第九十七話 ニュー・フロンティアでの暴動 その4
このように地球人類社会において、「仮想現実依存性」は国際的な社会問題となった。
一部では「仮想現実」その物を禁止する意見もあったが、それは現実的ではなかった。
学校教育・職業訓練において仮想現実は欠かせない物になっていたのである。
仮想現実依存性に対する規制は、国によって違い、ほとんどの国では仮想現実の使用時間制限と嗅覚と触覚を仮想現実の中では感じさせないことで現実との混同を避けるなどであった。
しかし、仮想現実その物の禁止を唱える団体は一定数常に存在した。
ほとんどの団体は穏健にSNSなどで主張するだけたが、一部過激な団体も発生するようになった。
仮想現実で教育をしている学校などを襲撃して、仮想現実装置を破壊するなどの活動をするようになったのだ。
それは明確に犯罪なので、各国政府の警察によって取り締まりわれる。
しかし、犯罪と言えない方法で仮想現実に反対する活動家も現れるようになった。
その活動家たちは個人の意思として、自身と家族が仮想現実を使用することを拒否したのだ。
それ自体は違法ではない。
しかし、例えば小学生の子供に親が仮想現実での教育を拒むのは「一種のネグレクトではないか?」という議論もされるようになった。
実際、仮想現実を学習に「使う」「使わない」では明らかに「使う」の方が学習の効率が良いというデータがあるのだ。
仮想現実を学習に使わなかった子供が、クラスで取り残されるという事態も発生した。
仮想現実を使用しない社会人は職業訓練で不利になるので、賃金が比較的低くなるということもあった。
仮想現実を使用する人間が有利になるように地球人類社会はなっていたのである。
仮想現実反対派の中には独自のコミニティをつくり、そこに籠って、彼らの言うところの「理想社会」を築こうとした団体もいた。
しかし、仮想現実を禁止してもインターネットまでは禁止できない。
インターネットで外の世界に憧れた若者が流出してしまうことになった。
さらに過激な団体ではインターネットまで内部で禁止した。
これらが社会問題になっていた頃、アメリカ合衆国は宇宙における新たな開拓地としてニュー・フロンティア星系を手に入れたのだった。
ニュー・フロンティア星系の居住可能惑星であるフロンティア・ナンバー・ワンは惑星の環境が地球とほぼ同じで、食料生産については自給自足が可能で、鉱物資源にも恵まれていた。
唯一の欠点が大気圏内では電波の使用が困難であることだった。
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