①
ピピーっ!!っという甲高いクラクションの音が聞こえた。確かに俺のまえにあった信号は青だった…青だったんだ。
でも横から来た大きな無機物は止まることはなかった。ぐんぐん近づいてくる死期に、つい
「あぁ、随分呆気ない人生だったな…。」
と口から言葉が漏れた、隣にいた幼馴染は今どんな顔をしているのか…。きっと悲しんでるだろうなぁ。目を横に流し、幼馴染を見ようとしたその時。
車の中にいる女性がこちらを見ながら。
━━━━卑下た表情でこちらを見ているのがわかった。
━━━━サイレンの音が聞こえる。サイレンの音が聞こえる。サイレンの音の中、その中に人の声が聞こえる。
「…ですか先生…これで…回目ですか!?」
「うるさいぞ…、これも僕の…の成果を見るためだ。」
「あーあ…。この子もそのためだけに…れちゃってかわいそうに。」
「一々うるさいぞ君は…。そろそろオペの…だ。麻酔を…たまえ。」
誰の声だろう。わからない。わからないまま、俺は真実を知らないまま、暗く深い眠りについた。
「……。」
━━━━ガバッ!!とベットで飛び起きた。ここはどこだ?今俺の体はどうなっている!?
急いでペタペタと体を執拗に触る、が、どこもおかしな所はない。
…はっ?あの事故で?怪我は1つもない!?
体育の成績が特筆してよかったわけではない、日々を健康に過ごしてきたわけではない俺が、車に引かれて無傷だった…!?
「ねぇ…目が覚めかな?」
ペタペタと体を触っていると突然隣から声がした、横を見ると小さな女の子がちょこんと座っている。
お見舞いか?と思ったがこの子と俺の面識は一切なかった。。
「えっと…。君、迷子かな?」
怪しく思いながらもそんな腑抜けた言葉が俺のうちから漏れた。女の子はニコニコしながらこちらを見ている。
「僕じゃないんだけどね、もう一人がなかなか来なくて暇つぶししてるんだ。体はどう?」
きっと彼女の友達がきっと俺の友達か何かなのだろう…。幼馴染の友達の妹とかならありそうな話である。
「何とか…っていうのかな?車に引かれたことは覚えてるんだけど、傷はあるのに怪我をしてないってのには驚いた。」
「ふーん…まさに『九死に一生を得る』って感じだね!」
「まぁね、不思議だ。」
「ふしぎ?」
「うん、俺は別に運動が得意だった訳でもないのに、あんな早い車に引かれて無傷だってのがね。」
「凄い!お兄さんは『能力者』になれたんだね!!」
…?聞きなれない言葉が出てきた。
「能力者?」
「そう、能力者。特殊な力を顕現できる人間のこと!」
嬉々として女の子は話を続け…
「ドクター!!あなた!あれほどテレパスは使わないって言ってましたのに!!」
…ようとしたのだが、その既の所で病室のドアが開き、汗だくの男が現れた。
瞬間、女の子の表情が変わる。
「カズ!キミはそれでも僕の助手なの!?キミも薬を飲めばできるでしょ!!」
視線を男の方に向け、怒鳴り声を上げた幼女、さっきの声とは偉い違い、尻込みしてしまう。
「やですよあの薬不味いし…、それに私の能力はそう軽々と使えるもんじゃないのは承知でしょう!?…あ、そういえば。」
そう言ってヅカヅカと俺の方へ近寄る男。そしてペタペタと俺に触り始めた。
「うん、臓器もバイタルも問題なさそうだ、おめでとう、佐倉貴樹くん。」
「君はもう立派な能力者だ。」
「実験が成功したところで、さて話を戻そうドクター、あの薬もう少し味はなんとかできないのかい!?甘くて苦くて…酸っぱくて辛くて…なんていうかもう…最悪な味がするんだ!!」
「なんだって!?あの味の良さをわからんとはキミもまだまだだね、あの味は絶対変えないよ!!」
━━━━はっ?
いやまて、今少し俺について変なことを言わなかったか?あの男。
「だいたいドクターはいい加減すぎる!片付けはしないしすぐモノを放り投げるし!」
「何さ!僕は天才だよ!?そういうのは平々凡々のキミ如きにやらせてもなんの問題もないだろ!?」
「その平々凡々がいないと日常生活すら疑わしいキミがなにをっ…「あのっ!!」」
大声を出した俺に驚き、二人の口論が止まった。二人ともこちらを見ている。
「あのっ…今変なこと言いましたよね?…俺が能力者って?…ていうかそもそも能力者って何?小さい女の子が言うのはまだいいけどいい年して厨二病はまずいぜオニイサン。」
困惑した顔で言ったが、向こうも困惑した顔になってしまった、数秒の沈黙のあと、女の子はフフッと笑い、男はため息をつきながら頭を抱えた。
「…ドクターからはなんの説明もなかったんですね。」
「ドクターって、アンタが俺を見てくれたんじゃないのか?」
「僕は助手さ、手伝いはできてもオペなんて到底できない。」
「じゃあ誰が?」
彼は俯き右に親指を向けた。そちらを見ると女の子がニコニコしながらこちらを見ているのがわかった。
「……疑うかもしれませんが、彼女です。」
「はぁ?」
接頓狂な声が出た。女の子と男を見比べ男を軽く睨む。
「馬鹿にするのは止めてくれませんかね、俺も医師の方から聞きたいことはいっぱいあるんですよ。」
「はぁ…まぁそうなるよね、ドクター、もう貴方から言ったください、私にはこういうの無理です。」
「情けないなぁ…それでも僕の助手なの?」
「こういうのは押しの強い貴方のが上手く行くんですよ、多分。」
「そんなもんなの?…まぁいいや。はじめまして!佐倉貴樹くん!僕はドクター!!気軽にドクターとでも読んでくれ!」
「その助手の岸田和雅です、とりあえずこの人のことは『腕は確かなキチガイ』とでも思ってとけばいいよ。」
「あえて否定はしないよ、あとで嫌でも薬飲む機会あるしね。」
「またアレをするのか…いやだなぁ、ホントに性格悪い……さて、この自己紹介の中で、まだ疑問な点はあるかな?」
いやありすぎるんだけど!?だけど、なんか全部が胡散臭く感じて、全部ホントなんじゃないかと思えてしまう謎の説得力があるっ!!
「……年齢があるだろ年齢が。その子はどう考えても医療資格を取れる年齢じゃない!」
「あー…ドクターを見た目年齢イコールで考えないほうがいいよ、だってそのとうに500はこえて…ヘブッ!!」
いいかけて男は殴られる。
「いちいちうるさいね君は!女性の年齢を答えるなんてナンセンスじゃないかな!?」
「ごひゃっ!?「いいから!!」」
ずっ、と顔を近づけ小声で話し始める。
「いいかい貴樹くん。人間の年齢なんて些細なものさ、その気になればこのご時世いくらでも伸ばすことができる。」
「でも500はっ…「しかも!」」
「女性に年齢を尋ねるのは失礼な行為だ、マナー違反だ。あのクソバカ助手みたいに殴られたくなければそのまま口を閉じなさい。」
刻々と頷いて了解を示す。怒気が凄かった、人一人殺せるぐらいあったんではないだろうか。
「ハイハイ申し訳ございませんでした、それじゃ、貴樹くん。能力者について説明するね。」
納得行ってなさそうなドクターを無視して和雅と呼ばれる男は一つ咳払いをして、話し始めた。
「まず、かんたんに能力者の説明をしよう。テレビとかで聞いたことあるんじゃないかな?」
「『そんなことする子には思いませんでした。』『常に優しかったのに、どうして』みたいな言葉をさ。」
「そういう事案の彼らは一部の精神に介入するタイプの能力者によってそう動かされているってことが多いんだ。」
「休んでいた火山がいきなり活動するみたいな話もあるだろう?あれも能力者が関わってる可能性が高い。」
「人間や自然現象をハチャメチャにできる力を手にした人間。それが『能力者』だ。」
「まぁ、簡略化しすぎてわからないかもしれないけど、『人間を脅かす人間』とでも思っておきなよ。」
「そうだねドクター、だから、日常生活で害をなす能力者たちは国によって陰から抹殺されることが多い。」
ここで語り手がドクターに変わった。異様にテンションが高い。
「そこでだ!僕は考えたんだ!!」
「私の手でその能力者を作ってしまおうとッ!!」
「………はっ?」
「被験者はゆうに200人を超えた…!だがついに僕は完成させたんだ!『ただの人間』から『能力者』を作ったんだ!!」
……おいおい待て待て。
「長かった…ほんとに長かった!!死体を秘密裏に処理するのがどれだけ大変だったか…!」
……こいつ今何て言った?
「ありがとう!佐倉貴樹くん!君は僕の大切な初めての実験動物だ!!」
……ていうかこの顔。
あのとき見た車に居たじゃねぇか!!
「アンタ…まさか実験のために俺を引いたのか?」
「わぁすごい!そこまで思い出せた人は君が初めてだよ!!」
煌々とと頭の中に黒く輝く靄が掛かる。
「ふざけんなッ!!アンタ俺の体に何しやがった!!」
チカチカする頭を抑えて吠える。
「ほとんど何も、ただちょっとした注射を打っただけさ。」
「注射ぁ…!?」
「そう注射、能力者の血液から取れる特別な液体を加工して作った僕特性のね。」
━━靄が思考を遮る。何も考えられなくなる。
「なんで…!何でそんな事をした!!」
先程からどす黒い笑みを浮かべているドクターが、より一層、どす黒い笑いを浮かべた。
「そんなの決まってるでしょ。『面白そうだから』。これ以外の理由が天才にあると思うの?」
━━━靄が完全に思考を奪った。意識が落ち自分が死んだかのような錯覚を覚えたまま、意識が遠くなってくのを感じた
少年がその場で動かなくなるのを確認した。僕はそれを見て部下に指示を出す。
「来たね、カズ今のうちに準備を。」
「ハイハイ…全く、これは飲みたくなかったなぁ…。」
そう言ってカズは内ポケットから赤青い色のカプセルと、特殊な形状の銃を2丁取り出し、カプセル口に投げ込む。
「……………さぁってと。」
目がギラッと輝いた。一挙一動に目の光が残光を残す。
直後、貴樹の体がビクンッ!と跳ねた。
かと思うと先程までいた場所に貴樹はもう居らず。病室のすみの天井に張り付いていた。
目に生気はなく涎が絶え間なく流れている。この状態から彼を救わないと、また哀れな犠牲者になってしまうだけである。
「頼むよ、カズ。」
そう言って僕は右手についてる転移装置を使い、自室へと戻った
「はい。いつもどうり、『世界を作り替えます』よ。」
飛ぶ直前、彼はいつもどうりそう言いながら、貴樹の眉間を貫いた。
━━━━気がつくと俺はベットに横たわっていた。
自分でもわかる文章力の衰えに驚いております…。不定期更新になります。書きたいときに書く感じなので、気長にお待ちください。