表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界旅行者の冒険記  作者: 神祈
始まりの森
10/84

第9話 違和感

 

 目を覚ますと、夜が明ける前のようで部屋を片付け装備品を身につける。


 部屋の正面は庭になっており、庭に出る。少し低い気温と朝に変わる直前の空気が身体を目覚めさせてくれる。

 そこからは慣れ親しんだトレーニングの時間だ。旅行者になった当初は異能力などで無双が出来ると思っていたが、そんな事はなかった。剣を振るのも苦労したし、魔法への適性は一般人よりも少しだけある程度。何度も死を覚悟した。色々な人に迷惑もかけたし助けて貰った。優しく接して貰えた。別れ際はいつも泣いていたし引き止められた時は嬉しくて泣いた。認められた時も泣いたっけ。涙脆い性格だったか?と考えるようになった。


だが当然悪い事も非常に多い。裏切り、虚偽、暗殺未遂と、死んで生き返れる訳じゃ無いから信じないと決めた。だけど暖かい心で接してくれる人が居れば信じて、裏切られる。いつしか何が本当で何が嘘なのかわからなくなり、心の奥底では常に疑い続けるようになってしまった。あんな笑顔で接してくれるミリアだって本当に信用している訳じゃない。


 身体が温まって来たので切り上げ背後から来る足音に振り向くとミリアが起きていたようで、布を渡してくれた。

「あの……おはよう。ゴメンね黙って見ていて。なんか声をかけ辛くって」


「気にしないで。もう終わったから、それよりまさか起こしちゃったかな? ゴメンね。朝はこれをやらないと、調子が出なくってさ」


 なんだか落ち着かない様子のミリアは昨日とは違い、こちらを見ることなく俯いたまま捲し立てる。


「あのね。湯浴みが出来るからって昨日言い忘れてて、それで起きたらマコトが鍛錬してるし、見てるとなんだか格好良くて、邪魔しないようにしてたんだけど、湯浴みの事も伝えないとって・・・何言ってるんだろう。ゴメンね」


「別に見られて困るようなものじゃないし、退屈じゃなければいつでもどうぞ。湯浴みが出来るのか。それはありがたいね。場所はどこ?」


 なるほど。湯浴みの為の布か、あえて格好イイと言われた事には触れないでおく。ミリアに案内されたのは庭から少し離れたところにあった。囲いはあるが、屋根がない所謂露天風呂のような場所だった。


「昔井戸を掘っていたら、何故かお湯が出て来て、それ以来、此処で湯浴みができるの。みんなで使っている場所なんだ。この時間なら誰もいないから心配しなくて良いよ。終わったら部屋に戻っていてね。ご飯用意するから」


 言い終わると昨日のように手を振りながら、戻って行く。なるほど。みんなで使っているのか。ビバ‼︎混浴‼︎途中で誰かに会うお決まりのハプニングもなく、一人寂しく湯浴みを終え部屋へ戻るとちょうどミリアを鉢合わせた。


「湯浴みありがとう。とっても気持ちよかった。ミリアには世話になりっ放しだね」


「ううん。そんな事ないよ。ご飯出来たから呼びに来たけどちょうどよかった、こっちだよ」


 案内されたのはリビングらしき場所。大木を半分に切ったようなテーブルにはパンやスープ。見たことがない果実が沢山。エルフは菜食だったけ?世界が違えば違うよな。納得し族長の隣にミリアに似た女性が居るのが見えた。ミリアの姉か妹かな?年齢も変わらなそうだし。取り敢えず族長への挨拶を行う。


「おはようございます。昨晩はありがとうございました。おかげでゆっくり休めました。そちらはミリアムさんのご姉妹(きょうだい)ですか?昨日この村に来ましたマコト=レイトバードと申します。暫くご厄介になります」


「ああ、おはよう。ゆっくり出来たのなら良い。主は世辞の才もあるのかの?」


 これもテンプレだったか。あの女性はミリアの母親なのか、だが様子がおかしい。なんだろう……というか全体的に暗い印象を受ける。笑っているようだが、悲しいけど無理に笑うような……


「私のお母さんよ。マコトったらお世辞にしても、言い過ぎじゃないの?」

 ミリアがコップに湯気の立つ飲み物を淹れてくれて全員がテーブルにつく。


「マコトさん、ミリアムの母でエリザです。昨日はご挨拶が出来ずにごめんなさい。体調が優れなくて」


 病気か何かだから暗い印象なのか?何か違和感がある。隣のミリアに果実の名前や味などを聞きながら胃の中へ入れていく。特にパオタと呼ばれる林檎と梨を足したような果実が非常に美味しかった。味覚があって良かったとつくづく思う。


料理とは呼べない黒炭を食べさせられた記憶が蘇る。あの時は本当に死を覚悟したな…



「所で村の人に聞きたい事があるんでしょ?そろそろ出かける?」


 後片付けを終えたミリアがエプロンのような物を外しながら、聞いて来る。昨日と違い今日は髪と同じ緑の服でローブではなくスカートを履いており生足に目が行きそうになるが必死に堪える。


「そうだねそろそろ行こうか。でも、ミリアには申し訳ない、薬草採取行けなくなるかもね」

 監視としてついて来るのだ。二、三人話して終わりという訳にも行かない。


「平気よ。毎日行くって事でもないし。今日はマコトに付き合ってあげる。その代わり今度採取手伝ってね」

 

「ミリア、族長には何て言われたの?」

「マコトに村を案内ついでに村の人に聞きたい事があるらしいから手伝えって」


 族長の意図がわからないが、ミリアに余計な気を使わせないようにしているのだと納得する。

 こうして、エルフの村での聞き込みを開始する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ