実践練習とメイド服
翌日、シンジのタクマは剣の稽古のために近くにある草原へと出かけていた。
「さてと、ここまでくればあまり人は来ないだろ」
「タクマさん、何をするんですか?」
(僕、連れて来られただけなんだけど)
「いったろ?実技の練習だ、はやく半月を構えろ」
そう言いタクマは木刀を握り、構えた。
「でもこれで斬ったらその木でできた剣は」
「安心しろ、こいつは俺の修行でもある、少なくとも今のお前には折られはしないさ」
「でも・・・」
(僕、剣なんて握ったことないし、ましてや使えるわけなんて)
「そっちが来ないならこっちから行くぞ!」
そう言いタクマは木刀を構えるとシンジの方へ走り、斬りかかった。
「えっ!?」
タクマの咄嗟の行動にシンジは思わず半月で受け止めた。
(僕・・・今、無意識に防いだ!?)
「それならこれはどうだっ!」
受け止められた木刀を少し上に離し次は体のところへ即座に移動させ、横に斬りかかるとこれも見事にシンジは防いだ。
「フッ!」
タクマは後ろへ飛び、シンジと距離をとった。
「やっぱりな」
「何がやっぱり?」
「お前記憶を失う前は少なくとも護身用レベルで剣術を学んでるな」
「今ので分かるの!?」
「あぁ、俺が今した動きは人脳剣技と言ってな、考えなしに斬りつけにかかる剣技の1つだ、言わば直感で行う行動の1つだ、それを即座に反応し防いだ・・・という事はだ、お前は剣術の基礎を学んでいる、少なくとも俺はそう評価した」
(僕が剣術を・・・)
「それじゃ、もしかしてこれで終わり?」
「んなはず無いだろ?そもそも護身用は確かに普通の剣術よりは上の技術がいる、だが今のレベルは精々受け流しができる程度だ、その程度なら合格できなくも無いが、それから先の授業には追いつけんだろうからな」
「えっ!?」
「それだけ過酷って事だ、さぁ!かかってこい!」
(でもどうやって攻めれば・・・)
「う、うぉぉぉぉっ!」
「はぁ」
タクマはため息をすると縦に斬りかかってきたシンジの攻撃を受け流し、シンジのバランスを崩すとタクマはシンジの背中を木刀で攻撃した。
「ぐはっ!」
「考えなしに来るんじゃねぇよ」
「ならどうやって!」
「それくらいは自分で考えて動け」
(考えろって言われても・・・いや、さっきやったみたいにすれば)
「うぉぉぉぉっ!」
シンジは先ほどと同じように斬りかかりに走っていった。
「なるほどな」
タクマは微笑み先ほどと同じようにシンジの攻撃を受け流そうと構えた瞬間、シンジの太刀筋が変わり半月を上から下に移動させ、タクマを切り上げた。
「だがそれも読めてる!」
タクマは切り上げてきた刃にタイミングを合わせ体を背後に逸らすことにより避けた
「なっ!?」
そしてタクマはそのままの勢いでバック転をし、構えなおした。
「そうだな、今のくらいなら良いだろう、でもお前がしたかったのは今のじゃないんだろ?」
「・・・うん、でもなんで分かったの?」
「剣を使う上で最も大切なこと、それは観察眼だ」
(観察眼?)
「要は相手の動きを見極めなければいけない、例えばお前さっきの攻撃俺に凌がせろうとしただろ?」
「そこまで分かってたんだ・・・」
「まぁ、お前レベルの腕ならその程度は予想できる、それだけ今のお前は動きが単純だってことだ」
(まだ容易に予想ができるレベル・・・なのか)
タクマの感想を聞きシンジは肩を落とした。
「だが適応力は良かった、あそこであの適応力は良いと思う」
「えっ?」
「はぁ、せっかく褒めたんだ、少しは喜べよ」
タクマは軽くため息をつき、木刀を収めた。
「あ!いたいた!タクマさーん!」
シンジは声のした方を見ると街の方から杖を背負った1人の少女がこちらへ走ってきている。
「メイちゃん、どうしたんだ?」
「ここで修行してるってアイちゃんから聞いたの♪だから、はいこれ差し入れ!」
そう言いメイは手に持っていたバスケットを渡してきた
「ありがとな」
(この子誰だろう?何処かで見た気がするけど)
「タクマさん、この人は?」
「この子はメイちゃん、マスターの孫だ」
「よろしくね♪シンジくん!」
「えっ!?なんで僕の名前」
「だって昨日ギルドにいたのよ私」
「メイちゃんはギルドのバーカウンターでアルバイトしてるんだよ、従業員としてね。そうだメイちゃん、シンジの修行に付き合ってくれないか?」
「良いですよ」
そう言いメイは背負っていた杖を構えた。
「メイちゃんは魔法主力で戦う、いわゆる魔法使いだ、俺とは違い遠・中距離から攻撃する・・・そうだ、シンジ!これで戦え!」
そう言いタクマは木刀をシンジの方へ投げた。
「えっ!うわっ!」
シンジはアタフタしながらも、木刀を受け取り、半月をタクマに預け、そして木刀を構えた。
「それじゃ始めろ!」
「うん!」
そう言うとメイは杖を地面に立てパンっと音がなるように手を合わせて何かを小声で言い始めた。
「我、炎の精と契約す、力を貸して!炎の精霊!フレイム!」
『はいはーい♪』
メイは詠唱を唱えるとボンッという音ともに小さな赤い羽の生えた妖精のような生き物が現れた。
「行くよフレちゃん!目標木刀を持った少年!」
『オーケー!』
精霊はそう言うとシンジの方へ両手を突き出し小さな火の玉を発射させた。
(火が飛んできた!?)
シンジは横へ飛び火の球をかわすと火の球が衝突した部分は少し焦げていた。
「あれを避けるなんてなかなか勘が良いんだね!ならこれはどうかな!フレちゃん、アレやるよ!」
『りょーかい!』
そう言いフレイムは火の球を連発して撃ってきた。
「なっ!?」
(あんなのどうやってかわせば・・・そうだ!)
シンジは前転をして火の球をかわすとまっすぐメイの元へ走って行った。
(こう近づけば攻撃はできないはず!)
シンジは木刀を勢いよく振るとメイは握り直していた杖で弾いた。
「もう少しだったね!」
そう言うとシンジの腹をついた
「なっ!?」
シンジはくの字になるとメイはそのまま杖を上に振り上げ攻撃した。
「そこまでだ!」
シンジはその場に蹲るとタクマが止めに入った。
「はぁ・・・はぁ・・・」
(一体何があった!?)
「メイちゃんは元々棍の使い手でな、今は魔力適性が高いことから召喚魔法を使ってるんだよ」
「ごめんね、実はこれ棍だったりするんだ♪」
「こ・・・棍?」
「棍は中距離、近距離から攻撃が可能な武器、ただメイちゃんのは特注品だ」
「そゆこと、この特注武器は棍でもあり、魔法詠唱の為の杖でもあるんだ♪」
魔法・・・確か昨日の勉強で出てきた、一部の人間は体内に魔力といわれる特殊なエネルギーが備わっていて、そのエネルギーと杖と呼ばれる特殊な武器を媒体にして精霊と契約することで火を出したり水を操ったりするって
「まぁ、メイちゃんから一撃でも与えれば上出来だな・・・そうだ、シンジ今日から6日間以内にメイちゃんから一撃与えればこの修行は終わりにする」
(この人に一撃でも与えれば)
「タクマさん!私の意見聞かずに決めないでください!」
「おっと、そうだった・・・メイちゃん頼まれてくれるか?」
「うーん・・・なら条件があります!」
「ん?俺にできることなら何でもするが」
「それじゃあ・・・」
メイの目が光るとタクマの耳元でヒソヒソと喋り出した。
「はぁ!?それは流石に」
「ふーん、じゃあ私はこの件は降りる方向で考えさせてもらいますね!」
「あっ!待って・・・はぁ、分かったよ」
「ふふーん!ありがとうございます!」
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「おかえり!シンジくん!勉強の時間だよ・・・ってタクマどうしたの!?」
「あ、いや・・・なんでもない」
「あはは、タクマさんなんかずっとげっそりしてて」
「ほんと、何でもないから・・・その、俺仕事行ってくる」
「えー?夜ご飯は?」
「適当に食って来いよ」
「分かった、んじゃギルドでご飯でも」
「ギルドはやめとけ!」
タクマは大声で怒鳴った
「「っ!?」」
タクマは急に怒鳴った為2人は酷く驚いた。
「んじゃ、行ってくる」
タクマは凄くがっかりとした様子でギルドの方へ向かって行った
「あんなタクマ初めて見たよ、でも変だな〜?」
「変ってどこがです?」
「タクマって仕事は好きなんだよ?それをあんなにがっかりした感じはなんていうかその初めて見たんだ〜」
(タクマさん・・・確かメイさんと話してからだったよね?)
「ギルドに行こっか!」
「え?でもさっき来るなって言われたばかりじゃ」
「タクマのこと気になるもん、それに私たち家族でしょ!隠し事はダメだからね♪」
アイは笑顔でそう言った。
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「あれ?ギルドの入り口って反対側じゃないの?」
「シンジくんは知らないよね、ギルドの裏側はレストランになってるんだ♪」
レストランのドアを開けるとベルの音と共に賑やかな光景が目に入ってきた。
「いらっしゃいまっ!?」
店に入るとメイド服を着た綺麗なウエイトレスが接客をしに来た。
「2人だけど空いてる?」
「に、2名様ですね、こちらへどうぞ」
ウエイトレスの動きは凄くぎこちなく、ロボットのような動きをしながら2人を席に案内した。
(変な定員さんだな)
「そ、それではご注文がお決まりしましたらお呼びください」
「ねぇ、君初めて見る顔だね♪新人さん?」
アイはウエイトレスをジーっと見つめると口を開きそう言った。
「は、はい!今日からここで働く・・・タリーと申します!」
ウエイトレスは顔を隠しながらそう答えた。
「ふーん、私アイ・マキリス、アイでいいよ!よろしくねタクマ♪」
「よ、よろしくお願いし・・・え?」
「タクマに女装趣味があるなんて私知らなかったなー」
「タ、タクマサンッテダレノコトデスカ?」
タリーは笑顔を引きつらせそういった。
「あらら?バレちゃいました?」
「メイさん!?」
奥のホールからメイド服を着たメイが現れた。
「タクマの様子が変だったからなんとなく察しはついてたけどやっぱりメイちゃんだったのか〜」
「ごめんね♪シンジくんの修行に付き合う報酬としてお店手伝ってもらってるの」
「ふーん、なら私も通おうかな?」
「そ、それは辞めてくれ!家計的にも危ないから!」
「すみませーん!」
違うテーブルから呼ぶ声が聞こえた。
「はーい!少々お待ちをー!それじゃ"私の"タクマさん借りてくね♪」
「うん、いいよ!だってタクマは"仕事"でしてるんだもん仕方ないよね♪」
アイとメイはお互い笑顔(目が笑ってない)でそう話した。
(女性怖いです。)