかな?無理もないか、突然現れた人間と謀反(むほん)を企んだ疑われては・・・関係改善できる様にして行きたいと思う。そこまで考えているとデュオンが脇から身を乗り出して来る。


「慌てたのは悪かった、だが、お前の腕から微かだが懐かしい匂いがした。何処かで獣人、それも女の獣人と会った事はないか?この鬣と同じ茶色で、髪は長い、人間には言いたくはないが・・・スタイルも良い」


スタイルの良い女の獣人なんて1人しか知らない。明るく何処までも真っ直ぐに好意を向けてくれる人、今は何処にいるのかな?元気だろうか。


「女性の獣人でしたら1人、(しばら)く一緒に旅をしました。名前はルシアと聞きました」


それだけ言うと、またもやデュオンが胸倉を掴んで来る。大きな目がさらに見開き先程よりも力が強い。


「何処だ!何処にいる!ルシアは・・・俺の娘だ!!」


まさか獣王の娘だったとは、あの強さも納得できる・・・が似てない。全く似てない。それよりも隷属の魔法の事はどう伝えよう、まさかご主人様ですなんて言ったら、このまま絞め殺されそうだ。

だが・・・少しマズイ、い・・息が出来・・ない。途端にデュオンが横に吹っ飛ぶと(ようや)く呼吸ができる。


「デュオン!いい加減にしろ!人間は脆弱(ぜいじゃく)なのだ!殺す気か!」


ドヤ顔で説教する魔王だが、お前にも殺されかけたからな・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。