第17話 冒険者ギルド
3000字程にの話数で考えていましたが、このキャラなら、この場面はと考えているうちにどんどん長くなってしまいました。長いと読む方の苦労になるので纏められる努力をしてまいります。
高い城壁に囲まれ、既にその奥の城は見えない。馬車が列を作っており王都に入るための検査を受けているようで中々進んでいない、対して徒歩で来ている者も多く大きな荷物を従者に背負わせ、歩く商人風の人や剣や鎧に身を固めた冒険者風の人たちは、少し離れた別の入り口からスムーズに入っていっているのでそちらに向かう。
入り口から覗く王都は奥にも左右にも広がっており非常に大きな都と感じる。憲兵所らしき所には兵士もおり冒険者らしき者は何かを見せて入っていっているようだ、このコイン……ではないよな。
「そこの黒髪の男、お前は冒険者か?ならば登録カードを提示しろ」
兵士風の男に呼び止められる。冒険者には登録カードがあるのか……もっていない場合は入れないとか?
「生憎冒険者じゃないです。なろうと思って此処まで着ましたが入れないんですか?」
「誰でも入れるが一応念のため確認しているのだ。魔物も増えてきているし不審な者を通すわけにはいかない、何か紹介状やそれらしい物は持っていないのか?」
そうは言っても何も持ってないのだから……そうだグランから預かったコインは使えるだろうか
「紹介状は無いですが、来る途中にグランという騎士団の団長にこれを預かり騎士団本部まで持っていくように言われました」
そう言ってコインを見せると、急に兵士の顔が変わり敬礼までしてくれた。
「これは、騎士団の……失礼しました。騎士団本部はこの奥に、冒険者ギルドは入ってすぐ左側です」
騎士団というのは王都でそれなりに地位にいるのか、とりあえず入れるようで安心できた。
「ありがとうございます」
やはり広い、左右に店が並び中央は大きく開けて行き交う人で賑わっている。右の奥には露天があるが、目を引くのはやはり中央奥に聳え立つ王城だろう。
「とりあえず冒険者になって、宿を探して散策かな」
教えられたとおりすぐ左側にある建物の前へ、2階建ての大きな建物だ茶色い外壁に扉には剣と杖のレリーフが左右に一対ずつ飾られている。
いきなり絡まれるというお約束に合わないように祈りながら扉を開ける中も広く、奥に受付らしき場所があり、右奥には掲示板の前に冒険者が集まっている、あれが依頼かな?中央には四人がけのテーブルが多数あり何組かの冒険者が話し込んでいた。それを横目に受付らしき場所へ向かう。受付には一~五番とかかれておりそれぞれに人がいるが、なぜか5番の受付が非常に混んでおり行列になっていた。
「何で五番?なら適当でいいか」
受付けの番号を選んでいると、後ろから声を掛けられる。
「そこの黒髪のお兄さん?もしかしてギルドは初めて?」
振り返ると、短い茶色の髪に黒い瞳褐色の肌、黒いローブを着ている女性だった。
「ええ。冒険者になろうと思ったんですけど良く判らなくて」
「ほうほう、新人さんだね。んでは、五番に行くと良いよ。きっと力になってくれる」
いや凄く混んでるし、順番待ちは面倒だ。
「でも五番は行列が凄いので遠慮します。番号のところに行けば良いんですよね?」
「気にすることは無いさ、あれは受付の女の子を口説いてるだけだから、ギルドじゃ日常さ」
なんだよそれ、だが、口説いているにしろあの行列に並んでいては今日中は無理じゃないか?
「いや、それでも……ちょっとあの行列には……」
「新人さんの受付けは5番と決まっているのでね。だが、これでは運営にも支障が出るな。少し騒がしくするよ」女性は大きく息を吸うと……
「メルフィー仕事だ!!!」
とんでもなく大きな声で叫ぶ。ギルド全体に大きく響き、誰もが此方に注目する。一瞬で全員の目の色が変わるのが判った。恐れ、畏怖、憧れ、そして尊敬。
「「「「マスター!!お帰りなさい!!」」」」
全員から一糸乱れぬ歓声を受けニコニコと左手を大きくあげると、あっという間に人の輪に埋もれていく、当然意味が判らない俺は、弾き出され輪の外でポツンとなってしまった。だが、五番の受付けは無人となっていたので、そちらへ向かう。
「あの……新人の受付けは此方と伺いましたが、お願いできますか?」
受付内の女性は青い髪を一つにまとめ青い瞳と優しそうな笑顔で応対してくれた。
「はい。ではこちらにお名前、年齢、職業を書いてください。登録料は銀貨3枚ですか構いませんか?」
登録料はいいが、職業?職業って何だ、勇者とかそういうのか?それがないと冒険者にすらなれないのか?
「職業ってなんですか?田舎から出てきたばかりで、そういうのは判らないんですけど・・・」
「基本は皆さん得意武器の系統で書きます。剣が得意なら剣士や戦士、魔法が得意なら魔法使いといった具合です。はっきり言ってしまえば自称ということになりますね」
なんだ、自称でいいのか、剣があるし剣士か?いや戦士?違いが判らないな…書いた紙と銀貨3枚を渡す。
「マコト=レイトバードさん、剣士・・・二一?って二一歳ですか?」
え?そんなに驚くことなのか?二一じゃダメなの?貴女もそのくらいに見えますし……
「そんなにおかしいですか?」
「いえ、失礼しました。成人の儀が出来る16歳からなる方が多いので、それで、登録は個人と集団どちらですか?」
十六歳からなれるのに五年も何をしていたんだということか、言ってしまえば二一歳なんて自称だ。自分がまだ人間だった頃に二一歳のときが肉体的に最高潮だったので、その状態を保っているに過ぎない。
生きている時間=年齢なら、すでに一〇〇歳をとっくに越えている。
「個人でお願いします。あと、宿を取りたいのですが出来れば安く」
「でしたら、あちらの扉の奥がギルドが運営している宿ですので、ご利用ください。王都の中では安いほうです。手続きをしてきますので、お待ちください。あっ紹介が遅れました、私がマコトさんの担当となりますメルフィー=ゾーンです。長いのでメルと呼んでください。それでは」
メルフィーは頭を下げると紙と銀貨をもって奥へと消えた。掲示板の隣に扉がありそこにも剣と杖のレリーフがあった、その奥がギルド運営の宿らしい。安く済むならありがたい。ギルドマスターはまだ人の輪から出てこない、よほど信頼があるのだろう代わる代わる挨拶や言葉を交わしている。
「マコトさん、お待たせしました。これが冒険者と証明するカードです。説明必要ですよね?」
メルフィー曰く冒険者のカードはその素材からクラスが決まる。鉄ならばD、銅でC、銀でB、金でA最上位のSは白金となる。上への昇格に決まりはないが、AやSになるにはギルドマスターが戦闘力や人柄を判断して決めるので、マスターに気に入られなければB留まりもありうる。なかでもSクラスは王都でも三組のパーティーしかおらず、Aクラスも三十組程度だという。失くすと再発行にはそれなりの金額がかかる。新人には担当が付き、色々とサポートをしてくれるそうだ。担当は1~5の受付で順番に行っており、俺の場合はメルフィーとなったようだ。
「大体はわかりました。今日は宿を取って明日から依頼を受けに来ます。依頼は直接メルフィーさんのところで良いんですか?」
「掲示板にはCクラス以上の依頼しかないので、直接来てくださって結構です」
「失礼ですけど、メルフィーさんの受付けは行列が出来ていました。あれに並ばないとダメなんですか?」
いちいち受付で並ぶのは面倒だ。
「直接来てくださっていいですよ。お誘いの話ばかりですから……」
そこら辺に突っ込むと、厄介ごとに巻き込まれそうなのであえて何も言わず、カードを受け取り宿へ向かう
宿のカウンターにはふくよかな男性がおり、宿泊を頼む
「冒険者ならカードを出しな。っけ新人か、1泊なら銀貨1枚だ食事が必要なら銅貨5枚で出す。どうするんだ?」
新人は金払いが良くないので敬遠されることがあるそうだが、ここまで露骨になるのか・・商売なら仕方ないと思うが……
「とりあえず五泊、食事は必要ない」
「なら五枚前払いでな、確かに確認した。部屋は2階奥だ鍵は失くすな、不安なら外出時に此処へ持ってきな」
鍵を受け取り部屋に入る。机に椅子、寝台と一人なら十分の広さだ。早速装備を外し寝台に入る、だいぶ早いが寝てしまおう。明日からの冒険者生活に期待を寄せて、早々に眠りについた。
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