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第九十六話 ニュー・フロンティアでの暴動 その3

「だから、私はニュー・フロンティア星系では『成人』としてあつかわれます」


 サクラコはドヤ顔で言った。


「分かった。分かった。サクラコ予備二等宙士、志願を承認する。ノリオ・大原二等宙士の指揮下に入れ」


「あら?私はノリオくんと離れた部署に配属されるのかと思ったのですけど?」


「それをしたら私が嫉妬しているみたいだろ。それから、ノリコ」


 小川艦長は、ノリオの右隣に立つメイド服を着た女性型アンドロイドに声をかけた。


「はい、小川艦長」


「あらためて言うが、大原二等宙士の護衛をしっかり頼む」


「かしこまりました」


 ノリコは敬礼ではなくお辞儀をした。


「小川艦長、暴動に関する情報が『ウィスコンシン』から入りました」


 宇宙護衛艦「しなの」の副長であるツグオ・細川二等宙佐が報告した。


「暴動が起きている場所や規模は分かるか?」


「暴動が発生しているのは、惑星フロンティア・ナンバー・ワンの州都リンカーン・シティです。数十万人規模の暴動になっているようです」


「暴動の原因は?」


「『仮想現実反対派』と『仮想現実賛成派』の争いのようです」


「またか……この星系は争いを止められないのか?」


「ある意味、仕方ないですよ。この星系にアメリカ合衆国が開拓を始めた初期にまで暴動の原因はさかのぼりますから」


 ニュー・フロンティア星系はアメリカ合衆国が開拓した星系であり、現在でも太陽系の地球にあるアメリカ合衆国の一部ということになっている。


 最初に開拓のために惑星フロンティア・ナンバー・ワンの地上に降り立った団体は、地球で「仮想現実反対」を唱える団体だった。


 仮想現実は、現実とほぼ同じ体験を仮想空間ですることが可能で、学校教育や職場での訓練に欠かせない物になっている。


 例えば、軍隊・警察・消防などでは、仮想現実においてケガや死亡することなく危険な訓練が可能になっている。


 その一方で、「仮想現実依存性」が社会問題になっている。


 仮想現実に理想の世界を造り、そこから出てこない人々が多数あらわれたのだ。


 仮想現実の中では理想の食事ができるが、栄養は摂取できないため、現実に戻り本物の食事を取る必要がある。


 それで重度の身体障害者用の完全介護用ベッドを手に入れる仮想現実依存性の人があらわれるようになった。


 完全介護用ベッドは人工知能によるベッド型ロボットで、使用者はベッドに横になったままで、食事・入浴・排泄などの介護をロボットがしてくれる。


 そうして、完全に仮想現実の世界に入り込み、現実に戻らない人々が続出したのだ。

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