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第九十四話 ニュー・フロンティアでの暴動 その1

「僕はサクラコさんではなく小川艦長を選んだんです」


「ノリオくん、ノブヨおば様を選んだ理由を私は聞いているのよ」


「好きだからです!とてつもなく小川艦長が好きだからです!」


 突然、部屋に警告音が鳴り響いた。


「えっ!何なのこの音!?」


「艦内放送で緊急放送の時に鳴る警告音です」


 艦内放送のスピーカーからノブヨの声が流れた。


「こちらは艦長だ。ニュー・フロンティア星系の惑星フロンティア・ナンバー・ワンで暴動が発生した。これより当艦は『ウィスコンシン』と共にニュー・フロンティアの衛星軌道に向かう」



 数分後、ノリオは宇宙護衛艦「しなの」の戦闘指揮所にいた。


 艦長席にいるノブヨの右隣に座っている。


「小川艦長、ニュー・フロンティア星系はアメリカ合衆国の領土なのですから、そこで暴動が発生しても、僕たちは介入できないのではないのですか?」


 ノリオの質問にノブヨはうなづいた。


「そうだ。だから、今回の我々の任務は『邦人保護と情報収集』だ。ところでだ」


 ノブヨはノリオの後ろの席に座る人物に目を向けた。


「何で、サクラコがここにいるのだ?」


 その席にはサクラコが座っていた。


 サクラコは新大江戸星系軌道警備隊の制服を着ていた。


「もちろん、私が志願したからです。私は新大江戸星系軌道警備隊の予備警備隊隊員であると同時に予備自衛官でもありますから」


 ノリオは記憶促進装置で記憶している予備自衛官の制度について思い出していた。


 予備自衛官は普段は他の職業についており、治安出動・災害出動・防衛出動の際に招集される。


 有事に不足する常勤自衛官の員数を補うことが目的である。


 日本の植民星系である新大江戸星系の軌道警備隊は新大江戸星系自治体が独自に持つ警備隊であるが、日本の法律により、警備隊隊員全員は同時に予備自衛官になっている。


 地球の日本列島の日本人の人口は約八千万人、新大江戸星系の日本人の人口は約二億人と完全に逆転しているため、日本列島で不足する自衛官を補うためである。


 過去にも日本列島で台風や地震など大規模な災害が発生した時に、軌道警備隊隊員は予備自衛官として招集され、災害派遣部隊として新大江戸から日本列島に派遣されたことが何度もある。


 跳躍暦百五十年の日本の法律では、太陽系外にいる航宙自衛隊の部隊は、地球の月にある航宙艦隊司令部と即時に連絡できないため、現場指揮官の判断だけで現地で予備自衛官を招集できるとされている。


「私は現地での予備自衛官の招集はしていなんだがな。サクラコ」

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