第九十五話 ニュー・フロンティアでの暴動 その2
サクラコは笑顔で答えた。
「でも、予備自衛官が志願するのは自由ですよね?ノブヨおば……いえ、小川艦長」
ノブヨも笑顔で応じた。
「その通りだ。そして、現地部隊の指揮官である私は『志願を拒否する』権限がある。それは分かっているな?サクラコ……いや、サクラコ予備二等宙士」
「はい、分かっています。しかし、それには『拒否した理由を明確にしなければならない』ことになっています」
「サクラコが日本の法律ではまだ未成年の十七歳であることは理由にならないのか?」
「それは日本本土の法律でしょう?新大江戸星系では本人が希望すれば、十五歳で『成人』としてあつかわれます」
ノリオは記憶促進装置で覚えた「新大江戸星系開拓における成人年齢の特例措置」について思い出した。
新大江戸星系に地球の日本列島から日本人が移民した開拓初期は、慢性的な人手不足に悩まされた。
人工知能による作業用ロボットがあるので、人間が肉体労働をする必要はほとんどなくなっていたが、作業用ロボットの「管理者」が不足するようになっていたのだ。
作業用ロボットが事故を起こして損害が発生した時の責任は管理者が取らなければならかったため、管理者は成人である十八歳以上でなければならかったのだ。
そのため、新大江戸星系では本人が希望すれば十五歳で「成人あつかい」とする特例がつくられたのだった。
しかし、地球の日本本土における成人年齢は十八歳のままであった。
そのため新大江戸星系で「成人あつかい」となった十五歳が日本本土に旅行などで短期滞在、あるいは引っ越しで永住した場合はどうなるのかが問題になった。
様々な議論や交渉の結果、日本本土では、十八歳が成人で例外は認めないということになった。
新大江戸星系の開拓初期は、日本本土の方が人口が多く、人手に余裕があったため、このような措置になったのだ。
日本本土の人口が八千万人、新大江戸星系の人口が二億人となり、逆転した現在でも成人年齢はそのままである。
日本本土は「日本古来の伝統と文化の保護」が重要視されているため、保守的な人間が多く、変化を嫌う傾向があるため、そのようになっている。
ある意味では喜劇なのが、「新大江戸星系で十五歳の成人あつかいの人間が地球の日本以外の国に滞在した場合はどういうなるのか?」であった。
これは、どの国でも一律して「成人としてあつかう」ということになった。
成人年齢は国によって異なり、新大江戸星系で成人ならば、他国はそれを単純に受け入れたからであった。
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